2022年11月21日
【amazon流?】『amazonのすごい人事戦略』佐藤将之
amazonのすごい人事戦略
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「東洋経済新報社50%ポイント還元キャンペーン」でも注目を集めている1冊。ちょうどTwitter社が混乱していることもあってか、この本について触れられている発言を目にしたため、読んでみることにしました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
社員と組織が最高のパフォーマンスを発揮し、持続的に成長し続ける、ジェフ・ベゾスが考えた究極の仕組み!
中古がほとんど値下がりしていないため、このKindle版が800円弱お得となります!
Amazon's front door / Robert Scoble
【ポイント】
■1.常に「自分が経営者ならどうする?」と考えるたとえば自分の成績を上げるために、お客さまの利益を損なうような手段をとってしまったらどうでしょうか。お客さまを大事にするのがすべての前提なのに、自分や自分の部署など部分最適を優先させて、お客さまを無視した行動をするのはOwnershipの欠如だといえます。会社をこれから永続的に経営するのであれば、優先すべきことは何かわかる。そういうふうに考えて行動できる人たちがOwnershipを持つ人であると言っているのだと思います。
自分の部署がネガティブな状態になったとしても、全体としてプラスになり、かつそれがお客さまのCustomer Experienceにポジティブな影響を与えるのであれば、自分の部署が苦しい状況になるのを受け入れていくことも大事。もし自分が会社の経営者であれば、1つ上の高い視線から全体を見渡して、こういう判断ができるはずです。
■2.リーダーも間違えることはある
Are Right, A Lotは、主語を略した言い方で、正式にはLeaders are right a lot(リーダーは多くの場合正しい)という言葉です。実はこれはマネージャーの立場にいる人間にとって、ありがたい言葉かもしれません。管理職やリーダーは「多くの場合」正しいのであって、常に正しいとは言っていない。「あなたたちがミスをすることがあると知っているよ」と言ってくれているからです。
そしてそれと同時に、「これまでの経験から導き出す判断は多くの場合、間違っていない。だから自分の直観を信じて進みなさい。ただしそれは常に正しいわけではないから、少しでも精度を上げるために、データや現場をよく見て正解率を上げる努力をしなさい」ということだと私は思っています。(中略)
いずれにせよ、1回ミスをしただけで、「はい、クビ」という会社が山ほどある中で、「失敗してもOK。そこから何を学んだかが大事だから」と言ってもらえるのですから、アマゾンのリーダーたちはラッキーだと思います。
■3.人からの指摘を真摯に受け止める
「あなたのチームは、何かおかしなことをしているね」
と誰かに言われたとします。そのとき、
「いやいや、そんなことありません。うちはちゃんとやってます。どうしてそんなことを言うんですか?」
というのではなく、
「そうなの? ちょっと調べてみるわ」
と言って確認する姿勢のことです。その結果、自分のチームが間違っていたら、
「ごめん、これミスってた。すぐ対応するから」
と言えるようであることです。
「自分は正しい」ではなく、「間違いを指摘されたということは、何かあるかもしれない」と思って、自分で自分を批判的に見て、間違いを直せることを指しています。
■4.採用で見るポイントはWhatでなくHow
すでに社会人経験がある方を採用するにあたっては、どんな仕事をしてきたかを確認することがもちろん大前提となります。つまり何ができるか、Whatを見るわけです。
しかしアマゾンでは、採用面接を受けに来た方が経歴を問われて、
「私は1000億のビジネスを回していました」
と言っても、それだけでは面接官にはまったく響きません。
なぜならその応募者は、たまたまいつも1000億を売り上げる部署に配属されて、責任者を務めただけかもしれないからです。
アマゾンでは、それよりも、どうやって1000億を売り上げたかというHowに注目します。ですから採用面接では、
「それをどのようにして実現したのですか」
「あなたはそこでどんな役割を果たしたのですか」
ということを聞きます。それが本当に実力として備わっているか、アマゾンに入ってきたときにそれが再現できるかどうかを入念に確認するのです。
■5.アマゾンの面接で必ず聞かれる質問
アマゾンは失敗を否定しない会社です。誰もやったことのないことに初めて挑戦する人が、100% 成功するなんてありえない。だから失敗は否定しない。でも上手に失敗しないと次につながらないから、どのように上手に失敗したのかを大切にします。そういう考え方をするので、採用面接でも「どんな失敗をしてきましたか」とよく尋ねます。(中略)
応募する側からすると、「前職では会社にこんなに損失を与えてしまいました」なんて言えば、もう採用されないのではないかと心配になるかもしれません。でもその失敗の質や内容によっては、むしろポジティブにとらえられます。大事なのは失敗から何を学んだかです。
前述のようにアマゾンのOLPにはVocally Self Criticalという項目があって、失敗をきちんと表明することが、人から信頼を得るための資質だと考えています。
だから失敗をちゃんと言えないようでは、逆に困るのです。
【感想】
◆タイトルに「人事戦略」とあって、確かに後半に選考の基準や採用の過程等々もあるので、当然と言えば当然かもしれませんが、自分の仕事が「採用関係ない」という理由で本書を読まないのは少々もったいない気が。というのも本書の中心となるのは、表紙にも記されている「OLP」(Our Leadership Principles)という14項目からなる理念だから。
ここでまた「Leadership」とあるゆえ、「自分はリーダーじゃないし」と避けられる危険性もあるのですが、本書の第1章にはこうあります。
OLPのLはLeadership(リーダーシップ)のLであり、Leader(リーダー)のLではないのです。リーダーは役割を指すものですが、リーダーシップは役割に関係なく、誰もが仕事を通して発揮すべきものです。OLPは決して管理職とかマネージャーのものではなく、アマゾンのすべての社員のものなのです。さらには採用も人事のみが行うのではなく、基本的に新しい人材を必要とする部の、直接の上司になる人も面接官になるのだとか。
