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2023年10月16日

【サッカー】『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』二宮清純


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森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論 (幻冬舎新書 704)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事において、個人的に読んでおきたかったサッカー関係本。

現サッカー日本代表監督である森保一さんの真実に迫る1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
「僕は単なる決める係」と語る森保一。2022年ワールドカップでは、個性豊かな選手をまとめ上げ、ドイツ・スペインを破るという歴史的快挙を成し遂げた。「非カリスマ型」として注目されるリーダーシップを支えるのは、選手時代から培われた「決断の速さ」だ。なぜ試合中に、まるで違うチームになったかのような豪胆な采配ができるのか。一瞬の判断のために、日頃どんな準備をしているのか。森保を長年取材し、挫折も苦労も見極めてきたジャーナリストが、その秘密に迫る。

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soccer-0041 / Michael R Stoller Jr


【ポイント】

■1.監督の仕事とは「決める係」
 森保は監督の仕事を「決める係」だと端的に言う。ただし、決めた以上は「責任」が伴う。メンバーをセレクトし、どう使うか、いつ使うか、どこで使うかは、全て監督の専権事項だ。
 しかし唯一、PK戦に関しては、選手の自主性に委ねていた。そのやり方だと、失敗した場合、直接、選手に批判が向くことになる。本来、選手の自主性に委ねた時点で、それも含めて監督の責任なのだが、失敗のインパクトは監督の責任が忘れ去られるほどに強い。
 それならば、最初から自らが「指名権者」となることで責任のありかを明確にし、全てを受け止めた方が組織的合理性にかなっていると森保は判断したのであろう。ある意味、それは「決める係」の究極のかたちといえるかもしれない。


■2.苦しんでいる選手を見捨てられない
 練習に一緒に付き添っただけではない。森保は森からの「僕の主治医に会ってもらえませんか?」という頼みにも応じている。
「僕の言葉だけでは伝え切れない部分があったので、森保さんにお願いしました。この人にだけは自分が置かれた状況を知ってもらいたい、という思いが強かったんです。森保さんは、そこでも主治医の話をしっかりと聞き、僕に対してどうすればいいか、ということを考えていただきました。
 この病気にかかった人じゃないとわからないかもしれませんが、しんどい時って、犂萃イ讚瓩箸犂待しているぞ瓩噺世錣譴襪函逆効果になってしまうことがあるんです。そんな時、森保さんは爐靴鵑匹ぜ分も好きになってみたら瓩叛爾鬚けてくれた。あれは魔法のような言葉でした。あの言葉により、1回立ち止まり、自分を客観視できるようになったんです。(後略)」


■3.目立とうとせずにダーティーワークに徹する強さ
 キャプテンの柱谷は、森保と一緒にプレーすることで、改めて彼の有能ぶりを実感したという。
「コイツがセンターバックの前にいると、こんなに楽なんだと井原としみじみ話したことを覚えています。部屋で森保に対しては、ボランチはこんな感じでやって欲しいと簡単な話はしていました。相手を潰しにいく時、マークの受け渡しでスライドする時、あるいはトップへのパスコースを消す時。それを森保は完璧にやり遂げましたね。
 要は、彼のプレーはシンプルなんです。相手を潰す、セカンドボールを回収する、それをシンプルにさばく。オフトに言われたことを、そのままやっているだけなんですが、それによって僕や井原の仕事は、ものすごく楽になった。センターバックが楽できるということは、それだけボランチがきいているということでしょう。オフトがいうダーティーワークですよ。(後略)」


■4.上下ではなくフラットな関係を指す「監督係」
 森保は、自らの仕事を「監督係」という。謙遜して言っているのではないことは、次の発言からも窺える。
「チームとして目標を定め、結果を求めて進んでいく中で、監督だから偉いとか偉くなるとか、そういうことはあまり大事ではない。コーチを含めたスタッフ、選手全員がスペシャリストである以上、それぞれが自分たちの特性や強みを発揮し、チームのために何ができるか、を考えながら全力を尽くす。(中略)
僕自身が中心となってチームとしての戦い方や指導方針を共有しつつ、コーチやスタッフには、各々が良さを発揮できる環境をつくっていくこと。それが監督の仕事だと考えています」


■5."ロストフの14秒"で悔いていること
 日本サッカーに語り継がれる2つの悲劇があるとすれば、1に爛鼻璽呂糧畄爿瓠2に爛蹈好肇佞14秒瓩世蹐Α森保はこの2つの悲劇を現場で体験している。最初は選手として、次はコーチとして。
 この爛蹈好肇佞14秒瓩砲弔い董⊃絞櫃聾綟、悲痛な面持ちで、しかし淡々とこう語った。
「悔いがあるとすれば、DFの植田直通を入れてくれって、西野さんに言い出せなかったこと。ベルギーが背の高い選手を入れてきて、それに対応するには(屈強な)植田を入れるのがいいだろうと。実はW杯直前、親善試合でのパラグアイ戦で、植田はヘディングで相手に勝っていたんです。海外の選手たちにも十分通用していた。代えるのなら、あそこしかなかった……」


