2023年02月06日
【起業】『ただの人にならない 「定年の壁」のこわしかた』田中靖浩
ただの人にならない 「定年の壁」のこわしかた(マガジンハウス新書) (マガジンハウス新書 013)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、個人的に読んでおきたかった1冊。会計に関する本を数多く出されていることでおなじみの田中靖浩さんが、定年後の働き方について指南してくれる作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
定年までに「老後資金2000万」があれば、幸せに生きられるのか?
人生100年時代といわれる今こそ、定年後の生き方やお金の常識を見直すとき。
現役サラリーマン時代にフリーランスマインドを身に付けて、愉快な「定年後」を手に入れよう。
中古が定価の倍以上のお値段ですから、「20%OFF」のKindle版がお買い得です!
【ポイント】
■1.商売の2つの基本を再確認するたくさんの仕事を引き受けられないフリーランスは、次の商売の基本「2つ」をしっかりと意識しましょう。・売り物を用意することまずは自分の「売り物」を用意し、次にそれを買ってくれる「お客さん」を探す。この2つは時代と場所を問わない商売の基本です。(中略)
・買ってくれる顧客を探すこと
「独立開業したがうまくいかない」という自営業やフリーランスに話を聞くと、この2つのいずれか、あるいは両方が「甘い」のです。誰もが思いつくレベルでしか売り物を考えていない。そしてしかるべき顧客候補を見つけるための努力をまったくしていない。本人には申し訳ないですが、「まずいラーメンを山奥で売る」ようなことをしています。これで商売になるわけがありません。
「もっとうまいラーメンをつくって、食べたい人間がいるところで売る」ことをしっかり学ばなければなりません。
■2.売り物をつくるヒントは「自分の中」に
私が経理業務から離れたのは、それが私にとってDモードの仕事だったからです。
イヤイヤ行うD仕事には情熱をもてません。会計士の私にとってそのD仕事が会計経理業務だったのは致命的でした。
周りの同業者を見ると、みんな嬉々としてお金の計算をしています。つまり多くの会計士にとって会計経理業務はB仕事(好きで働く仕事)なのです。
「多くのライバルにとってBモード、自分にとってDモード」
この状態では撤退したほうがいいと決断しました。「自分はイヤイヤの義務、向こうは時間を忘れるほど好き」な仕事で戦っては勝ち目がありません。
そこまでわかれば、逆の仕事を探せばいいわけです。それは、「ライバルにとってDモード、自分にとってはBモード」の仕事です。
それが私の場合、本の執筆であるとかセミナーの講師という仕事でした。ならば会計という専門分野を軸にしながら、ライバルが不得意とする会計本の執筆、会計セミナーの講師を行おうと決めました。
■3.コバンザメ作戦は将来への投資
副業として、「自分がやりたいことを実現している人/あこがれている人」のそばに行って、その人にお手伝いを願い出てください。
無報酬でもいいからやらせてくださいお願いすること。それが許可されれば、その人のすぐ近くで仕事ぶりを観察することができます。仲良くなれば本人から話を聞くこともできるでしょう。そうすれば、・その人はどうやって「売り物」をつくっているのかなどをすぐそばで見ることができます。これほどの学びは他にありません。
・「お客さん」をどうやって見つけたのか
・お客さんや関係者に対してどんなふうに接しているのか
・決めるべきときはどうやって決めているのか
副業を小遣い稼ぎと考えている人には「タダ働き」と見えるかもしれません。しかしそれは解釈次第。それを見せてもらうことは「将来への投資」なのです。
■4.勉強会からセミナーへの展開
サラリーマンの方であれば、副業としてまずは少人数の勉強会から始めてみてはいかがでしょう。次が参加人数を増やした無料セミナー、最後に有料セミナーといったカタチで場を育てていくことが理想です。
講師や各種サービス業を目指す人も「勉強会→無料セミナー→有料セミナー」と慣れていけば、無理なく経験が積めます。
ここまで読んで、「どこかにいい勉強会はないかな?」と思った方がいれば、ぜひ探してください。そこへの参加は人生を変えるキッカケになるかもしれません。これぞ「第2就活」の活動です。
人の集まる場をつくりたければ、まずは自分がさまざまな場所に出かけて客席に座ってみること。そのとき会の内容もさることながら、「いつか自分がこんな主催者/講師になりたい」と思う人を探して参加することをどうかお忘れなく。
■5.やりたいことが分からなかったら、イヤなことから考える
私でいえば、講師業をやってきたなかで最大の苦痛が「同じ講義を何度も行う」ことでした。他の講師はむしろそれを歓迎するのですが、私は飽きてしまうのです。だからついついその日の出来事などを、落語でいうマクラとして話してしまいます。いわゆる「雑談」ですね。それを喜んでもらえるケースが多いのですが、主催者によっては「雑談が多い」と注意されることも多々ありました。「まじめに講義ができない」短所は、「会計なのに脱線が多い」長所と裏腹なのです。その脱線王としての本領が『会計の世界史』という書籍になりました。自分の欠点と認識していたかもしれない部分に、最大の売り物が隠されていたというわけです。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、著者の田中靖浩さんは、主に会計関係の作品を多数書かれている方です。Amazon.co.jp: 田中 靖浩:作品一覧、著者略歴
そんな方が「定年後」のお話を書かれるとしたら、普通に考えたら、例の「老後2000万円問題」や、それに関連して投資や保険関係の話になるでしょう。
ところがどっこい、本書の主たるテーマは「定年後のフリーランス」。
もちろん、やみくもに起業を勧めるワケではなく、「次の仕事も決まっていないのに早期退職に応募してはダメ」ですとか、「会社員時代に副業を始めよ」等々言われていますが、最終的には「フリーランス」を目指すことを推奨されています。
ただし何をするにしても、意識しておかねばならないのが、上記ポイントの1番目の「商売の2つの基本」。
これは小売業にせよ、飲食業にせよ、サービス業にせよ、どの業界においてもまず考えるべきことになります。
