2022年10月08日
【科学的自己啓発書】『自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学』ケイティ・ミルクマン

自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも一番人気だった科学的自己啓発書。ライフハックや行動改善に興味のある方なら、要チェックな1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
著者はペンシルベニア大学ウォートンスクール教授の行動科学者。
ウォートンで優秀教師賞を繰り返し受賞、世界で最も影響力の大きい経営思想家「Thinkers50」に選出、ホワイトハウス、Google、国防総省、赤十字社など、世界中の組織に助言を行っている。
そんな著者が最新の行動科学の成果を存分に使い、「行動変革の方法」を徹底的に説いた画期的な書!
中古価格が定価の倍値しますから、「10%OFF」のKindle版がお買い得です!

Success Key / Got Credit
【ポイント】
■1.「ちょうどいいタイミング」だと、効果が変わる老後の生活設計は長期的な健康維持のカギを握るが、ほとんどのアメリカ人は貯蓄が足りていない。(中略)
そこで、一部の人にはいますぐ貯蓄を始める選択肢に加えて、将来の日付を開始日にする選択肢も与えた。そしてその日付として、一部の人にはフレッシュスタートを想起させる日(次の誕生日や春の初日など) を提示し、残りの人にはフレッシュスタートの日付ではない、適当な、何の意味もない将来の日付や、フレッシュスタートを想起させない休日(キング牧師の祝日など) を示した。
フレッシュスタートを想起させる日付は、めざましい効果を挙げた。 「次の誕生日」や「春の初日」に貯蓄を始めましょうと促す手紙は、適当などこかの日に貯蓄を始めるよう促す普通のお知らせに比べ、20%から 30%も効果が高かった。
■2.ゲーミフィケーションの効果はコミット次第
この営業の仕事をもっとおもしろくするために、イーサンとナンシーはプロのゲームデザイナーの協力を得て、 バスケットボールをテーマにした営業のゲーム をつくった。 担当者は企業から販売契約を取りつけると、契約の規模に応じてポイントを獲得した。(中略)
バスケットボールのゲームをまったくばかげていると感じた(したがって、ルール通りプレイしたいと思わなかった)参加者は、ゲームが導入されると仕事への満足感が下がり、営業成績が少々下がってしまった。ゲームの恩恵を受けた(仕事への意欲が大きく高まった) のは、完全にコミットした参加者だけだった。
この実験は、企業がゲーミフィケーションで犯しがちな過ちを明らかにしたと、イーサンとナンシーは考えている。
従業員が会社によって「義務的なお楽しみ」に強制的に参加させられていると感じれば、ゲーミフィケーションは何の役にも立たず、かえって逆効果になりかねない。
またゲームが駄作なら(駄作でないゲームをつくるのはとても難しい)、誰にとっても無益だ。運動と退屈な講義をバンドルするようなものだから。
■3.人々が効果のある方法を採用しないワケ
ただ、研究者によれば、世間には2種類の人々がいる。
自制の問題を抱えていること自体はみな同じだ。
しかし一部の人は自分の衝動性を自覚し、それを抑制する手段を講じようとする。行動経済学者は彼らを「賢明タイプ」と呼ぶ。
だが世の中、賢明タイプばかりではない。そのことは、グリーン銀行の型破りな貯蓄商品のことを聞かされたウォートンMBAの学生の拒否反応からも明らかだ。
多くの人が、自分だけは自制の問題を乗り越えられると過信している。経済学者は彼らを「単純タイプ」と呼ぶ。
誰しも自分は賢明タイプだと思いたがるが、じつのところ、世界は単純タイプだらけだ。以上をまとめると、「コミットメント装置は役立つのに、なぜ使わない人がこんなに多いのか」という疑問への答えは、自分への過信と、失敗してコストを払いたくないという健全な恐れで説明できる。
■4.「デフォルト」にする
ペン・メディシンの奇跡的成功は、まさに最も楽な道を行こうとする人間の習性のおかげで起こった。ペン・メディシンの医師は、あるソフトウェアを使って処方箋を薬局に送っている。システムの定期更新を行うITコンサルタントが、このソフトのユーザーインターフェースにわずかな変更を加えた。小さなチェックボックスを1つ追加したのだ。
そしてそれ以降、医師がそのボックスにチェックマークを入れない限り、彼らが処方するすべての医薬品が、ジェネリック医薬品として薬局に送信されることになった。
医師も私たちと同じで、やや怠惰な傾向があるため、ボックスにわざわざチェックマークを入れることはまれで、そうする人は全体の2%に過ぎなかった。その結果、ペン・メディシンでのジェネリック処方の割合が 98%に急増したというわけだ。
■5.「話したことを信じる効果」で自分が信じてしまう
ローレンは、助言提供の力に関するこれらの研究について、考えれば考えるほど納得できた。アドバイスを求められた人は、自分はもっとできると期待されていると感じ、自信が持てるようになったのだ。
また実験と並行して行ったインタビューからわかったのだが、人々は自分自身が苦戦していた目標の達成に役立つアドバイスを求められると、じっくり考えることもなく、ぱっと答えることができた。前述のように、業績不振の営業担当者や成績不振の生徒など、苦戦している人々でさえ、多くのよいアドバイスを持っていた。(中略)
だが理由はもう1つある。
私たちが他人に与える助言は、自分の経験がベースになっている。たとえばベジタリアンがダイエットのコツを問われたら、植物由来の食事のヒントを与えるだろうし、多忙なエグゼクティブが体を鍛える方法を聞かれたら、効率的な運動メニューを勧めるだろう。
つまり、誰かに教えを乞われると、私たちは「自分に役立つこと」を教える傾向にあるのだ。そしてその助言を与えたあと、自分自身でもそれを実行しなければ偽善に思える。
【感想】
◆本書でまず驚いたのは、アマゾンの「商品の説明」ページに列挙された、業界著名著者たちの推薦の言葉の数々。このうち、当ブログで登場した事のある方の名前と肩書(と著作)を抜き出すとこんな感じです。
●スティーヴン・ダブナー

