2023年06月06日
【超時間管理術?】『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン
限りある時間の使い方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「かんき出版 初夏の電書祭!」でも大人気の1冊。タイトルからして時間管理術のようですが、ある意味もっと根源的なお話でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書は古今の哲学、心理学、スピリチュアル思想を駆使し、ウィットに富んだ語り口で、時間と時間管理を実践的に、そして深く問い直す。
「すべてのことを終わらせる」という強迫観念を捨て、自分の有限性を受け入れたうえで、そこから有意義な人生を築く方法を紹介する。
本書を読めば時間に対する見方が変わり、さらには生き方が変わるだろう。
全米衝撃のベストセラー、ついに日本上陸!
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Time / reggiepen
【ポイント】
■1.制約を味方につける急げば急ぐほど、時間のかかる仕事(あるいは幼児の世話)にイライラする。計画を完璧にこなそうとすればするほど、小さな不確定要素への恐怖が高まる。時間を自分の自由に使おうとすればするほど、人生は孤独になっていく。
これは「制約のパラドックス」と呼ばれるものだ。
時間をコントロールしようと思うと、時間のなさにいっそうストレスを感じる。人間であることの制約から逃れようと思うと、人生はいっそう空虚で、不満だらけになる。このままではどこにもたどり着けない。
それならば、制約に逆らうかわりに、制約を味方につけたらどうだろう?
自分には、限界がある。その事実を直視して受け入れれば、人生はもっと生産的で、楽しいものになるはずだ。もちろん、不安が完全になくなるわけではない。限界を受け入れる能力にも限界はある。だとしても、これだけは自信を持っていえる。
現実を直視することは、ほかの何よりも効果的な時間管理術だ。
■2.良い先延ばしをする
限りある人生という現実を受け入れ、それに応じて先延ばしをするのは、良いタイムマネジメントの極意だ。逆に、人生の有限性から目をそらしていると、ダメな先延ばしに陥ってしまう。
良い先延ばしをする人は、すべてを片づけることはできないという事実を受け入れたうえで、何に集中して何を放置するかを賢明に判断する。ダメな先延ばしをする人は、自分の限界を受け入れることができず、そのせいで動けなくなる。自分が限りある人間だということを認められず、失望を避けるために先延ばしを利用しているのだ。
こういう有害な先延ばしは、時間内にできるタスクの量とはあまり関係がない。そうではなく、自分に才能がないのではないか、みんなに評価してもらえないのではないか、という質的な不安が根底にある。いつまでも結果を出さずにいれば、才能のなさに直面しなくてすむというわけだ。
■3.報酬にならないことに時間を費やす意義
カトリック法学者のキャスリーン・カヴェニーによると、高給取りの企業弁護士が往々にして不幸である理由は、ビラブルアワー(請求可能な時間)という慣習にある。企業弁護士の報酬は実際に仕事をした時間で決まるので、ビラブルアワー、つまり金になる時間を増やさなくてはならない。自分の時間を、言い換えれば自分自身を、1時間単位でできるだけ多く売るということだ。売れない1時間は、すなわち無駄な1時間となる。だから、弁護士が家族との夕食や子どもの発表会に現れない場合、それは文字通り「忙しすぎる」からとはかぎらない。金にならない活動に自分の時間を使う意味がわからなくなっているのかもしれない。
「ビラブルアワーの価値観に染まった弁護士は、商品としてしか時間の意味を理解できなくなり、それ以外の活動に参加することに価値を感じられなくなります」とカヴェニーは言う。報酬を請求できないことに時間を費やすのは、弁護士にとっては、お金をドブに捨てるようなものなのだ。いやひょっとしたら、そう感じるのは弁護士だけではないかもしれない。僕たちも実は、自分で思っている以上に、そういう価値観に染まっていないだろうか。
■4.なぜ現代人は本が読めないのか
ここ10年ほど、本を読もうとするたびに「没頭できない」「気が散って仕方ない」と強く感じる人が増えてきた。この感覚も、実は一種の焦燥感だ。読書という時間がかかる行為に対して、「もっと早く終わればいいのに」という不満をどこかで感じているのだ。(中略)
本を読む時間なんかない、と人は言う。けれど、小説家のティム・パークスも指摘するように、1日のうち30分の空き時間を見つけるのがそんなに難しいわけではない。実際には、時間はあっても、読書に気持ちを集中できないだけだ。
