2023年02月03日
【マネジメント】『シンプルに人を動かす 5W1Hマネジメント』渡邉光太郎
シンプルに人を動かす 5W1Hマネジメント
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも人気の1冊。「7万部超のロングセラー」という『5W1H思考』の続編に当たるマネジメント本です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
誰にでもなじみのある、When、Where、Who、What、Why、Howの切り口で、シンプルに人とチームを動かす18の技術をケースをまじえて紹介。
コーチングを鵜呑みにして、「君はどう思う?」と問うだけでは、部下の思考は的はずれなまま。もっと的を射た切り口と質問で、スマートにスピーディーに現場を回していきましょう!
もう「的外れな質問」で時間をムダにしない、VUCA時代の複雑な問題にヌケなくモレなく対応できる、最強のマネジメントツールです。
送料を加算した中古価格よりは、こちらのKindle版の方が600円弱お得です!
Eisenhower-Matrix / o.tacke
【ポイント】
■1.「時間ずらしの仮定」で自然に視野が広がるまた、メンバーに対策を考えさせる際は、単に「何をする?」「どんなことができそうか?」という平面的問いではなく、前述のように「短期的応急処置は?」と「長期的抜本対策は?」の長短両面(場合によっては中期的な対策)をセットにして問いかけてみてください。「ただちにやるべきこと」と「時間をかけてしっかりやりたいこと」をはっきり分けて用意させるということですね。
それ以外にも、「過去(以前)はどうだったの?」を織り交ぜる(振り返らせる)ことで、過去・現在・未来に渡るロングスパンでの本質的な変化(違い)を俯瞰させる問いも有効です。
このように、いつ?(時間軸)を自在に伸び縮みさせる「時間ずらしの仮定」を上手に活用することで、短絡的な思考のメンバーにも、あまりプレッシャーを与えずに広く深く考えさせることが可能になります。
■2.原因探しの前に場所探し
しかし、ここで大切なことは、「正しい使いどころ」「正しい問いの順番」です。粒の大きい課題のまま、漠然として抽象的な問題のまま、原因究明しようと、いきなり「なぜ? どうして?」を問いかけても、聞かれているほうは、それを「詰問」ととらえずとも、何を答えれば(考えれば)よいのか窮してしまう、あるいは、精神論的で曖昧な答えに逃げざるを得なくなってしまうのです。(中略)
そこで、問題解決の場面では、〈原因探し〉の前に〈場所探し〉、つまり、「Why:〈なぜ〉悪いのか?」という〈原因追求〉の前に、「Where?:〈どこ〉が悪いのか?」という〈場所探索〉から入るというのがポイントです。この2つの段階の違いを認識し、峻別して使うのです。
たとえば前述の、「なぜミスが起こったのか?」の原因をいきなり問う前に、「ミスの発生場所はどこか(どこで起こることが多いのか)、ミスが起こった作業プロセスの箇所はどこか?」を探して絞り込む。また、「どうして売上が未達なのか?」を漠然と考える前に、「売上のどこ(どの部分)が特に落ちているのか?」。つまり問題の所在(患部)を、さまざまな切り口によって、できるだけ特定することを先に行なう、というスタンスが大切です。
■3.A&Q思考で考える
いきなりですが、皆さんがある飲食店の店長で、すでに禁煙席に座っているお客さんから「ここは禁煙の部屋ですか?」と尋ねられたら、なんと答えますか? あるいは、どんな考えが頭をよぎりますか?
禁煙席で間違いないにせよ、「はい、そうですが…」と答えるのみで何の懸念も持たないのであれば、店長失格です。これを尋ねたお客さんの意図(真意)は、「ここが禁煙席なのはわかっているけれど、タバコの煙が入ってきて居心地が悪い。なんとかならないのか(今さら無理だとは思うけど)?」ということでしょう。これは誰でもわかる簡単な例です。来店客からこうした指摘が多いのであれば、店長として対策を講じるべきなのは明白ですね。(中略)
つまり、その質問自体に答えるのではなく、「その質問の意図や背景は何か?」「その問いの上位にある問いは何か?」「その問いに答える(それを考える)意義は何か?」を考える(自問する)ことが重要です。
■4.Whatは3層構造で考える
Whatの問い、たとえば、「何が起きているか?」「何を考えるのか?」「何をするのか?」などは、物事の起点となる基本的な問いとなりますが、ことビジネス(集団で何かを成し遂げる活動)においては、これらは単独で存在するというより、「Why(なぜ?/何のために?)」「How(どのように?)」という問いが〈セット〉で求められることが多いものです。(中略)
「What:何をするのか?」を考え、説明する際には、単なる〈思いつき〉にしない(見せない)ためにも、すかさず、上(Why:何のために?)と下(How:どのように?)をセットでとらえるクセをつけるということですね。そうすることによって、考えや説明に深みが出るわけです。
たとえば「働き方改革」がテーマならば、「なぜ働き方改革が必要なのか(Why)」「その内容はどういうものなのか(What)」「それをどのように進めるのか(How)」という3点セットを意識して組み立てれば、シンプルでわかりやすく、かつ深みのある説明になるはずです。
■5.「来年は10%売上アップ」より「1日1人当たりお客様を2名増」
今度はビジネスの例です。あなたが靴下専門チェーン店を営んでいるとします。関東圏に40店舗を擁し、社員・アルバイト合わせて200人を抱え、品揃えは1足300円、500円、700円の3プライス制です。今年度の全社の売上は12億円ですが、来年度は10%の売上成長を達成したいとします。
このとき、皆に「来年度は、今年度の10%アップ、1.2億円の売上増加を目指そう」と伝えても、彼らはあまりピンとこないでしょう。なぜならば、従業員1人ひとりからすると、この数字が〈遠すぎる〉からです。「月々1,000万円、さらに1店舗当たりでは月に25万円の売上増加が必要だ」と具体性を与えて伝えれば、ずっと現場実感が湧いてくるはずです。
