2023年11月01日
【うま味?】『料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?』リュウジ

料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか? (河出新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の未読本記事で取り上げそこなった注目作。YouTubeや「バズレシピ」シリーズ等の著作で知られるリュウジさんが、誰でも知っている調味料である「味の素」について掘り下げた作品です。
アマゾンの内容紹介から。
人気料理研究家は、多くのレシピでうま味調味料「味の素」を使い、大論争も巻き起こしてきた。なぜ味の素を使うのか? その活用法から安全性まで論じ、うま味調味料論争に終止符を打つ。
中古が高値な一方で、Kindle版は若干お買い得となっています!

【ポイント】
■1.プロの料理人たちも使う味の素自分で料理を作っていると、食材と味の相関関係が次第に身についてきます。だから、料理を食べたときに、「味の素を使わないで、この食材だけでこんなにうま味がでるわけがない」とわかるようになります。
うま味調味料は、料理にうま味を加える調味料ですから、うま味調味料を使った料理には、その食材を調理したことで生じるうま味を超えた、うま味があるのです。
でも、使い方にもテクニックがあります。上手な料理人であれば、お客にまず気づかれることのないバランスで、うま味調味料を使いこなしています。そうした料理は、とくに香りの使い方がうまいですね。
逆にいえば、香りの効いていない料理は、うま味調味料が入っていることがわかりやすくなります。味のバランスがとれていない料理もわかりやすいですね。塩味や甘味に対して、うま味が突出した料理は、まちがいなくうま味調味料を使っています。
■2.味の素とは何か
味の素の主な原材料は、グルタミン酸ナトリウム。これは昆布だしのうま味成分そのものですが、味の素を溶かしたお湯と昆布だしとを比べると、大きな違いがあります。
昆布だしには、香りと雑味があります。
だから、濃厚な昆布だしは、それだけで飲んでもおいしく、鉄分、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラルも豊富に含まれています。
一方、味の素だけを溶かしたお湯は、グルタミン酸とナトリウムしか含まれていない無臭の水溶液で、飲んでもおいしくありません。
だしには、香りがある。味の素には、香りがない。
香りの有無は、料理の味を決定的に左右します。味の素を使えば、香りを抜きにして、純粋にうま味だけを足すことができます。
塩味を加える調味料として食塩、甘味を加えるものとして砂糖があるように、うま味を加える調味料、それが味の素です。
昆布だしの代わりに使える、お手軽な調味料と思っているかたもいるかもしれません。でも、味の素だけを使っても昆布だしにはなりませんし、味の素を使うことでしか、生みだせない料理があるのです。
■3.アジシオについて
アジシオは、塩のまわりにうま味がコーティングされた調味料。原材料は海水とグルタミン酸ナトリウムです。
ちょっとなめてみてください。舌にのせた瞬間に、うま味がぶわぁって広がります。
塩+味の素でもまったく同じ効果が得られますが、振りかける料理は、アジシオを使ったほうが、味にムラがなくなるのが利点です。
からあげや天ぷらなんかにパラパラッと振りかけて食べると抜群においしい。アジシオは振りかける調味料、こう考えれば味の素とうまく使い分けられます。
もちろん、塩味とうま味をいっぺんに加えられるので、普通の料理に使っても便利な調味料ですが、ぼくの場合は、素材自体がもっているうま味も計算して味つけしているので、うま味だけの量を調整できる「塩+味の素」のほうが、だいたいの料理で使いやすく感じています。
味の素 アジシオ ワンタッチ瓶 110g×6個
■4.ハイミーについて
「うま味だし・ハイミー」は、ぼくのおじいちゃんおばあちゃんの世代はよく使っていたのですが、今は味の素以上に、使ったことのない人が増えているかと思います。
ハイミーの成分は、グルタミン酸ナトリウム92%、イノシン酸ナトリウム4%、グアニル酸ナトリウム4%。味の素と比べて、核酸系うま味調味料の配合比率が高い、高核酸系うま味調味料です。
イノシン酸はかつお節、グアニル酸は干しシイタケに代表されるうま味成分です。つまりハイミーは、昆布、かつお、干しシイタケの3つのうま味成分がバランスよく配合されています。
うま味の相乗効果によって、味の素よりも強いうま味ですが、たんに強いというよりは、まろやかでコクの深い、高級な味になります。煮物や汁物、鍋物などにとても便利な調味料です。
味の素 うま味だし・ハイミー 65g
■5.うま味で塩分を控えめに
塩分の摂りすぎは体に悪いのは、みなさんご存じですよね。
食塩、すなわち塩化ナトリウムのナトリウムは生きるために必要な栄養素ですが、ナトリウムの過剰摂取は高血圧や脳卒中の原因にもなります。
味の素の主成分であるグルタミン酸ナトリウムは、その名のとおり、ナトリウムが入っています。ということは、味の素の過剰摂取も体に悪く、高血圧の人は味の素を避けるべきなのでしょうか。
知っておいてほしいのは、グルタミン酸ナトリウムにおけるナトリウムの含有量は、食塩の3分の1以下である、という点です。
味の素由来のナトリウムは、食塩中のナトリウム量に比べてはるかに量が少ないため、高血圧の人でもさほど神経質に味の素を避ける必要はありません。
それどころか、塩分を減らしながら満足感が得られる料理を作るうえでも、うま味は有効です。
多くの研究によって、減塩により旨味に欠けた料理でも、グルタミン酸ナトリウムを加えることによって、減塩していない料理と同等の満足度が得られるという実験結果が示されています。つまり、味の素を効果的に使えば、味の満足度を損ねることなく、減塩効果のある調理が可能となるのです。
【感想】
◆リュウジさんの「『味の素』愛」が炸裂している1冊でした。そういえば、私は自分で料理をすることがまったくない(独身時代は多少ありましたが)ので、味の素もしばらく目にしていないくらい。
そもそも本書の中で、何度も「アジパンダ瓶」という単語(「アジパンダ瓶 ●振り」等)が出てきて、何のことかと思いきや、そういう名称の味の素の製品があったのですね(無知)。

