2022年11月17日
【行動変容?】『イノベーションの競争戦略―優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?』内田和成

イノベーションの競争戦略―優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、現在開催中である「東洋経済新報社50%ポイント還元キャンペーン」にて、個人的に読みたかった注目作。おなじみ内田和成先生が「イノベーションの真実」について、レクチャーして下さっています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
イノベーションを横取りする企業、取り逃す企業、連続して起こす企業、どこが違うのか?
中古に送料を加算するとほぼ定価並みとなりますから、Kindle版が900円以上お買い得となります!

Big Idea / moore.owen38
【ポイント】
■1.イノベーションとは何かイノベーションとは、「顧客の価値観・態度が変わって、結果として生活やビジネス上の行動が変わったか?」という問いに対する答えが「 YES」のものがイノベーションなのだ。顧客がその製品やサービスを利用し、顧客の行動が二度と元には戻らない不可逆な状態となってはじめて、社会を変化させたということが言える。逆にそれができていないのであれば、世の中には何も変化を起こせていない。それはイノベーションでも何でもない。 (中略)
これまでにない価値の創造により、顧客の行動が変わること。
つまりイノベーションとは、いかに顧客の行動変容に至るかの競争なのだ。顧客の価値観や行動を変え、次世代の社会の常識を創ることで、自らがゲームチェンジャーとして新しい市場やビジネスモデルを創造することができる。競合他社に対する圧倒的な優位性を築くことができるわけだ。
■2.棚ボタでイノベーターになった「Zoom」
しかし、もう1つ考えるべきは、「なぜZoomだったのか」ということだ。思い出していただきたいのだが、我々はすでに「Skype」というオンラインでのテレビ電話ツールを使っていた。(中略)
それはコロナ前から保有していた技術に優位性があったからだ。Zoomの強みは、映像圧縮技術だ。つまりその分、テレビ会議をしていても映像が安定するし、多人数が参加した場合でも不具合は少ない。この技術的な差は、コロナ前ではあまり大きな価値にはならなかった。なぜなら、「一度に100人がオンラインで会議する状況」など日常的には起こり得なかったからだ。しかし、今や筆者らの所属する組織でも、大きなものなら100人近いメンバーがオンラインで参加する会議や講演会は日常的にある。つまり、他のドライバーが激変したことによって、技術における優位性が大きな価値となり、強力なドライバーとして作用したのだ。
■3.新しいが小さい価値創造だった「Quick1」
Quick1は、明星食品が1982年に発売したカップラーメンであり、「従来は3分であった待ち時間を1分に短縮する」というこれまでにない価値をもっていた。多くの人は、カップラーメンに対して「待ち時間は3分である」との態度を有していたが、Quick1の顧客は「待ち時間は3分でなくても構わない」へ態度変容が起きた。発売半年で30億円と予想を上回る売上を記録したが、たった2年で販売終了となってしまった。なぜ、新しい価値創造を行ない、態度変容にも成功しながら、行動変容が起こらなかったのか。それは、創造した価値が小さかったためである。待ち時間3分を1分に短縮したところで食事前の2分間でできることはほとんどなく、顧客の習慣が変わることはなかったのである。
■4.動画によるレシピサイトの追い上げ
回線環境の改善や動画ストリーミングサービスの浸透などで、ここ数年で動画はとても身近なものになり、動画撮影・制作用のカメラや周辺機器、ソフトが高品質かつ安価になり、簡単に動画を制作できるようになった。こうした変化の中、動画はわかりやすく情報を伝えるための効果的なメディアとなり、レシピサイトでも動画の需要が高まっている。
加えて、日常的に接する情報が爆発的に増えたことで、コンテンツが豊富に存在すること自体の価値は下がってしまった。クックパッドは、ユーザーがレシピを投稿することで、レシピ数が増え、その量が利用の多さにつながっていたが、今は逆に、その膨大なレシピの中から自分が必要とする情報を探し出すのは面倒だという考えに変わってしまった。つまり、見てわかりやすく、プロお墨付きの信頼性の高い情報が探せることが新しい価値になっているのである。
■5.日本企業はなぜイノベーションを起こせないのか?
日本企業は新しい価値を生み出せないことが日本でイノベーションを起こせない原因と考えているが、真の阻害要因はせっかくのアイデアや技術をビジネスに昇華することができないことにある。
踏み込んで言ってしまえば、ビジネスにすることができさえすれば、新しい価値を生み出したのが誰であるかはどうでもよい。くどいようであるが、大事なことは新しい価値を生み出すことではなく、その新しい価値を提供した結果、顧客の態度がどう変わり、どんな行動変容をもたらしたかにある。
もちろん、我々は新しい価値が重要でないと言っているわけではない。それなしには顧客の態度変容も起きなければ、行動変容も起き得ない。ここでは2つのメッセージを伝えておく。
1つは新しい価値を「自ら」生み出す必要はないということであり、もう1つは新しい価値というものは技術革新によってもたらされるより社会構造の変化や消費者や組織の心理変化からもたらされることが多いということである。
【感想】
◆この手のビジネスモデル系の作品が好きなので、ハイライトを引きまくってしまいました。とにかく本書の秀逸な点は、事例が豊富なこと。
それも比較的なじみのある商品やサービスがほとんどでしたので、イメージもしやすく、理解も容易でした。
そして本書で一貫して主張しているのは、「イノベーションの本質は行動変容」であるということ。
私たちはついつい「画期的な発明」「今までにないアイデア」がイノベーションだと思いがち(もちろんそのケースもありますが)ですが、本書は「顧客の行動が変わってしまって元に戻らない」ものこそイノベーションだと指摘しています。
