2023年03月22日
【仕事術】『コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術』井下田久幸

【電子限定特典付】コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも人気の仕事術本。既に多くの方にお求めいただいているのですが、3月も下旬に突入したため、やっとこさ手をつけた次第です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
伝説のエンジニアが文系に贈る「ビジネスの新常識」。理系ならではの「計算通りに結果が出る方法」を一挙公開します。
著者は日本IBMを皮切り、大手からベンチャーまで、規模も風土も異なるIT企業4社を渡り歩き、すべての会社で実績を上げました。その原動力となったのが、「理系の仕事術」。どんな状況でも結果が出る独自の法則を編み出し、実践したのです。
本書はその「理系の仕事術」を大きく分けて2部構成でお伝えします。
中古もあまり値下がりしていませんから、送料を考えるとKindle版が600円以上お買い得です!

Scientists / BrokenCities
【ポイント】
■1.技術者が性能を保証することで説得力が生まれた私が武器としたのは、ソフトウェアを作るスピードだけではありません。社内での承認プロセスでもベンチャーの強みが出ます。大きな会社、大きな製品となると、内部の承認を得るだけで1週間はかかります。一方、ベンチャーなら1日で、場合によっては1時間でゴーサインを得ることができます。
お客様の立場になって考えてみるとわかります。何か解決したいこと、何か実現したいことがあって、それを自分がゼロから作るのでは間に合わないために、既存の製品やツールを利用することを考えます。それこそがソフトウェアを導入するメリットです。
どのくらい利用価値があるかを調べるために、候補のメーカーの営業を呼びつけてソフトウェアの機能の紹介をしてもらうのですが、やりたいことにピッタリのものはないのが常。「帯に短し、襷に長し」になってしまうわけです。
そのとき、営業に付き添ってきた技術者が「その機能ならあります」とか「わかりました。すぐに実装します!」と言ってくれたら、簡単に心はなびいてしまうわけです。営業ではなく技術者が保証してくれることで説得力が生まれます。
■2.お客様の悩みを因数分解して解決する
私が売っていたソフトウェアは、お客様のデータのフォーマットを変換したり、データを移行したりするタイプのものでした。たとえば、データベースにある内容を抽出してエクセルのファイルに落としたり、メールの内容から必要事項を抽出してデータベースに保管する、といったものです。
こうした機能を有するソフトウェアは世の中にたくさんありました。つまり競合が多いツールです。
しかし幸か不幸か、お客様が持っているデータというのは、一筋縄ではいかないものが多いのです。たとえば一見、よくある顧客情報のCSVフォーマットと思いきや、同じコードなのに改行が含まれていたりとか、固定長フォーマットと思いきや、後半は可変長フォーマットだったり、とお客様が使い勝手を優先してオリジナルのフォーマットを採用しているケースが多かったのです。
私がやったことは単純で、その複雑なフォーマットを分析して、単純なフォーマットの組み合わせに定義し直したことです。
つまり「因数分解」をしたのです。
■3.プレゼンでアイコンタクトができるようになる事前準備
まず、遅くとも開演20分以上前には会場に入りましょう。私の場合は1時間以上前に会場に入るようにして、場の空気に慣れるようにしています。これだけでもかなり緊張感が和らぐからです。
会場に入ったら、できるだけ前のほうに行き、端の席に座ります。この席からは、少し横を向けばお客様全員を見渡すことができます。しかも後ろ姿ではなくて顔が見えるのがメリットです。
そして、まだ部屋が暗くならないうちに、来場者一人ひとりとアイコンタクトしていくのです。もし間に休憩時間があるようなら、そのときが一番のチャンス。アイコンタクトをしながら、相手を飲み込んでいきます。
聞き手は目が合うことで「顔なじみ」感が生まれ、リラックスしてくれることでしょう。プレゼンする側も、一度目を合わせた相手なので喋りやすくなっています。ぜひ試してみてください。自分のペースで話せる楽しさを味わえるに違いありません。
■4.プレゼン資料と配布資料では内容を変える
お客様に向けて作る資料には、プレゼン用の資料と配付用の資料があります。これらは明確に使い分けるべきです。
ひと昔前までは区別がありませんでした。配付資料を作って、文字通り配付して、説明して終わりでした。しかし最近では、プレゼンの場が設けられ、競合同士が競わされるのが当たり前になってきました。限られた時間内でプロジェクターに投影して資料をめくりながら説得することができるのです。
一方で、配付資料はむしろ補足的な位置付けになってきました。
営業効率だけを意識してしまうと、プレゼン資料を用意することに集中し、配付資料はその印刷物で済ませてしまう人が多くなります。これでは成約を得ることができません。
本書のテーマにもなりますが、徹底的に合理的にする部分と、徹底的に非合理にする部分とのメリハリが勝負の明暗を分けます。「徹底的に合理化を進めて、ホスピタリティを示せる部分で徹底的に非合理に尽くす」のが、負けない仕事術になります。
■5.影響力のあるキーパーソンへの相談の仕方
「今度の会議で、この提案をしたいと思っています。これが実現できれば、当社の全員がWin-Winになるので、ぜひとも通したいのです。誤解されて却下される事態は避けたいと思っています。そこでご助言いただきたいのですが、◎◎さんだったら、この提案をどのような流れにして持っていきますか?」
この相談の仕方のポイントは、「賛同していただけますか」という意思確認を飛ばしていること。賛同してもらうのは暗黙の了解という位置づけであえて触れず、「みんなに賛同してもらうには、どうしたらよろしいでしょうか」と具体的なアドバイスを求めているところです。
