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2023年09月11日

【ニューロハッキング?】『「科学的」に頭をよくする方法』エリザベス・R・リッカー


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「科学的」に頭をよくする方法


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、個人的に読んでみたかった1冊。

タイトルどおり、合法的にアタマを良くする手段が豊富に収録されている作品でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
MITで脳と認知科学の学士号、ハーバード大学で精神・脳・教育科学の大学院学位をそれぞれ取得し、MITメディアラボとハーバード大学で神経科学と教育科学の研究を行った著者が教える「自分の脳をアップグレードする方法」とは!?

中古がまだあまり値下がりしていませんから、送料を踏まえるとKindle版が800円弱お買い得です!





Right Brain; Left Brain / mikecogh


【ポイント】

■1.メンタルヘルスを改善する
 大うつ病性障害(うつ病の正式名称:略称MDD)を発症すると(アメリカでは大人の14人に1人が発症する)、認知機能に甚大な影響が出かねない。MDD患者の脳を調べると、健康な統制群と比べ、情動制御を司る脳の部位である「前頭前皮質」と「大脳辺縁系」で構造的・機能的な変化が数多く発生していることがわかる。
 抑うつ状態にある人は、脳の処理スピードが低下し、作業記憶に問題が生じ、全般的なIQも低下する。
 ありがたいことに、これらの問題には解決策がある。複数の大規模な研究によると、効果的な治療を施せば、うつ病の病歴がある人も認知機能を回復させることができる。(中略)
 メンタルヘルスの問題を抱える人は、必要な助けを受けるまでに平均して11年かかっている。メンタルヘルスの問題があるということは、不快な症状や二次障害を経験するだけでなく、助けを受けるまでの11年間を認知機能が低下した状態ですごさなければならないということだ。


■2.運動を1回行うだけで頭がよくなるのか?
 2012年、ノースカロライナ大学のユーカイ・チャンの研究チームが、1回の運動が認知能力に与える急性の影響について調べるため、79の研究を集めてメタ分析を行った。(中略)
 分析の結果わかったのは、1回の運動でも、認知能力に小さくはあるが前向きな効果があるということだ。また、運動中や運動直後、運動からしばらく後でも、結果は同じだった。
 運動によってもっとも大きな影響を受ける認知能力の1つは注意力で、なかでも特に集中力への影響が大きかった。
 チャンらの分析によると、数ある認知能力のなかで、集中力を要するタスクのパフォーマンスがもっとも向上したという。実行機能と記憶は次のような基準で評価された。
「意思決定を含むテストの成績」「言語による自己表現力」「刺激を記憶する力」「間違った反応を抑制し、正しい反応を選択する力」だ。
 そして評価の結果、参加者の能力は15〜20パーセント向上していた。


■3.ブルーライトは実行機能に好影響を与える
 2013年、スウェーデンで行われたランダム化比較試験で、ブルーライトが実行機能のパフォーマンスを向上させることがわかった。
 21人の健康な参加者を集め、彼らに「ブルーライト」「白色光」「カフェイン」「偽カフェインのプラセボ」を順番に与え、日にちを変えてさまざまな認知テストを1日に1つずつ受けてもらった。
 その結果わかったのは、テストの成績がよくなるのはブルーライトとカフェインだということだ。ブルーライトもカフェインも「視覚反応テスト」に効果があったが、それよりも高い効果が認められたのは「実行機能のテスト」だ。
 興味深いことに、ブルーライトの効果がもっとも高かったのは、青い目の参加者だった。これはおそらく、青い瞳は茶色い瞳と比べて防御となる色素が少ないので、光により敏感に反応するからだと考えられる。