でもこれでもまだまだ。もっと掘り下げて、「1店舗1日当たり1万円、つまり、500円の靴下なら20足分、従業員1人当たりなら4足分、お客様1人当たり1回に2足買うとするなら10人分、従業員1人当たりお客様2人分をさらに増やす工夫をしよう」。マネジャーであれば、これくらい、身近に感じられる現場イメージや数字に落とし込んだメッセージにすると、メンバーの行動を駆り立てる動機づけになるはずです。
【感想】
◆思ったよりも(失礼!)濃厚な内容の作品でした。というのも従来「5W1H」といえば、ご存じの「When,Where,Who,What,Why,How」という6つの切り口で、語ったりまとめたりするだけ(?)の作品が多かったと記憶しています。
それに対して本書は、もちろんこの6つがそれぞれ各章のテーマにはなっていますが、もうちょっと深掘りがされている次第。
もちろん根本のテーマが「マネジメント」ですから、部下に当たる人たちに、適切な働きかけをして、成果を出してもらう必要があるわけです。
なお、本書では各章ごとに、その章のテーマに沿った事例が、物語形式で展開される仕様。
井津田課長、土光課長、名瀬課長……と言った、5W1Hをもじった名前の課長陣が、部下のマネジメントで四苦八苦するのを、解決していく構成になっています。
◆例えば上記ポイントの1番目は第1章の「When」(長いので略します)からのもの。
「時間」という要素は、「納期」もあれば「会社の繁栄」的な長期の視点もあるのですが、普通はどうしても短期的な視点に偏りがちです。
実際、短期的に効果がある施策が、長期的には会社にとってマイナスだったり等。
そこで引用したように「短期」と「長期」をセットにして問いかけてみます。
また「これを続けると」「これを始めると」「これを止めると」、それぞれどうなるか、をさまざまな要素(社内的影響、顧客への影響、社会への影響等)と組み合わせて考えることも推奨されていました。
◆また第2章の「Where」から引用したのが、上記ポイントの2番目。
確かに問題が発生すると、真っ先に「なぜ」が問われがちですが、これを部下に問うと「詰問」になりかねません。
そこでフォーカスすべきなのが「どこ」ということ。
これは物理的な「場所」だけでなく、「部門」や「製品」「曜日」「月」といった要素でも同様です。
確かに「売上不振」というような問題の場合だと、素直にこういった切り口で考えやすいですね。
◆一方、上記ポイントの3番目は、1つ飛んだ第4章の「Why」から抜き出したもの。
……というか、すいません、私が店長だったら失格でした。
「どんな考えが頭をよぎりますか?」と言われて「タバコ吸いたいのかな?」と思ってしまったのですが、全然空気読めてませんでしたね。
このように、質問者の問い(Question)への直接的な答え(Answer)を探すのではなく、質問者の問い自体が答え(Answer)となるような、より上位の〈見えていない〉問い(Question)を考える(提起する)のがマネジャーの役目です。長年一人で仕事をしてきたツケがまわってきたようです。
確かにこれからの時代、答えを探すよりも、問いを設定する方が大事だとよく言われていますし、この部分はぜひ本書にてご確認いただきたく。
◆さらに、第5章のテーマである「What」は、上記ポイントの4番目にあるように、前後の章のテーマである「Why」と「How」を合わせて考えると良いのだそうです。
これは実際に、ジョブズやキング牧師のスピーチでも用いられており、例えばジョブズだとこんな感じ。
「私たちは世界を変えられると信じています。そして常に既存の考え方とは違う考え方[Thinkdifferent]に価値があると信じています(Why)。私たちが世界を変えるための手段は、美しくデザインされ、簡単に使え、親しみやすいことです(How)。そして、ついにこんな革新的な製品ができ上がりました(What)」。また、最後のポイントの5番目は、第6章の「How」から抜き出したもの。
よく「説明には数字を使って」と言われますが、身近なレベルに落とし込むことが必須ですね。
なお、巻末には付録として「5W1Hマネジメント 18の問いかけチェックリスト」が収録されており、これも非常にありがたいところ。
最後の参考文献でも、当ブログでレビュー済みの作品が結構あったので、下記関連記事にレビューを列挙しましたので、こちらもご覧下さい。
効果的なマネジメントスキルを身につけたい方に!
シンプルに人を動かす 5W1Hマネジメント
PROLOGUE0 プロローグ シンプル最強のマネジメントツール、「5W1H」を使いこなそう
CHAPTER1 時間・課程軸 When「時間的インパクト」を問う
CHAPTER2 空間・場所軸 Where 事象の「全体像・重要箇所」を問う
CHAPTER3 人物・関係軸 Who 明確な「ターゲット」の視点を問う
CHAPTER4 目的・理由軸 Whyより上位の「目的・未来の姿」を問う
CHAPTER5 事象・内容軸 What「だから何?・違いは何?」を問う
CHAPTER6 手段・程度軸 How「施策の判断基準・実行の難所」を問う
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【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)
【科学的自己啓発書】『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2017年07月01日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。どんな時代もサバイバルする人の「ビジネス力」養成大全
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