「単に邪魔が入るのではない。人は邪魔をみずから望んでいる」とパークスは言う。忙しすぎるとか、注意散漫だというのは言い訳にすぎない。本当はただ、読書には時間がかかるという事実を受け入れたくないのだ。
時間をコントロールしたいという僕たちの傲慢さを、読書は許してくれない。無理に急いで読もうとしても、意味がすり抜けていくだけだ。
何かをきちんと読むためには、それに必要なだけの時間がかかる。
それは読書だけでなく、嫌になるほど多くのことに当てはまる事実だ。
■5.小さな行動を確実に繰り返す
心理学者ロバート・ボイスは、学者たちの執筆習慣を長年研究してきた。その結果、もっとも生産的で成功している人たちは、1日のうち執筆に割く時間が「少ない」という意外な事実が明らかになった。
ほんの少しの量を、毎日続けていたのだ。
彼らは成果を焦らない。たとえ1日の成果が少なくても、毎日コツコツ取り組んでいけば、長期的には大きな成果が出せると知っているからだ。1日の執筆時間は短ければ10分程度、長くても4時間を超えることはなく、週末はかならず休んでいた。
ボイスはこのやり方を博士課程の学生たちに教えようとしたが、みんなパニックに陥って最後まで話を聞こうともしなかった。締め切りは次々と迫ってくるのに、そんな悠長なことを言っていられない。とにかく早く論文を仕上げなくては、と。
その反応こそ、ボイスの主張を証明するものだった。学生たちは早く仕上げようと焦るあまり、適切なペース配分ができていなかったのだ。創造的な仕事には時間がかかるものだが、学生たちは実際よりも早く仕上げたいという欲求に駆られていた。そして思い通りに進まない不快感から目を背けるために、ある日は書くのをサボり、ある日は焦って1日中ひたすら書きまくるという状態になっていた。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、よくある時間管理術とは一線を画す作品でした。つまり、一般的にある時間術本は、それこそライフハックやITスキル等を活用して、「いかに単一時間内の生産性を高めるか」に焦点を置いている事が多いのに対して、本書はほぼ真逆。
たとえば上記ポイントの1番目にあるように、「時間を自分の自由に使おうとする」よりも、「限界があることを受け入れよ」と提言しています。
実際、効率的に仕事をこなせばこなすほど、今度は別の仕事が降ってくるわけですから、何の問題解決にもなってはいません。
どんなに効率的にやっても、忙しさは終わらない。その事実を理解していれば、いつか平穏な日々がやってくるのではないかという非現実的な期待を持たなくてすむ。理想的な未来を待ちわびるかわりに、今の生活に平穏を見いだすことができる。たとえやることが大量にあってもだ。なるほど、確かに。
◆また、上記ポイントの2番目にある「良い先送り」と呼ばれるものも、解決策の1つです。
つまり、人生に限りがある以上、何かに集中し、何かを放置する必要があるのは当然のことでしょう。
そこで私たちは、こうしたトレードオフを受け入れる必要があります。
逆にここで言う「有害な先送り」とは、単に結論や結果を先延ばしにするパターンであり、「俺はまだ本気出してないだけ」とばかりに、現実逃避するようなもの。
あのフランツ・カフカも、結婚生活を望みつつも、執筆活動に集中したいという「制約回避」の行動を見せ、その結果、婚約者に「もっと現実を生きなさい」と言われたそうなのですが……。
◆一方、上記ポイントの3番目の「高給取りの企業弁護士」のお話は、身につまされる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
なまじ自分の「時給」を意識してしまうと、実際にお金が稼げないこと(とりわけ自分がやりたくないこと)に対して、徒労感を感じてしまうのも、分からなくもありません。
ただ、ここに挙げられている「家族との夕食や子どもの発表会」というのは、死期を直前に控えた人が「大事にしておけばよかった」と後悔するものでもあるんですよね。
また、「時給」のような考え方の対局にあるのが、第9章のテーマにもなっている「余暇」です。
日頃から、時間を有効活用しようとするタイプの人は、余暇まで生産的に使おうとする傾向があるとのこと。
これもまた、何らかの達成を目標としているのであり、達成できなければ不幸だし、達成できたら追い求める目標がなくなって不満になるという。
そこで本書では、生産性や業績とは無縁の「趣味」を持つことを推奨しています。
具体例として、あのロックシンガーであるロッド・スチュワートが、鉄道模型を趣味にしている話が出てくるのですが、ググってみたら想像以上にガチでした。
ロッド・スチュワート 26年を費やした巨大な鉄道模型がついに完成、写真公開 - amass
