2023年06月02日
【仕組み化】『とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法』安藤広大

とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも一番お求め頂いた1冊。チェックリスト本やマニュアル本が人気の当ブログ的には、ある意味当然かもしれません。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
人の上に立つために必要なことは、何事も「仕組み」で解決する姿勢である。
8年で3500社以上が導入した「いま、もっとも人を成長させるマネジメント法」の識学。そのエッセンスの中から「人の上に立つべき人」に必要な思考法を紹介。
失敗が起こったり、会社の目標が未達だったときに、現場の人に向かって「頑張れ」という精神論しか言えないようでは、優秀なビジネスパーソンにはなれない。
ルールによって問題解決をはかり、いかなるときも「とにかく仕組み化」という口グセを自分自身に浸透させよう。
中古価格が定価を上回る一方、当初よりKindle版が値下げされていて、「18%OFF」とお買い得になっています!

Drawing UML / joone4u
【ポイント】
■1.仕組みで問題を解決する「なるべく早くメールを返信してほしい」
という要望があるとします。
経営者をしていると、意思決定のためのスピードが求められます。
そのため、部下への確認でメールを送った際、できるだけ早い返信がほしいのです。
とはいえ、「なるべく早く」では、1人1人によって認識の違いが生まれます。(中略)
そのため、仕組みで解決して、もっと解像度を高く、ルールを設定すべきです。
「私からメールが届いたら、3時間以内に返信してください」
というように私は設定しました。なぜなら、3時間以内であれば、どんな状況でも1回はメールチェックができるからです。
長い会議に入ったり、研修講義を受けていたりしていても、3時間以上、休憩がないシーンは考えられません。
そこまで考えて、「3時間以内の返信」というルールを設定しました。
これが、仕組みで問題を解決する発想です。
他者からの明確な指示があって初めて仕組みは機能します。
■2.仕組みがあり、メリットがあるから、人は動く
これは、あるメーカー企業の営業の話です。
自分の部署の商品を扱うのは、当然のことです。
ただ、その営業先で他部署が扱う商品が売れそうなときがあります。
そのときに、次のような2つの考えが浮かぶはずです。「自分には何のメリットもないから、まあいいか」そういう葛藤です。
「会社全体の売上につながるから、対応したほうがいいかもな」
その人は、必ず後者の考えを採用し、他部署に紹介してつなげているそうです。
なぜなら、その後、商談が成立したら、最初に紹介した人にもポイントが与えられるからです。
そのように、他部署にトスをあげる人がいたなら、それをポイント化して評価に組み入れるのです。
そういう仕組みがあると、社員はどのように日々を過ごすでしょうか。
自分の扱う商品だけでなく、自社の商品すべてに精通しようとするかもしれません。
仕組みがあるから、人は動き、部署を超えてつながるのです。
■3.降格しても「育つこと」を信じる仕組み
青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「箱根駅伝のメンバーに選ばれなかった人に対して、何かサポートをしていますか?」という質問に、
「一切サポートはしない。なぜなら基準が明確だから」
と答えていました。
このスタンスと同じです。
基準が明確だから、人が育ちます。
「人が育たないから、外部から責任者や管理職を迎え入れる」
という会社も数多くあります。
その方法は、最終手段です。
たとえば、ITについて育成できる機能がない場合、外からエンジニアの責任者を入れるような場合ならOKです。
ただし、メイン業務であれば、育成する機能があるので、外から登用すべきではありません。
それをしてしまうと、
「ウチの会社は人が育つ仕組みがありません」
ということを認めることになります。
現場で働くメンバーも、将来のキャリアを見失うことにつながります。
人が育つことを信じましょう。そのための仕組みを整えるべきです。
■4.理念は「現場の判断」までつながっている
たとえば、私たちの会社では、現時点で3500社以上のクライアントがいます。
そうすると、そのクライアント数を目当てに、次のような依頼がきます。
「その3500社に、ウチの法人向けの新サービスを販売しませんか? 契約が成立すれば、売上の20%を御社に還元します」
このような依頼です。
これを受けると、たしかに一定の売上にはつながります。
しかし、企業理念と照らし合わせると、
「識学を1日でも早く世に広める」
という、本来の会社の目的に近づくわけではありません。
だから、「それはやりません」という判断が下せます。
どんな会社を目指すのか、どんな組織になりたいのかは、そうした判断につながってくるのです。
■5.人を責めずにルールを責める
基本的に、去るものを追うことはしないほうがいい。