■4.1日10分でも効果のあるニューロフィードバック
 カナダのある研究チームが、グループのマインドフルネストレーニングを安く行う方法を探す目的で、32歳前後の若い男女を26人集め、「実験群」と「統制群」に無作為に分けた。
 実験群は、1日に10分間のニューロフィードバックを行った。具体的には、安価で手に入るデバイスを使った瞑想だ。統制群は1日に10分間、インターネットで数学の問題を解く。どちらのグループも、この10分間の介入を6週間にわたって毎日行った。
 開始直後は、実験群のほうが高いモチベーションを見せていたが、終了近くになると、どちらのグループも注意力を要するタスクで同等の正確さを発揮した。
 違いは、ニューロフィードバックのグループのほうがタスクの実施スピードが速かったことだ。さらにニューロフィードバックのグループは、「ウェルビーイングの向上」「身体の不快な症状の減少」「身体意識の向上」「心の穏やかさ」において統制群を上回った。


■5.記憶と学習を拡張するtDCS
 2015年、アメリカの研究チームが、30歳以下の健康な大人24人を対象に実験を行った。参加者を2つのグループに分け、1つは本物の「tDCS」の処置を受けながら顔と名前を覚え、もう1つは偽物の「tDCS」を装着して同じく顔と名前を覚えた。どちらのグループも、処置の直後と、処置の24時間後に記憶のテストを受けた。
 その結果、本物の「tDCS」の処置を受けたグループは、偽物のグループに比べてはるかに成績がよかった。いったいどれくらいよかったのか。本物の「tDCS」のグループが覚えていた顔と名前は、平均して偽物グループより50パーセント多かった。また本物のグループは、思い出す過程での間違いも少なかった。


【感想】

◆なかなかに「お腹いっぱい」の作品でした。

ただ、厳密に言うと、本書はかなりの数の実験(テスト)を収録しているのですが、時間の関係でそれは一切パスしております。

さらにはラス前の第19章では「15分間の自己実験を実行する」と題して、ここまで登場した13のTIPSを総ざらいして、対抗戦方式(?)にて比較する仕様。

推奨される回数をこなすと、30〜60日かかるらしくて、さすがにこちらもハナからあきらめました。

一方で、実験にはカウントされていないものの、上記ポイントの1番目にあるように、現状がなんらかしらのマイナスの状態であるならば、それに対処するだけでもパフォーマンスは改善する次第。

たとえば著者の場合、グルテン不耐症だったため、グルテンを極力減らすことによって、「頭も驚くほどクリア」になったそうです。


◆さて、具体的な実験の方を見ていくと、上記ポイントの2番目の「運動」は、脳にもいいことは、多くの書籍で言われているかと。

私は読んでいないものの、このような作品もありますしね。

B00JDLBEFW
脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方

また、タイトルからはまったく予想できませんでしたが、当ブログでレビュー済みのこちらは、撤頭徹尾、「運動」の事しか言ってませんでしたっけ。

B09J8KLR64
最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―(新潮新書)

参考記事:【脳力開発?】『最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』アンデシュ・ハンセン(2021年11月18日)

なお、運動自体は、散歩程度でも効果があるようですが、実際に推奨されているのは、いわゆる「HIIT」という「高強度インターバルトレーニング」なので、一応ご留意を。

……それを聞いて、私の場合、ますます運動は断念しそうですが。


◆また、睡眠本では忌み嫌われていたブルーライトが、パフォーマンスの点からは侮れない、というお話が上記ポイントの3番目。

ただこれも、考えてみたら自然と言いますか、ブルーライトで「覚醒」してしまうから、睡眠に良くないのであって、寝るのでなければ「覚醒」はむしろよいことでしょう。

ちなみに色も、白色光やアンバー(琥珀色)ライトよりも、ブルーライトの数値がよいようです。
 fMRIを使って観察したところ、ブルーライトを浴びた参加者は作業記憶と関連がある脳の部位(左右の背外側前頭前野など)の活動が増えるのがわかった。ブルーライトのグループはまた、もっとも難しい作業記憶のテストでも回答がもっとも速かった。
そう考えると、普段からブルーライトをカットするメガネなんて、必要なかったのではないか、と。

