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2023年05月15日

【英語脳?】『英語脳スイッチ! ――見方が変わる・わかる英文法26講』時吉秀弥


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英語脳スイッチ! ――見方が変わる・わかる英文法26講 (ちくま新書 1724)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、当ブログでは久々となる英語本。

ネットサーフィンしていて、たまたま気になって読んでみたのですが、なかなか勉強になりました!

アマゾンの内容紹介から。
英文法に現れる「世界の捉え方」「人間関係の捉え方」をスイッチすれば、英語の見方が変わる・わかる!「そうだったのか」が連続の、英語学習スタートの必携書。 本書で解説する「英語脳」とは、英語という言語(そして英文法)の中に現れる、「世界の捉え方」や「人間関係の捉え方」のこと。英文法を「ルール」ではなく「意味を表すもの」と考えると、「なぜこの言い方(文法)を使うのか」が腑に落ち、英語学習の核をつかむことができるのです。他動詞の英語らしい使い方、助動詞の「思っているだけ」という意味、過去形と「人間関係の距離」、数えられる名詞の見分け方……など「そうだったのか」が連続の、英語学習の必携書としてお贈りします。

中古が定価の倍以上のお値段ですから、「10%OFF」のKindle版がオススメです!






Young child holding an english grammar book. / shixart1985


【ポイント】

■1.日本語と英語の視点の違い
「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。」
 この文を読んだ日本語話者は、列車の客席から窓の外を眺め、そこに見える景色がトンネルの暗闇から真っ白な銀世界に変わる瞬間を思い浮かべるでしょう。これが先ほど述べた「自分がカメラになり、そこに映った世界を言葉にする日本語」の世界です。
 よく考えてみれば、「国境の長いトンネルを抜けた」の主語は「私」であり、また「列車」でもあるのですが、雪国を映すカメラである「私」は景色の中には映り込まないので、言語化されていません。そして、ここでは「私」と一体になって雪国の中に移動していく「列車」もやはり風景から消えてなくなり、言語化されていません。カメラには「私」や「列車」は映らず、言語化されるのは車窓から見える風景だけ。これが日本語話者の見る風景です。
 一方『雪国』の英訳版では以下のような文になっています。
The train came out of the long tunnel into the snow country.


■2.英語の世界での「1」とは?
 英語の世界の「1」「『形』がまるごとひとつ」そろっていることを意味します。つまり、「形の仲間」の話なのです。「机」と呼べる形がまるごとひとつそろっていること、「スマートフォン」と呼べる形がまるごとひとつそろって存在していることです。だから「形の仲間」は「数えられる名詞(可算名詞)」です。
 しかし、氷やチョコレートのように「いくら砕いてもその破片もやはり氷でありチョコレートである」という「材質・性質の仲間」には「これ以上崩したらそれと呼べなくなる形」がありません。「1つ」の素になる決まった「形」が存在しないので、材質・性質の仲間は「数えられない名詞(不可算名詞)」なのです。


■3.「Why」ではなく「What」を使って穏便に
 そもそもWhy do you think that?が喧嘩腰に聞こえるとすれば、それは「あなたがなぜそう考えるのか、あなたの 意思・意図を聞きたい」と聞こえるからです。「どういうつもりなのか」とその意思を責めているように聞こえるからです。(中略)
 一方でWhat makes you think that?ですが、どんな原因があなたにそれを「考えさせた」のか、を尋ねている表現です。ですから、「あなたは、原因のせいでそう考えただけであって、そこにあなたの意思は働いていない」、あるいは「原因のせいで仕方がなくそう考えた」とさえ解釈できます。このように、What makes you think that?相手の意思に立ち入らない質問のやり方なので、「安全」です。


■4.アメリカ人があまり「please」を使わないワケ
 ここでもう一度、「pleaseを使う意味」というのを振り返ってみましょう。前講で見た通り、pleaseが表すのは「お手数をかけて悪いのだけど(やってね)」という気持ちです。 Murphy教授の言う「リクエスト」が意味するのはpleaseの持つ「やってよね」という気持ちの部分です。
 Can I have the salad?なら「私がサラダを食べるのは可能かしら?」という「疑問」の体裁を保つことができても、一旦ここにpleaseを付けて、Can I have the salad, please?と言ってしまうと疑問の体裁はなくなってしまい、「頼むわね」「お願いね」というメッセージが露骨に出てしまいます。
 これによって「客は指示を出す上の立場、従業員はそれに従う下の立場」という関係を表明していることになる。それは「みんな平等」という米国社会の建前に反するので気持ち悪い。米国人は無意識のうちにこれがわかっていて、レストランでの注文やそれに類するシーンでpleaseを使わないのだろう、と考えられるわけです。


■5.形がないのに「可算名詞」になるもの
Kevin, we need to have a talk. 「Kevin、話があるんだ。」  
He made a decision. 「彼は決断した。」  
Let's take a walk. 「散歩しよう。」
 このような、動詞から派生した言葉が可算名詞として使われる場合がよくあります。これらの言葉が何を持って「数えられる」のかと言えば、動作の「開始〜終了」までの1区切りです。
 例えばa talkなら「話し合いの始まりから終わりまで」を1区切りとする「1回の話し合い」ですね。机やパソコンは目に見える「物体としての形」という境界線・区切りを持っているわけですが、英語を含む可算・不可算のシステムを持つ欧州諸語の言語脳は、動作の「開始〜終了」までの「時間的な区切り」も形の仲間として認識していることがわかります。
 この章の冒頭でのメタファーの解説で、人間が時間を場所に譬えて理解することで、抽象的な時間という概念を理解することを説明しましたが、同じことがここにも起きています。


