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2023年05月06日

【映画】『この1本! 〜超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ〜』ホイチョイ・プロダクションズ 馬場康夫


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この1本! 〜超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ〜


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「小学館ポイント還元キャンペーン」の中でも意外と人気がある映画評論本。

今日明日でおわりですが、GWの映画の選択に役立つこと必至な1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
映画は「早送り」より「厳選」して見よ!
サブスク時代、何から見たらいいのかわからない……。そんな現代にピッタリの映画ガイドが誕生!『気まぐれコンセプト』のホイチョイプロダクションズ・馬場康夫氏が超人気映画シリーズの「ベスト」を厳選!
『男はつらいよ』ならこの1本!以下、『007』、『スター・ウォーズ』、「マーベル・シネマティック・ユニバース」、『名探偵コナン』、『ゴジラ』、「黒澤明監督作品」、「ピクサー・アニメ」、「オードリー・ヘップバーン作品」、『ハリー・ポッター』、「裕次郎とルリ子のムード・アクション」、『ロッキー』、「スピルバーグ監督作品」、「東野圭吾原作映画」、「21世紀のミュージカル映画」、「クリント・イーストウッド監督作品」、「DCコミックス映画化作品」、「山崎貴監督作品」、「高倉健任侠映画」、「角川映画」、「フランス映画」、「ジャッキー・チェン映画」、「若大将シリーズ」などなど。

中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が600円弱お得です!







【ポイント】

■1.井上ひさしが指摘する『男はつらいよ』の特徴
「このシリーズは、貴種流離譚という、世界中の神話や説話に共通の、だからこそ安定していること盤石の如き物語型式に基づいて作られている。正確に言えば、貴種流離譚の裏返し。貴種流離譚を、わたしなりに簡単に定義すれば、〈貴い家柄に生まれた英雄が、運命の命じるところによって本郷を離れて流浪し、幾多の困難を女性の助けなどを借りて克服し、ついに本郷に凱旋する物語〉ということになるけれども、このシリーズは右の構造はそのままに、中味をあべこべにしている。つまり「男はつらいよ」は、〈ごくフツーの家に生まれた烏滸な男が、つまらないことで本郷を離れて流浪し、たいした苦難もないままにむやみに女性に惚れたりして一向に向上もせず、なすところなく本郷へ帰って、またそこで悶着を引き起こす物語〉として、作られているのである」
「男はつらいよ」は、古今東西の神話のパロディだから面白い、というのだ。ボグラーの本が出版される9年前の指摘である。


■2.『名探偵コナン』の作者・青山剛昌の凄さ
 青山剛昌は何が凄いって、普通、コナンぐらい混み入った物語になると、原作者やブレーンの作家チームが必ずいるものなのに、この人にはそれがいないこと。元担当編集者から聞いた話では、編集者が話のネタになりそうな材料を持っていくことはあっても、物語は基本、青山が一人で考えているそうだ。青山はそれだけでなく、TVアニメや映画版にも深く関わり、絵コンテや原画の隅々まで自分でチェック。おかげで、劇場版のエンド・クレジットには、「原画」として横3列で出る大勢のアニメーターの名前の中に必ず青山剛昌の名前がある。漫画家のアニメに対する関わり方としては、おそらく最も深い部類だろう。おかげで『コナン』は、雑誌・TVアニメ・映画のすべてに、一人のクリエイターの目が行き届き、世界観が実に上手くクロスしていて、そこが魅力の一番の源泉と言える。


■3.ピクサー・アニメの共通したモチーフとは?
 実は、これまでのピクサー・アニメには、どの作品にも「新旧世代の対立」という共通したモチーフがあった。『トイ・ストーリー』は、最新のプラスチック製玩具のバズと昔ながらの木製のカウボーイ人形のウッディの対立が大きなテーマだったし、『カーズ』では、若いレース・カーのマックイーンと伝説の王者ドックが、『リメンバー・ミー』では、若い歌い手のミゲルと過去の音楽家へクターの価値観が対立する。繰り返し語られる新旧世代の対立は、ラセターがディズニー・スタジオで経験した、古いセル画のアニメーターとCG制作者の対立そのものだ(それだけにラセターが去ったピクサーは、共通した軸を失い、迷走を始めたのかもしれない)。その意味で、最もピクサーらしい作品はブラッド・バードが監督した『レミーのおいしいレストラン』だと思う。


