2023年03月10日
【成功法則?】『シンプルで合理的な人生設計』橘玲
シンプルで合理的な人生設計
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった1冊。おなじみ橘玲さんが、多くの文献に基づき「成功法則」を指南してくださいます。
アマゾンの内容紹介から。
「日本人は合理性を憎んでいる。だからこそ、合理的に生きることが成功法則になる!」 前著『幸福の「資本」論』で幸福を3つの資本で定義づけた橘玲氏が、「人生の成功法則」について「合理性」を軸に3つの資本を再検証。最新の学術的知見を織り交ぜなら、現代人が「自由に生きる」ための理論、手段、実践を突き詰める。
中古金額が定価をはるかに超えていますから、「10%OFF」のKindle版がオススメです!
Success / h.koppdelaney
【ポイント】
■1.もっとも効果的に幸福になる方法は、お金持ちになること年収や資産を増やすことは、ドラッグやギャンブルで一時的に幸福度を上げるような副作用も(ほとんど)ないし、短期的な効用だけでなく長期的にも人生によい影響を与えるだろう。幸福になるための方法は星の数ほどあるだろうが、「お金持ちになる」ことほどシンプルかつ効果的な戦略はほかにはない。
限界効用の逓減は、一定の閾値を超えると効用(幸福度)が上がらなくなることだが、それと同時に、その閾値に至るまでは効用が大きく上昇する。だとすれば、これを利用しない手があるだろうか。
もちろんこれは、「すべてのことを犠牲にして金持ちを目指せ」ということではない。そんなことをすれば、失うもの(恋人や家族、生きがい)の方が多くなるだろう。だがそれでも、幸福になりたいひとが真っ先に取り組む課題は金融資本を大きくすることなのだ。
■2.認知を変えるより環境を変える
コップに水が半分入っている。これを「半分も入っている」(楽観)と考えるか、「半分しか入っていない」(悲観)とするかで人生は大きく変わるといわれる。(中略)
この理屈だと、「認知を変えて( 水が半分も入っていると)楽観的に考えるようになりましょう」という話になり、そのように説く本もたくさん出ている。だが問題は、そう簡単に認知の癖は変えられないことだ。(中略)
だがここには、もっとシンプルな解決方法がある。図7のように、半分の大きさのコップに水を移すのだ。これで、認知の癖(パーソナリティの個人差)にかかわらず、誰が見てもコップには水がいっぱい入っている。
このように多くの場合、認知を変える(これはかなり大変だ)より環境を変える(転校や転職、転居する)方がうまくいく可能性が高い。これが、「合理的に成功する」考え方の基本になる。
■3.投資対象の考え方
これらの条件を考えると、投資対象は「MSCI-KOKUSAIインデックス(日本株を除く先進国の株式市場に投資)」やS&P500(アメリカ株)、NASDAQ100(ハイテク株)など、いくつかに絞られるだろう(もちろんこれらに分散投資してもいい)。
金融資産のうちどの程度を株式インデックスに配分すればいいのだろうか。これは年齢やリスク選好度によって異なるだろうが、現代ファイナンス理論を完成させ、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツは、株式と債券の1対1のポートフォリオにしているそうだ。
その理由は、株式に投資せずに(株価が上がって)後悔することと、債券(銀行預金)を保有せずに(株価が下落して)後悔することの、2つの後悔を最小化できるからだという。これはチャールズ・マンスキーの「ミニマックス(後悔最小化)戦略」そのもので、合理的な意思決定を追求すると同じ結論になるのは興味深い。
■4.自分の能力が優位性をもつ市場を見つけろ
風見のバイオリンの才能は、残念ながら、他の分野への転用が難しい。ピアノやチェロなどの楽器はもちろん、指揮者や作曲家にしても、クラシックのそれぞれの分野には成功を目指して努力してきた天才たちがいる。どこにいっても、水面は90%か95%以上なのだ。
それに対してシルバーの数学・統計的な才能には汎用性があった。ポーカーの世界には自分にはとうていかなわないトッププレイヤーがたくさんいるとしても、野球の世界はいまだにスカウトの勘や経験がすべてで、マイケル・ルイスが『マネー・ボール』で描いたように、統計分析によってコストパフォーマンスの高い選手を見つけようとする球団はほとんどなかった。水面が80%よりずっと下だったのだ。
