2023年10月20日
【文章術】『相手への心づかいが行き届く 一生使える「文章の基本」』木山泰嗣

相手への心づかいが行き届く 一生使える「文章の基本」
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番お求め頂いた作品。もうすぐミリオン作家となる木山泰嗣さんが、真っ当な文章術を指南する1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
読む人を悩ませない文章、書けていますか? メール・報告書・企画書・議事録・プレゼンetc.あらゆるビジネスシーンで役に立つ!誤読されずにきちんと意図を伝える方法を、著書累計90万部超の法律家が豊富な例文とともに解説
中古が定価よりもはるかに高い一方、Kindle版は「14%OFF」とお買い得になっています!

Writing / dotmatchbox
【ポイント】
■1.伝達文章に「感想」や「感情」はいらないたとえば、左記のような文章を、社内の人向けに書いたとします。本日行われた「〇〇プロジェクト」の会議室に、お忘れ物がありました。黒のペンケースなのですが、この前も同じような忘れ物があったと思います。毎回忘れ物がある会議はどうかと思います。子どもではないのですから、会議室を退席される際には、当たり前ですけど、必ずお忘れ物がないかご確認いただくよう、よろしくお願いいたします。わたしもこんなメールを毎回書きたくないですし……。これは、客観的な事実を伝えようとしながら、「また、忘れ物ですか?」「なんでわたしがこんなメールを、毎回書かなければいけないんですか?」という、個人の「感想」と「感情」が込められています。(中略)
送信する前に、冷静な心で「感想」と「感情」は削除しましょう。本日行われた「〇〇プロジェクト」の会議室に、お忘れ物がありました。黒のペンケースです。お忘れ物が続いているようです。連日連夜の会議で大変お忙しいと存じますが、ご退席の際にご確認いただくよう、改めてよろしくお願いいたします。
■2.「余計な言葉」を削除する
ただ、社会人としての文章を読み慣れた方からすると、少しに気になる「うるさい表現」もあると思うのです。
それは、いちいち「〜ということ」であるとか、「〜していきたいと思います」など、記載しなくても意味の通じる「余計な言葉」が多用されている点です。
こうした表現は、書き手のくせともいえますが、社会人の伝達文章には、できる限り書き手の個性はないほうが、読みやすいものです。
では、どのように修正すればよいでしょうか。●「説明していきたいと思います」こうした表現を書く方は意外と多くいますが、字数稼ぎのようにもみえてしまいます。もっと言葉を消して、洗練された「大人の文章」にしましょう。
●「報告していきたいと思います」●「説明します」(敬語を使う場合は「ご説明いたします」)このような端的な表現で十分です。「〜ということ」「〜という」などの表現も、「という」はなくても通じます。
●「報告します」(敬語を使う場合は「ご報告いたします」)
■3.「事実」と「意見」を一文に混在させない
「事実」と「意見」を混在させた文章は、コミュニケーションに齟齬を起こしかねません。
それを防ぐためにも、「断定できること(事実)」と、「事実から推測したこと(意見)」を明確に分けて書く必要があります。
前者は「動かしがたい事実」といわれ、後者は「推認される事実」と裁判では使い分けられています。
たとえば、次のような文章では、両者の混在がみられます。ただ、営業部のメンバーには好意的な意見を述べる者もいて、この企画を支持している人が何人かいるようでした。(中略)営業部の明確な意向が示されたわけでないならば、次の文章のほうが正確でしょう。ただ、営業部のBさんは「営業部が以前に報告した情報が尊重されている」と述べていました。その際、営業部のほかの4名も大きく頷いていました。
この点から、営業部においては、この企画を基本的に支持しているようでした。
次回の会議で、明確な意見が述べられたら、またご報告いたします。
■4.論証する「たしかに・しかし・したがって」
論証する場合に使える接続詞は、「たしかに・しかし・したがって」です。
これは、小論文や論文式の資格試験などで、よく使われる「型の王道」です。
仕事の場面では、自分の意見を通したいときに使うことができます。
たとえば、次のような文章が挙げられます。たしかに、隣国同士は、できる限り話し合いをするべきである。このように、「たしかに」で、まず「反対の考え方」を述べます。
しかし、ひたすらミサイルを発射するような危険な国もある。
したがって、自国の安全を守るためには、現実の防衛策を講じることも必要になる。
次に「しかし」という逆説で、「別の考え方」を述べます。
最後に「したがって」で、これを受けた「意見」を結論として述べるのです。
この型を使うと、自分の意見を「反対説」も意識したうえで、多角的に検証している印象を読み手に与えます。
■5.公用文を参考に「接続詞」と「副詞」はひらがなにする
たとえば、次の文章を読んでみてください。昨日六本木支店の会議室に於いて開催された企画会議では、数々の新企画の提案が在りました。確かに、最近は新企画が減って居たので、社内が活性化する点では、良い事だと思います。(中略)裁判所の判決文や官公庁の作成する文章は、「公用文」のルールに準拠します。
