2023年09月22日
【成功本?】『人生は攻略できる』橘玲

人生は攻略できる (ポプラ新書 245)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番お買い求めいただいている作品。絶版で高値となっている単行本の新書化ということなので、そちらをお持ちの方は一応ご留意ください。
アマゾンの内容紹介から。
「強く願うだけでは夢は叶わない。なにひとつ攻略法を知らなければ、いつまでもレベル1のままだ」ーーベストセラー『言ってはいけない』シリーズの著者が提言する、新時代の人生戦略。
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Crossroads: Success or Failure / StockMonkeys.com
【ポイント】
■1.運が悪くても不幸にはならないアメリカは日本よりも学歴社会で、有名校に入れるかどうかで将来が決まるとされている。でも試験の結果は実力だけではなく、1点差で合格するのと不合格になるのとは、学力的にはまったく同じで、たんに運がいいか悪いかのちがいだ。
そこで、1点足りなくて不合格になった運の悪い学生を大量に集めて、1点差で合格できた運のいい学生のその後の人生と比較してみた。すると、高校受験でうまくいかなかった生徒も一流大学に進学し、大学受験に失敗しても一流企業に就職していることがわかったのだ。
アメリカやヨーロッパ、日本のような先進国は、いろいろ問題はあるとしても、それなりに平等な社会になってきた。そういう社会では、(最終的には)肩書や学歴ではなく実績で個人が評価され、その結果、ちょっとした不運はいずれなんの影響もなくなるのだ。
■2.「圧倒的な努力」ができるのは好きなことだけ
世の中には「やればできる」というひとがいっぱいいる。でもこれは、まったくのデタラメだ。好きでも得意でもないことは「やってもできない」し、そもそも頑張ることさえできない。なぜなら君のスピリチュアルが、「そんなことやりたくないよ」と全力で抵抗するから。
意識(やらなきゃいけない)が無意識(やりたくないよ)にほとんど抵抗できないということは、いまでは脳科学が膨大な証拠を積み上げて繰り返し証明している。だとしたら、「やればできる」ではなく「やってもできない」を前提として人生ゲームの攻略法を考えるべきだ。
「頑張れるのは好きなことだけ」をポジティブに反転すると、「好きなことはいくらでも頑張れる」 になる。好きを仕事にしているとき、ひとは「自分らしく」生きていると感じるのだ。
■3.「生涯共働き」は最強の人生設計
収入を増やすには3つの方法がある。(1) 人的資本を大きくする人的資本を大きくするというのは「もっと稼げる自分になる」ことで、これは一般に「自己啓発」と呼ばれる。1億円だった人的資本を2億円、3億円へと大きくすることができれば、それにともなって収入も増えていくだろう。(中略)
(2) 人的資本を長く運用する
(3) 世帯内の人的資本の数を増やす
「安心して老後を過ごすには、年金に加えて5000万円の金融資産が必要」といわれて途方に暮れているひとがたくさんいるけど、この不安は長く働くことでかんたんに解決できる。老後問題というのは「老後が長すぎる」という問題なのだから、老後を短くすれば問題そのものがなくなってしまう。(中略)
「世帯内の人的資本の数を増やす」というのは、ようするに共働きのことだ。子育てが一段落した40歳から20年間、妻がパートか非正規の仕事で年200万円の収入があれば、60歳までの20年間で4000万円だ。夫といっしょに80歳まで40年間働けば8000万円になる。
■4.ウマい話はすべて無視する
「ビルから飛び降りろ」「オマエの家族を皆殺しにしてやる」の銀行から多額のお金を借りてシェアハウスに投資したひとたちがいま、自己破産の瀬戸際に立たされている。被害者の多くは30〜50代で、一流企業でそれなりの地位にある高収入のサラリーマンや医師が目立つという。でもこれは当たり前で、それなりの社会的な地位がなければ、銀行は大きなお金を貸してくれない。
このことは、「頭が悪いからだまされる」わけではないことを教えてくれる。だまされてヒドい目にあうのは、中途半端に頭のいいひとたちだ。自分に自信があると、「特別な自分には特別なチャンスが来て当たり前」と思ってしまうのだ。投資詐欺の世界では、こういうひとがいちばんのカモだとされている。
悪徳営業マンにだまされて全財産を失うようなことにならないためには、どうすればいいだろうか。その鉄則はとてもシンプルだ。
ウマい話は、君のところにはぜったいこない。ほんとうにウマい話なら、自分で投資するに決まっているから。
だから、ウマい話はすべて無視すればいいのだ。
■5.スペシャリストに定年はない
日本の会社ではスペシャリストとバックオフィスが混在しているが、自分がどちらなのか、リトマス試験紙のようにかんたんに見分ける方法がある。それは、定年後も同じ仕事をつづけられるかどうかだ。
スペシャリストは会社の看板を借りた自営業者みたいなものだから、会社を辞めても同じ専門のまま転職するか、フリーになって仕事をつづける。スペシャリストにとって定年は、長い仕事人生のなかのひとつのイベントに過ぎない。それに対してバックオフィスは会社に依存した働き方だから、定年で会社を離れた瞬間にキャリアがすべてリセットされてしまう。
欧米で定年が大きな問題にならないのは、多くのひとがスペシャリストとして働いているからだろう。それに対して日本では、「定年後」をどうするかで大騒ぎしている。これはサラリーマンの本質がバックオフィス、すなわちクリエイティブなものがなにもないマックジョブだからだ。会社にしがみついて生きてきた結果、定年が人生を変えるような大事件になってしまったのだ。──これがいま、日本の社会で起きていることだ。
【感想】
