2023年04月14日
【子育て】『絶対肯定の子育て』北方雅人,本荘そのこ

絶対肯定の子育て
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 社会・政治書キャンペーン」で意外な人気の子育て本。お子さんがいらっしゃる方なら、ぜひお目通しいただきたい1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「世界中の人があなたの敵になっても、母さんはいつも味方よ」「あなたは特別な子なのよ」「俺は、ニーチェを読んでいないやつとはしゃべれない」……。
あの成功者は、どんな育てられた方をしたのか。母親、父親はどのような言葉をかけたのか。
1000人以上の経営者を知る経済記者が、その取材経験から導き出した子育ての法則を解説する異色本です。
絶版で中古価格が高騰しているため、このKindle版が1700円以上お得な計算です!

Nature & Cake / DEWEGGIS
【ポイント】
■1.成功している経営者ほど親の愛が強い(サイゼリヤ 正垣泰彦)会社を創業することは面白く、魅力に富んでいるが、時には想像を絶する苦労も味わう。その苦難に負けず、いや、苦難を苦難とも思わず前のめりに進むには、並み外れた積極性、克己心、統率力を持ち合わせていないと難しい。
そうした資質は天与のものか、それとも後天的に身につけたものかは一概には言えない。ただ、多くの経営者の話を聞く限り、もともと持っていた資質に、親の言葉が加わって化学反応を起こし、才能を開花させている。
だから経営者の原点を探ろうと一段深い取材をすると、必ず話は親のことになる。正垣のように、起業後の節目で幾度となく親の影響を受けている場合は、取材中、こちらから掘り下げるまでもなく、自然に親の話になる。
「確かに、親の影響を色濃く受けている経営者もいるが、親の愛情と子の成功に、そこまでの因果関係はないのでは」と言う人もいるだろうが、これまで1000人以上の経営者を取材した経験からというと、その見方はやはり間違っていると思う。しかも成功している経営者であればあるほど、親の愛情が強いという傾向すら見られる。
■2.子どもに失敗させてみる(リブセンス 村上太一)
村上が、父親と2人で車に乗っていたときのこと。
「次の信号で曲がったほうが、近いと思うよ」と村上が言うと、父親は「そう思うかもしれないが、そっちに行くと一方通行があって、結局遠回りになるんだよ」と教えた。
けれど「そうかなあ」と釈然としない様子の村上を見た父親は、「よし、そっちに行ってみようか」と信号で曲がった。
結局、父親が言った通り、一方通行があって回り道になってしまった。けれど、父親は怒らないし、「ほら見ろ」と村上に文句を言うこともしない。
「答えは分かっている。けれど、わざわざ息子に失敗をさせる。うちの親はこういうふうに僕を育ててくれたんだ、と改めて感心しました。両親のおかげで僕は、あらゆることを自分の問題に帰結させるという思考回路になっています。
自分で選択をすると、他人に責任を転嫁しなくなる。僕自身もほとんど愚痴は言わないし、同様の育てられ方をした2人の姉からも愚痴を聞いたことがありません。(後略)」
■3.本人がやりたいことを全力で応援する(堀場製作所 堀場雅夫)
堀場はこう強調する。
「我が子が音楽家に向いているのか、絵描きの才能があるのか。それとも、経営者なのか。これはもう本人次第です。やはり人間には天から与えられた得意分野があって、それに乗っかるのがハッピーなんです。音楽の道をきわめたいと思っている子に、経営者をさせたら一生かわいそう。我が子を思う気持ちがあるなら、本人がやりたいことを全力で応援してあげる。子どもにも、おもしろおかしく生きてほしい。そう願うのが親心でしょう。
『本当は別にしたいことがあったのですが、親父に言われたから仕方なく社長業をしてきました。私の人生は全然楽しくなかった』。そんな悲しいことを言う人に、僕は何人も会ってきました。嫌々でも結果が出ていれば、まだいい。けれど、嫌々やっている社長のもとでは普通、会社は発展しない。業績が落ち込めば社内外から馬鹿にされる。倒産でもしようものなら、それこそ悲劇ですから」
■4.子どもの力を心から信じる(ソフトバンク 孫正義、ガンホー 孫泰蔵)
孫正義と孫泰蔵という2人の企業家は、同じ家からたまたま生まれたのではなく、必然だった。これでもかというほど子どもの力を強烈に信じた父親の愛情は、孫兄弟に強い自己肯定感をもたらし、それが成人後、世の中を変える力へと転換していく。「天才!」という暗示が、本当に天才経営者を生んだのだ。
そして孫家の父親は、重要なことに言及している。
それは「心から信じていた」という点だ。後年、自宅に絵を飾っていたことが話題になったとき、父親は泰蔵にこのように話したという。
「俺は今でも、泰蔵は絵描きになれたと思っとるよ。信じなきゃ貼らんもんね。泰蔵は世界一と俺は心から信じていたよ。信じていなければ、褒める教育は続かん」(『孫家の遺伝子』)。
■5.欲しい理由をプレゼンさせる(落合陽一)
最初は「こんな高価なものは駄目だ」と祖父は首を横に振ったらしいが、「必要だ」という理屈をきちんと並べたので、祖父は買ってくれた。
「なぜ、それが欲しいのか。きちんと言語化ができれば買ってもらえるんです。すでに持っているおもちゃの車よりも速く走るとか、単純なことでもいい。その理由を言葉にできるということは、欲しい理由が明確にある証拠。言語化ができないのであれば、その場の気分や友だちが持っているなど、理由にならない理由があるだけで、本当に欲しいわけではないといえる。そうしたことが、言語化というフィルターによって分かるんです。この落合家のルールは、論理的な思考を身につける上でとても役に立ちました」
【感想】
◆なかなか興味深い作品でした。今まで私が読んできた「子育て本」は、それなりの実績なり肩書がある著者が、自論を述べたり、研究結果に基づくものをまとめたりしているものがほとんど。
ないしは、経営者や著名人が、自分の子育てを披露するパターンも、それなりにはありました(エッセイの一部分等を含む)。
後者のパターンで私が覚えているものでは、村上世彰さんはこの本で、お子さんと「食事代当てゲーム」をするお話を披露していましたっけ。

