2023年08月17日
【問題解決】『外資系コンサルが教える難題を解決する12ステップ プロジェクトリーダーの教科書』中鉢慎

外資系コンサルが教える難題を解決する12ステップ プロジェクトリーダーの教科書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 夏のセール」の中でも人気の1冊。「数々の大手企業から研修講師として招かれ、『トラブルリカバリーのプロ』として評価されている」という中鉢慎さんが、その秘訣を明かした作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
全てのリスクに対応するな!
誠意を見せるな、根拠を見せろ!
アクセンチュア、PwC、IBMにてトラブルリカバリーとして13年間活躍してきたプロの仕事術!
中古に送料を加えた金額よりは、このKindle版が500円以上お買い得となります!

gantt-chart / jean-louis zimmermann
【ポイント】
■1.成功するプロジェクトは終わりから逆算する・アマゾン社では、新サービスに着手するときに「逆算思考」を用いている。その代表的な取組みとして製品ありきのプロダクトアウトの発想ではなく、「顧客の視点」をスタート地点にするため、開発前に“プレスリリース”を作成している。アマゾン社では、プロジェクトメンバーが上記のプレスリリースを読んだときに、自分たちがワクワクしない、価値を感じられない場合は開発を見送ります。また、完成度が高く、納得感も高いリリースはプロジェクトを進める際の意思決定のガイドラインにもなりうると言われています。このアプローチは、最近ではアマゾン社のほか、マイクロソフト社など多くの企業で採用されているそうです。
・そのプレスリリース内容は、サービスの特徴とユーザーにとってどのような便益が得られるのかに焦点が当たっている。プロジェクトキックオフ時に全員でそれを読み、サービスの意義、価値、利用シーン、Q&A、ユーザーマニュアルまで想定する。(中略)
■2.「力のない反対派」の声にも耳を傾ける
パワーも低く、自身の業務への影響度も低いはずの反対派には、反対するだけの理由が必ず存在します。プロジェクトに関する情報不足、認識のズレ、感情的な要因から起きている場合もありますが、プロジェクトチームが彼らに対して何のフォローもしなければ、反対派の多くは自分たちよりも強いパワーを持った上位の中立派に対してアプローチし、全力でプロジェクト阻止を目論みます。
「このプロジェクトを進めたら、最終的にお客様に対して不利益を与えてしまう」「プロジェクトの推進は、自分たちの職場を失うことを意味する」など、反対派は積極的に中立派に進言します。気づけば、プロジェクトが本格的に始まる頃には、賛成派のプロジェクトオーナー以外は全員反対派になってしまったといった苦い思い出もあります。
私と同じ轍を踏まないためにも、ぜひプロジェクトにおける「力のない反対派」の声に耳を傾けてください。なぜなら、プロジェクトは「力のある推進派」のためだけのものではないのですから。
■3.イシュー(課題)の解決に意識と行動を集中する
「問題」の中には自分たちで解決すべきものと、できないものがあります。たとえば、売上不振に陥っている企業があるとしましょう。その場合、「売上不振」を「問題」とすると、「顧客環境の変化、為替変動、IT技術の進歩、競合企業の存在など」は確かに原因の1つにはなりえますが、自分たちの努力で解決できるものではありません。これらは「制約条件」または「前提条件」として、避けることができない、もしくは受け入れざるを得ない要因とも言えます。