つまり本書に記された内容は、アマゾンにおいてはほぼ全社員が関係してくるワケですね。
◆ところでこの「OLP」の14項目ですが、ネタバレ自重すべきなのか考えたものの、ググれば普通にアマゾンのサイトに出てきたので、ここでも列挙。
1)Customer Obsession(顧客へのこだわり)これらはそれぞれについて、第2章にて解説されており、たとえば上記ポイントの1番目は「OLP」2番目の「Ownership(オーナーシップ)」からのもの。
2)Ownership(オーナーシップ)
3)Invent and Simplify(創造と単純化)
4)Are Right, A Lot(多くの場合正しい)
5)Learn and Be Curious(学び、そして興味を持つ)
6)Hire and Develop the Best(ベストな人材を確保し育てる)
7)Insist on the Highest Standards(常に高い目標を掲げる)
8)Think Big(広い視野で考える)
9)Bias for Action(とにかく行動する)
10)Frugality(質素倹約)
11)Earn Trust(人々から信頼を得る)
12)Dive Deep(より深く考える)
13)Have Backbone; Disagree and Commit(意見を持ち、議論を交わし、納得したら力を注ぐ)
14)Deliver Results(結果を出す)
これは類書でも言われていることではありますが、たとえ新人であろうとも「自分が経営者だったら」という視点を持つことは、大事だと思います。
◆同じく上記ポイントの2番目は、「OLP」4番目の「Are Right, A Lot(多くの場合正しい)」のパートから抜き出しました。
「多くの場合正しい」ということは、「間違っていることもある」と会社としても認めているわけで、これは確かにミスを許容していると言えそうです。
ちなみに、「A Lot」とはどのくらいなのか、著者の佐藤さんが推測されているのですが、おそらく80%ぐらいではないか、と。
ただし、さらに上を目指さねばならないのは、言うまでもありません。
なお、この第2章だけでもかなりハイライトを引きまくったのですが、割愛した中では「Bias for Action(とにかく行動する)」での、今はなき「ダッシュボタン」のお話が興味深かったです。
あのボタン、1年半くらいで電池がなくなって使えなくなるのですが、実はそれでも良いのだそう。
というのも、多くの対象製品がその位のタームで新製品が出てきており、同時に切り替えることができるから。
もし同じようなボタンを日本の企業が作ったら、5年ぐらい稼働するものを作ったであろうし、そのまま旧製品を注文し続けたであろう、という指摘はうなずかざるを得ませんでした。
◆続く第3章では、これら「OLP」以外で、アマゾンでよく用いられる5つのキーワードについての解説が。
その中の1つが、上記ポイントの3番目を事例として挙げた「Vocally Self Critical(自分で自分のことを自己批判できる)」です。
何か海外では「間違いを認めたら負け」みたいなイメージがあったのですが(偏見です)、上記ポイントの2番目といい、よほどドメスティック企業よりも柔軟性があるな、と。
同じくキーワードの1つとして紹介されていた「Still Day 1」というのは、以前どこかで聞いた記憶がありました。
これはベゾスが常に言っている言葉で、「まだ1日目が始まったばかりだよ」という意味なのだとか。
ちなみに、ベゾスや経営陣がいたビルは、常に「Day 1 building」と呼ばれていたそうで、それだけベゾスが大事にしていた理念なんでしょうね。
◆一方第4章では、アマゾンの具体的な採用システムが紹介されており、ここも読みどころの1つ。
驚いたことに、アマゾンでは9割が中途採用とのことで、上記でも触れたように直接の上司になる人が、採用においては重要な役割を果たすことになります。
本書では一次面接や二次面接、さらにはその前に人事に提出するJD(ジョブ・ディスクリプション:職務の範囲を記述したもの)のお話も出てくるのですが、この辺はボリュームの関係で割愛。
興味深かったのが、上記ポイントの4番目の採用で見るポイントのお話で、この辺はアマゾンに限らず、転職の際の面接等で、突っ込まれやすいところだと思います。
さらにポイントの5番目の「どんな失敗をしてきましたか」という質問も、同じくアマゾンのみならず、面接で聞かれてもおかしくないので、あらかじめ準備しておくとよいかもしれません。
ちなみに、面接で採用されたある人いわく「アマゾンって、面接のとき、失敗した経験しか聞かないんですね」とのことなので、かなり徹底しているよう。
ただこれも、そういうシチュエーションのときにどう行動したかに、その人の本当の力が出やすいからなのだそうです。
アマゾンで活躍できる人材になるために読むべし!
amazonのすごい人事戦略
はじめに──毎年20%成長を続ける世界最強企業の秘密
Chapter1 アマゾンの人事は何がすごいのか?──基本的な考え方と概要
Chapter2 アマゾンのすべての基盤「OLP」──14箇条の秘密
Chapter3 アマゾンの人事がより理解できる5つのキーワード──アマゾニアンたちの口癖
Chapter4 アマゾンの採用──最高の人材を獲得する制度と戦略
Chapter5 アマゾンの育成──アマゾニアンに求められるスキルと思考
Chapter6 アマゾンの目標設定&評価──人と組織の成長を確実なものとする仕組み
Chapter7 アマゾンのリーダー研修──最強企業の幹部の育て方
おわりに──Cultivate Culture(アマゾンは文化の創造に貪欲)
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【必読!】『潜入ルポ amazon帝国』横田増生(2019年12月20日)
【編集後記】
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よろしければご参考まで!
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