2023年12月14日
【議論術】『議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則』紀藤正樹
議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則 (SB新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「Kindle本ポイントキャンペーン」からの人気作。昨日の連日ランキングで、思ったよりもお求めいただいていることに気づき、慌てて読んでみた次第です。
アマゾンの内容紹介から。
近頃SNSなどを見ていると、声が大きい人、相手を言いくるめるのが上手い人が発言力を増しているように思われる。「声が大きい方が勝ち」「言い負かした方が勝ち」――それは間違いである。論破、反論よりも本質的で大切な力。それが「議論力」だ。異なる考え方、ものの見方をする他者と建設的な議論を行い、合意形成を導くスキルが身につく決定版!
10月に出たばかりだけに、中古に送料を足すと定価と変わりませんから、今日中であればKindle版の方が500円弱お買い得です!
Scolding chef / pettifoggist
【ポイント】
■1.「大前提」に「小前提」を入れると、「結論」が出る議論の訓練をするとき、論理学を学ぶことはきわめて重要です。なかでも「三段論法」をぜひ身につけてください。(中略)
三段論法を身につけると、自分の価値観にしたがって、筋の通った理屈を立てられるようになります。それが物怖じせずに他者と意見を交わす力につながり、誰かの意見に流されたり、筋の通らない理屈に惑わされたりすることもなくなるでしょう。
三段論法の基本的な仕組みは、《「大前提」に「小前提」を入れると「結論」が出る》というものです。(中略)【大前提】赤信号は「止まれ」のサインである
【小前提】今、信号は赤である
【結 論】止まる
■2.反論法:「例外的事情」を取り込む
理屈はたしかに通っているし、大前提も常識的である。けれども「そうは言っても現実的に理屈どおりにできない」という事情もあるでしょう。
たとえば、「共働きしないと生活費を賄えないため、子育てに時間的制約が生じる」という例外的事情は、「子育ては両親の義務である」という大前提や「両親が共同で子育てをする」という結論に対して、次の傍線部のような「程度」問題で応じる材料となります。
「子育ては両親の義務である」という前提条件をいじらずに、「可能なかぎりその義務を果たす」というように、「果たせない部分はどうするか」という現実的に実践可能な話にさじ加減を加味することで、別の納得できる結論を導くことができます。
たとえば、「子育ては両親の義務であり、子どもが生まれたら両親が共同で子育てをする。ただし両親が子育ての100%を担うのではなく、祖父母や保育園の手も借りてもよいのではないか」といった反論が可能になるわけです。
■3.「それは主観ですよね」と言ってはいけない
議論とは互いの意見を述べ合うことであり、意見とはそもそも客観的なものではありません。
もちろん、客観的な事実や、自分の意見をサポートする第三者の引用など、根拠を伴う理屈がなくては相手に説明できません。しかしあくまで、個人の意見を決定づけるものは個人の主観(価値観)です。
「自分の価値観をもとに理屈を組み立て、説明可能にしたもの」が意見なのですから、もとより意見とは主観的なものです。
そして議論の場では、それぞれの価値観のもとに組み立てられた理屈の部分の話をしようとしているわけです。
それなのに意見のベースになっている価値観を取り沙汰して、「それはあなたの主観ですよね」と言うのは、大前提の根本をただ言い換えているだけで批判としてまったく成立していません。
■4.「反論できない言葉」は使わない
反論ができない言葉(反論可能性のない言葉)を使うのも、相手を言い負かすことを目的にしているタイプの人が陥りがちな論理の希釈の一種です。
そういうタイプの人は、反論を封じることで議論の道を閉ざしているだけなのに、相手が黙ったことを「論破した」と勘違いします。
この、もっとも幼稚な例は「罵倒句」です。(中略)
そのほかにも、ネットでは「あなたは本当に〇〇ですか」という発言を連発する人がよくいます。〇〇の中には職業が入ります。学者、学校の先生、議員、弁護士などを入れてもらえればわかりますが、答えは「私は〇〇です」となるだけで議論になりません。これも、相手を小馬鹿にするためだけの罵倒句の一種と言うほかありません。
実際にあまりに馬鹿げた議論であったとしても、どこに疑問があるかを明示して、相手が議論しやすいような発言をすべきです。
■5.「他人の意見」は、まず聞く
新しい意見や事実に出合ったときには、自分の意見を再考したり、事実誤認に気づいたりできるようになりたいものです。それができるかどうかは、頭の柔軟性に関わります。
幼いころからの教育や、もっといえば天性の素質もあるかもしれませんが、今からでも頭の柔軟性を身につけることは可能です。まず「人の意見を理解しようとする」という意識づけから始めましょう。
自分と異なる意見を聞いたときや、今まで考えたことすらなかったテーマに関する意見に出合ったときに、「自分とは違う」と拒否したり、「自分にはわからないから」とスルーしたりしないことが重要です。
何であれ、いったん「この人の意見を構成している理屈は何だろうか」と考えてみることが大切です。自分にも意見がある場合は、それを相手に伝えることも欠かせません。こちらが意見を発すれば、相手もまた何かしらの意見を返してきます。
ここで初めて対話が生まれます。
【感想】
◆著者の紀藤先生の作品は、先生がテレビによくお出になっている時期に、こちらをご紹介したことがありました。決定版 マインド・コントロール
参考記事:【カルト宗教の手口とは?】『決定版 マインド・コントロール』紀藤正樹:マインドマップ的読書感想文(2022年07月14日)
ただし、こちらはいわゆるカルト宗教の勧誘&洗脳の手口にフォーカスしており、本書とは内容的にも異なるもの。
逆に本書で中心となるのは、タイトルにもある「議論」であり、そのベースとなるのが、上記ポイントの1番目の「三段論法」です。
……ザっと読んでも(じっくり読むほどの文章量ではないですが)「そんなの簡単じゃん」と思いますよね?