0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる
参考記事:【『ヤバ経』再び!】『0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる』スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー(2015年02月15日)
●キャロル・ドゥエック

マインドセット「やればできる! 」の研究
参考記事:【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)
●ロバート・チャルディーニ

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
参考記事:【速報!】『影響力の武器』の[第三版]を[第二版]と比較してみました(2014年07月14日)
●ダン・ヒース

アイデアのちから
参考記事:【オススメ】「アイデアのちから」が予想以上に面白かった件(2008年11月25日)
●チャールズ・デュヒッグ

習慣の力 The Power of Habit
参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ()
他にもニコラス・A・クリスタキス(『ブループリント』著者、イエール大学教授)や、ラズロ・ボック(『ワーク・ルールズ!』著者、元グーグル人事担当上級副社長)、アリアナ・ハフィントン(ハフィントン・ポスト創設者)と言った面子が本書を褒めまくっていますから、科学的自己啓発書好きな方なら、本書は気になるのではないでしょうか。
ちなみに、冒頭で序文を書いているアンジェラ・ダックワースは、単に知り合いというレベルではなく、本書のテーマでもある「永続的な行動変容イニシアチブ」という研究を共同で行ってきたとのこと。
実際、彼女も本書内ではちょくちょく登場していますが、あくまで本書は著者としてクレジットされているケイティ・ミルクマンの手によるものになります。
◆さて本書の内容ですが、上記のような面子が推薦しているだけあって、まさに「科学的自己啓発書」の王道といったところ。
また彼らの本で紹介された内容(研究結果)等も一部登場しています。
その結果、この手の本を読み漁ってきた方にとっては、既知の内容も散見される一方、ユニークな視点も得ることができました。
たとえば第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「フレッシュスタート」については、多くの方が「新年の誓いが挫折しやすい」(最終的に5人に4人が失敗する)ことをご存じだと思います。
しかし著者のケイティいわく「俳優のデヴィッド・ハッセルホフが言うように、『打席に立たなければホームランは打てない』のだ」とのこと。
私に言わせてもらえば、新年の誓いはすばらしい!逆に彼女は「何度もトライする」ことの重要性と、残りの20%が成功している点に注目しているという。
春の誓いも、誕生日の誓いも、月曜日の誓いもみんなすばらしい。なにしろ誓いを立てるたび、「打席に立つ」ことになるのだから。
◆また第2章では「『つい動いてしまう』仕組みをつくる」ことがテーマであり、初っ端に駅の階段をピアノの鍵盤にして、階段利用を促したオデンプラン駅の事例が紹介されています。
これは有名ですし、様々な本でも取り上げられていますけど、いわゆる「ゲーミフィケーション」については逆に扱った本をレビューしていなかったため、具体的な効果までは知りませんでした。
それに対して本書では、まずは効果のあるケースをしっかり紹介した上で、効果の出ないパターンを上記ポイントの2番目のように言及。
そもそもゲームに興味がなかったり、そのクオリティが低ければ逆効果になるのも当然でしょうね。
そこで大事なのは、「ゲームの参加者全員が、自分の意思で参加すること」なのだとか。
