【脱スマホ?】『本を読むだけで脳は若返る』川島隆太:マインドマップ的読書感想文

2023年12月17日

【脱スマホ?】『本を読むだけで脳は若返る』川島隆太

本を読むだけで脳は若返る (PHP新書)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気が高かった1冊。

「脳トレ」でおなじみの川島先生が、「読書が脳に与える驚きのメリット」（とスマホの弊害）を解説してくれるという作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

◆脳が活性化する最良の方法は｢読書｣｢音読｣だった！
◇子どもから高齢者まで、全世代で脳機能が改善・回復！
◆今こそスマホを捨て、本を読もう――「脳トレ」監修者が断言！

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Reading Time with Uncle Bob / donnierayjones

【ポイント】

■1.ホワイトカラーの創造性が文庫本1冊で向上した

　次に、私たちは、参加者たちに文庫本を1冊ずつ渡しました。井上靖の『氷壁』という小説です。(中略)
　1カ月後、再び実験をする日を迎えました。やはり、読み切った方もいれば読み切れなかった方もいました。これは想定内です。そして、創造性テストを実施。その結果が図1-3です。(中略)
　きちんと読み切った方は、創造性のテストの点数が上がりました。一方、読み切れなかった方は、そうではありませんでした。2回目のテストのほうが難しかったので、点数が下がってしまった方も多かったのですが、これは創造性が落ちたわけではありません。創造性の力が変わらなかったと捉えてください。
　要は、読み切れなかった方は創造性のスコアに大きな差が出なかったのですが、読み切った方は大きくスコアを伸ばしたということです。

■2.音読で記憶力が伸びた

　実験に参加いただいた方の平均年齢は48歳で、音読トレーニングを始める前に記憶できた単語数は平均で10個でした。比較するために、平均年齢37歳のグループにこの記憶力テストをやってもらったところ、平均で12個の単語を覚えることができました。東北大学の大学生や大学院生にもやってもらうと、平均で16個でした。やはり、若い人ほど記憶力が良い傾向がありました。
　そして、平均年齢48歳のグループのみ単語記憶のテストを毎週末に取り組んでもらったところ、図2─6の結果が出ました。1週間後は変化が見られませんでしたが、2週間後には明らかに記憶力が伸びました。4週間後には平均で14個の単語を覚えることができました。これは平均年齢37歳のグループを超える成績で、10歳以上若い人たちよりも記憶力が良くなったと言えます。

■3.脳を音読でウォーミングアップ

　私たちは、この現象を音読による「脳のウォーミングアップ効果」と呼んでいます。いきなり勉強を始めるよりも、音読などの活動を通して脳を全体的に一度活性化するように働かせる。そうすることによって、その後の学習がよりスムーズに進むのではないかと私たちは考えています。実際の実験でもこの効果を確認しています。(中略)
　毎日、勉強をする前に2分間だけ音読をしてみてください。脳の準備運動になり、その後の学習で脳が全力で働けるような状態になります。集中力が増し、学習スピードが上がるので、学習の効果が自然に上がっていきます。
　また、音読を毎日繰り返すことによって、ファートランスファー効果も期待できます。つまり、記憶力などの脳の認知機能を音読で上げることができれば、脳がより学習しやすいものに変わっていきます。音読をすることで、直接的にも間接的にも学習効果を上げていくことができるのです。その結果、学習の目標に早く近づくことができるでしょう。

■4.紙の辞書で調べたほうが覚える

　脳活動の線を見ていただくと直感的にわかるように、スマートフォンで調べたときにはほとんど前頭前野の活動には大きな変化が見られません。ところが、紙の辞書で調べるときの脳活動を見ると、明らかに活動量が増えています。
　この実験ではさらに、言葉調べが終わったあとに数分ほどの間をあけて、調べた言葉の意味を書き出してもらうという「再生」の実験も行いました。抜き打ちテストです。実験前に「あとでテストをします」とは言っていませんので、被験者たちは覚えようと努力や工夫はしていません。
　すると、スマートフォンで調べた単語の意味は、1つも思い出すことができなかったのです。一方、辞書で調べたほうの単語は、おおむね調べた単語の半分ほどが思い出せました。調べることができた単語数はスマートフォンのほうが多く、辞書で調べたときの２倍近い数になりましたが、頭には何も残っていなかったのです。

■5.脳の発達が止まっていた子どもたち

　この一連の実験や調査のデータ解析の中でわかったのは、スマホ・タブレットを使ってインターネットに毎日接続している子どもたちの多くは、脳の一部で発達が止まっていたということです。図5─6で囲まれた領域がそうです。この着色された領域の発達が平均でゼロ、つまり止まってしまっていたのです。
　一方、スマートフォンなどを全く使わない子どもたちの脳を調べると、神経細胞層の灰白質が平均50ccほど増えていました。しかし、この体積の変化が、スマホ・タブレットでインターネットを毎日している子どもたちには見られませんでした。この現象は、スマホ・タブレットでインターネット利用を習慣化したことによって大脳のどこかの領域で発達が止まったということを意味しています。また、神経細胞のネットワークを築いている脳の白質の部分にも同じような現象が見られました（図5─7）。

