2023年09月18日
【科学的自己啓発書】『人生修復大全』ニュー・サイエンティスト,ヘレン・トムスン
人生修復大全
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「サンマーク出版ほぼ全点半額セール」の中でも当ブログ向きの1冊。イギリスの科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』のライターであり、神経科学の学士号、サイエンスコミュニケーションの修士号をもつヘレン・トムスンによる、「賢く、幸せに、ストレスの少ない人生を送るためのガイドブック」が本書になります。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
この本は、あなたの人生を一変させるかもしれない。
科学的エビデンスに基づいた幸せへの道しるべ。
有名人の成功体験や幸福の秘訣。
幸せな人生を約束する斬新な哲学。
望むものが手に入ると謳う引き寄せの法則……。
この種の根拠のない自己啓発はすべて、もう必要ありません!
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success / Nolongermylife
【ポイント】
■1.不安定な状況は、確実に悪い状況より居心地が悪いはっきり言って、「わからない」という状態は居心地が悪い。私たちは好奇心旺盛だ。何が起こっているのか、何が起こりそうなのか、自分の行動が長期的にどんな影響を及ぼすのかを知りたいと思う。人間の脳は未来を予測するようにできている。私たちの世界に対する認識は、過去の記憶と五感の情報を組み合わせ、これから起こるであろうことを経験的に推測して成り立っているのだ。だから、不確実性は私たちを不安にする。(中略)
確実に悪いことが起こるとわかれば、対処法を考えることができる。しかし、どちらに転ぶかわからない状況では、いずれの結果に対しても心の準備が整わないままになる。新型コロナウイルスが私たちにもたらしたのは、この種の麻痺状態だ。これは、経済が低迷している時期の特徴でもある。不況時には、いつ解雇されるかわからない状態で待っているより、いっそ「首だ」と言われたほうがストレスにならない場合がある。
■2.有酸素運動より筋トレ
筋肉量を増やすと、基礎代謝(安静時に消費するエネルギー量)が大幅に増加するという話を聞いたことがあるかもしれない。これは半ば迷信である。ダンベル運動をしたからといって、突然睡眠時の消費カロリーが上がるわけではない。が、運動を終えたあとは、しばらくカロリーが消費されつづける。筋肉が大きいと、組織を維持するために多くのエネルギーが必要となるため、単純に筋肉量が多ければ、より多くのカロリーが消費される。(中略)
しかしながら、考慮すべき別の効果がある。ウェイトトレーニングをすると、組織に小さな傷ができ、それを修復するのに比較的多くのエネルギーが必要になる。このエネルギー需要の増加は、場合によっては運動後、3日間ほどつづく。たとえば、週に2回、20分の筋トレを行うとする。一度のトレーニングにつき200キロカロリーが消費され、その後3日間、筋肉を修復するのに100キロカロリーが消費される。その結果、1カ月後には、週に2回の筋トレで、自宅にいたまま、なんと5000キロカロリーを余分に消費できるのだ。
■3.意志力は有限ではない
しかし最近の研究によると、 私たちの意志力は倹約しながら使うような代物ではなく、使い方さえ知っていれば、一日中力を発揮できる再生可能な資源だという。その秘密は、実はとてもシンプルだ。意志力は、あなたがそう思ったときにだけ制限されるのだ。(中略)
この観点から、スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックとその同僚は、意志力の実験を行った。その際、前もって被験者に、意志力は努力で消耗するかぎられた資源だと思うかどうかを尋ねた。その結果、意志力は有限だと答えた人は、ふたつ目の困難な課題に直面すると例のごとく枯渇効果を示したが、意志力には無限の可能性があると信じている人は、失速の兆候を示さなかった。
実際、その後の研究で、「こういうことができる」と伝えるだけで、意志力が向上することがわかった。被験者に「精神的に困難なタスクに没頭するとエネルギーが湧いてくる」といった文言を見せると、20分間の難しい記憶力テストのあいだ、ずっと記憶力が向上しつづけたのだ。一方、意志力には限界があると言われた別のグループは、同様のテストを半分つづけたところで向上が見られなくなった。
■4.人はタンパク質の消費目標値をクリアしようと食べ過ぎる
さらに最近の研究では、人間には5つの栄養素への欲があり、それぞれが特定の成分を追い求めながら、バランスの取れた食生活を目指していることが示唆されている。タンパク質、炭水化物、脂質、ナトリウム、カルシウム、これら5つの栄養素が進化の過程で選ばれたのは、確実に絶対量が必要とされるからだろう。(中略)
