2023年10月09日
【専門性?】『替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方』国分峰樹

替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「Kindle本読書の秋キャンペーン」の中でも、人気が高かった1冊。当ブログの読者さん向きの作品だろうな、と考えておりましたが、予想どおりでした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
AI などのテクノロジーの進化が加速し、ジョブ型雇用が当たり前の時代、代わりがいくらでもいるジェネラリスト(広く浅い知識と経験を持っている人)では生き残れません。
事実、2030年には全世界で3億7500万人もの技術的失業が生まれ、8500万人の専門人材の不足が予想されています。
つまり、いかに専門性で戦えるビジネスパーソンになれるかが、これから生き残るため鍵になるのです。
では、どうすればその「専門性」を身につけられるのか?
本書ではビジネスパーソン×大学講師というハイブリッドキャリアの著者が、ビジネス&アカデミアの知見と経験から、詳細に解説していきます。
中古価格が定価を上回っていますから、このKindle版が1100円以上お得な計算です!

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【ポイント】
■1.専門性が身につかない4パターン●すぐ役立ちそうな知識を吸収しようとする専門性を身につけるという観点から、なぜこの行動がダメかというと、すぐ役に立つことはすぐ役に立たなくなるからです。●年収をアップさせるために勉強するお金を目的にすると、それ以外のことはすべて手段になりますので、手段としての勉強がお金を稼ぐことに寄与する時期もあると思いますが、専門性を身につけてそれをブラッシュアップしていくという観点では、お金をモチベーションにした勉強はいずれどこかで限界が訪れることになります。●過去の実績や経験に価値を置いているサッカー史上最高の才能をもつといわれるメッシ選手でも、毎日練習しなければ次世代のプレイヤーに抜かれていってしまうのに、一介のビジネスパーソンが練習(学び) をおろそかにして過去の栄光を振りかざしていては、たちまち時代に取り残されていってしまうことは目に見えています。●仕事に直結する専門分野しか目に入らない専門性を身につけるためには、「やらなきゃ」「やったほうがいい」ということよりも、「やりたい」という気持ちを推進力にして取り組んだほうが、断然速いです。
■2.個々の知識は整理された状態になければならない
つまり、個々の知識を知っていたとしても、それが頭のなかでバラバラな状態になっていて、「知識と知識の関連性」や「全体としてどういう構造になっているのか」といったことがわからないのは、専門知識をもっているとはいえず、自分の頭のなかで個々の知識が組み上がって整理された状態になっていることが、専門性を身につけるためには重要です。
この点について、東京大学名誉教授の吉見俊哉さんは、『知的創造の条件:AI的思考を超えるヒント』(2020) のなかで、「知識」と「情報」の決定的な違いを認識する必要があると主張します。
「情報」とは要素であり、「知識」とはそれらの要素が集まって形づくられる体系だということです。ある情報が、既存の情報や知識と結びついて、ある状況を解釈するための体系的な仕組みとなったとき、はじめて知識の一部となります。
■3.問いを見つけるために新書を1冊読む
名古屋大学教授の戸田山和久さんは、問いを見つけるために新書を1冊読むことを薦めています。本を読む目的は「答えを見つける」ためではなく「問いを見つける」ことだとして、自分の興味・関心領域の新書を読むなかで「メウロコ」「ハゲドウ」「ナツイカ」「ハゲパツ」という反応の起こる箇所が、問いのヒントになるといいます。「メウロコ」〈なるほどそうだったのか!と「目から鱗」の箇所〉これらの要チェック箇所から自分にとってインパクトの強いトピックを選んで、「なぜ○○なのか」「○○すべきか」「○○と△△の違いは何か」といった問いの形にする方法を提示しています。
「ハゲドウ」〈そうだそうだ、わしもかねがねそう思っとったんよ、という「激しく同意」の箇所〉
「ナツイカ」〈ん?なんか変だな。どうしてそう言えるわけ?という「納得いかない」箇所〉
「ハゲパツ」〈なんじゃこれは、わしは絶対認めんけんね!という「激しく反発」の箇所〉
■4.論文を読めば知識を差別化できる
専門領域の陣取り合戦に負けないように、自分の知識を手っ取り早く差別化する方法として、「論文を読む」ということが挙げられます。ビジネスパーソンは、自分の仕事に関わる領域について、本を読む人は多くても、論文を読む人はすごく少ないのではないかと思います。ですから、本だけでなく論文を読むことによって、自分の知識が差別化されることになります。ビジネスパーソンにとっては、論文はあまりなじみがないものかもしれませんが、実は、論文は本よりもずっと短く、15ページぐらいでまとめられています。しかも、冒頭にある論文の要旨を読めば、書かれていることの要点が把握できるようになっているのです。(中略)
論文を読むことが、知識の差別化につながる理由は、その専門領域における最先端の知識の宝庫だからです。
■5.物事を抽象化して考える
「具体」と「抽象」の往復運動をしようとするときに、重要なのは「抽象」のほうであるということが、ここでの重要なポイントです。個別具体的な出来事を「抽象化」して考えることができないと、自分が生きている狭い世界で見聞きしたことから持論を展開しているだけの状態になってしまいますので、「抽象的に物事を理解する」ということの大切さを意識する必要があります。
具体と抽象の往復運動において、ビジネスパーソンはとかく「具体」にまみれがちですが、専門性を身につける方法についても、抽象的に理解することができなければ、応用が利かないものになってしまいますので、要注意です。専門性を身につけるうえでは、具体的な現象を「抽象化」して認識することが鍵になります。
【感想】
◆働き方や学び方について、非常に得るものが多い作品でした。正直、タイトルや書影を見た時点では、「OJTのやり方かな?」「役立つ資格でも取るの?」みたいに安易に考えていたワタクシ。
しかしそれこそ、第2章から抜き出した、上記ポイントの1番目で挙げられた4パターンに該当してしまいます。
特にこの4つの中では、最初の「すぐ役に立つことはすぐ役に立たなくなる」という指摘は、昨今のタイパを重視する流れとは一線を画するもの。
何でもこちら、小泉信三さんの『読書論』がオリジナルなのだそうです。

