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2023年01月12日

【学び】『アメリカの大学生が学んでいる本物の教養』斉藤 淳


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アメリカの大学生が学んでいる本物の教養 (SB新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気の高かった1冊。

タイトルから考えていた内容とは違って、「いい意味で」裏切られた良書でした。

アマゾンの内容紹介から。
教養を身につけるというのは、ただの勉強とは違います。学歴があることとも違います。知識や情報を得ることそのものが目的ではありません。
教養を身につけるというのは、一般教養を身につけるとは違います。「一般教養」は時事性が強い、いわば賞味期限があるものなのですが、真の教養とは、もっと普遍的なものです。
では、教養とは何か。何のために身に付けるものなのか。
イェール大学の元助教授で、英語力と教養を同時に学べる学習塾「J PREP 斉藤塾」の代表である著者が、
アメリカのリベラルアーツ教育の現場を知っているからこそ語れる、
「教養とは何か」「教養人とは何か」「教養を身に付けるための方法」を明かします。

中古が定価の倍以上のお値段ですから、「10%OFF」のKindle版がオススメです!






Study / MC Quinn


【ポイント】

■1.「役に立つことを学ぶ」のは教養ではない
 教養は、何かを目的として身につける類のものではありません。
 まず、「エリートになるために教養を身につける」「お金持ちになるために教養を身につける」ということではない。教養を身につけた人が、組織を率いるにふさわしい人物になり、その過程で金銭的な豊かさを手に入れることはありえますが、あくまでも、それは結果論です。
 また直接的に「仕事に役立てるために身につける」というものも、教養とは距離があります。
 たとえば、プレゼンがうまくなるようにパワーポイントの資料作成のコツを身につける、営業で成果を出せるようにトークスキルを磨く、自分で会計処理ができるように簿記の実務を学ぶ──といったものは、短期目的のために身につける知識や技能に過ぎません。ただこのような場合でも、デザインや認知心理学の基礎知識は大いに役に立ちます。
 教養とは、いつ役立つかはわからない、ひょっとしたら役立つ局面は訪れないかもしれないけれども、日々、着々と積み重ねるものです。目的ベースではなく蓄積された知識が、そのまま「教養人としての厚み」になるのです。


■2.自分の経験に照らして仮説を立てる
 さて、統計学的思考の有効性は、適切なデータセットと数式ですが、これらを用いずに統計学的な思考をするには、何を根拠としたらいいでしょうか。
 おそらく自分の経験に基づいて推論し、「この状況でこの変数は増加(減少)する可能性が高い(低い)」という具合です。そして自分の価値観、判断基準に基づいて対処方針を決めるわけです。
 日本では「予断をもって物事に接してならない」と教え込まれることが多いように見えますが、その結果として何事においても中立的であることをよしとし、いつも「自分の意見がない」ことになってしまいます。
 それは、いってしまえば「何も考えていないこと」と同じです。
 そうなるよりは経験を言語化して俯瞰的に考える、つまり多分に仮説をもって物事に接し、事後的に検証することを繰り返していくわけです。


■3.「よりたくさんの楽しみが待っているから学ぶ」が上達の近道
 たとえば、ビジネスに役立つからといって中国語を学んでいる人と接していても、中国語を学ぶワクワク感はほとんど伝わってきません。「中国語がわかるようになって、楽しみが広がった!」といった話も聞いたことがありません。
 言論統制がある独裁国家には、ハリウッド制作に匹敵するエンタメ作品も、BBCやCNN制作に匹敵する良質なドキュメンタリー作品もないからでしょう。
 英語を学ぶことは、学問的な教養を深めるとともに、日々の文化的な楽しみが増えることにつながっているのです。
 そして「役立つだけでなく楽しい」というのは、何を学ぶにしても意外とあなどれません。実際、日本語を勉強しているアメリカの大学生たちにとっては、日本のアニメやマンガが日本語に関心を抱くきっかけであり、かつ上達のカギになっているという話をよく耳にします。
 やはり「楽しい」という要素は非常に重要。「よりたくさんの楽しみが待っているから学ぶ」──それこそ上達の一番の近道といってもいいくらいです。


■4.意見は変わるものである
 知識や情報という前提条件があってしかるべきだからこそ、意見は、いつなんどきでも変わりうるものなのです。
 なぜなら、新たな知識を得たり、情報を更新したりするのが人間の常だからです。
 意見が変わるというのは、いうなれば「ラーメンの好みが変わる」のと似たようなものです。(中略)
 これと同様、思考する際の前提条件は絶えず移り変わっているわけで、必要に応じて意見を変えることができる人こそ、実は真の教養人といえます。
 必要に応じて意見を修正する。誤った考えにこだわっている自分に気づいたら、反省する。要するに、今の自分の考えは絶対ではなく、新たに学ぶことで変わっていくものである──。
 意見を変えるのは不誠実であるとか、恥ずかしいことであるなどと思われがちですが、実は逆です。外的環境が変わったことで、大切にすべき価値観すらも変わるかもしれません。
 そのときにどう考えるか。元の意見に、いかなる修正を加え、新たな意見を形成するか。このような謙虚さ、正直さも、教養人の条件なのです。