この5つの栄養素への欲求のダンスから得られる驚くべき結論は、タンパク質が少なく、エネルギーが豊富な環境では、人々はタンパク質の消費目標値をクリアしようと、炭水化物や脂質を摂りすぎてしまう、ということだ。これはまさに、経済的に豊かな世界に住む私たちがさらされている環境そのものである。国連食糧農業機関によると、1961年から2000年のあいだに、アメリカ人の平均的な食事に占めるタンパク質の割合は14%から12.5%に低下し、脂質と炭水化物が差分を埋めている。この変化を考えると、人々がタンパク質の消費目標値を維持する唯一の方法は、総摂取カロリーを13%増やすことしかないが、これは肥満が蔓延するのに十分な値である。
■5.認知機能を高める薬「モダフィニル」
近年、知能向上に関する人々の関心は、まったく異なる領域に注がれている。2008年、神経科学者たちは、脳を活性化させる薬の需要が高まっていることを認め、『ネイチャー』誌に(脳の)「強化」という考え方は、もはやタブーではないという趣旨の論文を発表した。議論の中心は、睡眠障害の治療薬として処方される、モダフィニルという薬で、健康な人の場合、意思決定や学習、記憶といった知能の側面のほか、問題解決や創造的思考に必要な「流動的な知能」も向上させるという。
モダフィニルの治験は大成功を収め、売上は急増した。具体的な作用は定かではないが、脳内に分泌されたドーパミンをニューロンが再度取り込むのを阻害することに関係しているらしい。この薬の特徴は、ほかの覚醒剤に見られるような中毒性の高い高揚感や、つらい禁断症状をともなうことなく、脳を活性化させられるという点だ。また、特定の認知機能に関連した脳領域の血流を促進するとも言われている。
【感想】
◆先日のバイアス本もそうだったのですが、科学的自己啓発書も、当ブログでは定番のジャンルです。ただし本書は、原書自体が2021年発売、と比較的新しいもの。
This Book Could Fix Your Life: The Science of Self Help (English Edition)
そのせいか、過去ご紹介した類書では触れられていない、いくつかの新しいTIPSが本書では取り上げられています。
たとえば、第1章から引用した「不確実性」のお話は、類書では読んだ事がありませんでした。
ただ、上記のバイアス本でも「人は不確かなことを避けたがる」みたいな話がありましたから、広い意味ではこれと同じことなのかもしれませんね。
イェール大学集中講義 思考の穴――わかっていても間違える全人類のための思考法
参考記事:【行動経済学】『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』アン・ウーキョン(2023年09月15日)
◆続く上記ポイントの2番目は、かなり飛んだ第6章からのものなのですが、これまた当ブログではおなじみの筋トレのお話。
筋トレ本はセールでもそこそこ人気ですし、私も自分では実践しないながらも(ヲイw)、何冊かレビューしたことはありました。
とはいえ、今回指摘されていた「修復」によるカロリー消費についてまで言及していた作品があったか、ちょっと記憶になく。
要は筋肉痛になるくらいの筋トレをすればよいのだな、と、私も久しぶりに椅子を使った筋トレをしてみました。
……結局、1日2日やってもその後続かないのが、私の一番の問題なのですが。
◆一方、本書で一番衝撃的だったのが、第8章にあった意志力のお話です。
私の知る限り、意志力を扱ったすべての作品で「意志力は有限」だとうたわれていたのですが、本書はそれをバッサリ否定。
実際、引用部分にも「最近の研究によると」とありますから、やはり情報が新しい本書ゆえの記述なのでしょう。
本書では引用部分以外にも、この件についてかなりページを割いていますから、気になる方はご確認いただきたく。
なお、「流れが変わった」という意味では、いったんは書籍化され、TEDトークでも大人気となったものの、後に「否定」された、エイミー・カディの「パワーポーズ」についても、2018年に「一部別の形で復活した」らしいので、下記の本の愛読者の方も、あわせてご覧ください。
〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る (早川書房)
参考記事:【成功法則】『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』エイミー・カディ(2016年07月31日)
◆また、同じく初耳だったのが、同じ第8章からのタンパク質の件でした。
要は、タンパク質が十分な量になるまで食べてしまう、ということなのですが、私がお昼にサラダとサラダチキンだけでも何となくお腹いっぱいになってしまうのは、そういうことだったのでしょうかね?
