2022年10月06日
【傾聴】『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?――職場の心理的安全性が高まる本』林健太郎
優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?――職場の心理的安全性が高まる本 (三笠書房 電子書籍)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ストア10周年キャンペーン」から、まだ記事として取り上げてもいないのに人気が高かった1冊。テーマが「傾聴力」なだけに、さっそく読んでみたところ、ハイライトを引きまくることになりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
・リーダーと部下との信頼関係が深まる
・部下が、自分で考えて行動するようになる
・リーダーが、自分のすべき仕事に集中できる
リーダーが部下の話に耳を傾けることで上記のようなメリットが生まれます。
しかし、いざ「部下の話を聞こう」としても「聞き方」を身につけていないと失敗します。
のべ650人を超える経営者やリーダーへのコーチングの実践と理論から編み出した、「傾聴力」の基本から実践法までをわかりやすく解説。
今年6月に出たばかりで、中古が定価を上回っていますから、このKindle版が700円以上お得な計算です!
Girl Talk / deanwissing
【ポイント】
■1.部下からの話を上手に受け取る日本企業の多くの上司は、「話の受け取り方」が下手だと言ったら、言いすぎでしょうか。
話している部下としては、一生懸命に話しているのに、聞き終わった上司のリアクションが今ひとつだと、「あれっ? 伝わったのかな?」と不安になってしまいます。(中略)
それから、部下から投げられた「言葉のボール」をしっかりと受け取る前に、もう別のボールを投げ返すようなコミュニケーションの取り方をする上司もいます。まるで、ボールを2つ使ったキャッチボールのような状態です。(中略)
部下から言葉を受け取るときに、リアクションをはしょったり、ぞんざいな受け取り方をしていたりすると、意思疎通で 齟齬 が発生して、「言った、言わない」みたいなことが起き、あとでコスト高になることだってあり得ます。
■2.聞くときは「事実情報」と「それ以外」を分けて聞く
最初にお伝えしたいのは「事実情報とそれ以外を混同せずに、しっかりと分けて聞く」ということです。
部下の話に限ったことではありませんが、人の話というのは、大きく、「事実」と「それ以外」に分けることができます。例を挙げましょう。
「先方の担当者から見積り依頼がありました」というのは「事実情報」です。
こうした情報は何も面談で聞かなくても、業務報告で聞けばいい話。こういう話題を面談でして、「自分は部下の話を聞いている」と思ってはいけません。
これに対して、「先方の担当者はこちらからの提案に乗り気だったと思います」は、「事実以外のこと」です。
この「事実以外のこと」は、さらに、「感情」「思考」「推測」の3種類に分類することができます。面談で話を聞くときは、部下が何を感じていて(感情)、どう考えているか(思考)、どんな仮説を立てたのか(推測) といった3つの分類に切り出しながら聞くことが大切です。
■3.合いの手を入れてみる
ここでは、合いの手に使える便利な言葉を伝授しましょう。
その言葉とは、次の4つです。「そうなんですね」それぞれの言葉の役割は、
「というと」
「ほかには」
「もう少し詳しく」
「そうなんですね」→「承認と促し」
「というと」→「背景情報を聞く」
「ほかには」→「話題の拡散」
「もう少し詳しく」→「話題の深掘り」
となります。
極端に言えば、相手の話の内容に合わせて、この4つの言葉を順番に使えば、それで会話が成立していきます。
覚えられないという方は、 部下と面談するとき、手元のノートにこの4つの言葉をメモしておいて、チラ見しながら使ってもよい と思います。
■4.感情を問うてみる
例えば車を運転しているとき、うしろの車が強引に追い抜いて行ったとします。そしてあなたは「ふざけんなよ」と感じて抜き返すという行動に出るか? あるいは、誰か大切な人を乗せていて、「急いでいる方はどうぞお先に」と考えて、のんびり運転を続けるか?