このケースでは、チームが取り組むべき「課題」は「自社の商品力の魅力が減少していないか」「営業チームのスキルが低下していないか」「営業カバー範囲の戦略が間違っていないか」ということになります。よって、「問題」はそのままにするのではなく、要素分解をすることで、取り組むべき「課題」を特定し、その解決にリソースを集中させることが求められます。
■4.WBS(作業分解構成図)は「1W&1P」で
WBSを作成する際にぜひ注意いただきたいポイントは、「1W&1P」です。何やら呪文のように見えますが、「1つのタスクは最長1週間以内に分割する」「1つのタスクには原則、1人の担当者を割り当てる」ということです。
PMBOKを含め多くのプロジェクトマネジメント関連書籍では、タスクの分割は「最長2週間以内が望ましい」と推奨されていますが、私の感覚では、それではリスクが高いと感じます。たとえば、6か月間(約25週間)のプロジェクトで2週間のタスクが遅延すると、全体スケジュールへのインパクトは8%。この数字は、限られたリソース(人・金・時間)でリカバリーするには厳しいインパクトです。できれば、遅延のインパクトを5%以下に留めるために、1つのタスクは最長1週間(5営業日)を1つの区切りとしたほうがトラブル時のリカバリー可能性はグンと上がります。
■5.MECE神話を疑え
1:「モレなく」を優先する(少々、ダブリがあってもよい)問題解決において、もっとも避けなければいけないのは、「原因の見落とし」です。MECEのME、すなわち「モレ」があるということは、根本原因に繋がる要素を見落とす可能性を意味します。そのための具体的な対策としては、「原因の洗い出しは1人でやらない」ことです。(中略)
2:グループでまとめるときは「粒度」をそろえる
3:「その他」のグループはできるだけつくらない
2点目は、バラバラに分けた要因をまとめる際のポイントです。「粒度」とは「粗さ、または細かさの度合い」 を意味します。(中略)
最後のポイントは議論が分かれるところです。コンサルタントや講師によっては、「『その他』のグループをつくってもいいから、すべて洗い出すべし」と指導する方もいますが、私は反対です。
なぜなら、「その他」とラベリング(レッテルを貼る)された問題は、対応の優先順位が下がるからです。
【感想】
◆TIPSだけ抜き出すと、今ひとつ分かりにくかったかもしれませんが、個人的には納得の内容でした。私自身、会社員時代は、いくつかのプロジェクトに組み込まれて、その遂行に注力したこともあったワケでして。
ただ、当時はまだヒラだったこともあり、あくまで「歯車」として働いており、本書のように上からコントロールする立場ではありませんでした。
なるほど、当時のプロジェクトリーダーたちは、このように色々と考えた上で、プロジェクトを進めていたのだな、と。
とはいえ、上記ポイントの1番目の「逆算思考」で引用している「自分たちがワクワクしない、価値を感じられない場合は開発を見送ります」というのは、あくまで商品開発のお話であって、問題解決系や、新制度導入系のプロジェクトですと、ワクワクしようはないと思いますが。
この辺、以前レビューしたこちらの本で、詳しく掘り下げられていますのでご参考まで。

