【仕事術】『独立思考　独りでも考え抜き、組織で成果を最大化する』山本大平:マインドマップ的読書感想文

2022年12月09日

【仕事術】『独立思考　独りでも考え抜き、組織で成果を最大化する』山本大平

独立思考　独りでも考え抜き、組織で成果を最大化する

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本冬のキャンペーン」からの注目作。

……やっと朝日新聞出版さんをチェックできたので、晴れてレビューすることできます。

アマゾンの内容紹介から。

10万部突破の『トヨタの会議は30分』著者による、どんな環境でも自分で考えて動ける仕事の基本。「先にサードドアを探せ」「７割の出来にこだわる」などトヨタ、TBS、アクセンチュアで得た、実践的なスキル・思考が身に付く。

送料を加算した中古よりは、Kindle版が500円弱お得な計算です！

Drawing UML / joone4u

【ポイント】

■1.自分で現地現物の情報を得る

　たしかに近年では、有益な情報はネット上でも拾えるようになりました。
　一方で、ネットの情報の中には、残念ながら「嘘」が混じっています。
　つまり、受け取る側に、情報の「見極め力（リテラシー）」が求められます。
　では、疑う余地のない情報とは、いったいどんなものでしょうか。
　結局は、最終的に「自分の目で確認したり、身をもって体験したりすることで納得した情報」ということになります。
　そうした情報を得るために使えるのが、「三現の教え」です。
〝成果を出す人〟はこの教えを「基本中の基本」としています。
　三現とは、「現地」「現物」「現実」の3つ。
「現地」にも必ず足を運んで、「現物」をなるべく近くで観察・確認し、その上で「現実」的な判断を下す、といった意味です。

■2.表よりもグラフを多用する

　分析の肝は、「相対比較する」こと。そして「時系列で変化を確認する」こと。
　この2つが大きなものです。とくに後者の場合には、グラフ化は有効です。
　先述したように、グラフ化することで、時系列推移を見える化し、シンプルに変化点に気づくことができます。
「なぜ変化が起きたのか？」という推察は、グラフ確認の後に行えばよいです。
　強調したいことは、ほとんどの場合「グラフは表に勝る」ということです。「そんなの分かっているよ！」という声が聞こえそうですが「あなたの私生活の事象もグラフ化していますか？」と返しておきます。グラフ化できることとグラフ化を習慣づけていることには、独立思考の体得に大差が生じてしまいます。

■3.具体と抽象を往復する

　私のこれまでの経験から、卓越したビジネスパーソンほど思考にあたって「具体と抽象の行き来のスピードが速い」という感覚を持っています。(中略)
　例えば、「犬を飼いたい」と考えて、ペットショップに行ったときのことを考えてみてください。
　もしもペットショップの店員に「どんな種類の犬でも大丈夫ですよね？」と聞かれたら、おそらくあなたの頭には「？」が浮かぶはずです。(中略)
　一方で、仮に「犬」の価格がいずれもあなたの希望予算を大きく超える場合はどうでしょうか。
　仮に、犬の価格が猫の3倍になるとしましょう。
　この場合、あなたは「猫」を飼うことが視野に入ってくるのではないでしょうか。
　つまりは、そういうことです。
　あなたは犬が飼いたいと思っていたものの、「犬」を飼うことにこだわっていたわけではなかったわけです。
　もっと抽象化して考えると「寂しさを紛らわすため」だったり、「家族のような存在がほしいため」にペットを飼いたいという願望を持っていただけだと気づくはずです。

■4.恒久対策と暫定対策を分けて考える

　恒久対策とは、起きた問題を根本から解決する対処を行うことを意味します。
　一方で、暫定対策とは、とりあえずその場をしのげる対策を意味します。
　ここでは、新型コロナウイルスの蔓延に対する政府の対応をイメージすると、分かりやすいのではないでしょうか。
　感染拡大を防ぐために、政府が「マスクの着用」や「手洗い・うがい」の推奨をしましたが、これは暫定対策です。
　一方で、「ワクチン接種」を可能にしたり「飲み薬の開発」に注力したりするなどの対策が、恒久対策に相当します。
　ビジネスの現場でも話は同じです。問題を放置できないからこそ問題解決に取り組むわけですので、仮にコストがかかってもまずは暫定対策を早い段階で打つべきです。
　その後に、コストやメリットまでもじっくりと検討して、恒久対策を打つべきです。
　最初から100点満点の対策を打つことよりも、まずは火消しが求められます。

■5.「まめな確認」がスピードと信頼を高める

　まめな合意確認は、あなたの信頼度を上げる作業に繋がります。
　職場で、最終案だけをドンっと提示しても、すべてが覆ることだってあり得ます。
　そして、もしもそうなったら、要した時間さえも無駄になります。
　双六で言えば「振り出しに戻る」です。
　そういった意味でも「まめな確認」を怠ってはいけません。
　さらに付け加えると、仕事をする際には「極力多く」の関係者に確認をとりながら動くと、あなたは支持を得やすくなります。
　昨今では、このような行動を「根回し」と言って、ネガティブに捉える方々もいらっしゃいます。
　しかしここで述べたようなことは〝正しい根回し〟と言えます。
　正しい根回しは、積極的に行うべきです。