■4.野村芳太郎監督の黒澤明映画評
「黒澤さんにとって、橋本忍は会ってはいけない男だったんです。そんな男に会い、『羅生門』なんて映画を撮り、外国でそれが戦後初めての賞などを取ったりしたから…… 映画にとって無縁な、思想とか哲学、社会性まで作品に持ち込むことになり、どれもこれも妙に構え、重い、しんどいものになってしまったんです」
 野村監督は1974年、キネマ旬報のインタビューでこうも語っている。
「黒澤さんは、何か言ってやろうという気持ちの強いときと、見せてやろうという気持ちの強いときでは、作品の種類が変わってくるんじゃないでしょうか」
 世の中には、黒澤作品は難解で面白くないと思い込んでいる人がいるが、それは野村芳太郎の言う「何か言ってやろう」という作品しか見ていないからであって、「何か見せてやろう」という気持ちで作った作品の方は、理屈抜きに滅多やたら面白いのである。別表の一覧表にその区別を示したので、まずそれを参考にしていただきたい。


■5.『蛇拳』『酔拳』におけるジャッキー・チェンのアイデア
 この2本を監督したのは、中国戯劇学院の先輩のユエン・ウーピンで、ジャッキーにとっては兄貴のような存在だった。ジャッキーはユエン・ウーピンに、 撮入前にこう提案したという。
「ブルース・リーはそれまで誰もやらなかったことをやったから成功したんです。でも、今は誰も彼もブルースを真似ようとしている。だからこそ、成功したいなら、ボクらはブルースとは反対のことをすべきなんです。ブルースは宙高く蹴りました。ボクらは地上スレスレの蹴りというのをやってみるべきです。ブルースは誰かを殴ったとき、強靱さと怒りを表現するために絶叫しました。ボクらは誰かを殴った時、どのくらい手が痛いかを表現するために絶叫すべきです」(自伝『I Am Jackie Chan』より)


【感想】

◆ほとんど映画を観る習慣のない私でも、かなり楽しめましたから、元から映画館やブルーレイ、サブスクで映画を楽しまれる方にとっては、興味深いであろうこの本。

選ばれているシリーズや監督の特徴や見どころはもちろん、当時の背景や、舞台裏のエピソードも満載で、非常に勉強にもなりました。

それでも選んだ「1本」が、ホイチョイの馬場さんの独断だと思われると不本意なので、本書の「はじめに」で、その点に触れられた部分を引用しておきます。
本書では、「この1本」を選ぶ上で、プロデューサーや脚本家といった同業者、つまり料理で言えばシェフたちに意見を聞いた。次に、ジャッキー・チェン映画はジャッキー・チェン本人、ピクサー・アニメはピクサーの前社長というふうに、最も芯を食った人の意見も取り入れた。さらに、ゴジラ・シリーズはテレビ朝日の「1万人によるゴジラ総選挙」、東野圭吾作品は東野圭吾ナビサイトによる「読者1万人が選んだ東野圭吾作品人気ランキング」といった、大人数によるアンケート調査も参照した。
もちろん、それらをそのまま持ってくるだけでなく、馬場さんの意見も踏まえていますので、その辺はご安心を。

ちなみに、ここに「ジャッキー・チェン本人」とあって、わざわざ取材したのかと思いましたが、さすがにそうではなくて、上記ポイントの5番目にもあるように、自伝から該当部分を参考にしたようですね。

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I am Jackie Chan: My Life in Action


◆さて、順番に見ていくと、上記ポイントの1番目の「男はつらいよ」シリーズは、私は1本もまともに観た事がなかった(テレビで流れているのを見たことがあるくらい)のですが、ここにある指摘は目からウロコ。

最後にある「ボグラーの本」というのは、クリストファー・ボグラーのこの本のことです。

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神話の法則 夢を語る技術

もともとは、ジョーゼフ・キャンベルという神話学者が、世界各国の神話に共通のパターンがある、とこの本で主張していて(私も昔買いました)。

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神話の力

実際にハリウッドのヒット映画は、皆、このキャンベルの発見した神話の法則にのっとって作られている、とボグラーは指摘しているわけです。

……でもそのパロディでもヒット映画になっちゃったんですねw

そして「この1本」は、ネタバレ自重ということで。


◆続く『名探偵コナン』も、同じく「この1本」は割愛。

代わりに、作者の青山さんの凄さについて触れさせてもらいました。

巷では「米花町人が死に過ぎ」とか、「小五郎麻酔銃打たれ過ぎ」なんて話もありますが、こまけー話は(AA略

元々はライバル誌であるマガジンの『金田一少年の事件簿』が人気だったため、サンデーでも同じ探偵物を、という編集部の意向でスタートしたらしいのですが、今や映画も超人気!