そう考えると、運動やダイエットのように、必ずしもやらなくていいものをやりたい人がやる場合はいいのですが、仕事だと「やりたい人がやる」というワケにはいかない分、設計が難しそうです。
◆一方第3章は、目標に対して「飴とムチ」を設定する「コミットメント装置」がテーマ。
「いつまでに何をやる」という目標に対して、できたら飴がもらえたり、できなかったら罰が与えられる、という設定に、一定の効果があることは理解できます。
これは人に強いられる場合だけでなく、自分の目標について自分で設定しても同じこと。
ところが、効果があると分かっていてもやろうとしない人がいる理由を明らかにしたのが、上記ポイントの3番目です。
……「自分への過信」と「失敗してコストを払いたくないという健全な恐れ」というのはさもありなん。
なお、こうした「コミットメント装置」を徹底的に掘り下げているのが、以前読んだこちらの作品なので、ご参考まで。

ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣
参考記事:【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)
◆さらに、上記ポイントの4番目の「デフォルト」は、1つ飛んだ第5章からのもの。
それこそ「デフォルト」は、ダウンロードしたソフトをインストールする際、他のソフトのインストールもすることにチェックが入った画面が提示されることでもおなじみでしょう。
……急いでいると、間違ってインストールしちゃうんですが。
逆に私が知らなかったのが、第6章から抜き出した上記5番目の「アドバイス効果」です。
こちら、アドバイスを受けて効果があるのではなくて、他人にアドバイスすることで「業績不振の営業担当者や成績不振の生徒」の成績が伸びるというのですから、結構「目からウロコ」。
1つにはアドバイスすることで自信が持てるのと、他人にアドバイスすることで、「コミットメントと一貫性の原理」が働くようです。
自己啓発書好きなら一読の価値アリ!

自分を変える方法──いやでも体が動いてしまうとてつもなく強力な行動科学
CHAPTER 01:いやでも「やる気」が出る
──「フレッシュスタート」の絶大な力
CHAPTER 02:「衝動性」を逆用する
──「つい動いてしまう」仕組みをつくる
CHAPTER 03:また「先延ばし」した?
──自分を「最適な強度」で縛る
CHAPTER 04:「合図と計画」ですぐ動ける
──「合図付きの計画」という最高の味方
CHAPTER 05:「怠け心」を出し抜く
──「怠惰なおかげ」で続くようにすればいい
CHAPTER 06:「自信」の異様な力
──心だけでなく体まで変えてしまう
CHAPTER 07:「同調する力」を利用する
──「みんな」の強烈な影響力
【関連記事】
【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)【科学的自己啓発書】『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2017年07月01日)
マッキンゼーが選んだ『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』の10個の原則(2011年06月23日)
【140の戦略?】『説得とヤル気の科学 ―最新心理学研究が解き明かす「その気にさせる」メカニズム』スーザン・ワインチェンク(2014年01月19日)
【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
【スゴ本!】『やってのける 〜意志力を使わずに自分を動かす〜』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2013年09月24日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
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