味の素 アジパンダ瓶 70g
なお、このアジパンダ瓶は70グラムであり、かつての80グラム瓶とは、1振りあたりのグラム数が違うので、昔のレシピには注意が必要です。
さてこの味の素、おおっぴらにはされていませんが、第1章から引用した上記ポイントの1番目にあるように、普通に街中のレストランでも使われているのだそうです。
実際、リュウジさんもかつては「味の素反対派」だったのが、最初に入ったイタリア料理店でうま味調味料をバンバン使っているのを目にして、考えを改めることに。
◆さて、このうま味調味料とは何ぞや、というテーマで展開されているのが本書の第2章です。
それ以前に「うま味」というのが、甘味や酸味、塩味、苦味と並ぶ第5の味として発見されたのは、1908年のこと。
昆布だしのおいしさの正体がグルタミン酸であることが判明し、その後イノシン酸(カツオだし等)や、グアニル酸(干しシイタケ等)もうま味成分であることが分かります。
味の素は、昆布だし由来のグルタミン酸からできていますが、その違いについては上記ポイントの2番目にあるとおり。
昆布だしだと、ここに書かれているように純粋なグルタミン酸だけではないため、昆布の香りが邪魔になる料理ですと、味の素一択なのでしょうね。
◆続く第3章では、この味の素と、さらに上記ポイントの3番目と4番目で触れられている「アジシオ」と「ハイミー」の特性を活かしたレシピが紹介されています。
まずはリュウジさんいわく「味の素がないと作れない典型的なレシピ」である、「無限キャベツ」が登場。
他にもレシピがいくつか掲載されていますが、いずれも「味の素の必然性」が語られていますから、お見逃しなく。
そして、「アジシオ」を活かしたレシピは、シンプルな「塩おにぎり」。
本書で紹介されているものは、具がないただの塩おにぎりなんですが、さすがに絵面的に微妙なのか、YouTubeでは具入りのものが紹介されていますが(ただしアジシオは使っています)。
さらに「ハイミー」が炸裂しているのが、こちらの「虚無ラーメン」。
複数のうま味成分が合わさった場合の相乗効果(今回ご紹介できなかった)についても触れられていますので、よかったらご覧ください。
◆一方、第4章では、こうした味の素等のうま味調味料の歴史について解説されています。
上記ではサラッと流したうま味成分の発見のお話や、製品の製法等まで触れられているのが興味深いところ。
また意外だったのが、『美味しんぼ』の海原雄山のモデルと言われる北大路魯山人が、料理人としては味の素を「不可」としつつも、家では味の素を使っていたのだそうです。
ほんとうに化学調味料を生かして使っているのは、わたしだけだといえるだろう。来客料理、あるいは、わたし一人の料理の場合に使ってはいるが、機微を得た使い方をして、生かしているのである。(北大路魯山人『春夏秋冬料理王国』(1960年)また、続く第5章では、味の素の成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)が、いわれのない非難をされてきた歴史について言及。
元はと言えばアメリカで、中華料理を食べたことにより健康被害(痺れ等)を訴えた人がいたことによる、一種の風評被害のようなものだったのですが、日本でも味付け昆布ゆえんの患者がいたのだそうです。
ただし、製造業者が過剰にMSGを使用した事による大量服用(現在のアジパンダ瓶で33〜143振り分相当を一気に食べた)によるものなので、MSGつまり、味の素には罪はなかった模様。
しかし現在でも、アメリカ人の42%は積極的にMSGを避けているそうですから、1度付いた悪評はなかなか取り除けないようです。
◆そして上記ポイントの5番目のうま味と塩分の関係のお話は、第6章からのもの。
実際に健康上の理由で、塩分を控えめにしたメニューを摂っている人こそ、うま味成分を活用すべきと言えるでしょう。
また、少々デリケートなお話なので、軽く触れるだけにしますが、母乳ではなく粉ミルクで乳幼児を育てると、小児肥満になる可能性が高いのだとか。
実は母乳にはグルタミン酸がたっぷり含まれており、そのため粉ミルクより少なくても満足するのではないか、と言われているのだそうです。
であれば、粉ミルクにグルタミン酸を混ぜればいいのでは……という実験が2012年にアメリカで行われ、実際に粉ミルクの摂取量が減ったとのこと。
この辺は今後さらに研究が進んでいくのだと思います。
うま味調味料を活用したい方なら必読!

料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか? (河出新書)
第1章 なぜ味の素を使うのか?
第2章 うま味調味料とは何か?
第3章 うま味調味料の至高の使い方
第4章 うま味調味料の歴史
第5章 MSGは本当に体に悪いのか?
第6章 UMAMIは世界に誇る食文化
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【編集後記】
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