【感想】

◆上記ポイントの5番目にあるように、森保さんはあの「ドーハの悲劇」の際にピッチにいた一人でした。

……と言われて初めて思い出したように、プレースタイル的にも試合後の言動でも目立つタイプではなく、まさに「汗かき役」。

本書を読むと、高卒後、マツダに拾われたのもギリギリでしたし、もし実業団であるマツダで、のちに日本代表監督となるハンス・オフト氏に出会わなければ、おそらくその後の日本代表にも選ばれなかったと思います。

実際、当時代表に選ばれた他の選手たちが、森保さんの正しい名前を知らなかった(「森 保一」なのか「森保 一」なのか)くらいですし。

選手が知らなかったくらいですから、当時Jリーグもなかった一般国民は、よほどのJSL(日本サッカーリーグ)通でもない限り、もっと知らなかったでしょうし、そんな選手が代表に選ばれたら、当時SNSがあったら大炎上していたかもしれません。


◆しかし、選手時代の森保監督が優秀だったのは、上記ポイントの3番目で、柱谷選手が述べているとおり。

実はこの時の試合は、今なお続くキリンカップで、相手がバティストゥータとカニーヒアを擁するアルゼンチン。

しかも、初代表戦で柱谷選手(と井原選手)のみならず、アルゼンチン側からも評価されていたのでした。
 善戦虚しくアルゼンチンに0対1で敗れたものの、森保は上々の代表デビューを飾った。
「日本の選手の中で、誰が一番目立ったか?」(中略)
 先の質問に対し、アルゼンチン代表のアルフィオ・バシーレ監督が真っ先に口にした選手の名前が森保だった。いや、名前だったのか背番号だったのか、その部分の記憶がちょっと曖昧なのだが、会場内に「エッ?」という空気が流れたことはよく覚えている。
 名前ではなく背番号を連呼したのは、日本のDF網を何度も切り裂いた技巧のFWカニーヒアだった。
「いやになるほど、17番がいつもいるんだ。スペースが空いたから入り込もうとすると、いつの間にかカバーに入っている。僕にとって一番嫌だったのが、あの17番だよ」
この「『エッ?』という空気」というところからも、当時は取材陣でさえ、森保氏のプレーを正しく評価出来ていなかったことが分かります。


◆後に代表監督になってからも、采配や選手選択に疑問符を投げかけられていた森保氏は、先のW杯で「ドイツ・スペイン撃破」し見事「グループリーグ突破」。

さらにその後も親善試合を勝ち続けている(先日のドイツ戦の「4-1」を含む)ことで、いわゆる「手のひら返し」を懐疑派に促している次第です。

そのマネジメントの秘密が明かされるかと思って、本書を読みだしたのですが、実は監督になってからのお話は、意外と少なめ。

上記ポイントの1番目でのPK戦の件や、ポイントの5番目の「ロストフの14秒」のような内幕のお話は、実はあまり多くありません。

むしろ、上記ポイントの2番目のような「人柄」のようなお話が結構多く、数多くの選手や関係者に取材してきた二宮さんでも「一度たりとも彼の悪口を聞いたことはない」のだそうです。

どちらかというと「真逆」じゃないですが、協会との軋轢で代表監督をクビになったハリルホジッチ氏の方が、サッカースタイルとしては分かりやすかったのですけどね。


◆なお、第4章ではやはり日本代表の監督〜ただし野球の〜となった栗山英樹氏との比較や類似点が挙げられています。

この辺はサッカー好きで、かつ、野球にも興味ある方にとっては、「一粒で二度おいしい」状態かも。

たとえば上記ポイントの4番目の「監督係」という考え方は、栗山氏にも通じるものです。
 日本ハムの監督時代、彼はこう語った。
「僕は監督なんて偉くも何ともないと思っています。僕の中での監督は、あくまでも犒茲瓩觀賢瓩任后3Г琉娶を聞いて、誰かが最後は決めなきゃいけない。それを担っているだけです」
分かりませんけど、こういう上下関係を意識しないスタイルは、今の若い人たちにマッチしているのかもしれませんね。

実際、栗山氏は若い人の希望も聞いているようですし、そもそも栗山氏があの大谷翔平選手を日ハムに引き入れなかったら、「二刀流」もプロの世界では許されなかったかもしれません。

さらには日本での成功がなければ、メジャーリーグでも挑戦すらさせてもらえなかった可能性は高いです。

この辺の栗山氏と大谷選手との絡みのお話についてもページが割かれているのですが、一応本書はサッカー好きが読む前提で今回取り上げましたので、上記ポイントでは割愛しましたがお許しを。


人間「森保一氏」の理解が深まる1冊です!

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森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論 (幻冬舎新書 704)
第1章 監督とは「決める係」
第2章 つまずいたことのあるリーダーは強い
第3章 汚れ役もいとわず、合理的に決める
第4章 森保一と栗山英樹
おわりに


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参考記事:【なぜか激安?】『武器化する嘘 ──情報に仕掛けられた罠』ダニエル・J・レヴィティン(2017年08月04日)

よろしければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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