それについて触れているのが、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目。
ここはまとめ部分なので、珍しく事例が登場していませんが、私たちは本書を読み進めるにつれて、深く納得することになります。
◆続く第2章では、イノベーションを引き起こす源泉である3つのドライバー(「社会構造」「心理変化」「技術革新」)について言及。
具体的な定義や内容については本書をお読みいただくとして、個々のドライバーだけでなく、複数のドライバーによってもイノベーションは起こりうるのだそうです。
その代表として挙げられていたのが、上記ポイント2番目の「Zoom」。
まず「Zoom」が人気となったのは、コロナ禍における「移動規制」が大きな要因でしたが、先行していた「Skype」との違いは、ここで触れている「映像圧縮技術」に他なりません。
もっとも、これはあくまで「大人数でオンラインで会議をする」という「非技術的な要素」が大きかったわけでして。
したがって本書の定義では、「Zoomはイノベーターか」という問いに対しての筆者らの答えは「イエス」である。しかし「 Zoom がイノベーションを起こしたのか」という問いに対しての答えは「ノー」である。ここに本書が考えるイノベーションの本質がある。つまり「 イノベーションは企業の技術革新の努力だけで起こせるものではない」ということだ。この章では他にもウーバーイーツにも触れられているのですが、そもそものウーバーの技術がどう活かされているかについては、初めて知りました。
◆一方第3章では、ドライバーによって始まったイノベーションが、どのように影響力を強めて、最終的に「行動変容」が起きるかの流れについて解説が。
今では当たり前のようにある「ウォシュレット」や「宅急便」が、イノベーションを起こすまでの過程は、非常に勉強になりました。
また、インスタが市民権を得たことで、私たちがインスタ映えのするお店に行ったり、逆にお店の方もインスタ向けの商品やサービスを開発する、というのもまさに「行動変容」だな、と。
ただし、実際には企業が価値創造を行っても、顧客に行動変容が起こらなかった事例の方が圧倒的に多いのだそうです。
具体的には「Google Glass」や「セカンドライフ」等々。
また、価値創造自体が小さくて尻すぼみになってしまったのが、上記ポイント3番目の「Quick1」なるカップラーメンでした(記憶にないんですが)。
明星さんにはまだプレスリリースがあったのでご紹介を。
「明星 Quick1」ブランド 3品 (2月18日発売) | 明星食品
◆さらに第4章では、後発者が油揚げをさらうトンビとなって、イノベーターとなった事例が登場します。
たとえばメルカリは、先行したフリルを追い越して、今やフリマアプリのトップとなりましたが、その裏にはいくつかの要因がありました。
また、Kindleもソニーのリブリエの後追いサービスですし、味の素の「ほんだし」は「シマヤだしの素」の後発組。
これらもそれぞれ、先行サービスを出し抜けた理由があるので、詳細は本書にて。
さらには、1度は天下を獲ったサービスでも、取って代わられることがある、という例が、上記ポイントの4番目のクックパッドです。
もちろん、クックパッドも動画レシピに乗り出してきているそうなので、これもまだ結論が出たわけではありませんが。
◆なお、上記ポイントの5番目は、1つ飛んだ第6章の「イノベーション成功への提言」からのもの。
繰り返しになりますが、結論としてはここで述べている
大事なことは新しい価値を生み出すことではなく、その新しい価値を提供した結果、顧客の態度がどう変わり、どんな行動変容をもたらしたかにあるという一文に尽きると思います。
よく言われているのが、iPodがイノベーションを起こせたのは、それ単品だけでなく、iTunesという音楽管理アプリとiTunes Storeという音楽販売ストアがあったからであり、そこがウォークマンとは違ってたということ。
そして本書の結論としては、「インベンター(発明者)ではなくイノベーター(変革者)を目指せ」と言われており、これにはうなずきまくりました。
私のような文系にとって「イノベーション」は別世界のお話だと思っていましたが、意外と身近なのかもしれませんね。
イノベーターを目指す方なら必読の1冊!

イノベーションの競争戦略―優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?
序 章 イノベーションを問う
第1章 競争戦略としてのイノベーション
第2章 イノベーションのトライアングル
第3章 イノベーションのストリーム
第4章 逆転のイノベーション
第5章 連続するイノベーション
第6章 イノベーション成功への提言
【関連記事】
【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)【イノベーション?】『レッド・オーシャンで儲ける7つの法則』高橋正明(2014年08月30日)
【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)
【イノベーション】『10年後躍進する会社 潰れる会社』鈴木貴博(2014年02月13日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
精神科医Tomyが教える 運を良くするたったひとつの正しい方法
フォロワー20万超えという精神科医Tomyさんの自己啓発書。
中古があまり値下がりしていないため、Kindle版が800円弱お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「東洋経済新報社50%ポイント還元キャンペーン」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
巨神のツール 俺の生存戦略 富編

巨神のツール 俺の生存戦略 知性編
参考記事:【知性編】『巨神のツール 俺の生存戦略 知性編』ティム・フェリス(2022年11月16日)

リデザイン・ワーク 新しい働き方

巨神のツール 俺の生存戦略 健康編
よろしければご参考まで!
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