■5.テイカーでなくギバーになれ
1万円もっているとして、それを誰かにギブしてしまえば一文無しだ。(中略)
だが、もっているものが減らないとしたらどうだろう。それなら、気前よくみんなにあげてもいいのではないか。
ギブしても減らないものは2つある。
ひとつは、面白い情報を教えること。もうひとつは、面白い知り合いを紹介することだ。ネットワーク社会の「ギバー」とは、この2つをせっせとやっているひとのことだ。(中略)
「いいね」が貨幣と同じになる評判経済は、「ネットワーク経済」でもある。そこでは「面白いことを教え合う」「ひととひとをつなぐ」ことでコミュニティがつくられていく。情報も人脈もどれだけギブしても減らないし、そればかりかどんどんつながり(ネットワーク)が大きくなっていくのだ。
【感想】
◆いかにも橘玲さんらしい、いい意味で「身も蓋もない」(=科学的)作品でした。ただし、本書に先立ち同じダイヤモンド社さんから、橘さんが2017年にこの作品を出されていまして。
幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
こちらのサブタイトルにもある「3つの資本」と「8つの人生パターン」が、下記目次の第5章にそのまま登場しており、コンテンツ的に一部かぶる、というか、本書でさらに掘り下げている感じ。
ちなみに、上記ポイントでも何の注もなく引用してしまっていますが、この「3つの資本」とは、「金融資本」「人的資本」「社会資本」になります(表紙下部にある3つの三角形)。
そして、これらの「資本」を多く持っているほど幸福になりやすいということで、その資本の種類と数によって分けたものが「8つの人生パターン」ということ。
具体的には「0個」が「貧困」で、「1個」が「プア充」「ソロ充」「孤独なお金持ち」の3パターン。
「2個」が「リア充」「ソロリッチ」「マダム」で、「3個」揃うと「超充」になります(詳細は本書を)。
……この辺は、上記の前書を読んでいるとご存じなんでしょうけど、できたらアマゾンのページで図解しといて欲しかったような。
◆さて、具体的に中身を見ていくと、たとえば上記ポイントの1番目のお話は、金融資本を増やしていったとしても、ある一定金額を超えてしまうと、ありがたみが薄れる(「限界効用の逓減」)という前提がまずあって。
金額的には、年収なら800万円で、金融資産なら持ち家とは別に1億円なのだそうです。
だからといって、「お金持ちを目指すことに意味はない」という説は誤りで、むしろその金額に達するまでは理論的な幸福度より、実際の幸福度が大きく上回っているのだとか。
そもそも、「持ち家とは別に1億円」というのは、結構ハードル高いのでは?(小市民)
また、上記ポイントの2番目で「図7」とあるのに掲載できず恐縮です。
ただ、文章を読めばお分かりのように、「コップ半分の水」を「元の半分の大きさのコップ」に移せば、一杯になるのは当然のこと。
本書ではこのように、「どうにもできないこと」を変えるのではなく、「どうにかできること」で成功を目指すワケです。
たとえば本書では「ギャンブルに手を出すべきでない理由」が記されているのですが、これが結構理詰めで興味深いので、なかなかやめられない方は、ご一読をお薦めしたいところ。
◆ここまでが第1部で、続く第2部では前述の「3つの資本」ごとの成功戦略が色々と掲載されています。
まず「金融資本」については、3つの中ではもっとも「合理性」が追求できるだけあって、ハイライトも引きまくり。
それこそビットコインからFX、株式投資等々述べられているのですが、結局のところ上記ポイントの3番目にあるように、投資に関しては類書と同様「インデックス投資」一押しなのだそうです。
なお、これは単純にコスパだけではなくて、余計なことまで考える必要がないタイパ(タイムパフォーマンス)も踏まえての結論とのこと。
さらにマイホームとREITの比較や、保険の考え方等々も、うなずくことしきりでした。
また一番辛らつだったのは、最近よく見かける「保険の相談窓口」は、無料で相談に応じている時点で「すべて高率のキックバックが設定」されており、その費用は保険料に上乗せされている、という指摘。
……クレーム大丈夫ですかね?
