2023年12月09日
【スマホ考】『脳を活かすスマホ術 スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』星 友啓

脳を活かすスマホ術 スタンフォード哲学博士が教える知的活用法 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ポイントキャンペーン」でも人気の1冊。そもそも10月の未読本記事にて取り上げていた作品ですから、これはもう読まざるを得ませんでした。
アマゾンの内容紹介から。
スマホをどのように使えば脳に良い習慣がもたらされるのか。〈エンゲージメント〉〈インプット〉〈ウェルビーイング〉というスマホの3大長所を、ポジティブに活用するメソッドを紹介。アメリカの最新研究に基づく「脳のゴールデンタイム」をつくるスマホ術!
送料を足した中古よりは、こちらのKindle版が300円以上お買い得となります!

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【ポイント】
■1.スマホは本当に悪なのか?スマホは本当に悪なのか? 最新研究の現在地はどこなのか? これを考えるのに非常に重要な論文があります。
それは、文字通り「SNSと心のウェルビーイング(Social media and psychological well-being)」と題された論文。スマホのメンタルへの影響についての有力な研究226本をまとめ直して、スマホの悪い影響と良い影響を再評価するというものです。(中略)
そのメタ分析が出した結果、スマホの使用時間とメンタルの相関は、「0.01」であることがわかりました。ここで言う「相関」とは、スマホの使用時間と良いメンタルの状態の関係性の強さを表しています。
スマホを使用すればするほど、良いメンタルになるという傾向があり、その傾向が最大限に強ければ相関は「1」。スマホとメンタルがまったく関係なければ「0」。スマホを使うとメンタルが悪くなる傾向が最大ならば「−1」。
そしてメタ分析結果の「0.01」。これはまさに誤差の範囲内で、統計的に有意ではない、つまり、スマホの使用時間自体とメンタルには相関がないという結果が出てきたのです(しかも、誤解を恐れずに言ってしまえば、どっちかというのであれば、スマホを使用すればメンタルが良くなる方にほんの少しだけ寄っているわけです!)。
■2.動画の習慣で避けるべきこと
例えば、字幕。動画を見る時に、「聞く」「見る」だけでは心許ないので、字幕をオンにして動画の内容の取りこぼしを防ごうなどと思ったことはないでしょうか? 字幕を付ければ、「聞く」インプットに「読む」インプットも追加でき、聞き逃しても文字で追い直せるので理解度も上がるだろう……。そう考えるのも自然です。
しかしながら、実際にはそうではありません。動画視聴で音声に字幕を加えると、ワーキングメモリーの負荷を分散させられるどころか、字幕の情報量でオーバーフロー状態になりかねないのです。(中略)
特に、未知の分野を学んだり、新しい情報をゲットしたりする時には、ワーキングメモリーに負荷をかけてはいけません。ついつい良かれと思って字幕を付けて、余計な情報を増やしてしまわないように気をつけましょう。
■3.超効果的な3つの動画習慣
1つ目は、動画を見る前に、「目次やまとめを出力してざっと内容を理解しておく」こと。最近のYouTube動画は、ChatGPTを使えば要約を出すことができます。要約を出さなかったとしても、「この時間にこんなことを語っている」といった見出しが出ていたりします。まずは、これを最初にざっと見ておくことです。(中略)
2つ目は、動画学習をする際に、「10分ごとにメモする」ことです。ノートの取り方はあまり気にしなくていいでしょう。殴り書きでも、スマホの箇条書きメモでもよい。
肝心なのはリトリーバルで、それをこまめに入れていくこと。動画の場合には、自分のペースで区切って「うーん、どうだったかな?」の時間をちょくちょく作ることができます。ぜひ実践してください。(中略)
そこで大事なのが、3つ目の習慣で、「速度は1.5倍」です。そうすれば速く見られるわけですが、浮いた時間をリトリーバルに充てるのです。