■5.「大きな絵」を要素分解する
 まずは、自分がどんな価値観を大切にしたいのかを書き出してみてください。
 みなさんは、自分や自分の大切な人たちが生きるこの世界に、どうあってほしいと願いますか。なぜ、そういう世界を望むのでしょうか。
 そこで思い描かれる世界の解像度を高めるキーワードは何でしょうか。そのキーワードを追究するには、どんな学問が必要でしょうか。
 そして学びながら、同時に考えていきましょう。
 学び得た知識や情報からすると、望む世界をつくる一端を担うために、いったい何ができそうでしょうか。
 理想の世界という大きな絵を、できるだけ細かく要素分解し、具体的に「できること」「できないこと」を峻別できれば、自分で何をしたいか、何ができるのかを選ぶことができます。
 こうして「できること」を行動に移していくステップまで設けられたら、もう、いうことはありません。さらに学びながら、着実に行動していきましょう。あるいは、より慎重に学びつづけるのも選択肢のひとつです。


【感想】

◆冒頭で「『いい意味で』裏切られた」と申し上げましたが、当初タイトルを見た時点では、アメリカの大学生の勉強の仕方や、具体的に何を勉強しているか(コンテンツ等)のお話が書かれているのかと思っていました。

ところが実際は、上記ポイントに挙げたように、もっと上のレイヤーからお話はスタートしています。

つまり、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目にあるように「そもそも教養とは何か?」からして、ガツンと来たわけでして。

小見出しの「『役に立つことを学ぶ』のは教養ではない」からして返す言葉もございません……「役に立つ本」ばかり選んでレビューしている漏れ、涙目の巻。

ちなみに当ブログでは、試験合格のための勉強を「狭義の勉強」、それ以外の勉強を「広義の勉強」と呼んでいましたが、後者においても「何らかの役に立つ」書籍をセレクトしていましたから、まずはここからして考え直さなくては。


◆さらに第2章では、「自分の頭で考える」ことがテーマです。

さまざまなアプローチがある中、著者の斉藤さんいわく「材料がそろえば万能といってもいいくらい」と称されているのが統計学でした。

ただし現実世界では、その「材料」をそろえるのが容易ではないため、どうするかというと、上記ポイントの2番目にあるように「自分の経験に照らして仮説を立てる」。

この辺はコンサルさんがお得意のスタイルですが、私たちも取り入れるべき考え方のようです。

なお、統計学以外にも、「思考のフレームワーク」として使える学問がこの章では列挙されており、これらを学ぶことも立派な教養と言えるでしょう。

具体的には「人類学」や「社会学」「心理学」等々(詳細は本書を)。

また、巻末にはこれらの学問を学ぶ上での推薦図書が掲載されているのですが、当ブログでレビューしていたのは、「統計学」のこちらだけでした。

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FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

参考記事:【思い込み?】『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロンランド(2019年01月02日)


◆続く第3章は、当ブログの読者さんにはツボであろう「本」がテーマです。

特に新しい学問に対する本の選び方や、逆に読むべきでない本の見極め方等、役に立つ(おっと教養ではないw?)TIPSが満載でした。

この章が一番ハイライトを引きまくった(&割愛しまくった)ワケなのですが、なるほど、と思ったのが、上記ポイントの3番目の語学のお話。

なるほど、楽しんで中国語を勉強している、という話はあまり聞いた事がありませんが、自分の好きなアニメやマンガがきっかけというのはよく聞きます。

最近はK-POPが人気なので、それで韓国語をマスターしている方も多いですしね。

以前触れましたけど、私も20年位前、DJソフトの分からない事を、海外の掲示板で質問したり答えたりしていた頃は、まだGoogle翻訳もなかったのに、よくやりとりできたものだと思います。


◆一方、第4章では日本人の苦手な「自分の意見をつくる」というテーマが登場。

私は意識したことがなかったのですが、大学のレポートも日本では「事実確認」(「こういうことがあり、その影響で、こういうことになりました」等)であって、「自分の意見」は問われていないのだそうです。
 しかし、事実確認は思考ではありません。思考でない以上、いくら事実確認をしても思考力は磨かれないし、その成果である自分の意見をもてるようにもなりません。
ではどうすべきか、については本書にてご確認を。

ただし、考えた結果「意見」が確立したとしても、それに固執してはいけません。

上記ポイントの4番目で言われているように、「必要に応じて意見を変える」ことができてこそ、「真の教養人」である、とのこと。

逆に「まったく考えが変わらない、あるいは頑なに変えようとしないとしたら、それは意見ではなく、知識や情報の更新を考慮できない単なる意固地、もっといえば信仰、盲信」と断言されていますから、頑固な方は自分を顧みた上でご留意ください。


◆さらにこの「真の教養人」というのは、第5章のサブタイトルによると「議論し、合意形成を目指す」のだとか。

つまり、1人で考えたり知識な豊富なだけでは、単なる「物知り」に過ぎません。
 知識や情報、それ自体を得ることを「目的」とするのではなく、自分が大切にしたい価値観が実現された社会をつくる一端を担う「手段」として、大いに学ぶ人、学びつづける人、そういう人を教養人と呼ぶのだと私は考えています。
そのためにどうすべきかを述べているのが、上記ポイントの5番目です。

この世界の一員として、自分がどうあり、そのために何を学ぶのか……。

上記でも触れたように、本書が単なるテクニック論やコンテンツ紹介にとどまらず、より広い世界に目を向ける作品であることが、ご理解いただけたら幸いです。


「学び」に興味のある方なら、読むべき1冊!

B0BP1MGJTQ
アメリカの大学生が学んでいる本物の教養 (SB新書)
プロローグ――「教養」とは何か?
1章 深く学ぶ――勉強とは違う「教養人の学びの姿勢」とは
2章 自分の頭で考える――正解がない世界を生きる「思考の方法」
3章 本を読む――知性と仲よくなると、学びが加速する
4章 自分の意見をつくる――「よき思考」の成果を手に入れよう
5章 人と共に学ぶ――議論し、合意形成を目指すのが真の教養人
エピローグ――教養は、人生を格段におもしろくしてくれる


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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