読書論 (岩波新書)
同じく2番目の「年収をアップさせる」というのは、広い意味でのコスパ重視の考えでしょう。
要は、こうした世間的な風潮とは、真逆のところに、「専門性」は存在しているわけです。
◆また、たとえ有益な知識をもっていたとしても、それがバラバラだとダメだよ、と諭しているのが、上記ポイントの2番目。
こちらは第3章からの引用なのですが、とりあえず情報をインプットするだけで満足しがちな私にとっても、耳イタイ指摘でした。
結局、「専門知識」と言えるためには、ここで言われているように「構造的」である必要がある一方、対照的なのがSNSであり、こちらは「断片的」である、と。
少々長くなりますが、上記内で紹介されている吉見さんの本から引用します。
読書で最も重要なのは、そこに書かれている情報を手に入れることではありません。その本の中には様々な事実についての記述が含まれていると思いますが、重要なのはそれらの記述自体ではなく、著者がそれらの記述をどのように結びつけ、いかなる論理に基づいて全体の論述に展開しているのかを読みながら見つけ出していくことなのです。この要素を体系化していく方法に、それぞれの著者の理論的な個性が現れます

知的創造の条件 ──AI的思考を超えるヒント (筑摩選書)
◆さて、ここまでが第1部の「専門性とは何か」であり、第2部では「専門性を身につけるステップ」と題して、具体的な方策について指南されています。
その初っ端のステップ1は「自分らしい問いを立てる」。
そういえばここ最近、「問題解決」ではなくて、「問題設定」を重視する作品が増えてきましたが、それこそまさに「問いを立てる」ことに他なりません。
そのヒントとなるであろうTIPSが、上記ポイントの3番目の新書の読み方です。
なるほど、こういう視点で本を読むと、「なぜ○○なのか」という問いがひねり出せそうな。
なお、その戸田山和久さんが、このお話をされている作品は注記によるとこちらだそうです(現在「50%OFF」セール対象)。

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)
◆また、ステップ2の「オリジナリティを発見する」から抜き出したのが、上記ポイントの4番目の論文のお話。
オリジナリティとはやや趣きが違う気がするものの、書籍と違ってあまり読む人もいない分、確かに差別化は図れそうです。
そして本書では、具体的に論文を検索するサイトが5つ掲載されているのですが、それよりも、同様に掲載されていた、こちらの「論文の探し方ガイド」の方をご紹介。
記事・論文の探し方|リサーチ・ナビ|国立国会図書館
そして最後のポイントの5番目は、ステップ3の「多様な意見を尊重する」からのもの。
本題とはややズレますが、「具体⇔抽象」のお話は、当ブログでは主に細谷功さんの本でおなじみでした。
ただし、細谷さんの作品ではどちらを重視する、ということにはなっていませんでしたが、本書では「抽象化」の方を重視するとのこと。
実際、周りを見ていても、レイヤーを上げるのではなくて、単に詳細が分からないだけの「抽象的」な人は多いので、応用が効く形での「抽象化」を意識したいところです。
これからの時代に生きるビジネスパーソンなら一読の価値アリ!

替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方
I 専門性とは何か
第1章 「専門性」が求められる時代
第2章 「専門性の身につけ方」が武器になる
第3章 専門性を身につける方法を知ろう
II 専門性を身につけるステップ
ステップ1 自分らしい問いを立てる
ステップ2 オリジナリティを発見する
ステップ3 多様な意見を尊重する
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【学び】『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』鳩山玲人(2022年04月01日)
「メディチ・インパクト」 フランス・ヨハンソン (著)(2006年05月15日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」
去年の暮れに出たらしい、未読本チェックでも見た記憶のない自己啓発本は、Kindle版が800円弱お得。

ぼくたちに、もうモノは必要ない。 増補版 (ちくま文庫)
「世界累計40万部のベストセラー」という文庫本は、中古が底値ですが送料を加味するとKindle版に軍配が上がります。
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本読書の秋キャンペーン」のフォレスト出版分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
替えがきかない人材になるための専門性の身につけ方

思い通りに相手を操る心のガードの外し方
参考記事:【コミュニケーション】『思い通りに相手を操る心のガードの外し方』Dr.ヒロ(2023年10月04日)

仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番
参考記事:【働き方】『仕事の「質」と「スピード」が上がる 仕事の順番』田中耕比古(2023年03月19日)

あの人の「才能」をトレースする技術
よろしければ、ご参考まで!
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