【感想】

◆本書の内容に入る前に、著者の山本さんの経歴について触れておくと、まず新卒でトヨタに入社。

トヨタではエンジニア職だったにもかかわらず、TBSのマーケティング職に転職し、その後、外資系コンサルのアクセンチュアに移って経営の経験を積み、コンサル会社であるF6 Design社を創業されたのだそう。

この辺、今まで読んだビジネス書の多くの著者さんの経歴とは、結構違うと言いますか、前職とあまりつながりのなさげな会社や仕事に就かれているのが特徴だと思います。

ちなみに、本書のタイトルである「独立思考」がどういうものかについては、山本さんいわく

組織に依存せず、前例や慣習にとらわれず、自分の頭で考えたアイデアを行動に移し、仲間と適切にコミュニケーションを取り、成果を最大化する働き方

を意味するのだとか。

確かにこれからの社会で、「安定した組織」というのはなかなか難しいと思いますから、「独立思考」が身を助ける可能性は高いでしょう。

◆さて、本書の中身を見ていくと、まず第1章では「独立思考の三原則」なるものが紹介されています。

上記ポイントの1番目は、その中の1つである「原則(2) 現場で！」からのもの。

ただ、この「三現の教え」とは、俗にいう「三現主義」として、山本さんのいらしたトヨタや、ホンダで取り入れられていますから、ご存じの方も多いかもしれません。

実際に山本さんもトヨタ時代には、他社の車両をひんぱんに見に行っていたのだそうです。

……なお山本さんのこちらの作品が、今月の「Kindle月替わりセール」の対象になっていますが、その頃のお話が収録されている模様。

トヨタの会議は30分～GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術～

◆続く第2章から抜き出したのが、上記ポイントの2番目のグラフのお話。

ここでは相手に端的に伝えることを意識して、「表よりグラフ」と主張しているのですが、コミュニケーションのケース以外でも、グラフの優位性は感覚的にも分かると思います。

ちなみに、引用部分の最後で「私生活の事象もグラフ化していますか？」とありますが、本書では「ラーメンと売上の相関のあるサイドメニュー」について、ギョウザとシュウマイを比較。

1日あたりのラーメンとギョウザ並びにシュウマイの売上をプロットしているのですが、確かに分かりやすかったです（厳密には私生活ではなくてビジネスですが）。

また、中央値や平均値、さらには偏差値のお話も登場しますので、この辺も押さえておいていただきたく。

◆一方第3章では「問題の解像度を上げる」ことがテーマです。

具体的には、MECEに沿ってどんどん分けていくこと！

たとえばケーススタディとして、「万年最下位のプロ野球球団の監督に就任した」場合に、何から手を付けていくかが述べられています。

　つまり、勝率UPというKGIを構成している要素に分けて、それぞれを数値で見える化する必要があります。また数値化の際には、自チームだけではなく、他チームのデータもそれぞれ数値化しなければ意味がありません。

そこで、本書ではまず「攻め」と「守り」に分け、さらに「攻め」なら「打」「走」、「守り」なら「投」と「守備」に分けて、さらに……とどんどん分解していく次第。

「これはビジネスにおいて、売上や利益がKGIだとしても全く同じ作業になる」そうですから、身につけたいところですね。

また逆に、具体から抽象へ、さらには両者を行き来する必要があることも、上記ポイントの3番目では指摘されています。

なお、こうした「具体＆抽象」をテーマにしている作品としては、こちらがオススメ（現在Kindle版が定価の「50％OFF」ほどになっています）。

「具体⇔抽象」トレーニング思考力が飛躍的にアップする29問 (PHPビジネス新書)

参考記事：【具体⇔抽象】『「具体⇄抽象」トレーニング思考力が飛躍的にアップする29問』細谷功（2020年03月26日）

◆なお、第4章と第5章からは、それぞれ上記ポイントの4番目と5番目を抜き出しました。

前者の「恒久対策と暫定対策を並行して行う」ことは、私自身、会社員時代のトラブルの際には、時間との闘いの部分もあったので、必然的に行わざるを得なかった記憶が。

「時間稼ぎ」と言ったら語弊がありますが、恒久対策が打てるまでに、何とか暫定対策で被害が広がらないよう苦労していたものでした。

そして後者の「まめな確認」もやはり、会社員時代には頻繁に行っていたワタクシ。

ただ、山本さんの言われるような「『最も効率的に仕事を前に進めるための健全な根回しは何か』と常に問い、動くように心がける」までには至りませんでしたね。

「自分で考えて動ける」ビジネスパーソンになるために読むべし！