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2023年02月13日

【イノベーション】『イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意』高岡浩三


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イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意 (幻冬舎単行本)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「幻冬舎電本フェス 本祭」の中でも人気の高いマーケティング本。

著者の高岡さんの作品は、昨年11月に新刊をレビューしていますが、本書はそれに先立ち、昨年4月に発売されたものになります。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
世界を驚かせるようなイノベーションが生まれなくなって久しい昨今、高岡浩三氏はネスレ日本社長として、「ネスカフェアンバサダー」や「キットカット受験生応援キャンペーン」など革新的なサービスを世の中に展開した。その実績は、マーケティングの権威、フィリップ・コトラー氏らからジャパンミラクルと称賛された。本書では、著者が練り上げ、実践してきた、革新を生み出す手法を惜しみなく公開し、日本でイノベーションを生み出す術を伝授する。

中古は値崩れしていますが、「72%OFF」という激安設定のおかげで、Kindle版が600円以上お得な計算です。







【ポイント】

■1.顧客の諦めている問題を解決する
では、イノベーションはどのような顧客の問題の解決なのでしょうか。それは、主に次の3種類の問題と考えられます。
・聞かれても答えられない問題
・頭に浮かんでこない問題
・こんな問題は解決できるはずがないと諦めている問題
 これら3種類の問題を、本書では「顧客の諦めている問題」と総称します。
 この顧客の諦めている問題は、当の顧客本人は問題として認識していません。だから顧客の口から出てくることは一切ありません。
 しかしながら、この表面化していない顧客の諦めている問題をあぶり出し、絶対に解決しなければならない問題として捉え、解決に導く。このプロセスから生まれる成果が、イノベーションになるケースが多いのです。


■2.新しい現実を見る能力
 まず、問題発見の大前提として理解していただきたい方法があります。それが「新しい現実」という考え方です。
 新しい現実は次のように定義します。
時代や習慣の変化が起こり、ある程度長い年月を経て人々の生活や企業を取り巻く環境のなかで定着しているもの。感覚的には、10年から15年経過しても変わらない現実であり、数年で消えていくものではない
 旧来の現実から新しい現実に時代が変わると、それに伴って従来とは異なる新しい問題が生まれます。つまり、新しい現実が新しい問題を連れてくるということです。
 イノベーションを起こすためには、旧来の現実から生じる顧客の問題ではなく、新しい現実から生じる顧客の新しい問題を見つける能力が必要になります。


■3.ネスレ日本が実現した「マチエコ便」
 通常であれば、ヤマト運輸に一括して預け、ヤマト運輸が各地域の拠点に送り、そこからヤマト運輸の運転手が配達先まで届けます。ネスレ日本の仕組みは、そのストックポイントとして全国の新聞販売店に協力してもらいました。(中略)
 そこに注文を受けた商品をストックし、近所の高齢者が取りに行って配達する仕組みを設計しました。これをマチエコ便とネーミングし、一部の地域に限定して小規模にテストを行ってみました。
 すると、採算に乗ることが確認できたのです。そこからマチエコ便を徐々に広げ、最終的には全国で3万人ほどの高齢者にお願いし、eコマース全体の2割をマチエコ便にすることで大きなコストダウンを実現しました。
 このとき、商品はエコバッグに入れて届けてもらうので、宅配で出る段ボール箱などの余計なゴミも削減することができました。


■4.イノベーションの鍵になるのは「ダイバーシティ思考」
 私の経験上、顧客の諦めている問題をあぶり出すのは、こんな素朴な疑問から始まるものです。
「どうしてそんなことをやっているの?」
「なぜそうしないといけないの?」
 ダイバーシティがなく、モノカルチャーにどっぷりと染まった日本人にこの疑問は浮かんできません。もはや当然のこととして定着し、疑問すら持たなくなっているからです。そこで出てくるのは、こんな言葉です。
「だって、昔からそうやってきたから」
「理由はわからないけれど、そうやれと教わったから」
 その言葉を背景に、思考停止状態に陥っているのです。
 試みに、普段無意識に行われている自社のルーティーン業務について、なぜそれを行っているのか問いただしてみてください。理由を答えられないことが多いのではないでしょうか。


