2023年09月08日
【マーケティング】『夢と金』西野亮廣

夢と金 (幻冬舎単行本)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「幻冬舎電本フェス本祭」の中でも一番人気の作品。ご存じ西野亮廣さんが、マーケティングやビジネスモデルについて語った1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
逃げるな。
今、この国に足りていないのは『希望』だ。
希望をもつためには、夢を語り、「お金」を学ぶ必要がある。
子供は勿論、子供に背中を見せなければいけない大人もだ。
「金の話ばかりしやがって」と言うのなら、分かった。
だったら、僕よりも大きな夢を語り、行動している人間を連れてきてくれ。
それができないのなら、話を聞いて欲しい。
耳障りの良い話はしない。
夢を繋ぐ為の本当の話をする。80分あれば十分だ。
送料を足した中古よりは、Kindle版が400円以上お買い得となります!

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【ポイント】
■1.ラグジュアリーの計算式とはラグジュアリーの価値が飛び抜けて高くなっている理由は、ラグジュアリーが「夢」だからだ。……と言われても、まだピンとこない。
「夢」とは何か?
これは算数で説明がつく。
この計算式は覚えておいた方がいい。[夢]=[認知度]−[普及度]「皆が知っているけど、誰も持っていない」というものが「夢」だ。
ラグジュアリーが提供しているものの正体はコレ。(中略)
時々、地方の伝統工芸品を売り込む時に、「知る人ぞ知る」みたいな打ち出し方をしていたりするけど、ラグジュアリーを目指すのならば、あのやり方は間違いだ。
その工芸品のことを5人が知っていて、その数が5個だったら、「5−5」だから、その工芸品のラグジュアリー価値はゼロになる。
当然、価値が低いものは高く売れないので、その工芸品は「たくさん売らなきゃいけない(薄利多売)」というゲームに参加させられる。
■2.VIP席は最前列ではなく一番後ろ
さて。
この時、VIPは、何にお金を払ったのか?
その内訳は、「友人のショーの応援」と「久しぶりに再会した仲間との会話」といったところだろう。
ところがだ。
その『VIP席』は、客席の最前列に構えられていた。
「一番観やすい席で観てください」という配慮だろう。
これは間違いだ。
最前列だと、ショーの妨げになってしまうので、「仲間との会話」を楽しむことができない。
ここで整理しなくてはいけない。
他よりも高いお金を払って最前列で観たい人(S席のお客さん)は、「作品を買っている人」「アーティストの姿を間近で観たい人」であって、それは「富裕層」ではない。
それは「熱狂的なファン」だ。
支払っている料金の内訳が「友人のショーの応援」と「久しぶりに再会した仲間との会話」になっている人は、最前列の席にしてはいけない。
彼らを案内する場所は、むしろ、一番後ろ。
「お喋りをしても、ショーの妨げにならない場所」だ。
■3.「ハイスペック」と「オーバースペック」は違う
大切なのは、「見返りがある場所に、キミの資源を正しく投資すること」だ。
さっきの話で言うと、「60点」のラーメンを「80点」にする作業には資源を投資した方がいい。
ラーメンの値段が「200円」も上がるから。
言ってしまえば、これは「実りある努力」だ。
ただ、「97点」のラーメンを「98点」にする作業に、キミの限りある資源を投資するべきではない。
そのプラス1点に「1000万円」や「1年」を費やしたところで、お客さんは「97点」と「98点」の違いが分からない。(中略)
満足ラインを超えた技術(パフォーマンス)の名は「オーバースペック」と呼ぶ。
「オーバースペック」は自己満足であり、お客さんの満足度にはカウントされない。
もうとっくにお客さんの「満足ライン」を超えているのに、職人は(日本人は)自分の限りある資源を、「お客さんが判断できない技術(旨み)の向上」に投資してしまう。
■4.「応援シロ」を作らなければファンは生まれない
当たり前の話だけど、「応援シロ」がないと応援しようがない。
劇場で汗を流している芸人はテレビに出ることを目標とし、ファンはそこまでの道のりを応援する。
劇場からテレビまでの距離が「応援シロ」だ。
テレビに出ることが当たり前になってしまうと、芸人の目標は「レギュラー番組の本数を維持する」に変わってしまい、それは「現状維持」であるので、「応援シロ」がなくなってしまう。
認知度を上げても、ファンが減ってしまう理由はこれだ。
ファンを作る上で大切なのは「応援シロ」を作ることだ。
そして、「応援シロ」には明確な計算式がある。これだ。[応援シロ]=[目的地]−[現在地]「応援シロ」がないとファンは生まれない。
そのためには「[目的地]−[現在地]」の値を生む必要がある。
そしてキミがやらなきゃいけないことは、キミの「目的地」とキミの「現在地」を 晒し続けることだ。
■5.ライブのオリジナルグッズで赤字を出さない方法
難しい話じゃない。
各グッズの損益分岐点(「○○個以上売れたら黒字」というライン)を出して、グッズごとにクラウドファンディングをおこない、予約販売すればいい。
