2022年10月18日
【EQ?】『心の知能指数を高める習慣』三浦将
心の知能指数を高める習慣
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ストア10周年キャンペーン」でも人気の1冊。コーチング本で定評のある三浦 将さんが、「EQ」について掘り下げた作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
エグゼクティブコーチとして、企業経営層や、オリンピック日本代表などのコーチングに携わる著者が気づいたことは、「コーチングとは、クライアントのEQ(心の知能指数)を高める活動である」ということ。テクノロジーが急速に発展する現代では、「素早く適切な答えを出す能力(IQ)」以上に、「自分と他者を理解して最適な行動ができる能力(EQ)」が成功のカギとなります。本書は、コーチングのプロセスに沿って、対人関係や課題解決のキーとなるEQを高める方法をまとめた1冊です。
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【ポイント】
■1.肩書が上がるとEQは落ちるこの傾向は、前出のトラヴィス・ブラッドベリーらが、1000人のCEOを含む、全世界50万人に調査を行った結果にも明確に出ています。その調査では、マネージャー、ディレクター、エグゼクティブ、シニアエグゼクティブ、CEOと役職が上がるにつれ、平均EQ値がどんどん落ちていくという衝撃の事実が明らかになりました。これは、私のように地位と権限を得ていくにしたがって勘違いを増していって、大切なEQ値をどんどんと落としていく人が多いという事実を物語っています。 (中略)
一方、エグゼクティブ以上の中でもEQのスコアが高い人たちは、仕事のパフォーマンスも高く、組織の繁栄に大きく貢献しているということも、同調査でわかっています。
つまり、「本物の人」たちは、地位や権限を得ても、驕り高ぶることなく、部下や周りの人たちの気持ちを読み取ろうという姿勢を持ち続けて、さらにEQを高め、業績を挙げ続けているということです。
■2.感情というパワーソースを利用する
EQという言葉の提唱者である心理学者ダニエル・ゴールマンは、「傑出したリーダーと並のリーダーの相違のほぼ90%は、知的な洞察力ではなく、感情に起因する」と言っています。リーダーが、感情の奴隷にならず、破壊のパワーにも成り得る感情を、創造のパワーへと変換するEQを持ち得たとき、成功への扉が開いていくのです。
そういった意味で、感情はじゃじゃ馬のようなものです。サラブレッドでも、大レースを制するような名馬は、もともとじゃじゃ馬のような気質を持っている馬が多いそうです。それをレースに集中できるような性格に仕上げていくのが調教師の仕事であり、レースの本番で、その力をゴールへの集中したパワーへと導いていくのが騎手の仕事です。
私たちは自分の感情の調教師であり、騎手でもあるのです。
■3.「感情の見える化」をする
感情をメモに残し、見える化する習慣は、コーチングのクライアントのみなさんや、私が主催するオンラインサロンの仲間のみなさんとのやり取りを通じて、その絶大なる効果を実感しているものの代表格です。
やることは簡単です。やり方これらのやり方に沿って、1日の終わりに、その日に起きたことで、ポジティブにでも、あなたの感情が反応したことを書き残すだけです。
その1:感じた気持ちについてだけを具体的に書く(できるだけ毎日)。
その2:感情の強さを1(とても弱い)から10(とても強い)の間でスケーリングしておく。
その3:1回の量は問わない。1行だけでもいいし、書きたいときは数ページ書いてもいい。
その4:書いてある自分の感情にいちいち良い悪いといった評価をしない。
その5:出来事の反省や振り返りについて書きたい場合は、別のノートに書く(反省や振り返りモードに入ると、感情に良い悪いの評価が入ってしまうため)。
■4.自分を実況中継する
例えば、怒りというネガティブな感情があるような場合、「私は怒っている」、「怒っている私がいる」と思えたら、実況中継の始まりです。「私は怒っている」、「怒っている私がいる」と思えた時点で、怒っていることを少し冷静に意識できている状態になっているということです。(中略)
ネガティブな感情に支配されている自分を意識できるようになったら、次は客観的な言葉で実況中継することです。「私は怒っている」上記では下の段階にいくほど、より客観的な表現になっています。こういった客観的、俯瞰的な言葉で実況中継していると、刺激に反応している自分からの切り離しがさらに進んで、心が落ち着いていきます。
⇒「“怒っている私”がいる」
⇒「“怒っている私”を私は観ている」
⇒「“怒っている私”を私はわかっている」
■5.本音でポジティブに要求する
× こうやって、毎日毎日靴下を脱ぎっぱなしにするなんて、だらしのない人のすることよ。大人にもなってこれではダメだと思う。いい加減にしてそれまでWさんは、×のパターンの要求を繰り返していました。◯のパターンで伝えるようになった結果、旦那さんはWさんが本当に求めていることを理解し、脱いだ後きちんと洗濯機の中に入れてくれるようになったそうです。(中略)
