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2023年04月26日

【オススメ】『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』馬田隆明


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解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」における一番人気作。

既に多くの方にお求めいただいているのですが、中身が濃過ぎて、久しぶりにハイライトを引きまくりました。

アマゾンの内容紹介から。
「ふわっとしている」「既視感がある」「ピンとこない」
誰かにそう言われたら。言いたくなったら。
解像度が高い人は、どう情報を集め、なにを思考し、いかに行動しているのか。
スタートアップの現場発。2021年SpeakerDeckで最も見られたスライド、待望の書籍化!

相変わらず中古価格が高めなため、Kindle版が1000円以上お得な計算です!





Startup / Skley


【ポイント】

■1.視野を広げて解像度を上げる
 たとえば皆さんが醤油メーカーに勤めており、「もっと醤油を美味しくしなければならない」という課題があったとしましょう。大豆の質が悪いのかもしれませんし、発酵が不十分なのかもしれません。そうした醤油自体の質から、課題の原因を深掘りしていくことが通常でしょう。
 しかし、もっと広い視野で検討できないでしょうか。
 食事の傾向が変わったり、少人数世帯が増えて、そもそも醤油を使うシーンが減ってきたことに気づく人もいるでしょう。醤油の利用頻度が下がるにつれて、醤油が長く空気にさらされるようになり、従来よりも酸化して鮮度が低い状態で利用されることが増えた、ということもあるかもしれません。
 そうして考えていくうちに、「醤油の美味しさ」には醤油そのものの美味しさ以外に、酸化が関わっているのだと、より広く別の原因に目を向けることができたら、「酸化しづらい醤油ボトルにすればよいのでは」という新たな解決策に気づけるかもしれません。


■2.課題以上の価値は生まれない
 たとえば、「お昼ご飯を一緒に食べてくれる人を探したい」という課題を解決するビジネスを始めるとしましょう。解決策としては、お昼ご飯を食べたい人同士のマッチングサービスや、遠隔で一緒にご飯を食べながら会話する動画サービス、お昼ご飯友達代行サービスなどがありうるでしょう。自分自身が一緒に行ってあげる、というサービスも考えられるかもしれません。しかしいずれのサービスにしても、一般的な昼食代が1000円程度だと考えると、おそらく1回あたり300円程度の料金しか取れないのではないでしょうか。(中略)
 前章で「課題がどの程度解決されたかで価値や報酬が決まる」という話をしましたが、「お昼ご飯を一緒に食べてくれる人を探したい」という課題を選んでいる限り、どんなに解決策が技術的に最先端のものであっても、そこから生まれる価値はそれほど大きくなりません。解決策が課題を完璧以上に解決していたとしても、課題の大きさ以上の価値は生まれないのです。


■3.意見ではなく事実を聞く
 ビジネスは顧客から始まります。課題を深掘りして解像度を上げるとは、顧客の解像度を上げることでもあります。そして顧客にインタビューをする際、最も気を付けたいのは、顧客の意見ではなく、事実を聞くことです。(中略)
 探偵は容疑者に対して、「この時間に何をしていましたか?」という事実を尋ねて、その事実から犯人を推理します。もし探偵が「あなたは誰が犯人だと思いますか?」と聞いて回り、その意見を統合して多数決で「この人が犯人です」と推理したら、皆さんがっかりすることでしょう。犯人の意見に左右されてしまうかもしれませんし、探偵がいる意味もありません。
 これと同じで顧客の意見を聞いて、その意見の通りに何かを作ったり改善したりしても、たいていうまくいきません。まずは顧客の事実を把握して、その事実から自分自身で仮説を立てることで、はじめて私たちは価値を出せるのです。


■4.構造を把握するために切り口を工夫する
 思いがけない洞察を得るためには、フレームワークに頼らず、独自性の高い切り口を見つける努力をしましょう。簡単に書きましたが、これは相当に難しいことです。コツは、既存の事例の切り口を調べて、自分たちが取り組んでいるものに応用することです。そのためには、日々「これはどういった切り口で分けているのか」と意識して、様々な切り口の事例を知りましょう。
 たとえば、ビジネスパーソン向けのSNSであるLinkedInが設定していた最重要KPIは一時「ユーザーのプロフィールのPV数」だったそうです。LinkedInのコア機能として、誰かを探すことが想定されていたからです。通常のKPI設定であれば、サイト全体の総PV数までの分解で満足するところを、切り口を工夫して、PV数を自分たちのサービスにとって最も重要なものと、そこまで重要でないものに切り分けて、最重要なプロフィールのPV数を伸ばすことへ注力したからこそ、初期の成長を成し遂げることができたのです。