ただし、優秀な社員が外から声をかけられて辞めるケースがあまりに多い場合は、手を打たないといけないでしょう。
彼らがなぜ辞めるのか。
会社によってケースやシチュエーションは異なるかもしれませんが、ほとんどは、
「属人化」による不平等やゆるみです。
ここまで語ってきたように、仕組みが整っていれば、それは生まれません。
きちんと組織が仕組みを運用していれば、辞める理由が「自分の中」にしか存在しないからです。
なので、優秀な人が多く辞めていく組織では、真っ先に、本書で語ったような仕組み化に取り組まなくてはいけない。
それが、人の上に立つ人の責任です。
【感想】
◆今まで当ブログでご紹介してきた「仕組み化本」や「マニュアル本」は、どちらかというといわゆるTIPSが中心で、具体的にどういう「作業」をするかを指南する作品が多かった記憶があります。一方本書は、もうちょっと上のレイヤーを描いたもの。
やみくもに「仕組み化」をうたうのではなく、その必要性や意義まで考え抜かれています。
また、その指示も明確で、世間にはびこる「精神論」や「抽象的な表現」とは異なるもの。
分かりやすいのが、序章から抜き出した上記ポイントの1番目の例で、「メールが届いたら、3時間以内に返信」ならば、迷う余地がありません。
よくある「なるべく早く」との違いは明らかですよね。
◆しかも、こうした「仕組み化」の効果は、問題解決だけに留まりません。
上記ポイントの2番目は、第1章から引用したのですが、このように仕組みに従うことで、メリットが生じるならば、人はそれに従う可能性が高いです。
さらに、引用の最後にあるように、「自分の扱う商品だけでなく、自社の商品すべてに精通しようとするかも」という指摘もごもっとも。
まさに、人は「インセンティブ」で動きますから、一石二鳥と言えるでしょう。
なお、第1章では他にも、責任者が不在になった後にも残っている「ルール」について言及されていました。
意図も分からず引き継ぐのはよくないものの、検討した上で今も必要だと考えるのなら、リーダーが
「今も必要なルールです。私がそう判断しました」と、堂々と伝えれば良いとのこと。
その辺「事なかれ主義」で、なんでもかんでも無思考で引き継ぎがちな職場はご留意ください。
◆また、1つ飛んだ第3章では、「降格人事」というデリケートなテーマも扱っていました。
いわゆる「左遷」「地方飛ばし」はたまに聞きますが、「降格」というのはウェットな日本社会には、少々なじみにくいもの。
それでも、成果をあげられなくても何も影響がないとしたら、結果的に「別に頑張らなくてもよい」というメッセージになりかねません。
さらに、上記ポイントの4番目にあるように、「降格した人」を特別にサポートもしない、というのも、人が育つ仕組みがあるから。
明確なルールのもとで降格しているので、そこに対して配慮をすると、逆に特別扱いしていることになります。お話としてはごもっともなんですが、厳しく感じる人もいらっしゃるかもしれないですね……。
◆そして第4章のテーマは「企業理念」。
たとえ自分の会社のい企業理念が言えなくとも、「何を実現させるのか」の共通認識を持っていないとだめなのだそうです。
ただし、いちプレーヤーが、すべての行動を「企業理念」をもとに意思決定する必要はなくて、それは経営者がやるべきこと。
ですから、上記ポイントの4番目にあるように、企業理念に照らし合わせて判断することを、人の上に立つ人は行わなくてはなりません。
逆に、現場の社員やスタッフは、そのときは分からなくとも、後になって「腹落ちする」ことになるわけです。
◆なお、上記ポイントの5番目は、第5章からのもの。
私は今まで、転職する人のその理由が「仕組み化」にあるとは、考えたこともなかったのですが、評価(や降格)の仕組みがなく、本当の意味での「平等」が担保されていない会社なら、それは優秀な人が辞めていってもしょうがないな、と感じました。
……もっとも私がいた会社では、「いかんせん給料が安い」という理由で辞めた人も多かったような!?
一方、私自身が会社員だった頃は、なまじ特殊な業務に一人で就いて、子会社と連携したり、ヒラ社員なのに他の部の課長や係長と同じ立場で会議に出てましたが、その分、引き継ぎが大変なことが自分でも分かっていました。
それがゆえ転職の際、役員面接で「引き継ぎ期間を3か月ください」と言って、ヒンシュクを買ったのですが(アフォ)。
いずれにせよ本書は、「仕組み化」「マニュアル化」に抵抗のある方ほど、読んでいただきたく思う次第です。
まさに「 『人』を責めずに『ルール』を責める」ために読むべし!

とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法
序章 なぜ「とにかく仕組み化」なのか
第1章 正しく線を引く ──「責任と権限」
第2章 本当の意味での怖い人 ──「危機感」
第3章 負けを認められること ──「比較と平等」
第4章 神の見えざる手 ──「企業理念」
第5章 より大きなことを成す ──「進行感」
終章 「仕組み化」のない別世界
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
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