それ以前に、最近になってこの手のメガネは「効果がなかった」なんて言われ出してますけど……。

目を保護するはずのブルーライトカット眼鏡、実は効果なかった? | ギズモード・ジャパン


◆一方、効果がある、と言われたのが、上記ポイントの4番目の「ニューロフィードバック」

実は私も、税理士試験の受験生時代に、「α波が出る器具」なるものを使って勉強していたことがありました。

名前すら忘れていたのですが、ググっていたら、同じものを発見。

パラメモリー PARA MEMORY 脳波誘導装置 アルファ波 [m21797760823-58Ouv] - 13,799円(税込) : 店内全品本物!品質も保証!

ただし、20年以上前の話ですし、今なら同じ効果を出せるものが、もっと安価で出ていそうなものです。

もっとも、このポイントの4番目の実験で行われていたのは「デバイスを使った瞑想」ですから、私が行っていたものとは違うと考えた方がいいでしょうね。

いずれにせよ、詳細については本書にてご確認ください。


◆そして少々「取り扱い注意」なのが、上記ポイントの5番目に登場する「tDCS」。

今回、私も初めて名前を知ったのですが、要は頭に電極を着けて、弱い電流を流す、というものです。

……一歩間違ったら事故が起きそうですが。

これ、アマゾンでググると、器具が結構出てくるワケでして。

Amazon.co.jp : tdcs 経頭蓋直流電流刺激

ところが、どれも結構なお値段なので、たとえ効果があるにしても、さすがにオススメはできないところです。

とはいえ、本書のようなTIPS多めの作品は、どれか一つでもハマれば元は取れるというもの。


「頭をよくしたい」方なら要チェックな1冊です!

B0C2YGKZ5T
「科学的」に頭をよくする方法
PART1 ニューロハッキングの準備をする
第1章 科学的な自己啓発
第2章 ニューロハッカーとは何者か
第3章 科学的なエビデンス
第4章 自己実験の基本を学ぶ
第5章 モチベーションを保つ方法
第6章 自分をデバッグする

PART2 向上したい認知能力を決める
第7章 新しいIQ
第8章 新しいEQ
第9章 記憶と学習
第10章 創造性
第11章 メンタルターゲットを決める
第12章 自分の人生を採点する

PART3 自己実験の介入を選ぶ
第13章 意図的なプラセボ
第14章 運動と汗
第15章 ブルーの光あれ
第16章 ニューロフィードバック

PART4 自己実験の「究極の介入」を選ぶ
第17章 脳に電気を流す
第18章 SFから現実へ

PART5 頭をよくする実験の実行とフォローアップ
第19章 15分間の自己実験を実行する
第20章 自己実験のデータを分析する


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【脳力アップ!】『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー(2018年04月20日)

【脳力開発?】『最強脳 ―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』アンデシュ・ハンセン(2021年11月18日)

【HIIT?】『世界一効率がいい 最高の運動』川田浩志(2019年07月08日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B0C8154M33
マンガでわかる!うつの人が見ている世界

「うつを経験した当事者の方々から、95%の共感を頂いた」という1冊は、Kindle版が1200円弱お得。

B01IQL9YF6
野心のすすめ (講談社現代新書)

当ブログでもレビュー済みの自己啓発書は、中古が底値ですが送料を足すとKindle版に軍配が上がります!

参考記事:【スゴ本】『野心のすすめ』林真理子(2013年04月18日)


【編集後記2】

◆一昨日の「文藝春秋電子書籍フェア」の記事で人気が高かったのはこの辺の作品でした(順不同)。

B0C2PJR4FR
ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る (文春新書)

B0BTLH7XQ3
サル化する世界 (文春文庫)

B0BTNH3R33
0から学ぶ「日本史」講義 中世篇 (文春文庫)

B0BZRQX6GK
心はすべて数学である (文春学藝ライブラリー)

よろしければご参考まで!


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