■5.解決する範囲を決める
「今回のシステムはここが強いけれど、ここには弱さがあり、これは意図的に目をつぶっている」と言えなければ、良いシステムであるとは言えません。
 私たちが設計するシステムは、ほとんどの場合、より大きなシステムの一部です。自分たちの解決策でどこからどこまでを担当するのか、全体のシステムのなかで境界をうまく区切り、あえて特定の領域には手を出さないという判断をしましょう。これは非常に難しいものですが、その分とても重要です。
 捨てることのメリットは他にもあります。あえて特定の価値や機能を捨てて、お金や人などの資源を使わないようにすることで、浮いた資源を別の価値を伸ばすことに費やせます。たとえば、ヘアカット専門店のQBハウスは洗髪をするというサービスを捨てることで、水回りの設備がいらなくなり、店舗開設時の工事費用を大幅に圧縮しました。さらに、水回りの設備がないことで、比較的狭い場所でも開店でき、駅前などにも出店できるようになりました。その結果、回転率が良くなり、低い単価でサービスを提供でき、その結果さらに人も集まる、という好循環を実現しました。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、本書はハイライトを引きまくりました。

さすが「2021年SpeakerDeckで最も見られたスライド」だけのことはあるな、と。

なるほど、確かにはてブをチェックしてみたら、400超もブックマークが付いていました。



……いきなりスライドの2ページ目に、今回の月替わりセールの事が触れられていてワロイましたがw

さて、それだけ評価が高い本だけあって、本書も実は、ツリー構造にて執筆されているのだそうです。

要は、各章のテーマごとにレイヤーが複数設けられており、章ごとにTIPSが5個とか10個、並列で並んでいるフラットな本とは違うということ。

一方で私が引くハイライトは、どの層かにはこだわっていませんので、上記ポイントもレイヤーがごっちゃになっているかと。

ただ、それよりも、現場で「スタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事」されているからこそ導き出されるエピソードや、世間で知られている具体例を中心に選んでみました。


◆たとえば第1章では、解像度を上げる視点として、「深さ・広さ・構造・時間」の4つが挙げられている(本書のサブタイトルにもありますね)のですが、そのうち「広さ」のパートから抜き出したもの。

確かに「醤油を美味しくする」という課題に対して、酸化防止容器を思いつくのは尋常ではありません。

今回、ググって下記の開発エピソードを読んだところ、この手の容器が登場する前、メーカーや専門家は「開栓後1カ月程度で使い切ってほしい」とアピールしてきたそうなのですが、そんなペースで醤油を消費する家があるワケないですって。

しょうゆ容器の開発競争 - FoodWatchJapan

なお、「広さ」から拾ってしまってアレですが、起業志望者は基本的には「深さ」が足りないことがほとんどなのだとか。
起業家を目指す方の中でもよく見られたのは、深さの不足でした。海外のスタートアップの表面的な真似はできているし、ビジネスモデル自体はありえるかもしれないものの、目の前の顧客の課題についてはほとんど掘り下げられておらず、解決策となる製品の内容もふわっとしている。そんなアイデアの提案はかなり頻繁にあります。
ゆえに、「深さ」に注力するだけで、頭一つ抜けられるのだそうです。


◆そこで「深さ」に特にフォーカスした、第4章をチェックしてみたところ、思わず納得してしまったのが、上記ポイントの2番目のお話。

何らかの課題を解決する以前に、その課題が小さいと、それに見合ったリターンしか得られません。

つまり、その課題に対してオーバースペックの解決策を提示しても、オーバーしている分に対してお金は払ってもらえないワケでして。
100点満点のテストに飽き足らず、1億点満点、1兆点満点のテストを選ぶこともできるのが経営者です。そして100点満点の中で100%の正答率で100点を目指す道を選ぶこともできれば、1兆点満点のテストの中で0.01%の正しい解答を返すことで1億点を狙う、という道を選ぶこともできます。
なるほど、その点イーロン・マスクは後者の課題を選んだ(そして現状勝っている)のだな、と。

