【思考術】『頭のいい人が話す前に考えていること』安達裕哉:マインドマップ的読書感想文

2023年04月28日

【思考術】『頭のいい人が話す前に考えていること』安達裕哉

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった思考術本。

冒頭に「この本を読むとだれでも"頭のいい人"になれる」とあるように、思考力が高まる1冊でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

どれだけ考えても、伝わらなければ意味がない。でも、話し方のスキルだけでは、人の心は動かせない。コンサルで叩き込まれたのは、人の心を動かす、思考の「質」の高め方でした。本書は「頭のいい人」が何をどう考えているかを明確にし、誰でも思考の質を高め、「頭のいい人」になれる方法を伝授します。

中古が定価よりも高値な一方、Kindle版はダイヤモンド社さんが版元であるにもかかわらず、当初より値下げされて「19％OFF」とさらにお買い得となっています！

Visual Thinking Techniques / cambodia4kidsorg

【ポイント】

■1.「怒っているとき」は、頭が悪くなる

　怒っているときに下す判断は、まず、間違っていると考えたほうがいいでしょう。
　上司から叱責されたとき。同僚から無能だとみなされたとき。大勢の前で恥をかかされたとき。そういったとき、良い判断のできる人はほとんどいません。
　実際、上司と喧嘩し勢いで会社を辞めて後悔した人を何人も見てきました。
　頭のいい人は〝キレること〟〝感情的になること〟でどれだけ大きな損失を被るか知っています。
　もちろん頭のいい人も感情的になることはあります。しかし、頭のいい人は感情的になったとき、すぐに反応するのではなく、感情をコントロールし、冷静になって考えるほうが、メリットがあることを知っていて、その術を身につけているのです。
　つまり、〝話す前にちゃんと考える〟ということは、感情に任せて反応するのではなく、冷静になることだ〟と言い換えられます。

■2.賢いふりでは人の心を動かせない

　あなたの周りには、このようなことを言う人はいませんか？
　新商品の具体的なアイデアを検討する場で
「ユーザーのニーズをとらえて、適切に施策を打つべきですよね」
　と、いかにも正しいけど、なんのアイデアにもなっていない発言。
　お客さんからクレームがあり相談したところ、
「お客さんにとって何が一番か、よく考えて」
　正論だけど中身のないアドバイス。
　他にも「何がいいかは目的によりますね」とだけ言う人。「議論が必要ですね」とだけ言う人。「検討を重ねましょう」と言って、何もしない人。
　このような発言は、間違っているわけではありません。
　しかし、実際には中身がない「賢いふり」は、その場しのぎにはよいですが、人の心を動かしません。このような発言を繰り返していると、聞く耳を持たれなくなってしまいます。

■3.事実と意見を分ける

　先ほどの上司と部下の会話の事例では、「お客さん、ウチに依頼するか、決めてくれた？」という質問に対して、正確に答えるならば、
その場では決めてくれませんでした。金額について〝交渉の余地はあるか〟と聞かれましたので。ただ、金額の折り合いさえつけば、残りの課題は解決しているので、受注可能です。
　と回答すべきです。
　しかし、そのような回答を考えるのは、彼女にとってはとても面倒臭い。だから彼女は、質問を「お客さん、ウチに依頼するか、決めてくれた？」を、「受注できると思う？」という質問に勝手に置き換えて、「大丈夫だと思います」という、自分の気持ちだけを答えたのです。
　これが「事実」と「意見」の切り分けができない人の正体です。

■4.アドバイスではなく、交通整理をせよ

　コンサルティング会社に就職して、数年経った私は、コンサルタントはアドバイスする職業ではなく、交通整理する職業だ〟と認識するようになりました。
　それは実際に、コンサルタントとしての仕事のほとんどを、経営者の悩みを聞き、問題点を洗い出し、整理することに費やしていたからです。
　整理とは〝いらないものを捨てて、必要なものだけ残す〟行為です。
　したがって、「相手の話を整理する」とは、相手の話から余分な情報を捨てて、判断に必要な情報だけを残してあげる行為、と言い換えられるでしょう。
　相手の話を整理しながら聞くことで、相手の考えていることを、話している本人もより深く理解することができ、行動に移すことができます。
　この整理しながら聞く技術は、コンサルだけでなく、あらゆる場面で役に立ちます。

■5.プライベートでも使える万能質問術「構造化面接」

　この手法は万能です。打ち合わせで相手の話を引き出したいとき、プライベートで会話を盛り上げたいとき、ぜひ使ってみてください。
何をしたんですか？（過去の行動）
そのとき、どんな状況だったんですか？（状況の深掘り）
その状況でどうしたんですか？（行動の深掘り）
その結果どうなったんですか？（成果・結果の深掘り）
今度仮に、こういう状況になったらどうしますか？（仮定の状況における行動）
　もちろん、「尋問」になっては困りますから、相手の様子を見ながら、質問は小出しにすべきです。また、基本的には相手が話している限りは、聞きに徹することです。
　しかし、会話が途切れそうになったときには、これらの質問を組み合わせて繰り返すだけで、相手の話を掘り下げることができます。

【感想】

◆本書は大きく2つに分かれていて、まず前半の第1部では、「意識するだけで『知性』と『信頼』をもたらしてくれる黄金法則」なるものを7つ。

後半の第2部では、「一気に頭のいい人になるための思考の深め方」を5つ紹介しています。

ちなみに、第1部の「黄金法則」は本書の冒頭でも、このように穴埋め形式で収録されているのですが、お分かりになるものがありますでしょうか（クリックしても拡大されずにアマゾンに飛びますので注意）？