◆そして「人的資本」に関しては、上記ポイントの4番目のお話をセレクト。
ここで唐突に登場する「風見」氏とは、中学時代には全日本学生音楽コンクールの全国大会で優勝したというバイオリンの才能の持ち主です。
ただし、自分がトップにはなれないと自覚はしたものの、音楽ではろくな食い扶持がなく、最終的にはホスト経由でデリヘルドライバーを営むことになったという。
一方対象として名前が出されたシルバーとは、当ブログでもおなじみのこの本の著者です。
シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」
シルバーの半生については、本書でも軽く触れられていますが、一時はオンラインポーカーで生計を立てていたものの、諸事情により勝てなくなります(その経緯も面白いのでぜひ本書でご確認を!)。
しかしそこからは、風見氏と違い、「数学・統計的な才能」を活かして「選挙分析」で名をはせ、「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれた次第。
◆なお、最後のポイントの5番目は「社会資本」を扱った第8章から抜き出したもの。
「ギバー」の話は知っていましたが、そんなことやってたら、割合わないと思っていたのが、あにはからんや!?
確かに物理的な限界がないものだったら、いくら「ギブ」しても大丈夫ですよね。
なるほど、成功者たちはこうやってネットワークを広げて、情報も共有してさらに成功していくのだな、と。
そう考えると、シリコンバレーに起業家たちが集まって、成功していったのもごく自然なことかもしれません。
合理的に幸せになるために読むべし!
シンプルで合理的な人生設計
プロローグ 成功するためには、人生の土台を合理的に設計せよ
Part1 【理論編】合理性の基礎知識
1 コスパ・タイパ・リスパ
2 睡眠と散歩は最強の自己啓発
3 進化論的合理性と論理的合理性
4 成功に至る意思決定
Part2 【実践編】合理的に人生を設計するための戦略
5 3つの資本と8つのパターン
6 金融資本の成功法則
7 人的資本の成功法則
8 社会資本の成功法則
エピローグ シンプルで合理的な「成功のライフスタイル」
【登場作品】
◆本書において、参考文献として登場している中で、当ブログでご紹介済みのものを以下に列挙しておきます。いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学
参考記事:【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)
睡眠こそ最強の解決策である
参考記事:【決定版!】『睡眠こそ最強の解決策である』マシュー・ウォーカー(2018年05月20日)
予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)
習慣の力〔新版〕 ((ハヤカワ・ノンフィクション文庫))
参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
参考記事:【本質主義】『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』グレッグ・マキューン(2014年11月20日)
超一流になるのは才能か努力か?
参考記事:【「1万時間の法則」の真実】『超一流になるのは才能か努力か?』アンダース・エリクソン,ロバート・プール(2016年08月05日)
女と男 なぜわかりあえないのか (文春新書)
参考記事:【恋愛?】『女と男 なぜわかりあえないのか』橘 玲(2020年06月20日)
モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた 進化心理学が教える最強の恋愛戦略
参考記事:【モテ】『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた 進化心理学が教える最強の恋愛戦略』タッカー・マックス,ジェフリー・ミラー,橘玲(監訳)(2022年06月03日)
つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
参考記事:【オススメ】『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』が面白かった件(2010年08月17日)
ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」
参考記事:【科学的成功本】『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』アルバート=ラズロ・バラバシ(2019年07月01日)
残酷すぎる成功法則 文庫版
参考記事:【科学的自己啓発書】『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』エリック・バーカー(2017年10月27日)
【関連記事】
【問題作?】『無理ゲー社会』橘玲(2021年11月17日)【問題作?!】『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』橘 玲(2010年10月01日)
【科学的自己啓発書】『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』エリック・バーカー(2017年10月27日)
【成功本大全】『やってみてわかった成功法則完全実践ガイド』高田晋一(2018年12月24日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる〜佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021〜 (扶桑社BOOKS)
人気プロデューサー・佐久間宣行さんのANN0本は、中古が値崩れしていますが、送料を足せばKindle版がお得。
賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」
私は全然ノーケアでしたが、昨年暮れに出た自己啓発本は、中古が定価を超えていますから、Kindle版が1300円弱お買い得となります!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 科学・テクノロジーセール」の記事で人気があったのはこの辺の作品でした(順不同)。日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)
参考記事:【行動遺伝学】『日本人の9割が知らない遺伝の真実』安藤寿康(2018年02月10日)
F-15Jの科学 日本の防空を担う主力戦闘機の秘密 (サイエンス・アイ新書)
ジェット旅客機操縦完全マニュアル パイロットはコクピットで何をしているのか?
料理の科学 加工・加熱・調味・保存の化学変化 (サイエンス・アイ新書)
よろしければご参考まで!
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