■5.うまくいった結果をもって上司を説得する
 担当チームが、キットカット ショコラトリーについて丁寧にプレゼンします。案の定CMOはプレゼンを聞くなり烈火のごとく怒り始めました。
「誰がそんなことを許可したんだ!」
「そんなものはうまくいくはずがない!」
 CMOの立場としては当然の反応です。そこで、私がそっと耳打ちしました。
「実は、もう出店していて、結果が出ているんです。一緒に見に行きませんか」
 結果が出ているという話を聞いた瞬間、CMOの態度が変わりました。実際に視察して店頭の大行列を目にすると、CMOの考えも変わりました。私は、CMOにこう説明しました。
「キットカットはプレミアムチョコレートにはなれないと本社も思っているだろうが、日本で著名な高木さんというパティシエが手間暇をかけると、高級感が付加される」


【感想】

◆冒頭で昨年11月にレビューしたと申し上げた、高岡さんの作品はこちらになります。

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ゼロから革新的なヒットを作り出す 問題発見の教科書

参考記事:【アイデア】『問題発見の教科書 ゼロから革新的なヒットをつくり出す』高岡浩三(2022年11月25日)

出てからそんなに経ってはいないとはいえ、中古に送料を足すと定価超えするという人気ぶり。

実際私もこの本は、得るところが多かったですし、今まで類書で読んだだけで、イノベーションの事例の1つとしてしか知らなかった「ネスカフェアンバサダー」を深く学べた作品ではあります。

また、そこまで大きなイノベーションではないものの、高岡さんの功績として挙げられるのが、ちょうど今真っ最中な「キットカット受験生応援キャンペーン」。

ネスレ 受験生応援キャンペーン

こちらも上記記事でも言及していますが、本書にも事例として紹介されているわけでして。

ネタかぶりと言えば、確かにそうなのですが、ネタとして大きすぎてスルーするわけにもいきませんし、そもそも本書の方が先に出ている作品ですから!


◆逆に、本書を読んで初めて知ったのが、上記ポイントの3番目の「マチエコ便」です。

ネスレがPDFしか出してないようなので、ニュースの方から。

近所の店や人が荷物を預かり届ける宅配「MACHI ECO便」。ネスレ日本が展開 - Impress Watch

こちら、要はネスカフェのコーヒーカプセルやバリスタのカートリッジ等の、eコマースサイトで注文が入ったものを届けるサービスになります。

これはネスレが「お小遣い稼ぎがしたい高齢者」並びに「経営難の新聞販売店」とパートナーシップを結ぶことにより、「三方よし」になる仕様。

さらには、上記引用にもあるようにエコバッグを用いたり、大都市間の輸送はトラックではなく鉄道を利用することで、環境問題にも貢献しているのだそうです。

なかなかユニークなイノベーションですよね?


◆さて、こうしたイノベーションを生み出すためには、上記ポイントの1番目にあるような、「顧客の諦めている問題」を見つけ出す作業が必要です。

しかし、昔からビジネスシーンで評価されるのは、「問題解決」の能力ばかりという有様。

これに関して高岡さんいわく
 ビジネス界では、問題解決を重視する風潮が続いています。もちろん、問題解決が重要であることは疑う余地のない事実です。
 ただ、ことイノベーションに関しては、問題解決能力よりも問題発見能力に優れた人のほうが成果を出している。それが現場にいる人間の実感です。
とのこと。