最速で課題を解決する 逆算思考
参考記事:【思考術】『最速で課題を解決する 逆算思考』中尾隆一郎(2020年02月05日)
◆また、プロジェクトを進めていく上で、注意しなくてはならないのが、上記ポイントの2番目にある「反対派」。
通常、プロジェクト推進側は「影響力のある賛成派」を、自分たちの味方と考えて、優先して巻込んでいく傾向がありますが、「影響力がない」と決めつけた反対派をないがしろにすると、足元をすくわれかねません。
実際、本書では著者の中鉢さんが関与したプロジェクトでも、キックオフ寸前で、業務範囲としてまったく関係のない人事部長から横やりが入ったことがあるそうです(詳細は本書を)。
こういうケースの場合、感情のもつれもありますから、対処が難しいところ。
そこで、以前ご紹介したこちらの作品も、一読しておくと良いかもしれません。

抵抗勢力との向き合い方
参考記事:【仕事術】『抵抗勢力との向き合い方』榊巻亮(2017年12月14日)
なお、こちらの本の著者は、「鈴川葵」シリーズでおなじみの榊巻 亮さんですから、クオリティも保証付きですね。
◆他にもプロジェクトの行く手には、さまざまな障害が立ちふさがりますが、そこで整理しておきたいのが、「リスク」と「問題」と「課題」の3つです。
・リスク… 潜在的な阻害要因このうち「リスク」と「問題」については、氷山の目に見える部分が「問題」で、水中にあるため見えない、もっと大きな部分が「リスク」という比喩には思わず納得。
・問題…… 顕在的な阻害要因
・課題…… 取り組むべき問題の原因
そして「問題」を要素分解をすることで、「課題」になる、と指摘しているのが、上記ポイントの3番目のお話です。
本書ではさらに、リスクを洗い出すための手順や、リスクの対応オプションも解説されていますから、ぜひ直接ご確認ください。
◆また、上記ポイントの4番目の「WBS」は、「作業分解構成図」と勝手に和訳してしまいましたが、本書では「Work Breakdown Structure」と表現されています。
そもそもどんなものかについては、本書で図解されているのですが、図入りで解説されているこちらのサイトでもご覧ください。
WBS(作業分解図 / ワークブレークダウンストラクチャー)とは - 意味をわかりやすく - IT用語辞典 e-Words
「2週間ではなく1週間」という中鉢さんのこだわりも、今現在私がプロジェクトとは無縁のため、今ひとつピンとこないのですが、実際にプロジェクトに携わっている方は、意識していただきたく。
その直後にあったクリティカルパスのお話も、非常に興味深かったのですが、こちらは説明だけでも長くなるので割愛しました。
クリティカルパスとは?具体例と一緒に解説!初心者でも分かりやすく解説します! | SFA JOURNAL
◆なお、中鉢さんご自身は、「外資系コンサル」でありながら、上記ポイントの5番目にあるように、MECEについてやや批判的なのが興味深かったです。
とはいえ、真っ向批判というよりも、プロジェクトに参加するのは、さまざまなバックグラウンドやスキルを持った人である(コンサルとは違う)、という前提から「ダブってもいいから漏れなく」という趣旨になっている模様。
また、2番目の「粒度」とは、いわゆるレイヤーのことで、たとえば他が「都道府県」なのに、1つだけ「市町村」ではいけないわけです(当たり前ですが)。
さらに3番目の「その他」は、分類するときに迷ったらとりあえず便利ではありますが、封印を推奨。
うまく分類できないからといって、「その他」に入れてしまっては、せっかく問題を分けた意味がなくなってしまいます。多忙なときほど、うまく分類できないと、エイヤッと「その他」の箱に入れてしまいたくなりますが、問題解決リーダーであるみなさんはぐっとこらえましょう。MECEはキレイに問題を切り分けることが目的なのではなく、解決に向けた実行に移さなければ意味がないのですから。少々耳イタイですが、ご注意アレ。
プロジェクトを遂行するために必読の1冊!

外資系コンサルが教える難題を解決する12ステップ プロジェクトリーダーの教科書
第1章 定義フェーズ
STEP 1 最終目標
STEP 2 対象範囲
STEP 3 利害関係者
STEP 4 阻害要因
第2章 デザインフェーズ
STEP 5 資源見積
STEP 6 体制構築
STEP 7 作業設計
STEP 8 規範設計
第3章 推進フェーズ
STEP 9 変更管理
STEP10 組織運営
STEP11 問題解決
STEP12 意思決定
【関連記事】
【思考術】『最速で課題を解決する 逆算思考』中尾隆一郎(2020年02月05日)【仕事術】『抵抗勢力との向き合い方』榊巻亮(2017年12月14日)
【思考術】『世界で一番やさしい考え方の教科書』榊巻 亮(2023年07月31日)
【ファシリテーション】『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』榊巻 亮(2021年06月28日)
【OODA】『プロジェクトを成功に導く OODAループ入門』鈴木道代(2020年09月27日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
EC担当者 プロになるための教科書
サイト立ち上げや、自社のEC担当の方なら要チェックな1冊は、Kindle版が1900円強お得。

宇宙ベンチャーの時代〜経営の視点で読む宇宙開発〜 (光文社新書)
起業家の夢とも言える宇宙ベンチャーの新書は、Kindle版が400円以上お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 夏のセール」のSBクリエイティブさんとNHK出版さんの記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑

無神経の達人 (SB新書)

HAPPY STRESS (ハッピーストレス) ストレスがあなたの脳を進化させる

さとりをひらいた犬 ほんとうの自分に出会う物語
よろしければご参考まで!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
12月1日まで
11月21日までのところ延長中
11月21日までのところ一部延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです