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2022年12月11日

【鎮痛?】『とれない「痛み」はない』柏木邦友


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とれない「痛み」はない (幻冬舎新書 671)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった健康本。

個人的にも「あちこち痛い」年ごろになってきたので、いそいそと読んでみました。

アマゾンの内容紹介から。
人の身体は50歳を過ぎると、あちこちに痛みが出てくるもの。日本人は「我慢は美徳」とばかりに耐えようとするが、痛みは生活の質を落とすだけでなく、我慢するほどに強まる仕組みになっているから無意味だ。痛みは深刻な病気のサインのこともあるため、放っておくのは禁物である。そこで本書では、痛みが生じるそもそもの仕組みから、部位別の痛みのとり方、薬や病院の選び方、終末期の苦しみのとり除き方まで、痛みに関するあらゆる疑問を解説。痛みや苦しみの恐怖から解放されること間違いなしの一冊。

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NEC-Medical-137 / NEC Corporation of America


【ポイント】

■1.「痛み」は放っておくと、どんどん強くなる
 日本には「我慢は美徳」という価値観が根強くあるように思いますが、「痛いと騒ぐのは、みっともない」「痛みなんて我慢していれば、そのうちよくなる」などと考えるのは禁物です。
 基本的に、痛みには放置すると増強される仕組みがあります。痛みを我慢し続けているうちにその状態に慣れることはありますが、痛みに順応するのと痛みが改善するのはまったく別の話であり、痛みを放置すべきではありません。
「痛みが増強する仕組み」というのは、自分で身体のどこかをつねってみればわかります。つねり始めはさほど痛くなくても、ずっとつねり続けているとだんだん痛みが強くなり、どこかの時点で「我慢できない」と思うはずです。
 これは、繰り返し同じ痛みの刺激が与えられると、痛みの信号がどんどん増幅されて脳に送られるようになるからです。これを「ウインドアップ現象(中枢 感作)」といいます。


■2.「手当て」が痛みに効く理由
 身体を触られたときの信号と痛みを伝える神経には密接な関わりがあり、触覚の信号が強く送られているときは、痛みの刺激が伝わりにくくなります。
 痛みの信号をゲート(門)でブロックするような仕組みであることから、このメカニズムは「ゲートコントロール理論」と呼ばれています。
 身体のどこかをぶつけたり、あるいはお腹が痛かったりするとき、私たちは無意識のうちに痛いところに手を当てて押さえたりさすったりします。これは、私たちの身体に触覚刺激によって痛みをやわらげる仕組みがあるからなのです。
 同様に、子どもがけがをしたとき、「痛いの痛いの飛んでけ!」と言いながら、けがをした部分をさすってあげることがありますが、これもただのおまじないではなく、ゲートコントロール理論に基づいた、正しい鎮痛の方法といえます。


■3.かき氷を食べると、なぜ頭痛がするのか
 みなさんの中には、かき氷やアイスクリームなど冷たいものを食べたときに、頭がキーンと痛くなった経験のある方もいるでしょう。これを「アイスクリーム頭痛(国際頭痛分類での病名は〈寒冷刺激による頭痛〉)」と呼びます。(中略)
 この痛みには血管の収縮と拡張が関係しています。血管は冷たければ収縮し、温かければ拡張します。冷たいものを食べると上あごから咽頭の血管が収縮し、その後の血管拡張によって神経に刺激を与えるため、痛みが起こるのです。氷を長い間手で持っていると、手にジンジンとしびれるような痛みを感じることがありますが、これも同じ仕組みです。
 アイスクリーム頭痛を予防するには、ゆっくり食べたり、温かいお茶を頻繁に飲みながら食べるなど、上あごを冷やさないようにすることがポイントです。ちなみに痛みはすぐに改善するので、病院で治療することはありません。


■4.肩こりには飲み薬や貼り薬もいい
 もちろん飲み薬や貼り薬にも、効果が期待できるものがあります。肩の筋肉に炎症が起きてプロスタグランジンが出ている状態であれば、NSAIDsの服用やロキソニンテープのような痛み止めの湿布で、ある程度は痛みを抑えることができるでしょう。
 慢性的な痛みでプロスタグランジンが出ていない状態の場合は、NSAIDsの効果はあまり期待できないかもしれませんが、その場合はカロナールを服用する選択肢があるでしょう。(中略)
 重度の肩こりには、麻酔薬を注射して痛みをとる「神経ブロック注射」も有効です。神経ブロック注射は即効性のある痛み止めであるだけでなく、神経を落ち着かせる効果があり、筋肉が過剰に収縮して血行が悪くなるという悪化のループを断ち切ることも期待できます。


■5.日本で無痛分娩が広がらないわけ
 日本では、なぜ無痛分娩がなかなか広がらないのでしょうか。
 理由の1つは、無痛分娩に「危険」というイメージを持つ人がいるからかもしれません。
 無痛分娩については身近で経験した人も少なく、情報が入ってきにくい状況にある一方で、無痛分娩時に起きた医療事故について大きく報道されているのを目にすれば、誤ったイメージが先行するのも無理はないのかもしれません。
 しかし無痛分娩の安全性については、国も提言を行っています。厚生労働省が設置した研究班から、2018年3月に「無痛分娩とそれ以外の分娩のリスクに大きな違いはない」と発表されています。
 実際にデータを見てみると、2010〜2016年に国内で起きた妊産婦の死亡例271件のうち、無痛分娩が行われていたのは14件でしたが、この14件のうち13件は「無痛分娩でなかったとしても起こりうるもの」でした。