著者の安達さんいわく、第1部は「マインド」の部ということで、知っているのと知らないのとでは、大きな違いになること必至。

たとえば上記ポイントの1番目の「怒り」の件は、今までの経験で実感されている方も多いと思います。

実際下記の本には

怒りや恐怖など強い感情にとらわれると、愚かな行動に走りやすい

と書かれているそうで。

不合理　誰もがまぬがれない思考の罠100

参考記事：【行動経済学?】『不合理　誰もがまぬがれない思考の罠100』スチュアート・サザーランド（2017年05月28日）

「カチン」と来たときに、そのことを意識するだけで、余計なことを言わずに済むと思います。

◆また上記ポイントの2番目も、「耳イタイ」人は多いのではないでしょうか？

でも、確かにそういう「耳障りのいいこと」を言ったり、「ボーっと聞いているともっともなこと」を言う人は、過去周りにもいました。

そしてそういう発言も、意識しないとその「意味のなさ」に気が付きません。

ちなみにそのような風潮（？）を皮肉ったかのような作品がこちらなのですがｗ

会議でスマートに見せる100の方法

参考記事：【ネタ?】『会議でスマートに見せる100の方法』サラ・クーパー（2016年12月20日）

逆にテーマや相手のことをきちんと考えることが、「賢いふり」ではなく「賢いふるまい」なわけです。

◆さて、第2部に移ると、こちらでは「深く考えるための5つの思考法（道具）」が登場。

目次にもあるように、「客観視」「整理」「傾聴」「質問」「言語化」がその5つになります。

上記ポイントの3番目は、第2章の「『整理』の思考法」からのもの。

ただ、本当に「事実」と「意見」を切り分けられない方は多いと思うのですが、ダニエル・カールマンいわく「人は、出された質問が難しいと、それを簡単な質問に置き換えてしまう」のだそうです。

ちなみに本書にあった「事実」と「意見」の切り分けテスト（GMA test:一般認知能力テスト）をご紹介しておきますので、お試しアレ。

「市場について、野心または欲といったものが株式市場を含むビジネスシステム全体の主要な原動力であることに変わりはありません」
この文章の著者が主張しているのは次の選択肢のうちどれか？
A　ほとんどの人が貪欲である。
B　一部の人々は、貪欲でないため、株式市場から遠ざかっている。
C　欲は人々にビジネスを実行する動機を与え、株式市場の運営はその1つである。
D　株式市場には、まったく欲のない人々もいる。
出典：『General Intelligence Test & Mental Ability Test』

答えは本書にてご確認ください。

◆また、上記ポイントの4番目は、第3章の「『傾聴』の思考法」から抜き出しました。

本書ではコンサルタントがビジネスシーンで「交通整理」をするエピソードもありましたが、引用の最後で「あらゆる場面で役に立ちます」と言われているように、本書内では安達さんのブログにも掲載されている、ご自身の奥様とのエピソードが登場しています。

私が教わった「相手の話をうまく整理する技術」とは。 | Books&Apps

ここで安達さんがされていることは、まさに「交通整理」そのもの。

しかも、相手は自分が考えた結論ということで納得もしますし、かつ、実践しやすいという利点もあります。

……私も本業ではコンサル的な部分もなきにしもあらずなので、今後機会があれば参考にしたいな、と。

◆そして上記ポイントの5番目は、第4章の「『質問』の思考法」から引用しました。

ここに登場する「構造化面接」とは、米国政府やGoogleが使う質問術ということで、効果は保証付き。

簡単な質問の骨子は引用部分でもいいのですが、具体的な質問や、その答えに対する深掘りの仕方等々については、長くなりますので割愛しました（すいません）。

ただ、そもそもはその名の通り「面接（採用面接）」のためのTIPSであり、面接官をなさる方は少ないと思いますので、本書では同時にプライベートの具体例（「婚活」）も収録されています。

これがまた、なかなか興味深いといいますか、パーティ等での通り一遍の会話よりも、深いことウケアイ。

いずれにせよ本書の内容を実践すれば「頭のいい人」とみなされるでしょうから、そちらの方も魅力的だと思いますが。

「頭のいいふり」ではなく、真に「頭のいい人」になるために読むべし！

頭のいい人が話す前に考えていること

第1部頭のいい人が話す前に考えていること ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則
その1 頭が悪くなる瞬間、頭がよくなる時間
その2 頭のよさを決めるのは「だれ」だ？
その3 なぜ、コンサルは入社1年目でもその道30年の社長にアドバイスできるのか？
その4 頭のいい人は、論破しない
その5 「話し方」だけうまくなるな
その6 知識が「知性」に変わるとき
その7 承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる

第2部一気に頭のいい人になれる思考の深め方 ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法
第1章まずは、バカな話し方をやめる ――「客観視」の思考法
第2章なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか？ ――「整理」の思考法
第3章ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう ――「傾聴」の思考法
第4章深く聞く技術と教わる技術 ――「質問」の思考法
第5章最後に言葉にしてインパクトを残す ――「言語化」の思考法

【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

自由になるための技術　リベラルアーツ

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参考記事：【リベラルアーツ?】『自由になるための技術　リベラルアーツ』山口周（2022年05月03日）