ちなみに本書の「訳者あとがき」でも、翻訳者の片桐恵理子さんが、この件について「ものすごく腑に落ちた」と言われています。
たしかにお腹 がいっぱいなのにまだ食べてしまうときと、それほど食べていないのに満たされるときがある。これまではあまり気にしていなかったが、言われてみれば、食事全体のカロリーよりもタンパク質の量に合わせて食べているとしか思えない食べ方をすることがある。この情報を知って以来、食事全体のタンパク質量を(漠然とだが)必ず意識するようになった。逆に言うと、タンパク質がほとんどないような、炭水化物中心の食事だと、まさに「過食」にならざるを得ず。
実は私も、年を取ると従来以上にタンパク質が必要だと知り、コンビニでお昼を買う際に、チキン等を一品増やしていた時期がありました。
ただ、その後さらに太ったので、最近はやめていたのですが、やめるのはむしろ他の炭水化物だったのだな、と。
◆そして最後の薬のお話は第9章からのもの。
「勉強本オタク」を名乗りつつ、ここに出てきた「モダフィニル」なる薬のことは、まったく知りませんでした。
モダフィニル - Wikipedia
ただし、本来は睡眠障害の薬なので、処方箋がないと買うことはできないハズなのですが、どうもイギリスでは個人が海外から購入しているらしく、世論調査によると38%もの人が服用経験があるとのこと。
とはいえ、副作用(頭痛等)があったり、先天性奇形を引き起こす可能性があるため、妊娠中は服用厳禁ですから、その旨ご留意ください。
……まぁ何かしらの試験を控えている人だと、藁にもすがる思いで手を出しちゃう気持ちは、私も分かりますが。
エビデンスに基づいて書かれた、最新の自己啓発書がここに!
人生修復大全
第1章 心配しないためには
第2章 幸せになるためには
第3章 自信をもつためには
第4章 友人をつくるためには
第5章 愛を見つけるためには
第6章 健康に長生きするためには
第7章 いい睡眠をとるためには
第8章 習慣をつくり、悪習を断ち切るためには
第9章 知能を高めるためには
第10章 賢くなるためには
第11章 人生で成功するためには
第12章 完璧を求めすぎないようにするためには
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【成功法則】『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』エイミー・カディ(2016年07月31日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。コミュ力は「副詞」で決まる (光文社新書)
当ブログでも文法本で人気の石黒圭さんの副詞本は、中古が定価並みのお値段ですから、Kindle版が600円弱お得。
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【編集後記2】
◆一昨日の「幻冬舎電本フェス後夜祭」の記事で人気が高かったのはこの辺の作品でした(順不同)。2040年の日本 (幻冬舎新書)
面接・面談の達人 目には見えない力を鍛える125の問い (幻冬舎単行本)
妻のパンチライン (幻冬舎単行本)
田中角栄名言集 仕事と人生の極意 (幻冬舎新書)
よろしければご参考まで!
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