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2023年08月25日

【デザイン】『かたちには理由がある』秋田道夫


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かたちには理由がある (ハヤカワ新書 010)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の未読本・気になる本の記事の中でも、個人的に読んでみたかった1冊。

昨日懲りたばかりなのに、2日続いて「画像ありき」な本を読んでしまいましたが、こちらも面白かったです!

アマゾンの内容紹介から一部引用。
デザインは「素敵な妥協」。大量に使われる製品は「研ぎ澄まされたふつう」でなければならない――LED式薄型信号機、交通系ICカードチャージ機、トートバッグ、カトラリーなど、公共機器から生活用品に至るまでさまざまな「かたち」を手がけてきた人気プロダクトデザイナーがはじめて語る、「かたち」をめぐる思考。
人が直感的に「いいな」と思うデザインの背後には、いったいどんな「理由」が隠されているのか? デザインに込められた意味や価値、そして観察を通して読み解くコツを語る。

中古が定価の倍値以上となっていますから、「10%OFF」のKindle版がお得です!





Design Thinking Workshop / Bytemarks


【ポイント】

■1.ロジスティックスを考慮したデザイン


 わたしが手がけた他の製品でいうと、セラミック・ジャパンの土鍋「do-nabe」で「把手をなくした」というのも、その原点はパッケージのサイズを小さくして収納場所を小さくし、輸送のコストも抑えるというメリットを考慮したことです。
 こうした考え方の元になったのは、戦後のイタリアで活躍したブルーノ・ムナーリというデザイナーです。彼が1964年にデザインした照明器具に「フォークランド」(ダネーゼ社)という製品があります。複数枚の金属製のリングをストッキングの素材で覆う構造のランプシェードです。使う時は、金属リングの重みでストッキング生地が引っ張られて、縦に伸びて天井から床に付くぐらいに長いランプシェードになるのですが、光源を外して畳めば、いくつかの金属リングが重なっただけの、ピザの箱に収まるくらいのサイズになります。輸送費がかからず在庫管理も容易です。そして、本体そのものがさして高価なものでなくても、空間を支配する強い力があります。


■2.「重さ」のデザイン

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 すでにありそうな形状でありながら、そうでないものにするにはどうすればいいだろうか。そう考えた時に、持ちやすくて安心感のある持ち手はどうだろうと思いました。
 それでmAのカトラリーは、持つ部分がかなり厚手になっています。例えばカレーをスプーンに乗せると、普通は先のほうにぐっと重みがかかりますが、このスプーンだと持ち手が重いぶん、乗せたカレーが軽く感じるのです。(中略)
 このシリーズの本質は「重さのデザイン」を意識していることです。カトラリーのかたちというのは、長い時間をかけて磨かれてきたものだから、あとはディテールをどうするかとか、把手の曲線のような加工の丁寧さを見せるかくらいしかやりようがありません。でも、その他の部分で使い勝手を考えることはできます。それもデザインなのです。


■3.円筒の時代について

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 わたしのデザインが○△□というとても根源的でシンプルなかたちでできているのは、デザインの基本は「余計なことをしないこと」だと思っているからです。ただ、一本用ワインセラー、コクヨのボールペン、キヤノンのバブルジェット・プリンタ、ステンレス水筒の「TSU-TSU」など、円筒形を強く意識していた時期があります。
 円筒形を続けるようになったのは、六本木ヒルズに導入された、出入り口の支柱が半円になっているセキュリティゲートのデザインがきっかけです。それは、遅刻しそうになって急いでいる人がゲートを抜ける時に、膝や向こう脛を打っても痛くないようにという配慮だったのです。人の側だけではなく機械も痛くないようにすれば、機械の表面にも傷がつかず美しさが長く保たれるのではないかと思い、ロジカルと人の機微を加味してデザインしていきました。


■4.ありそうでなかった形「ルーペ45」
「ルーペ 45」は「ありそうでなかった」かたちをしています。これまでのルーペと大きく異なるのは、三本の脚でレンズを支えていることです。(中略)
 最初に描いたスケッチは四本脚でした。アーチ状にするのに、3Dソフト上で90度回転させて切り抜くのが簡単だったからという、理由にならない理由です。それをタケダの高地雅之さんにお見せしたら「四本より三本脚の方が安定すると思います」と言われて、なぜ最初から三本で描かなかったのだろうと恥ずかしく思いました。
 そうして三本脚ででき上がった試作は、ある意味「理想的」でした。三本脚だと多少の長さの違いも吸収してくれるので、置いた場所の凸凹に影響されにくい。そして脚が少ない分、より多くの外光を取り込めるようになっています。自立しますからルーペを持たなくてすみますし、さらにはアーチで抜いてあるので対象物を見ながらピンセットを使えます。本体を寝かした時には適度にレンズ部が斜めになって、なんと「針に糸を通すことができる」と分かりました。