◆そこで本書では、まず「売り物」についての考え方をアドバイスしてくれました。
それが上記ポイントの2番目になります。
前段を省いたので、唐突に「D仕事」「B仕事」と出てきてしまいましたが、これは「人間の欲求」に関してあのマズローが述べていること。
まずDは不足・欠乏を意味するDeficitのD。D動機は「足りないものを補いたい」欲求です。食べ物がない・家がない・友だちがいない、そんな欠乏状態から抜け出そうとするのが義務感一杯「D動機による労働」です。なるほど、D仕事とはいわゆる「ライスワーク」で、B仕事が「ライフワーク」みたいなものですか。
そんな義務とは無関係に、「やりたいからやる」のがB動機。BはBeingの頭文字、「あるがまま」という意味です。B動機で働く人はやらされ感なく働き、自然とやる気になって没頭します。
なお田中さんは、出版だけでなく、その後のコンサルタントでも「ライバルはD・自分はB」の仕事を見つけていくように心がけているのだそうです。
◆さて、自分が目指すことが見つかったとして、その後に行うべきことの1つが「経験を積むこと」。
そこで田中さんが提案されているのが、上記ポイントの3番目の「コバンザメ作戦」です。
この「無報酬でもいいから」とお願いするやり方は一歩間違うと、いいように使われそうで怖いですが、その辺は相手を見極めてください。
ただ本書によると、田中さんは若い頃、このコバンザメ作戦をしつこいくらい実行したそうですから、効果は保証付きかと。
定年後フリーランスを本気で目指すなら、最低「3人」のお手本を見つけてコバンザメ作戦を実行してください。本やセミナーで学ぶより、実践者の近くで働き方をじっくり観察させてもらうこと。ということで、とりあえずは「3人」目標で参りましょう!
◆さらには、主に講師等のサービス業を目指す方なら、上記ポイントの4番目にあるように「勉強会からセミナーへの展開」もオススメです。
確かに知らない人を集めて「場」を作るのに、「勉強会」というのはうってつけ。
そこから人数を増やして「無料セミナー」を開き、コンテンツのクオリティが高ければ「有料セミナー」にも移行できそうです。
……と言いつつ、セミナーに限らず「無料」から「有料」への壁は高いそうで、田中さんも呼んだ友だちから「守銭奴」呼ばわれされたこともあるのだとか。
ただし、田中さんの場合「有料にふさわしい」内容にする努力をしたことで、成長できたそうですから、ここは各自頑張っていただきたいところです。
◆そして最後の上記ポイントの5番目は、再び「売り物」のお話。
自分が苦手なことが何かを考えるTIPSは、類書でも読んだことがありますが、それがそのまま「売り物」になることもあるワケですね。
飽きっぽい私は「ひとつのことをやり続ける」のが苦手です。次から次へと新しいネタに関心が移ってしまいます。これも同じ。それを短所だと思わず、ふつうの会計士が手を出さない絵画分野の勉強をしたことで『名画で学ぶ経済の世界史』を出版することができました。
名画で学ぶ経済の世界史 国境を越えた勇気と再生の物語
2020年に出た本で、中古があまり値下がりしておらず、かつ、評価数107の平均が「4.3」なら、立派な人気作だと思います(書評系ブロガー視点)。
他にも「3回来てくれるお馴染みさんをつくる」ですとか、「教えるのではなく気付かせる」といった、有益なアドバイスもあり、実際に定年を意識する40代、50代の会社勤めの方なら、一読の価値はある本書。
しいて少々ひっかかった点を挙げるとしたら、ちょっと変わった肩書や、凝った名刺というのは、私がビジネス書を読み始めた大昔に流行ったんですが、今でも効果があるのでしょうか(リバイバル?)?
とはいえ、いずれにせよ、ここ最近出たの中高年向けの起業本としては、秀逸な作品だと思います。
私も会社員時代の先輩に薦めたい1冊!
ただの人にならない 「定年の壁」のこわしかた(マガジンハウス新書) (マガジンハウス新書 013)
第1章 ただの人にならない「定年後」のすすめ
第2章 現役世代のための「フリーランス思考」のすすめ
第3章 定年後は「助けられ力」がものを言う
【関連記事】
【定年後】『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』坂本貴志(2022年08月19日)【中高年必読?】『早期退職時代のサバイバル術』小林祐児(2022年07月13日)
【中高年必読?】『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』西尾 太(2022年03月17日)
【中高年指南?】『50歳から必ずやっておくべき10のこと』『THE21』編集部 (編集)(2021年12月27日)
【熟年起業】『50歳からの出直し大作戦』出口治明(2016年09月30日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。LinkedIn(リンクトイン)活用大全 情報発信、起業、転職、人脈…ビジネスで一番使えるSNS
私も以前、某有名著者さんに誘われたものの、自営業なのでお断りしたことがあるというLinkedInの活用本は、Kindle版が1000円弱お得。
「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本
禅僧さんが書かれたという自己啓発書系の作品は、中古が値崩れしていますが、送料を加味するとKindle版が300円弱お買い得となります!
【編集後記2】
◆一昨日の「翔泳社祭 2023」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 交渉・タスクマネジメント・計画立案から見積り・契約・要件定義・設計・テスト・保守改善まで
「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック
ビジネスデザインのための行動経済学ノート バイアスとナッジでユーザーの心理と行動をデザインする
PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本
ちょっとお高い本が多いですが、よろしければご参考まで!
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