つまり、賛同してもらうかどうかの「Yes」はすでにもらった前提で、ベクトルを自分と同じ方向に向けてもらい、味方としての対応を検討してもらうよう、誘導しているのです。
逆に言えば、このハードルさえ乗り越えられればしめたものです。私の経験では、ここで「No」といってくるキーパーソンはほとんどいませんでした。
【感想】
◆タイトルの『コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術』というフレーズを見て、皆さんはどのようなコンテンツを思い浮かべたでしょうか?前半に「コンペ300戦無敗」とあるのに、コンペ絡みの話がまったくなかったら困りますし、かといって一番最後には「仕事術」とある以上、特にコンペ関係なくとも、仕事に関係があるTIPSなら、別におかしくないわけでして。
結果、アマゾンの詳細な内容紹介にもあるように、本書は前半の4章はプレゼン絡みのお話が、後半3章はそれ以外のお話がまとめられています。
ただ、前半のプレゼン術や資料作成術は、基本的に著者の井下田さんオリジナルのコンテンツとも言える一方、後半の「話し方・聞き方」や「時間術」は類書との被りネタもちらほら……。
そこで上記ポイントも、前半部分に偏重してしまいました。
もっとも本来なら別の1冊の本でもおかしくないコンテンツを、コンパクトにまとめた関係上、大ネタがどんどん繰り出されており、逆に類書で見たことがない方なら、後半部分もお得感が高いと思いますが。
◆その前半部分ですが、さっそく第1章では井下田さんが「コンペ300戦無敗」だった秘密を「理系の勝利の方程式」として明かされています。
まとめていうなら「合理的な努力」が9つあったとのこと。
上記ポイントの1番目は、その中の1つである「『お客様が望む未来』をスピーディーに実現する」から抜き出したものです。
確かに技術者が同行していたら、営業だけではできない提案や回答もできるかと。
また、割愛した別の「努力」として、「お客様の要望をすぐにデモで見せる」なんてものもありました。
ただ、この辺りはただの理系でも難しそうですから、文系の自分には実践しようがないのですが。
◆同じく上記ポイントの2番目も、この「努力」の中の1つ。
やってることは、お客様の込み入ったフォーマットをまとめ直すことのようなので、まぁ因数分解と言えなくもないでしょう。
もっとも、このような直接的な「理系ネタ」でなくとも、通常の業務フローを説明してもらうだけで、彼ら自身で勝手に解決することもありそうですが。
さらに、「なるほど」と思ったのが、「担当者の『メリット』も組み込んで提案する」という「努力」。
井下田さんの会社の製品を採用することによって、会社はもちろん、担当者にもメリットがある(「昇進する」「仕事が効率化できて部下から尊敬される」等)ことを示す、というのは考えつきませんでした。
確かに接待やキックバックよりも、真っ当な方法と言えるでしょうね。
◆続く第2章はプレゼン術ということで、いわゆるプレゼン本に登場するようなTIPSが集められています。
当然、当ブログとしても、プレゼン本をそれなりに消化しているワケなのですが、初見だったのが、上記ポイントの3番目の事前準備。
お客さんを入れる前に、会場のあちこちに座る、等のTIPSは見たことがありましたが、お客さんがいる状態で席に座って、かつお客さんの顔を見る、というのは聞いたこともありませんでした。
……ちなみにこれって、お客さんの方は「これから登壇する人だ」と分かってるんでしょうかね?
いずれにせよ、プレゼンする側としては、事前に参列者と目を合わせておく、というのは効果がありそうです。
また、割愛した中で試してみたいのが、プレゼン時の「ドッグワード(『えー』『あのー』等の無意識に出る言葉)」を減らすトレーニング。
10人くらいで丸く輪になって順番に自己紹介をして、ちょっとでも「ドッグワード」が出たら次の人に交代……って結構なスパルタな気がするのですが。
◆一方第3章は、プレゼンで用いるための「理系の資料作成術[総論編]」。
こちらもいわゆるスライド本に載るようなテクが並ぶ中、上記ポイントの4番目の「プレゼン資料と配布資料では内容を変える」というTIPSをセレクトしました。
「いや、そんなの当たり前では?」と思われる方も多いと思いますが、フォントサイズや文言の長さ等だけでなく、引用した中にもある「ホスピタリティを示せる部分で徹底的に非合理に尽くす」というのがミソです。
つまり、配布資料は「可能な限り客先に寄り添う」とのこと。
しかも「お客様が社内でも再利用できるよう、工夫しましょう」とまで言われています。
なお同じ3章の後半部分では、「必要ならばデジタル版も提供する」とあって、そこまで尽くすのか、とぶっちゃけ思いました。
……なるほど、「300戦無敗」なのもさもありなん。
◆そして最後のポイントの5番目は、第5章の「理系の話し方・聞き方」からのものになります。
この「『Yes』はすでにもらった前提」というのは、デートに誘うときに「行かない」という選択肢を伏せて、場所の二択を与えるようなものですね(モテ本あるある)。
こちらも、そのキーパーソンのアドバイスに従った形にすれば、その人を敵に回すことはないですし、かつ、「自分のアイデア」だと思ってもらえれば、後押しも期待できるでしょう。
もちろん、最初に相談に行った時点で叩きつぶされたら身も蓋もないですが、実際の会議の場で初めて否定されるよりよほどましかと。
なお、割愛した第6章の時間管理術はもちろん、第7章の戦略的思考法でも「バックキャスティング」のような、類書のレビューの際には堂々と抜き出している大ネタがあるのに、ごっそり割愛してすいません。
また、巻末には「電子限定特典」が付されているのですが、これはアマゾンでも明記されているように「Facebook投稿の中から特に反響の多かった記事ベスト20」ということで、いわゆるコラム的なものなので、その旨ご了承ください。
ロジカルな仕事術がお好きな方ならぜひ!