そこで「問題発見」に関して大事な考え方が、上記ポイントの2番目の「新しい現実」です。

分かりやすいところでは、我が国の「超高齢化社会」という現状も、「新しい現実」の1つ。

それによって、核家族化が促進され、一人世帯、二人世帯が増えてきました。

これを踏まえた上で、「美味しいコーヒーを一杯ずつ淹れられるコーヒーマシン」として作られたのが「ネスプレッソ」なのだそう。

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ネスプレッソ カプセル式コーヒーメーカー ヴァーチュオ ネクスト マットブラック 水タンク容量1.1L 遠心力抽出 ワンタッチ GDV1-MB-W
繰り返し強調したいのは、 問題から考えず、新しい現実から考える癖を身につける ことです。それは、イノベーションを考えるうえでの武器になります。
本書の第2章では、「新しい現実」からイノベーションを生んだ例として、アマゾンやメルカリが紹介されており、なるほど、と納得しました。


◆それでも我が国でなかなかイノベーションが起きないのは、上記ポイントの4番目にもあるように、「ダイバーシティ思考の欠如」では、というのが高岡さんの考えです。

確かに日本では「正解しか認められない教育」「多様な意見を受け入れる土壌を育まない教育」が昔から行われていますから、それもさりありなん。

実際、高岡さんもネスレに入ってさまざまなダイバーシティに触れたことで、日本的発想を払拭できたのだとか。
 外国に出て揉まれる機会がなくても、いったん自分が日本人であることを忘れて思考する習慣を身につければ、可能性はあります。自分を外国人だと思い、すべての当たり前を当たり前と思わない発想で、なぜ日本人はこうやっているのか常に考えるのです。その積み重ねによって、常識と思っていることに疑問を抱くはずです。
「自分を外国人だと思う」というのは、よいアプローチかも。

また上記ポイントの5番目にある、「キットカット ショコラトリー」とは、もともとは「ル パティシエ タカギ」の高木康政さんが関与された、プレミアムチョコレートブランドでした。

ただし、ネスレ全体としては、「キットカット」はあくまで大衆ブランド(海外ではプレミアムブランドとして「カイエ」という商品があった)なので、勝手なことは許されないハズだったという。

確かにスイス本社から来たCMO(チーム・マーケティング・オフィサー)は、上記にもあるように怒り始めたワケですが、大行列を目にして考えを変えた次第。

ちなみにCMOに「他の国でもできるのでは?」と進言したところ、豪州で成功したほか、現在ではグローバル戦略として位置づけられているのだそうです。


◆なお、本書の第5章では、そのほかに高岡さんが手がけたイノベーション例が6つほど登場するのですが、うち2つは上記の『問題発見の教科書』とかぶるもの。

かぶった2つはどちらも興味深いものなのですが、繰り返しますけど、本が出たのはこちらが先ですから!

また最後の第6章では、高岡さんが開いている「イノベーション道場」の参加者の方のアイデアに、高岡さんが講評を加える形で、4例が紹介されています(プラス高岡さんご自身の思考実験が3例)。

こちらはネタ自体は直接はかぶってませんが、形式としては『問題発見の教科書』にも似たような章があったので、短期間(3か月)でどちらも読んだ自分としては、積極的には本書をお薦めしにくいところ。

いずれにせよ、『問題発見の教科書』をお読みの方は、無理して本書を読まなくてもいいかな、というのが、先に本書を出版されている幻冬舎さんには申し訳ないのですが、正直な気持ちです。

逆に『問題発見の教科書』をお読みでない方は、本書が「499円」で読めるというのは、かなりお得だと思われ。


イノベーションの本質を突く1冊です!

B09Y14Y8R6
イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意 (幻冬舎単行本)
はじめに イノベーションを諦めていないか
第1章 イノベーションを再定義する
第2章 イノベーションを生み出すNRPS法
第3章 なぜ日本でイノベーションが起こらないのか
第4章 イノベーションの目覚めは「外圧」だった
第5章 イノベーションの具体例をNRPS法で読み解く
第6章 イノベーションは「考え抜く」ことから生まれる
おわりに 上司に期待するな。極限まで自分ひとりで考え抜け


【関連記事】

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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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【編集後記2】

◆一昨日の「インプレスグループ30周年記念フェア」の記事にて人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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よろしければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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