◆また、上記ポイントの4番目の「読書」のお話は、私自身も実は感じていたこと。
それなりに本が速く読めるハズの私でも、「何でこんなに時間がかかるんだろう」と思うくらいですから、電子書籍のデータを見る限りでは、絶好調なコミックに比べると、一般書籍が苦戦するのも仕方ないかもしれません。
もちろん、本以外に読むべき文章が、SNSを中心にいくらでもあり、そっちのプライオリティが高い、というのもあるとは思いますが、それにしてもいわゆる「長文」を読む習慣がどんどん薄れているのも確かかと。
つまり、いわゆる「忍耐」という行為に、昔に比べて私たちは耐性がなくなっていると言える気がします。
そこで本書の第11章では、「忍耐を身につける3つのルール」なるものが登場。
上記ポイントの5番目は、その中の1つになります。
締め切りのある無しに違いはありますが、ここで推奨される執筆方法は、まるでこの本で紹介されていた村上春樹さんのやり方ですね。
天才たちの日課
参考記事:【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー(2017年06月28日)
……って、よく上記記事を読んでみたら、「5、6時間ぶっとおし」とあったので、「ほんの少しの量」じゃなかったの巻。
有意義な人生を築くために読むべし!
限りある時間の使い方
イントロダクション 長い目で見れば、僕たちはみんな死んでいる
PART 1 現実を直視する
第1章 なぜ、いつも時間に追われるのか
第2章 効率化ツールが逆効果になる理由
第3章 「時間がある」という前提を疑う
第4章 可能性を狭めると、自由になれる
第5章 注意力を自分の手に取り戻す
第6章 本当の敵は自分の内側にいる
PART 2 幻想を手放す
第7章 時間と戦っても勝ち目はない
第8章 人生には「今」しか存在しない
第9章 失われた余暇を取り戻す
第10章 忙しさへの依存を手放す
第11章 留まることで見えてくるもの
第12章 時間をシェアすると豊かになれる
第13章 ちっぽけな自分を受け入れる
第14章 暗闇のなかで一歩を踏みだす
エピローグ 僕たちに希望は必要ない
付録 有限性を受け入れるための10のツール
【関連記事】
【生産性】『大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法』カル・ニューポート(2016年12月13日)【整理術】「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」デビッド・アレン (著)田口 元(監修)(2009年01月26日)
【シングルタスク】『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』デボラ・ザック(2017年09月05日)
【生産性向上】『自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方』ちきりん(2016年11月30日)
【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー(2017年06月28日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。会社、仕事、人間関係で 心が疲れない仕事術――会社では教えてくれないあなたの心を守る仕事のコツ7
仕事術というより、メンタル系のTIPSが学べそうなこちらの作品は、中古が定価を上回りますから、Kindle版が900円以上お得。
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中高年向けのこちらのミニマリスト本は、Kindle版が800円弱お買い得。
立ち読みしなさい!
結構昔の苫米地先生の作品ですが、中古があまり値崩れしていないため、Kindle版が500円弱お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本趣味・実用書キャンペーン」の記事で評判だったのは、この辺の作品でした(順不同)。TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる
参考記事:【知的生産?】『TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』ズンク・アーレンス(2021年10月25日)
中部銀次郎 ゴルフ 心のゲームを制する思考 (日経プレミアシリーズ)
ずるい仕事術大全
教養としての「地政学」入門
よろしければご参考まで!
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