■5.楕円を使わないわけ


 同じ話の延長線上で言えば、製品の中にどうしても曲面が必要な場合にも、わたしは楕円よりも正円を選びます。今の流れから行っても、あまり正円で処理するデザイナーは多くはありません。個性というものは「個性的」ではなく「それをする人が少ない」ということでも生まれるということでしょうか。
 時代性の強いデザインは、その時はとてもカッコよく見えるし、流行ったりもします。でも、流行れば流行るほど、飽きられてしまいます。(中略)
 その点、正円は誰が描いても正円ですし、どういう大きさになっても正円のままです。だから時代とも関係ないし、飽きられようがありません。同じように、正四角柱というか、切り口が正方形になる直方体は正円と同じで、個性や時代を含まないのですが、それ以外だとやっぱり時代を吸い込んでしまうのです。長さと幅と高さが全部違うかたちには、個性と時代が絡んできます。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、「画像ありき」の作品でした。

実際本書の場合、「はじめに」の前にナンバリングされたカラーの「口絵」写真が、全18点掲載されています。

おそらくここは、新書でもKindle版同様、カラーページとして設定されているでしょうし、カラー写真だからこそ著者の秋田さんの作品が、よりリアルに感じられる仕様。

そして今回、本記事でも上記のように画像を張ることができたのは、これらが楽天とアマゾンのアフィリエイト用の画像だからに他なりません。

これらを買っていただく必要は全然ないのですが、理解を深めていただくための画像が、アフィリエイトだと自由に使えるのはありがたいな、と。


◆さて、秋田さんの作品は、ただデザイン的に美しさを追求するというよりも、タイトルにあるように「かたちには理由がある」のが特徴です。

たとえば上記ポイントの1番目の「do-nabe」。

なるほど、取っ手がなければ、パッケージ自体も小さくできますし、家庭に入ってからも場所を取りません。

なお、いきなり引用部分の最初に「他の作品」とあって、元々何かがあるのか、と思われたかもしれませんが、実は前段で、秋田さんのある意味出世作とも言える「LED薄型歩行者灯器」についてページを割いています。

秋田道夫さんの「LED式薄型歩行者用灯器」 | Afterhours |

さらには、その後継機種である「LED薄型歩行者信号機」では、より小型軽量化することで、支える金具や支柱に負担をかけず、輸送コストや人件費を節約できる、という利点がありました。

この辺は本書に詳しいので、興味のある方はぜひご確認ください。


◆また、見た目だけではなく、「重さ」にもフォーカスしている製品が、上記ポイントの2番目の「mAのカトラリー」です。

そういえば、ボールペン(や万年筆)も、ひたすら軽い方が書きやすいのではなく、適度な重みがあった方がラクだった記憶が。

ちなみに秋田さんは、この「mAのカトラリー」がお気に入りのようで、自宅のカトラリーはすべて「mA」に換えたのだそうです。

一方、目に見える形でのデザインで言うと、秋田さんは上記ポイントの3番目にあるように、「○△□というとても根源的でシンプルなかたち」をよく使われるらしく。

確かにここで画像をあげたステンレス水筒の「TSU-TSU」も、非常にシンプルだと思います。

同じくここで名前が挙がった、こちらのボールペン「PRIMINE」も、見事な美しさですよね(販売終了していますが)。

ボールペンPRIMINE


◆さらに、上記ポイントの4番目にある「ルーペ45」も、デザイン性と機能を兼ね備えた逸品。

しかも、パッと見た程度では絶対に分からない工夫がなされているようです。
 もしどこかで「ルーペ 45」を実際に見る機会があったら、手に取ってアーチの断面を触ってみてください。すると、そこが単純に真っ直ぐ抜いたものではなくて、アーチに沿って次第に面が変化しているのが分かると思います。
 なぜそうなっているかというと、曲面に対して真っ直ぐに抜くとエッジが尖ってしまって、触ると痛いところができてしまうからです。これは手に取って使う道具ですから、痛いところはなるべくなくしたい。とても高度な技術が使われているのですが、簡単に言えば、抜くための機械と抜かれる側のパーツが、お互い有機的に連動しながら動いている、という感じなのです。
……言われただけではピンとこないので、いつか触ってみたく。

さらにはこのルーペ、外国で賞をもらっています。
そんな現場の苦心があって生まれたルーペ45は、国内外のデザイン賞をいくつも受賞することになりました。そして極めつけとして2020年、現在もっとも受賞が難しく、ノミネートされただけでも名誉とされているジャーマンデザインアワード「文房具部門」の最高賞であるゴールドを受賞することができました。
これは凄い!


◆なお、前述のように「○△□」を使うのに、 楕円を使わないワケに触れているのが、上記ポイントの5番目です。

なるほど「○△□」以外の、楕円や長方形、正三角形以外の三角形は、時代性を反映してしまうんですね。

ちなみに、秋田さんは、「直径と高さがどちらも80ミリになっている」湯呑み、その名も「80弌廚覆訃ι覆魍発されています。

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これ、実は二重構造になっていて、熱いお茶が入っていても熱くないという仕様。

ただし複雑な製造工程(詳細は本書を)を経る必要があるため、年に50個しか作れないそうです。

お値段も手ごろなので、ちょっと買ってみようか検討中……。


デザイン好きの方なら楽しめること必至の1冊!

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かたちには理由がある (ハヤカワ新書 010)
第1章 デザインとは「素敵な妥協」をすること

第2章 大量に使われる製品は「研ぎ澄まされたふつう」でなければならない

第3章 良い仕事をするには「腑に落ちた日常」が大切です


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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