国家や公共団体が出す文書や法令の文章である「公用文」では、接続詞や副詞はひらがなが原則です。
たとえば、「たしかに」「しかし」「したがって」「よって」というようにです。
「確かに」「然し」「従って」「因って」と漢字で書くこともできますが、これだとかたい印象ですよね。右の文章も、ひらがなを活用すると、次のように読みやすくなります。昨日六本木支店の会議室において開催された企画会議では、数々の新企画の提案がありました。たしかに、最近は新企画が減っていたので、社内が活性化する点では、よいことだと思います。
【感想】
◆冒頭で申し上げたように「真っ当な」文章術の本でした。そもそも文章術には大きく分けて、「てにをは」や文章のねじれ、接続詞の使い方等々を指南する作品と、読んだ人を動かしたり、ネットでバズったりを目指す作品の2種類があると思います。
一時期当ブログでは、後者を立て続けにご紹介したことがありましたが、本書はもちろん前者。
ただし前者はある意味「決まりごと」の世界ですから、ぶっちゃけどなたが書いても、中身的にはあまり違いはありません。
そこで中身はさておき、表現方法としてTIPSを細かく何十個も挙げたり、「Before & After」形式で違いを強調したりと、まぁその辺は作品ごとに色々違いはあるという。
ちなみに本書は、上記ポイントでも4番目以外はいずれも「Before & After」形式を取っており、おかげでやたらと引用部分が膨らんでしまったのですが。
◆もう1つ、本書の特徴として挙げられるのが、著者の木山さんが税法学者兼弁護士であるがゆえのテイスト。
「漢字をひらく」TIPSは、過去何度も出てきましたが、上記ポイントの5番目のように「公用文」を引き合いに出す著者さんは、記憶にありません(とりあえずブログ内検索では「公用文」自体ヒットせず)。
同じく、上記ポイントの3番目でも「動かしがたい事実」と「推認される事実」といった裁判用語が登場しています。
……この2つの用語で検索かけると、当然のように法律ネタのサイトがヒットするわけで。
実際、SNSに投稿するケースも多少はありますが、基本的に本書で扱っているのは「ビジネス文書」と考えて間違いないでしょう。
◆と言いつつ、第1章から引用した上記ポイントの1番目の「Before」例は、社内向けの文章だとしても、フランク過ぎる気が。
しいて言うなら、大学のサークル辺りならありえる……と思ったら、そういえば木山さんは青学の法学部教授でもいらしたのでした。
ただし、この「『感想』や『感情』」というのは、上記の2種類の文章術本でいう「後者」の「バズ狙い」なら、TIPSとして出て来そうなんですよね……。
また、上記ポイントの2番目の「余計な言葉」は、第2章からのもの。
類書でも「思います」は、「使わないで断言しろ」と言われたものですが、こちらではさらに「していきたい」という余計な言葉が含まれていました。
もちろんこれらもまとめてカットすると、スッキリすることうけあいです。
◆一方、第3章から引用したのが「事実」と「意見」のお話。
これはもう類書でもおなじみのTIPSなのですが、私も以前は意識したことがありませんでした。
逆に、意識さえしていれば、両者を分けることはそこまで難しくはないと思いますので、まずはそこから始めてみると良いかと。
そして、第4章から抜き出した上記ポイントの4番目の「たしかに・しかし・したがって」は、おそらく当ブログでは初めてのTIPSだと思います。
というのも、小論文や論文式の資格試験については、あまり言及したことがなかったからかと。
ただし「自分の意見を『反対説』も意識したうえで、多角的に検証している印象を読み手に与える」という効果は、ビジネスシーンでは魅力的だと言えるでしょう。
◆なお、上記ポイントの5番目は、1つ飛んだ第6章からのもの。
前述のように、漢字をひらく基準として「公用文」のルールを用いるのは、客観的に考えても妥当性が高いです。
私も「しかし」や「よって」は普通にひらがなでしたが、「確かに」や「従って」は、漢字で書くことの方が多かったような(特に「確かに」)。
ちなみに割愛しましたが、「用語や名詞は漢字のほうがよい」のだそうです。
たしかに(意識してひらいてみました)、以前「漢字だけ読む速読法」みたいなTIPSもありましたし、認識は速くできると思われ。
読書スピードが20倍速くなる!本で読むべきなのは「漢字」だけ | 毎日が発見ネット
法律家流の文章術を学ぶべし!

相手への心づかいが行き届く 一生使える「文章の基本」
第1章 読み手を想像する――伝わらない文章は、「心づかい」が欠けている
第2章 簡潔に書く――長々と書かれた文章は、相手の大切な時間を奪う
第3章 曖昧さをなくす――複数の解釈ができる文章は、誤解やトラブルを招く
第4章 型を決める――形式に沿っていない文章は、スムーズな理解を妨げる
第5章 取捨選択する――詰め込みすぎた文章は、何が重要かわからない
第6章 見た目を整える――黒っぽい文章は、ひと目で読む気をダウンさせる
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【編集後記】
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【編集後記2】
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