生涯投資家 (文春文庫)
参考記事:【投資家必読!】『生涯投資家』村上世彰(2017年11月04日)
一方本書は、経営者や著名人が「自分がどのように育てられたか」を語った話をまとめたもの。
もちろん自伝等であれば、皆さん自分がどのように育てられたかは述べられているでしょうけど、それらを1冊にまとめて俯瞰できるのが本書の特長だと思います。
◆なお、下記目次にあるように、第2章と第4章は「私の育てられ方」と題して、経営者編と著名人編のそれぞれで、各人ごとの節が設けられ、節の最後にはまとめがある仕様。
一方それ以外の章は、もうちょっと各人のボリュームは少な目で、経営者や著名人の、子育てに関する様々なエピソードが紹介されています。
たとえば上記ポイントの1番目のサイゼリヤ・正垣さんのお話は、正垣さんが「いかにお母さんに励まされてきたか」のいくつものエピソードが描かれていて、その最後の部分を抜き出したもの。
私も大昔に、この正垣さんの本を読んで、最初は店に客が入らなかったことや、客のせいで店が火事で全焼したことは知っていましたが、いずれもお母さんに激励されて乗り切ったとは知りませんでした。

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
参考記事:【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(2011年07月24日)
……そもそもこのお母さん、戦災孤児を引き取って、正垣さんといっしょに家族同然に育てられてたというのは、本書で初めて知った次第。
◆続く第2章では、前述のように「経営者が『いかに育てられたか』」のお話を展開。
上記ポイントの2番目のリブセンスの村上さんも、その中のお1人です。
ここではお父さんのエピソードでしたが、お母さんも「あらゆる判断を任せてくれた」のだとか。
たとえば中学受験の際にも、「公立でも私立でもあなたが行きたいと思う学校を選びなさい」と言い、1校だけ受けて落ちた村上さんに
「試験に落ちたという事実は変わらないのだから、落ち込んでも仕方ないわ。あなたが今しなければならないのは、これからどうするか。自分自身でちゃんと考えなさい」と促したのだそうです。
村上さんいわく、「自分で選択をすると、他人に責任を転嫁しなくなる」とのことですから、私も今からでもムスコに判断を任せたいところ……。
◆また、同じく第2章から抜き出した堀場さんのお話は、ご自分の息子さんに対するものですが、これこそまさに堀場さん自身も、ご両親に同様の教育方針で育てられてきたからでしょう。
堀場さんは、息子さんに「うちの会社に入れ」とも「将来は後を継いでくれ」とも言ったことはないそうですが、好きなことを好きにさせていたら「結果的に社長になった」のだとか。
逆に引用の後半にある「仕方なく社長業をしてきた」という人は、人生大変だと思います。
一方第3章から抜き出したのが、上記ポイントの4番目の孫兄弟のお話。
ここに出てくる「絵」ですが、お父さんは泰蔵さんの描かれた水彩画を額に入れ、ダイニングテーブルの壁に数十枚も飾ったのだそうです。
……なるほど、ホメておだてたのではなくて、本気で才能を信じられてたんですね。
◆なお、最後のポイントの5番目の落合さんのお話は、第4章の著名人編から抜き出したもの。
これはお祖父さんとのお話なので、比較的ロジカルなのですが、お父さんである落合信彦さんのエピソードはもっとかっ飛んでます。
たとえば冒頭の内容紹介にもある「俺は、ニーチェを読んでいないやつとはしゃべれない」というのは、落合さんが中2の時にお父さんから言われたセリフとのこと。
ただ、それをきっかけに実際にニーチェを読んで、その哲学世界にひかれていったそうですから、落合さんも只者ではありません。
ほかにも、事あるごとに、「陽一、牙を研げ」と言われたらしいんですけど、落合さんが武闘派にならなくて良かった……(違
いずれによ、さまざまな経営者・著名人の育てられ方を読んで、ご自分の子育てに反映するもよし、その教えを自分自身で実践するもよし。
読みどころ満載の作品でした!

絶対肯定の子育て
第1章 愛情の法則
第2章 私の育てられ方[経営者編]
第3章 子育てと「暗示」
第4章 私の育てられ方[著名人編]
第5章 伸びる言葉、萎える言葉
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
思考力の地図 論理とひらめきを使いこなせる頭のつくり方
当ブログでも人気の細谷功さんが、去年の11月に出したばかりの作品が900円弱もお得なので、こちらは捕獲しました。

戦略的思考とは何か エール大学式「ゲーム理論」の発想法
ちょっと古めのゲーム理論本は、中古が値崩れしていますが、Kindle版が300円弱お買い得。

焼酎の科学 発酵、蒸留に秘められた日本人の知恵と技 (ブルーバックス)
焼酎好きなら要チェックのブルーバックスは、Kindle版が300円強、お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 社会・政治書キャンペーン」の扶桑社分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
100歳まで出会える人生

「時代」を見抜く力――渡部昇一的思考で現代を斬る (扶桑社BOOKS)

なぜ若者は理由もなく会社を辞められるのか? (扶桑社BOOKS新書)

僕が学んだゼロから始める世界の変え方 (扶桑社BOOKS)
よろしければご参考まで!
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