ちなみに課題の大きさを考えるときは、「強度」と「頻度」の掛け算で考えるのだそうです。
課題の強度とは、課題が一度起こったときにどれぐらいの痛みを感じるか、解決できなければどの程度の金額を失うか、解決できたらどの程度大きな金額を得られるか といったことです。
課題の頻度とは、その課題がどのくらい頻繁に起こるかです。
これは、「良い課題の3つの条件」の1つ目であり、他の2つの条件も大事なので、ぜひ本書にてご確認を。


◆同じく第4章では、「深さ」の解像度を上げるために、「読む」「聞く」等の「内化」と、「書く」「話す」等の外化を繰り返すことを推奨しています。

自分の考える「課題」を具体的に書いたり(外化)、サーベイをしたり(内化)、というアクションのそれぞれについても、本書では詳しく解説しているのですが、その1つが、上記ポイントの3番目のインタビュー(内化)。

ここを読まずに私がインタビューをしたら、十中八九、相手の希望・要望も普通に聞いてましたよ。
 顧客インタビューでは、基本的には「過去を思い出させはするが、将来やアイデアは考えてもらわないようにする」 というスタンスで臨んでください。将来の推測は聞かず、現在や過去に行っていることを聞くことで、顧客の意見を極力なくすことができます。
さらに、抽象的な答えが返ってきたら、数値で返してもらうようにしたり、6W3H(Why/What/Who/When/Where/Whom/How/How much/How often)を確認するのも良いのだとか。

他にも「現場に没入する」(内化)、「習慣的に言語化する」(外化)等々、いくつも重要なアクションが紹介されていて、正直この章だけでブログ記事が1本書けるくらいでした。


◆続く第5章からは、上記ポイントの4番目をセレクト。

これは「『構造』の視点で、課題の解像度を上げる」というお話の、4つのステップ(「分ける」「比べる」「関係づける」「省く」)のうち、「分ける」に該当するものです。

この「分ける」は、ロジカルシンキングでおなじみの「MECE」がおなじみですね。

ただし、その「切り口」いかんによっては、どうにでもなるのが怖いところ。

このポイントの4番目のようなクリティカルヒットが見つかるのはまれだとは思いますが、見つけられたら、このLinkedInのように、初期とはいえ成長が得られるようです。

ちなみに、その次の「比べる」では、「分ける」よりもっとページを割いていますし、「関係づける」や「省く」も本来なら省略していいわけではないのですが、ボリュームの関係でカット。

さらに再度レイヤーを上げて、「『時間』の視点で、解像度を上げる」話もあるのですが、そもそもこの記事ではまだ「課題」の話に終始していて、「解決策」に至ってないんですよね。


◆というわけで、やっと第6章に到達して「解決策の解像度を上げる」テーマが登場。

こちらも「課題」と同じく、「深さ・広さ・構造・時間」の4つの観点から見ていきます。

そして上記ポイントの5番目は、「『構造』の視点で、解決策の解像度を上げる」という節からのもの。

QBハウスは、過去に読んだビジネスモデル本でも何度か登場してきましたが、このような観点から考えると、より納得感が高いです。

要は「何をして何をしないかという取捨選択」がしっかりできているということ。

このような「極端なサービスレベルへの振り切り方は、顧客が欲しいものを知っている、つまり課題の解像度が高いからこそ行えること」という指摘にはうなづくばかりです。

最後の方は駆け足になってしまいましたが、起業を志す方や、ビジネスモデルがお好きな方なら、本書は満足していただけること必至だと思われ。

また、上記スライドにブクマされた方も、改めて本書にて深掘りしていただけたら、と。


これはオススメせざるを得ません!

B0BH3ZBK7C
解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法
第1章 解像度を上げる4つの視点
第2章 あなたの今の解像度を診断しよう
第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける
第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」
第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第6章 解決策の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第7章 実験して検証する
第8章 未来の解像度を上げる


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【事前検死?】『先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術』山崎裕二(2018年12月09日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B071WR8G74
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

その後シリーズ化されることになる「未来の年表シリーズ」の第1作目は中古が底値ですが、送料を加味するとKindle版がお得。

参考記事:【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)

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地球の歩き方 E04 ペトラ遺跡とヨルダン レバノン 2019-2020

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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