■4.ゲームが育てる成長マインドセット
ゲームにはもう1つ、大きな利点があります。
それは今できないことでも「やればできる」と思える「成長マインドセット」をアップさせること。「成長マインドセット」とは、自分の知性や能力が常に成長しうると考える心構えのことです。(中略)
このコンセプトは、スタンフォード大学の教育学教授であるキャロル・ドゥエックのミリオンセラーとなった著書『マインドセット「やればできる!」の研究』(草思社) で一気に世に知られるところとなりました。(中略)
そして、ゲームは成長マインドセットの最大の友。ゲームをすることで、成長マインドセットをサポートすることができます。
ゲームの仕組みの中では、最初はまったくできないことが、次第にできるようになっていく。失敗を繰り返しても、財産や命を失うことなく、簡単にやり直しができる。ゲームを繰り返していく中で、できなかったことが、ついにできるようになる。 ゲームは、そうした「成功体験」をリスク少なく提供してくれる、 実に効果的な成長マインドセットの育成装置だったのです。
■5.効果的なスマホ時間の減らし方
まずは、2週間で30分ずつ減らしていく。最初の2週間様子を見て、新しい生活のリズムに慣れてきたら、さらにまた30分減らしていく。
30分というのはあくまで目安なので、15分や20分などと、習慣の変化が大き過ぎない程度に減らしていくのがコツです。先述の通り、脳は少しずつしか変化できません。
次なるポイントは、心の三大欲求を満たす「代わりの行動」を、減らした時間の分だけやること。「つながり」「できる感」「自分の意思でやっている感」を感じられるようなものを選びましょう。
家族や友達と外を歩いてみたり、部屋の掃除をしてみたり。勉強や宿題、誰かを助けてあげるなど、達成感があり、自分ばかりでなく他人のためになることを選びましょう。
そして、スマホ時間の前に、この「代わりの行動」を減らした分の時間だけやってから、スマホの時間を取る。外を散策するのが「代わりの行動」なら、まずは30分屋外を散歩する。それから前もって決めた時間だけ、スマホやゲーム、SNSをやる、という順序が効果的だと言われています。
【感想】
◆タイトルの「スマホ術」というフレーズから、てっきりスマホの機能的なお話や、有益なサイトが取り上げられているのかと思いきや、まったく違いました。もちろん、機能やサイトが中心ですと、時間が経つにつれて情報が劣化してしまうのですが、本書はむしろ逆で、その手のお話から距離を置いているかのよう。
しかも巻末には参考文献が大量に列挙されており、さすが著者の星さんがオンラインの高校の校長先生なだけのことはあります。
ただし、こうした肩書ゆえか、「リアル(オフライン)」に対して「オンライン」の肩を持っているな、と所々で感じたのも、また事実でした。
実際、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目のお話についても、確かにメンタルへの影響についてはプラマイで言ったら「ちょいプラス」かもしれませんが、メンタルというのはあくまでもスマホがかかわる1つの面に過ぎないでしょう。
具体的にはSNSがその中心であり、確かにスマホがあることで常時SNSと接することはできますが、そもそもSNSはパソコンでもできたのではないか、と。
◆一方、スマホ利用のもう1つの大きな柱がゲームです。
ムスコが中学時代、ゲーム機(任天堂スイッチ)で遊ぶのを定期試験前に時間制限したものの、成績が思った以上に悪く、不思議に思って問いただしたところ、実はスマホでゲームに熱中していたことがありました。
……いや、ゲーセンと違ってタダでいくらでもプレイできたら、自分の意志で制限するのって、大変ですよね?
といいますか、スマホでもPCでも専用機でも、私自身は社会人以降はゲームを一切やらない人間なので、基本的にゲームに対してネガティブなスタンスではあるのですが、上記ポイントの4番目にある「成長マインドセット」のお話は「目からウロコ」。
ここで紹介されているキャロル・ドゥエック女史のこちらの本は、下記のようにレビュー済みですが、まさかゲームが役に立つとは思っておりませんでした。