グッズの受け渡しは会場だ。つまり会場で受け取れる人がターゲット。
クラウドファンディングには、目標金額に達しなくてもプロジェクトを遂行する「All In型」と、目標金額に達しなければそれまで集まった支援金が全て自動返金となり、プロジェクト自体がキャンセルとなる「AII or Nothing 型」がある。
クラウドファンディングの目標金額を、グッズの損益分岐点にして、「All or Nothing 型」でプロジェクトを立ち上げれば、ライブのグッズ制作はノーリスクだ。
目標金額に達しなければ作らなければいいし、目標金額に達したら作ればいい。ただ、それだけのこと。
クラウドファンディングをテストマーケティングに使える知識さえあれば、ライブのグッズ制作は「挑戦」でも「博打」でもなくなる。
ちなみに、 これは10年前の知識だ。
ライブグッズ制作以外でも使える打ち手なんだから、いいかげん学校で教えてやれよ。
【感想】
◆久しぶりに「西野節」を満喫することができました。ちなみにこの方の場合、基本的にご自身のファンに向けて書いたり発言している印象があります。
実際、本書も出てからまだ5か月経ってませんが、すでにレビューが2800超というのは、やはりこうしたファンに支えられている部分はあるかな、と。
ただし、その内容は特にファンでもない私にとっても、得る部分は大きかったです。
特に、第1章と第2章は、普段学ぶ機会が少ないだけに、ハイライトを引きまくりました。
◆まず第1章のテーマは「富裕層」。
ここでいうラグジュアリーとは、簡単に言ってしまえばヴィトンやグッチ等の「ハイブランド」になります。
そして計算式の「[夢]=[認知度]−[普及度]」というのも、確かにブランドの認知度(知名度)の割には、普及度(持っている人)が少ないワケですから、うなずけるところ。
一方でハイブランドのお店が、ついで買いするものでないだけに、郊外でもデパートの高層階でも良いにもかかわらず、わざわざデパートの歩道に面している場所にあるのも、「[認知度]−[普及度]の値を大きくするため」という指摘も納得です。
また、富裕層の特徴として挙げられていた上記ポイントの2番目の「目からウロコ」。
私が担当でも、絶対見やすい最前列にしていたでしょうから、彼らのことをまるで分かっていませんでした。
◆続く第2章から抜き出したのが、上記ポイントの3番目。
これは「スペック至上主義」というか、昔から日本の製造業によくあるお話ですよね。
また、盲点だったのが、エンタメでも起こりうる、ということ。
たとえばプロのダンサーは、踊りが上手くなるにつれて、「お客さんの満足度」や「集客力」が上がるものですから、「もっと技術を、もっと技術を」と練習に励みます。
ところが、あるラインを越えたところで、お客さんの中で「ミリ単位の上手 or 下手」が判断できなくなる。確かにある一定レベルを超えてしまうと、素人には違いはほぼ分かりませんから、キツいようですが、努力が無駄に終わってしまいそうな……。
だけど、その頃にはダンサーはとっくに「ダンスが上手くなれば喜んでもらえる(集客に繫がる)」と洗脳されているので、引き続き「技術の向上」に自分の資源を注いでしまう。
◆さらに本書で初めて知ったのが、上記ポイントの4番目にある「応援シロ」という言葉(概念)でした。
何でもキングコングも、テレビに出始めた頃は、「ライブのチケットは数秒で完売」という状態(劇場に入れなかった出待ちファンが2000人いたのだとか)だったのに、自分達の番組がゴールデンタイムに上がった頃には、ライブチケットは売れ残り、300人の劇場も埋められなくなっていたのだそうです。
番組視聴率は毎週 20%をキープしていて、人口に置き換えると(その一番組だけでも)毎週約2500万人が自分達のことを観てくれていたのに、300席が埋まらない。そういうところから、武道館ライブをするまでに人気回復したとのことですが、その決め手となったのが、この「応援シロ」の考え方。
キングコングは、その認知度と裏腹に、集客力を落としていた。
ファンを失ってしまったんだ。
当時の西野さんたちの苦闘ぶりを知らないので、具体的にどういう手を打ったのかは知らないのですが、「ファン」を増やしたい、というそれこそ多くの方の参考になると思います。
◆なお、第3章は下記目次にもあるように「NFT」がテーマ。
西野さんが具体的にどういう活動をされていたり、どういう作品を扱っているか等々についても詳しいです。
とはいえ、私は完全に勉強不足ですし、下手にご紹介して、読まれた方が思わぬ方向(?)に進まれても困るので、とりあえずそちらは割愛。
代わりに上記ポイントの5番目のクラウドファンディングのお話をご紹介させてもらいました。
確かに会社がなまじ小さいのに、大量に在庫を抱えると爆死しかねませんから、可能であれば取り入れていただきたいな、と。
この辺はさすが百戦錬磨の西野さんだと思います。
西野流の「稼ぎ方」を学べる1冊!

夢と金 (幻冬舎単行本)
第1章 富裕層の生態系
第2章 コミュニティー
第3章 NFT
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【編集後記】
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