【感想】

◆なかなかユニークな作品でした。

今まで、具体的な病気や治療法にフォーカスした医療本は多々ありましたが、「痛み」というある種漠然とした、一般的な症状をテーマにしている分、扱う内容も多岐に渡っています。

ただ、帯に「『終末期』の苦しみももう怖くない!」とあったのをあまり意識していなかったものの、実はこれは「緩和ケア」のお話で、本書では第3章を丸々費やしてこの件について言及しているという。

もちろん「緩和ケア」は、主にがんの方やそのご家族にとってはかなり大事なお話なんですが、そうでない人にとっては「がんにかかってから読んでも良くない?」と思うわけでして。

ちなみに私の義母は腎臓がんで他界しており、最後は緩和ケアを選択しており、私自身他人事ではないとはいえ、本エントリーで断片的に扱うのは少々難しいので、自重しております。


◆逆に、本書の第1章と第2章は、まさに「痛み」についての知識が豊富に得られる点で、ここだけでも本書の元は取れるかと。

まず第1章から抜き出した上記ポイントの1番目など、「やせ我慢」することの弊害がしっかり指摘されています。

特に放っておいても問題ない(改善する)痛みと、そうでない痛みを勘違いすると、大変なことになりかねません。

実際、以前当ブログでも触れたことがありましたが、隣の事務所の職員さんは、「頭が痛い」と毎日のように言っていたら、それからほどなく、くも膜下出血を発症して緊急手術を受けることになりましたし。

……とりあえず、市販の鎮痛剤で収まらないような痛みは、何かしら「ヤバい」と思った方が良さげです。


◆また同じ第1章からの上記ポイントの2番目は、子どもにやってた「痛いの痛いの飛んでけ」に効果があると断言。

もちろん、痛みが飛んでいくのではありませんが、「さする」ことにより「ゲートコントロール理論」が発動するわけですね。

なお、この理論のメカニズムで必要なのは「圧迫刺激」ではなく「触覚刺激」なので、「押すというよりは、強めにさする」ようにすると良いのだそうです。

さらにこういう民間療法(?)的なお話として、第2章から上記ポイントの3番目の「かき氷」も抜き出してみました。

かき氷を注文すると、たいてい温かいお茶が提供されるのは、こういう仕組みがあったのだとは!?

ちなみに私はしっかり頭痛が起きるのですが、そうなるのは「一般人の1/3ほど」なのだとか。

……逆に残りの2/3の人に何も起こらないのが信じられませぬ。


◆同じ第2章では、もっと深刻な「肩こり」に関してもページが割かれており、予防の基本は、やはり「姿勢」と「ストレッチ」なのだそう。

もっともこの辺は、専門に扱っている類書の方が詳しいかもしれません。

当ブログでもこんな作品をレビューしてますしね。

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取れない疲れが一瞬で消える 神ストレッチ

参考記事:【スゴ腕!?】『取れない疲れが一瞬で消える 神ストレッチ』佐藤義人(2019年10月03日)

一方、本書で言及されているのが、上記ポイントの4番目の「飲み薬」や「貼り薬」。

専門用語にリンクを張っていますが、本書内では別の部分でキチンと説明されていますから、その辺はご安心ください。

さらには、最後の「神経ブロック注射」も本書では別途腰痛の部分でしっかり解説されています。

個人的には腰痛はさておき、肩こりで注射というのは、若干抵抗があったのですが、有力な選択肢の1つとして覚えておきたいところかと。


◆そして最後のポイントの5番目は、無痛分娩をテーマにした第5章から引用しました。

ちなみに我が家では、ムスメもムスコも無痛分娩で生まれてきており、こちらもかなり身近なテーマだったりします。

……それにしても、表を見て驚いたのですが、世界の無痛分娩率は、フランス8割、アメリカ7割で、フィンランドは9割近い一方、なぜかイギリス、ギリシャ、イタリアが2割程度というのが謎。

さらにそれを下回る日本はたった1割弱なのですから、もう少し増えてもいいとは思います。

なお、ここでは「麻酔の危険性」が誤解であることを明らかにしていますが、そのほかにも「痛みに耐えると母性が生まれる」とか「我慢が美徳」などという大昔の考え方も影響しているのだとか。

いずれにせよ、古い考えは捨てて、かつ、麻酔についても本書を読んで理解を深めていただきたいと思う次第。


痛みに関する疑問が解ける1冊!

4344986733
とれない「痛み」はない (幻冬舎新書 671)
第1章 「痛み」とは何か
第2章 頭痛、腹痛、肩こり、腰痛、関節痛は、こうして治す
第3章 終末期の痛みや苦しみはとり除ける
第4章 手術時の麻酔は本当に安全なのか
第5章 「痛くない出産」が日本で広がらない理由
第6章 痛みに困ったとき、どうやって病院を探すか


【関連記事】

【スゴ腕!?】『取れない疲れが一瞬で消える 神ストレッチ』佐藤義人(2019年10月03日)

【緩消法?】『「疲れない体」は指一本で手に入る』坂戸孝志(2017年12月05日)

【医療リテラシー】『自身を守り家族を守る医療リテラシー読本』松村むつみ(2021年10月22日)

【病院ハック?】『医者が教える 正しい病院のかかり方』山本健人(2019年12月06日)

【ガンの真実】『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』近藤慎太郎(2018年12月22日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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