マインドセット:「やればできる!」の研究
参考記事:【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)
なお、こちらは第3章から抜き出したのですが、この章で興味深かったのは、ボードゲームとの比較です。
一般的にはスマホゲームよりボードゲームの方が頭に良さげなイメージがあるものの、最近の研究によると「実は、認知能力のアップは、スマホゲームには期待できても、ボードゲームには期待できない」のだとか(詳細は本書を)。
◆また、意外なお話といえば、第2章から引用した、上記ポイントの2番目の動画の字幕の件もそうでした。
私は字幕が付けられるものは、極力字幕を付けた方が情報を正確に入手できると考えているのですが、余計な負荷をかけていたのだとは……。
ただ、確かに私の場合、字幕があったら、音声の方は注意が薄れているのも事実です。
と言うより、音声しかなかったら、100%そちらに集中せざるを得ないので、当たり前かもしれませんが。
もっとも他の部分で指摘されていたのは、同じ視覚情報でも、字幕があったら、字幕以外の視覚情報への注意が散漫になる、というのは確かだと思います。
それに関連して、カブトムシの生態を動画で学ぶのに、リアルな映像よりも、シンプルな画像の方が学習効果が高い、という割愛したお話も、不要な情報はない方が良いことを表していると言えるでしょう。
◆同じく上記ポイントの3番目では、動画学習のポイントが3つほど。
1番目の概略をつかんでおく、というのは、読書でも同様ですね。
2番目のメモは分かるとして、唐突にでてきた「リトリーバル」なるフレーズ。
これは本書の第2章にて解説されていたのですが、要するに「一度、見たり学んだりしたものを、『こうだったな』と思い返してみる」ことを言います。
Wikipediaにはないので、星さん自身が語られている記事を。
(2ページ目)スタンフォード大学オンラインハイスクール校長が伝授「あらゆる年代に使える」3つの勉強法 | AERA dot. (アエラドット)
また、最後の速度の件は、本書の別の部分で語られており、速聴する際には、速度が1.5倍を越えたあたりから、理解度が落ちるのだそうです(条件や内容にもよりますが)。
◆……と、大まかにはスマホに対してポジティブな星さんも、第5章では問題点等にも言及。
実際、さまざまなガイドラインを総合すると、「0歳から5歳くらいの幼児は、毎日2時間以上の使用は禁物」なのだそうです。
さらにはスマホ依存の方に対しては、上記ポイントの5番目にて、その時間の減らし方を具体的にアドバイス。
以前読んだこちらの本では、たばこを禁煙する際には、徐々にだと苦しい、と言われていましたので、スマホのケースは少々意外でした。

悪習慣の罠 (扶桑社BOOKS新書)
参考記事:【依存症?】『悪習慣の罠』山下あきこ(2023年09月14日)
いずれにせよ、我が家の子どもたちのスマホ利用に対する考え方は、私(制限派)とヨメ(容認派)とで対立しており、現状、諸事情(?)によりヨメに任せた結果、一切制限していませんから、どうなることやら!?
本書の言うように、スマホ利用がトータルで見てプラスになることを祈るばかりです。
スマホをポジティブに活用するために!

脳を活かすスマホ術 スタンフォード哲学博士が教える知的活用法 (朝日新書)
序 章 天国か? 地獄か? スマホの現在地
第1章 知られざるスマホのパフォーマンス
第2章 スマホ動画は「インプット」の無双の鍵
第3章 スマホゲームは「エンゲージメント」の最強ツール
第4章 スマホのSNSで本物の「ウェルビーイング」を手に入れる
第5章 持続可能なスマホの「モチベーション」
【関連記事】
【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)【依存症?】『悪習慣の罠』山下あきこ(2023年09月14日)
【スマホ脳?】『スマホ脳の処方箋』奥村 歩(2022年09月30日)
【ヤバ本?】『スマホ依存から脳を守る』中山秀紀(2020年02月26日)
【脳科学】『2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣』横田晋務(著),川島隆太(監修)(2016年08月12日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う (講談社現代新書)
当ブログでもレビュー済みの中高年向けの作品。
送料を足しても中古の方がお得ですが、その差は数十円ですから、Kindle版最安値とも言えるこの機会にご検討ください。
参考記事:【定年後】『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』坂本貴志(2022年08月19日)
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