2023年11月10日
【勉強】『勉強ができる子は何が違うのか』榎本博明
勉強ができる子は何が違うのか (ちくまプリマー新書 439)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、とあるルートでオススメ頂いた勉強本。ちくまプリマー新書ですから、本来若者が読む本なのでしょうけど、大人が自分自身やお子さんのために読んでも意義ある1冊でした。
アマゾンの内容紹介から。
成績の良い子は、認知能力の他に、自分をやる気にさせる力や忍耐強く物事に取り組む力や感情をコントロールする力などの、非認知能力を身につけている。さらに、自分をモニターするメタ認知能力にも長けている。実は、学力向上のコツは自分自身を客観的に認識する能力「メタ認知」にある。では、「メタ認知」はどのようにして鍛えられるのか? 勉強ができるようになるためのヒントがここに!
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Studying Hard / grits2go
【ポイント】
■1.自己コントロール力を鍛える自己コントロール力が高くないと社会適応に困難をきたすことは容易に想像できる。たとえば、自分の感情をうまくコントロールできなければ、人間関係が安定せず、信頼関係も築きにくいし、トラブルが絶えないといったことにもなりがちだ。また、自分の気持ちをうまくコントロールできなければ、勉強に限らずスポーツでも芸術でも、目標に向けて忍耐強く努力を続けることができず、すぐに誘惑に負けてさぼったり、思い通りにならないとすぐに落ち込んでやる気をなくしたりといったことにもなりがちである。
ここから言えるのは、子どもの頃、とくに幼児期において、自己コントロール力の発達を促進するような働きかけをすることが非常に大切だということである。親など周囲の人たちからそのような働きかけをしてもらえないと、自己コントロール力が未熟なままということもあり得る。目の前の子どもが喜ぶ笑顔を見たいなどといって将来のことを考えずに甘やかす親だと、そのようなことが起こりがちだ。その場合は、自分自身で自己コントロール力を意識して鍛える必要があるだろう。
■2.自己責任性を意識する
自分が出した結果を自分のせいにすることを自己責任性という。何かで成功したときや失敗したとき、それを自分のせいにするか、自分以外の要因のせいにするかということである。
たとえば、思うような成績を取れなかったとき、自分の頑張りが足りなかったと考える子は、自己責任性の高い子と言える。試験で予想外の問題が出たからできなかっただけだとか、先生から嫌われているからだとか、自分以外の要因のせいにする子は、自己責任性の低い子ということになる。
そのような自己責任性と学業成績の関係を検討した研究により、自己責任性の高い子ほど成績が良いことがわかっている。つまり、結果を自分のせいにする子ほど成績が良いといった傾向がみられるのである。
■3.勉強ができる子はメタ認知ができている
学習活動に関するメタ認知の研究としては、本人自身の理解度判断と実際の試験の成績のズレについての研究が盛んに行われてきた。いわば、本人の予想と実際の成績のズレについての研究だ。ズレが大きいということは、自分の理解度の現状をきちんと把握できていないことを意味する。
そうした研究によってわかったのは、実際に成績の良い人はズレが小さく、成績の悪い人は自分の理解度や成績を過大評価するという形のズレが大きいということである。
たとえば、心理学者ハッカーたちが大学生を対象に行った実験では、テスト成績をもとに5つのグループに分けて、本人のテスト成績の予想と実際のテスト成績とのズレを確かめている。
その結果をみると、テスト成績の最も悪かったグループだけが実際より高い得点を予想しており、他の4つのグループは、ほぼ実際の得点に近い成績を予想していた。ここから成績がとくに悪い人たちではメタ認知がうまく機能していないことがわかる。
■4.効果的な学習方法についての主なメタ認知的知識(抜粋)
・これから何を学ぶのかを意識することで理解が進む
・重要なことがらをきちんと頭に入れるには、覚えられたかどうかを確認しつつ、覚えられないことに絞って繰り返す
・教科書・参考書やノートを読む際には、ちゃんと理解できているかを自問自答しながら読む
・教科書・参考書やノートを読む際には、どこが重要かを意識しながら読む
・新たな概念や法則を習ったら、具体例を考えることで理解が深まる
・抽象的な概念は、実生活に関連づけて理解するようにする
・要点のまとめノートを作成することで成績が向上する
(詳細は本書を)
■5.読書習慣が知的発達を促進する
脳科学的手法で子どもたちの知的発達の研究を進めている川島隆太と横田晋たちは、5歳から18歳の子どもや若者を対象に、「あなたは、漫画や絵本を除く読書の習慣はついているほうだと思いますか」と尋ね、その回答を数値化し、同時にMRIで脳の状態を測定しておき、それから3年後の脳の形態の変化を調べるという大がかりな研究を行っている。その結果、読書習慣の強さは、神経繊維の発達や言語性知能の向上と大きく関係していることが確認されたのだ。
読書習慣のある子は、言語能力に関係する神経をよく使うため、神経の連絡が密になり、言語能力に関係する領域の神経走行に変化が生じたと考えられる。それが言語性知能の向上につながっていた。読書が知的発達を促進するということは、心理学や教育学の多くの研究データで示されているが、脳画像によっても証明されたのである。
川島たちによれば、このような変化は大人になってからも生じるため、何歳になっても読書習慣によって脳の発達を促すことができることになる。
【感想】