【電子限定特典付】コンペ300戦無敗のトップエンジニアが教える 理系の仕事術
第1章 コンペ300戦無敗! 理系の勝利の方程式
第2章 コンペ300戦無敗! 理系のプレゼン術
第3章 コンペ300戦無敗! 理系の資料作成術[総論編]
第4章 コンペ300戦無敗! 理系の資料作成術[各論編]
第5章 コンペ300戦無敗! 理系の話し方・聞き方
第6章 コンペ300戦無敗! 理系の時間管理術
第7章 コンペ300戦無敗! 理系の戦略的思考法
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【理系の子?】『人気講師が教える理系脳のつくり方』村上綾一(2012年11月18日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
その働き方、あと何年できますか? (講談社+α新書)
当ブログでもご紹介済みの働き方本は、中古が値崩れしていますが、送料を足せばKindle版がお買い得。
参考記事:【働き方】『その働き方、あと何年できますか?』木暮太一(2022年09月26日)

「日本」ってどんな国? ──国際比較データで社会が見えてくる (ちくまプリマー新書)
テーマ的にもタイムリーな新書は、Kindle版が500円以上お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 小説・ライトノベルセール NHK出版分」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
読書の価値 (NHK出版新書)
参考記事:【読書】『読書の価値』森 博嗣(2018年04月12日)

別冊NHK100分de名著 「平和」について考えよう

NHK「100分de名著」ブックス 紫式部 源氏物語

サラリーマン川柳 なっとく傑作選 30回記念版
よろしければご参考まで!
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