◆いつもながらの「橘さん節」が炸裂している作品でした。本書のテーマである「人生攻略」の重要な要素である「人間関係」や「お金」「仕事」等は、いずれも橘さんのお得意な分野ですから、それもある意味当然かと。
また近年橘さんは、遺伝関係のお話にまで言及した作品(『言ってはいけない』等)を出されており、「人生」や「幸福」について、多角的に分析されている印象があります。
たとえば第1章から抜き出した上記ポイントの1番目は、「1点差で不合格」になってしまった人生について、従来のイメージ(おおむね「不幸」になる?)を覆すもの。
確かに私の甥っ子も、中学受験で「合格余裕」と思われていた進学校を落ちてしまいましたが、別のルートから無事第一志望の大学に入りました。
ただし橘さんいわく、これは「若い頃の話」であって、人生の終盤になってから投資詐欺で退職金を巻き上げられてしまうような「不運」は、挽回しようがないとのこと。
結局、若い頃の可能性は無限大でも、年を取るとどんどん選択肢が減ってくるんですよね。
◆また、1つ飛んだ第3章は、章題が「『好きを仕事に』の法則」というだけあって、多くの自己啓発本やキャリア本で述べられているこの問題に取り組んでいます。
というわけで結論としては、上記ポイントの2番目の「『圧倒的な努力』ができるのは好きなことだけ」に落ち着くのではないでしょうか。
なお、引用部分にある「スピリチュアル」とは、「霊性」とか「精神世界」のお話にも出てきますが、本書における意味としては「こころのなかの意識できない部分のすべて」ということなのだそう。
つまり、無意識下で拒絶する仕事はダメで、そうではない仕事に巡り会うためには「トライ&エラー」しかないらしいです。
これに関しては、ジョブズの有名なスピーチでも触れられているのですが(「好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください」以降の部分)。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳 - 日本経済新聞
橘さんいわく、ジョブズが言ってるのは「どこかに君の『天職』があるはずだから、それを探し続けなさいということではない」のだとか。
たくさんの仕事のなかには、君に向いているものと、向いていないものがある。向いている仕事のなかで、君がどれを選ぶかはほとんど偶然に決まる。そして、その仕事を一生懸命やっているうちにどんどん「好き」になって、やがて「天職」と思えるようになるのだ。これは私も勘違いしていました。
◆さて、続く第4章は、橘さんお得意のお金がテーマ。
どの「銘柄の株を買うか」のような話の前に、そもそもの収入の増加方法に触れたのが、上記ポイントの3番目になります。
ちなみにここで言う「人的資本」とは、「働いてお金を稼ぐちから」のこと。
(1)(2)は分かるとして、「共働き」というのは、個人の話ではないものの、世帯単位でみたら確かに強力です。
そういえば我が家も、結婚当初からヨメは働いていますから、かれこれ20年近くは貯めていてくれているハズ(通帳見てないんで知りませんが)。
その分、私や子どもたちも、それなりに家事や家の雑務をやっていますが、これはまぁ当然でしょうね。
と言いますか、保育園に通っていた時点で、ママ友さんたちは全員働いていますし、私自身、専業主婦の知り合いが一人もいない、というのがホントのところです。
◆また、上記ポイントの4番目の同じ第3章からなのですが、本書内では明言していないものの、この初っ端で触れられている「銀行」とは、スルガ銀行のこと。
スルガ銀パワハラ地獄「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺し」 弁護士が「明確に違法」と断言 - 弁護士ドットコム
私もこういう仕事をしていると、名簿が出回っているからか、不動産のセールスの電話はよくかかってくるのですが、すべて「セールスのお電話はご遠慮願います」と言って断っています。
ただ、スルガ銀行ほどではないでしょうけど、彼らにもノルマはあるでしょうから、しつこい人はしつこいんですよね。
とはいえ、以前忙しいときにどこかの業者をむげに断ったら、その後半年くらい「ニセ出前(事務所に20人前分の料理等を注文する)」攻撃を食らいましたから、皆様ご注意ください(どこの店も不審に思って電話をしてきたので実害はありませんでしたが)。
いずれにせよ「ウマい話はすべて無視」が大正解だと思います。
◆そして最後のポイントの5番目は、再び「仕事」をテーマにした第5章からのもの。
定年後も同じ仕事を続けられるかどうかは、「手に職」を持ってないと難しいですが、「手に職」を持つこと自体、日本の雇用制度だとなかなかにハードルが高そうです。
実際、当ブログでも定年後の働き方をテーマにした作品を何冊かレビューしていますが、「同じ仕事」を続けるケースは少なかったかと。
人数的にも一番多いのが「定年再雇用」でしたし、今の50歳以上の方だと、働きながら副業で地盤を作ってから起業、というくらいしか選択肢がなかったと思います。
ただ、今の若い方なら、これからの働き方次第では、いくらでも「スペシャリスト」になれるハズ。
本書にはそのための施策のほか、自分がまだ若かった頃に読みたかった、と思わせられる話が多々ありましたので、ご参考まで。
時間を味方に人生を攻略すべし!

人生は攻略できる (ポプラ新書 245)
はじめに 人生は「攻略」できる
第1章 世界編1 人生はロールプレイングゲーム
第2章 世界編2 「自分らしさ」は友だちのなかでつくられる
第3章 世界編3 「好きを仕事に」の法則
第4章 攻略編1 お金
第5章 攻略編2 仕事
第6章 攻略編3 愛情と友情
おわりに 幸福に生きるためのヒント
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
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