本書では、出版時までの全23作の一覧表(どの章も同様)が掲載されており、こちらにタイトル、公開年、監督、脚本、日本興収、評価、ひとこと寸評が載せられていて、分かりやすかったです。

……なるほど、あれが「この1本」でしたか。


◆一方、ピクサー・アニメは、ちょうど子どもたちが小さい頃一緒に観ていたので、本書の中ではそれなりにカバーしているつもりでいました。

ところがどっこい、自分でも数えてみたら、5本とか6本で、最近のまで含めれば20本以上あるうちのほとんどが未見だったという。

ちなみに今回のエントリーの中で、唯一ネタバレして『レミーのおいしいレストラン』の名前を出していますが、実はこういう話がありまして。
 エドウィン・キャットマルは、著書『ピクサー流 創造するちから』の中で、ピクサー作品の中で最も気に入っているのは、『レミーのおいしいレストラン』の中でイーゴーがレミーの店の批評を書く場面だ、と述べ、ブラッド・バードが書いた台詞とイーゴーの声を演じたピーター・オトゥールを絶賛している。まったく同感で、このシーンは何度見ても心がゆさぶられる。
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ピクサー流 創造するちから

未見の方はぜひご検討ください。


◆また、黒澤明監督の映画は、私も何となく小難しいイメージがあったのですが、上記ポイントの4番目の野村芳太郎監督の指摘を読んで、ちょっと考えを改めました。

実際、この章の一覧表では、「何か言ってやろう」と「何か見せてやろう」の作品をそれぞれ色分けして区別しているので、「何か見せてやろう」系の作品をご覧になりたい方はご参考まで。

そして最後のポイントの5番目では、ジャッキー・チェンの映画のタイトルが小見出しになっていますが、実は「この1本」は他の作品でした。

実は上記で挙げた自伝では、ジャッキー自身が選んだ「スタント・トップ5」が掲載されており、その1位と2位のスタントシーンが含まれている映画……ということは、カンフー映画ではないことは分かりますか。

そういえば、ジャッキーのスタントは、今はやってない(契約でできない)という話をこちらで読んだことがあります。

町山智浩 『ミッション:インポッシブル フォールアウト』を語る | miyearnZZ Labo

一方、トム・クルーズは、自腹で自分の保険をかけてスタントをしているということで、この本の次回作があれば、トム・クルーズの章も設けてほしいところ。


押さえておかねばならない映画が分かる1冊!

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この1本! 〜超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ〜
1.『男はつらいよ』ならこの1本
2.『007シリーズ』ならこの1本
3.『スター・ウォーズ・シリーズ』ならこの1本
4.『マーベル・シネマティック・ユニバース』ならこの1本
5.『名探偵コナン』ならこの1本
6.『ピクサー・アニメ』ならこの1本
7.『ゴジラ・シリーズ』ならこの1本
8.『黒澤明監督作品』ならこの1本
9.『オードリー・ヘップバーン作品』ならこの1本
10.『ハリー・ポッター』ならこの1本
11.『裕次郎とルリ子のムード・アクション』ならこの1本
12.『ロッキー・シリーズ』ならこの1本
13.『スピルバーグ監督作品』ならこの1本
14.『東野圭吾原作映画』ならこの1本
15.『21世紀のミュージカル映画』ならこの1本
16.『クリント・イーストウッド監督作品』ならこの1本
17.『DCコミックス映画化作品』ならこの1本
18.『山崎貴監督作品』ならこの1本
19.『高倉健任侠映画』ならこの1本
20.『角川映画』ならこの1本
21.『フランス不倫映画』ならこの1本
22.『ジャッキー・チェン映画』ならこの1本
23.『若大将シリーズ』ならこの1本


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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