【感想】

◆本書の序章には、こんな一節があります。
 英語の学習自体に興味がない人も、この本を読んでみてください。私が研究する認知言語学という学問では「言語の違いは(ある程度ですが)話者のものの捉え方に影響を与える」と考えています。外国語を勉強するということは、その言語を話す人たちの心の中を 覗くことであり、そして、 翻って私たち日本語話者がどのように世界を捉えているのかを客観的に知る機会も与えてくれます。
この点については、私も思い当たるフシがあるといいますか、学生時代に短期間とはいえ、語学留学をしていた際、「あー、これ、日本語で考えていたら、こういう結論にはならなかっただろうな」ということがたびたびありました。

ちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、「脳が乗っ取られた」とでも言いますか。

つまり、国内で同じ状況や質問に遭遇していたら、決してそうならなかったであろう選択を、不思議に感じていたのでした。

具体的にどういうケースだったかはまったく記憶にないのですが、本書を読んでいて、それもあったかも、と思ったのが1つ。

本書の第3章に、「日本の会話は『共感』で進み、英語の会話は「why」で進む」という講があるのですが、とにかく自分のあらゆる発言に対して、「Why?」に答えられないといけない……とまでは言いませんが、答えられる前提で物事が進んでいるとは感じました。

するとどうなるかというと、必然的に自分なりに「理由のある選択」をするようになるんですよね。

もちろん、「絶対的に自分の意志に反する方を選ぶ」とかはないですが、どっちを選んでもいい場合、自然と理由づけできる方を選んでしまっていた気がします。


◆これは直接英文法にはかかわりないものの、逆に「英語脳」が英文法に影響があるな、と感じたのが、第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の『雪国』の冒頭。

そもそも「私」であれ「列車」であれ、元の文には主語がないのですが、それもいかにも日本語らしいと言えるでしょう。

この違いを本書はこのように表現しています。
【日本語脳と英語脳の根幹的な違い】
日本語脳=自分がカメラになり、そこに映った世界を言葉にする。
英語脳=まるで幽体離脱するように、自分が外から自分を眺める。
この違いが如実に表れるのが、道案内によくある言い回しでしょう。
ここをまっすぐに行くと、右手にコンビニがあります。その角を左に曲がって2つ目の信号のところに交番があります……。
これは、主語を省略していているだけでなく、日本語特有の「話し手と聞き手が視点を共有する」という働きを生み出します。

ただ、これをそのまま英語にしようとしてもダメで、そこはしっかり「外から自分(You)を眺める」ように指示しなくてはなりませんからご注意を。

……まぁさすがに、道案内の英語の構文は、皆さんご存じですか。


◆また今回新たに知った(常識??)のが、第2章から引用している、上記ポイントの2番目の可算名詞のお話。

日本語では「1個」や「1枚」と数えているチョコレートが、不可算名詞だとは知りませんでした。

ここで重要なのが、「形の仲間」と「材質・性質の仲間」という概念です。

ですから、単語ごとに加算か不可算かを考えてもダメで、たとえば「chicken」は、生きて動いている「鶏」が1羽いたら、
I saw a chicken running around in the yard.  
「鶏が一羽、庭を走り回っているのを見かけた。」
となりますが、「鶏肉」なら、いくら刻んでも鶏肉なので、
I ate chicken yesterday.  
「昨日は鶏肉を食べた。」
となるという。


◆一方、第3章は「『状況』を利用する英語の意外な戦略」という章題どおり、単純な英訳とはひと味違う「英語脳」らしいアプローチがいくつも紹介されています。

たとえば上記ポイントの3番目の、「『Why』ではなく『What』を使う」というやり方もその1つ。

日本語でも「なぜ」と問うと、場合によっては問い詰めていると思われかねませんが、「何がそう考えさせたか?」と問うなら、直接は責めていませんね。

なんでもこれを「無生物主語構文」というそうなので、角が立ちそうな質問の際には、活用したいと思います。

同じく、角が立つ立たないで言うなら、上記ポイントの4番目の「please」は意外でした。

こちらは第4章からのものなのですが、確かに、「Can I〜」だけなら、婉曲な言い方でも、最後に「please」を付けたら「依頼」というのもごもっとも。

ただし、これはあくまで米国人の考え方で、英国人は「please」を付けて当たり前と考えているようです。

……こうなったら、いる国や話す相手で考えなくては。


◆そして上記ポイントの5番目は、最後の第5章から抜き出したもの。

上記ポイントの2番目と同じく、可算・不可算名詞について言及しているものの、章のテーマである「メタファー」との関連に触れられています。

つまり、動作の「開始〜終了」までの1区切りの「時間的な区切り」を、上記でも登場した「形の仲間」として認識している次第。

なお、この章では特に「前置詞」に関して、メタファーに絡めて解説されているのが「目からウロコ」でした。

ぶっちゃけ私自身は、英語を仕事で使うことはまずないのですが、ニュース等で英語接する際に、有益な情報が満載であり、読んでよかったと思えた本書。


「英語学習の必携書」の名に恥じない1冊です!

4480075534
英語脳スイッチ! ――見方が変わる・わかる英文法26講 (ちくま新書 1724)
序 章 「英語脳」とは?
第1章 日本語脳と英語脳の「ものの見方」はこんなに違う
第2章 英文法に現れる「英語脳」が見る風景
第3章 「状況」を利用する英語の意外な戦略
第4章 英語脳が考える「もうひとつの丁寧さ」
第5章 メタファーとメトニミーが作る「多義語」の世界


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【編集後記】

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