【感想】

◆川島先生らしい、相変わらずの「問題作」でした。

本当はもっとご紹介したかった部分も多々あったものの、ボリュームの関係でなくなく割愛。

ちなみに、本書はエビデンス重視のつくりのため、やたらと図やグラフが多い（上記ポイントでも見られもしない図の番号がいくつも出てきてすいません）のですが、それがないと分かりにくいお話は、必然的にカットせざるを得ませんでした。

たとえば、本書の第5章に「スマホの使用時間」「家庭学習時間」と「学力」と比べたお話があって、これなら何とか文章でも追えます。

ただ、さらにそこに「睡眠時間」というパラメータも加えると、もはや3次元の世界でして……。

実際、本書では「3次元棒グラフ」にて解説されていますから、気になる方はそちらでご確認ください。

◆さて、最初に戻って、第1章では「読書は脳の全身運動である」と題して、読書全般が脳に及ぼす好影響がテーマ。

意外だったのが、上記ポイントの1番目の「創造性」に影響を及ぼす、というお話です。

前半部分を割愛している（「次に～」から始まっているのはそのせいです）ので、ちょっと分かりにくいですが、被験者たちは、読書する前に全員、1回目の創造性のテストを受けており、スコアに大差はなかったのだそう。

ところが読破している人はスコアが伸びた、というのは興味深いところ。

なお、この章の後半によると、小説や新聞記事のような「活字中心」のものを読んだ方が、写真やイラスト、マンガが中心の雑誌や書籍を読んでいるときよりも、脳活動が活発なのだそうです。

確かに写真やイラスト等がないと、頭の中でシーンを思い浮かべる必要がありますから、それによる違いは出てきそうな。

◆続く第2章のテーマは「音読」。

上記ポイントの2番目にあるように、「記憶力が伸びた」というのは意外でした。

もちろん、私たち資格試験の元受験生は、理論を音読して暗記したものですが、それはあくまで音読したものとテストしたものが同じケースです。

ここでのテストのように、テストするものと違うものを音読して、記憶力に効果があるのなら、試験を受ける人なら今日からでも音読を習慣にすべきでしょう。

ちなみにこの記憶力への効果は、アルツハイマー型認知症の患者さんでも認知機能が回復したとのことですから、かなりのものだと思います。

同じく第2章から抜き出した、上記ポイントの3番目では、音読のウォーミングアップ効果について言及。

前述の音読習慣は、「勉強をする前に2分間」だけでも効果があるのだそうです。

なお、テレビゲームに同様の効果があるか調べたところ、逆に成績が下がってしまったのだとか。

◆1つ飛んで第4章では、川島先生がかねてから指摘していたスマホの問題点がわんさか。

中でも上記ポイントの4番目の調べものについては、個人的に衝撃を受けました。

ウチのムスコなんて、調べ物は全部スマホ使ってますからね……。

というか、スマホを調べもので使わなかったら、勉強への貢献度がダダ下がりなんですが。

なお、その原因（？）として考えられるのが、スマホを使っているときの脳は、あまり活動していないこと。

特に、動画を見ているときの背外側前頭前野の活動は低く、何もしないで一点を見つめてぼんやりとしているときよりも低い状態でした。不思議なことに、スマートフォンを使って動画を見ると、情報処理をほとんどしていないボーッとしているときよりも脳活動が下がるのです。これは少し専門的に言うと、脳活動が「抑制」されているという現象が生じていた、ということを示しています。

スマホで動画を観るタイプの勉強法も要注意なのかもしれません。

◆さらには、こういう勉強への影響以上に心配なのが、第5章から抜き出した、上記ポイントの5番目のお話。

上記の「抑制」に関係しているのかもしれませんが、スマホやタブレットを習慣化すると、「脳の一部で発達が止まる」というのはちょっと問題でしょう。

それを受けて、第6章では「脱スマホ・タブレットで子どもの脳を守れ」と題して、対策を検討しています。

ただ、ここまで世間一般に広まっているものを、規制するのはまず無理ではないか、と。

そこでまずは、家庭内で「スマホデトックス」に挑戦してみて頂きたく（親がスマホ・タブレットを長く使うと、子どもも長く使う傾向が明らかになっているのだとか）。

川島先生曰く「一番の悲劇はリスクを知らないこと」とのことですから、本書をお読みになった方は、ぜひお子さんにも伝えてあげてください！

親子で読みたい1冊です！