◆ただ、このロジックを頭に入れておかないと、ところどころでつまづくこと必至。
たとえば、上記ポイントの2番目の前提となるのは、このような三段論法です(文章でも書かれていますが)。
【大前提】子育ては両親の義務である理屈そのものは破綻なく完結しており、理屈だけを見れば「正しい」と言うしかありません。
【小前提】子どもが生まれた
【結 論】両親が共同で子育てをする
しかし反論の余地がないかといえば、そうではなく、ここに挙げたような「例外的事情」を取り込むのが、その方法の1つになります。
本書ではもう1つ方法が紹介されており、それが「大前提を動かす」というもの。
こちらはちょっと長くなるので、本書にてご確認ください。
◆一方、上記ポイントの3番目は、どこかで聞いたようなお言葉……!?
いえ、本家は「感想」と言ってますけど、「主観」と「感想」ってほぼ変わらなくないですか?
何でもこういうのを「論理の希釈」というのだそう。
希釈とは一般に溶液を薄めることをいいますが、論理の希釈とは、その人の論理に直接反論するのではなく、別の論点を提示することで、論点をすり替え、もともとの論理自体の正当性を低めることで、議論から逃げることです。もちろん、「感想」を「事実」であるかのように発言したり、「根拠を伴う理屈」がなかったらまずいですが、相手の主観に対して逃避してはいけないワケです。
「それはあなたの主観ですよね」と言うのは、その典型例です。
……もっとも本家によると、1度しか言ったことがないそうですが。
◆同じく「論理の希釈」として挙げられているのが、上記ポイントの4番目の例。
割愛した「罵倒句」というのは、いわゆる子供の喧嘩レベルの「バカ」「アホ」や、人格否定等々。
もうちょっとマシである、職業を疑う発言も、ここで挙げたように問題外。
憲法学者に向かって「憲法も知らない」とか、弁護士に向かって「弁護士なのに法律を知らない」などと言うのは、自ら議論下手だという愚かさを公言しているようなものなので、避けるべきです。他にも「あなたはわかっていない」というのも「あなたは本当に〇〇ですか」と同じ意味なので罵倒句なのだとか。
ネットではちょくちょく見かけますが、真っ当な議論の場では使わないように気をつけましょう。
◆こういうNG例に比べると、上記ポイントの5番目の「他人の意見を聞く」姿勢は、推奨されるべきものかと。
相手の意見が受け入れがたいと、ここにあるように「拒否」したり「「スルー」したりしたくなりがちですが、それでは議論が進みません。
むしろ「違和感のある意見」は、「他人の意見を構成している理屈を考えるトレーニング」に使えるのだそう。
私もアマゾンレビューを見る際は、低評価のものを意識的に見るようにしているのですが、そこにロジカルな理由があると(本当か否かは別として)、考えるヒントになります。
なお、上記で触れ損ねましたが、本書の第2章には三段論法のトレーニングがあり、こちらをキチンとこなしていけば、論理力が高まることは確実かと。
さすが弁護士である紀藤先生が書かれただけあって、思わず納得の1冊でした。
議論で負けたくない方なら要チェック!
議論の極意 どんな相手にも言い負かされない30の鉄則 (SB新書)
第1章 議論とは何か ――屁理屈、詭弁に負けないために
第2章【基本編】議論力の土台をつくる ――「三段論法」トレーニング
第3章【応用編】議論を有利に進める ――弁護士が実践する論理テクニック
第4章 議論力を磨く習慣 ――異なる価値観に触れ、謙虚に学ぶ
議論力トレーニング問題解答集
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【編集後記】
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