◆私自身、結構色々な勉強本や子育て本を読んできたつもりですが、本書はなかなか鋭いポイントを突いているのではないでしょうか。ただし本書で述べられていることは、おそらく普通に勉強が得意な方や、中学・高校・大学受験でトップクラスにいるお子さんだったら、特に意識せずにできている事なんだと思います。
とはいえ、傍から見ていると「計算能力が高い」「英単語をたくさん暗記している」「読解力がすごい」といった表面的な部分しか分からないため、どうしてもそれらをマスターする方法論がもてはやされているワケでして。
ところが、実はそうしたテクニックの下には、その元となるパソコンで言うOSみたいなものがあって、それが非認知能力やメタ認知能力と呼ばれる能力になります。
たとえば上記ポイントの1番目の「自己コントロール力」も、非認知能力の1つ。
後半部分で、子どもを甘やかす親の話がでてきますが、少し前から親からのクレームを恐れて、幼稚園や小学校でも厳しくしつけられず、その結果今の20代前半の若者は、自己コントロール力が未発達なのだそうです。
なおこれは、日本特有の現象らしく(欧米の親は子どもは親の言うことをきくものだと思っているのだとか)、日本の将来が少々危ぶまれるところ。
◆また上記ポイントの2番目の自己責任性のお話は、モチベーションを左右する主な要因からのもの。
サラッと読むと、いわゆる「自責」「他責」のお話みたいですが、実際、自分のせいにすることが頑張る力につながり、ひいては潜在能力を引き出すことにつながっていると考えられます。
ただ、うちのムスコもそうだったのですが、自己責任性が低い場合に、高くする方法があるのかは謎。
本書にあるように、「自己責任性を『意識する』」しかないのかもしれません。
また、割愛した残りの「主な要因」で触れておきたいのが、業績目標と学習目標のお話です。
前者は「成果を出すことで、自分の能力を評価されたい」という目標で、後者は「物事をより深く理解することで、自分の能力を高めよう」という目標なのだとか。
そして大事なのは後者であり、本書では
学習目標をもつ方が伸びる可能性が高いと考えられるので、勉強をする際には業績目標よりも学習目標をもつように意識することが大切と言われています。
◆一方、勉強できない子は身に付いていないだろうな、と思われたのが、上記ポイントの3番目の「メタ認知」。
成績の悪い人ほど「自分の理解度や成績を過大評価する」なんて、まるで「ダニング=クルーガー効果」ですね。
ダニング=クルーガー効果 - Wikipedia
実はこの引用部分の直後に、ダニングとクルーガーも出てきており、彼らの実験によると「読書をすることで認知能力を鍛えれば、自分の能力を過大評価する傾向が弱まることが証明された」のだとか。
さらに、このメタ認知を踏まえた、学習方法を挙げているのが、上記ポイントの4番目です。
全部「こんなの当たり前」と思われる方は、しっかりメタ認知ができているのだと思われ。
でもできない人は、たとえば「本を読め」と言われたら字面だけなぞっているだけで、何も頭に入ってないんですよね……。
ここでは抜粋してしまったのですが、本書ではこの数倍列挙されていますから、念のためご確認ください。
◆なお、上記ポイントの5番目は、第4章の「読書と学力は密接に結びついている」からのもの。
先ほど読書で認知能力を鍛えるお話がありましたが、この章は丸ごとその効果をうたって、読書を勧めています。
特に割愛した中で興味深かったのが、家庭における蔵書数が多いほど、子どもの学力が高いという調査結果でした。
もちろん、社会的地位が高い親の家庭ほど、蔵書数が多い傾向にありますから、「親の学歴や収入の高さが蔵書数の多さや子どもの学力の高さをもたらしているのでは」と思われても不思議ではありません。
しかし、さらにデータを詳細に検討してみると、どうもそういうわけではないことがわかる。社会経済的背景を統制しても、家庭の蔵書数と子どもの学力は関係していたのだ。つまり、学歴や収入の低い層でも、高い層でも、それぞれの層の中では、蔵書数が多い家庭の子どもほど学力が高いという傾向がみられたのである。……あのー、ウチの場合、Kindleだけでも2000冊以上あるんですが、こういうのって、どっちに含まれるんでしょうか?
また、最近は小中高時代に視聴覚映像で授業を受けてきたせいか、文章や口頭で手順を説明されてもきちんと理解できずに、「わかりやすく図解してもらえますか」という大学生もいるそうですが、これも読書をしない弊害かもしれません。
しかし実社会に出てから、客先が口頭で説明する内容がよくわからず、「おっしゃっていることがよくわからないので、提案書の内容をわかりやすく図解していただけますか」などと要求したら、「使えないヤツ」という烙印が押されることは必至でしょうし、親としても気を付けなくては……。
広い意味での「頭の良さ」を手に入れるために読むべし!
勉強ができる子は何が違うのか (ちくまプリマー新書 439)
第1章 成績の良い子と悪い子、何が違うのか?
第2章 やる気も粘りも非認知能力しだい
第3章 自分の学習スタイルをモニターしているか? ――メタ認知について
第4章 読書と学力は密接に結びついている――読解力と認知能力について
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。現役&元銀行員が本音で教える! 初心者も経験者も不動産投資をはじめる前に読みたかった 融資の教科書
自宅不動産の融資ではなくて、投資資産の融資を受ける本ですから、結構ガチな内容のハズ。
中古が値崩れしていませんから、Kindle版が1400円弱お買い得です!
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