◯ 靴下を脱いだら、洗濯機に入れてください。お願いです。このお願いをやってくれないと、私はあなたに無視され、ないがしろにされ続けているような悲しい気持ちになります。だから、あなたがやってくれたら、とても嬉しい
人によっては、「大人は感情をおいそれとは言葉にしないものだ」という観念をお持ちの方もいるでしょう。
ここで大事なことは、適切なやり方を取れば、あなたの本音の感情をきちんと表現した方が、むしろ関係性を高めることができるということです。
このやり方を習慣化することで、あなたの感情の知能指数は、しっかりと向上の方向性を示します。
【感想】
◆コーチングのメソッドに則った、なかなか実践的な作品でした。まず第1章では、本書のテーマでもある「EQ」について掘り下げた内容が登場。
冒頭の内容紹介でIQに触れられていますが、奇しくも昨日ご紹介した作品同様、IQのような従来の物差しだけではダメで、これからはEQが重要になってくるようです。
ただしEQが備わっていれば出世できるかというと、むしろ上記ポイントの1番目にもあるように、一般的に役職が上がるほど、EQは下がってしまう模様。
この件に関して「なるほど」と思ったのが、「トップは孤独である」というフレーズです。
もちろん、単独で判断等を行わねばならないケースもありますが、実際はEQが下がるように、「人との関係性において、勘違いをし始めるせい」で孤独になるのだとか。
◆続く第2章は「感情」がテーマです。
よくネガティブな感情に直情的に反応してしまう(著者の三浦さんは「サル的な反応」と呼んでいます)人がいますが、そういう人はEQが低い人。
上記ポイントの2番目で、ダニエル・ゴールマンが指摘するところの「感情の奴隷」になっているわけですね。
では逆に、どのように感情をパワーにするかというと、不満をまき散らすのではなく、感情を創造のパワーへ変換すべし。
何らかしらの不満があったら、「それらを解決するのに何ができるか?」を考えるのが良いそうです。
◆一方第3章からは、実際のコーチングのプロセスに沿ったお話が中心に。
まず、「絶大なる効果を実感している」と言われているのが、上記ポイントの3番目の「感情をメモに残し、見える化する」というTIPSです。
確かに、良くも悪くも感情をスケーリング化する時点で、客観視できそうな。
ただし注意すべきは「評価しない」こと!
ポイントとしては、書いてある「自分の感情にいちいち良い悪いといった評価をしない」という点にあります。このことをしっかり守ることが成否を分けると言っても過言ではありません。また同様に、内容がネガティブな感情ばかりであっても問題ないのであり、そんな思いを持っている自分を良い、悪いと評価してもいけないのだそうです。
◆さらに第4章から抜き出した、上記ポイントの4番目の「実況中継」は、以前別の本で読んだ記憶がありました。
確かその時は、緊張を抑えるためだったと思うのですが、本書のように「怒り」から距離を置くのにも効果的なよう。
特に三浦さんは「サル的な反応」になぞらえて、「今回の怒りはゴリラ級ですね」のように中継することで、刺激に反応している自分から「切り離し」たりするそうです。
なお上記ポイントの5番目は1つ飛んで第6章から抜き出したもの。
バツのパターンは怒りに任せて相手に要求をしていますが、マルのパターンは正論を押し付けるのではなくて、自分の感情を訴えています。
私自身、相手に何かを訴える際には、「正論であるべき」「感情何ぞもってのほか」と考えていましたから、これは結構目からウロコ。
なるほど、EQは奥が深いです……。
公私ともに役に立つ1冊!
心の知能指数を高める習慣
第1章 EQ:心の知能指数
第2章 自分の感情を利用できるようになる
第3章 自己を理解する(STEP1)
第4章 感情を管理する(STEP2)
第5章 共感力を高める(STEP3)
第6章 関係性を高める(STEP4)
第7章 あなたの中に変化を起こすには
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。唯識の思想 (講談社学術文庫)
タイトルにある「唯識」については、下記Wikipediaをご参照のこと。
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参考記事:唯識 - Wikipedia
【編集後記2】
◆一昨日の「文藝春秋 40%ポイント還元セール」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章 (文春e-book)
Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章 (文春e-book)
天才の思考 高畑勲と宮崎駿 (文春新書)
世にも危険な医療の世界史 (文春e-book)
よろしければご参考まで!
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