つまりそのときの感情が、その後の行動を決めています。
ですから、面談で何かを伝えたとき、相手の感情を問わなければ、その後の相手の行動がわからないということになります。
例えば、ある目標について伝えたとき、部下が「わかりました」と返事をしたとします。ここで、感情を聞かなければそこで終わり。しかし、「今、何を感じてる?」と問えば、「正直、不満ですが、もう決まったことなんですよね? だったらやりますよ」と、相手が本心では承諾しておらず不満を持っているということがわかる。
感情を聞けば、相手の気持ちがわかって情報量が増えるので、相手の納得度を高めるように気持ちをケアできますし、ケアできれば当然、業務の成功率も高くなります。
■5.面談では「終わりの言葉」を覚えて使う
簡単に言えば、「ここからは普段の会話に戻ります」という宣言をして、境界線をハッキリさせましょうということです。(中略)
私は、面談のあと、普段の会話に戻ることを宣言しないのは、勝手に人の家の冷蔵庫を開けるようなものだと考えています。
何が言いたいかというと、普段の会話に戻るということを伝えないまま面談を終えることは、「聞く」と「聞く以外」のコミュニケーションの方法が混在してしまうということ。部下からすれば、面談で、上司が丁寧に話を聞く心理的安全性の高い会話が一変し、それまでの会話で話したことが、まるで人質にとられたような感覚に陥ってしまうのです。
ですから、面談の終了時には、ぜひ、「ここからは普段の会話に戻る」という宣言をはしょらないようにしましょう。
【感想】
◆冒頭でも申し上げたように、ハイライトを引きまくった作品でした。まず第1章では、上司に「傾聴力」が求められる理由や背景等について。
確かにン十年前に私が会社員だった頃は、上司が部下の話を「傾聴する」なんて、聞いたことがありませんでしたが、それも今は昔。
「仕事なんだから文句言わずやってくれ」というマネジメントは、ヘタしたら「パワハラ」と言われかねません。
また、部下の話を聞くのも、最近のはやりは「短く、頻度を多く」に映移りつつあるのだとか。
それによって、部下に気軽に本音で話してもらえたり、言いたいことを最後までしゃべってもらえるのだそうです。
◆とはいえ、著者の林さんいわく「9割の上司は、部下の本音を聞き出せていないのではないか」とのこと。
その原因を列挙しているのが本書の第2章です。
たとえば上記ポイントの1番目もそのうちの1つで、リアクションがおざなりだったり、ぞんざいな受け取り方をされると、部下としても不安でしょう。
その実例として、本書ではとある会社でエピソードが紹介されているのですが、部下がきちんと根回しをして説明をしたのを聞いてなかったために、土壇場で「俺は聞いてない」と言い出す上司なんて、まさに「あるある」ですよね。
逆に「過干渉で部下に任せられない」とか、「せっかちで、話を最後まで聞けない」なんてのも、よく聞くはなしです。
◆そこで第3章では、「部下の話を聞くときの心がまえと実践法」と題したレクチャーが展開されているという。
たとえば上記ポイントの2番目の「『事実情報』と『それ以外』を分けて聞く」というのは、類書でも見かけるもの。
ただし「事実以外」の方を「感情」「思考」「推測」の3種類に分類する、というTIPSは初めて知りました。
さらに本書では、「時制」(「現在」「過去」「未来」)をも意識して聞くようアドバイスが。
実際に部下との会話例でカッコ書きで、何のために何を聞いて、その答えがどれに該当するかが記されているのですが、非常に参考になりました。
またこの章では、「ハーマンモデル」をアレンジした考え方で、相手の傾向を探るTIPSもあって、こちらも興味深かったです。
なぜ、あの人とは気が合わないのか…そんな疑問を解消する「4タイプの人間」を見分けるとっておきの方法 口癖や質問への反応から相手のタイプが見えてくる (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
◆そしていよいよ第4章では、「部下の話を聞くときの実践手順10」と題した具体的なTIPSが紹介されています。
上記ポイントの3番目の「合いの手」もその1つ。
4つの言葉もさることながら、その役割にまで触れているのは秀逸だと思いました。
ちなみにその中の1つの「というと」ですが、林さんいわく
「今、こんなふうにおっしゃっていましたけど、それについてもう少し聞かせてほしいので、もし、言い足りていない情報があれば、聞かせてもらえないか」というような意味合いが全部包含されています。のだそうです。
でも、そう聞くと、長くて相手が文脈を見失ってしまいかねないので、「というと」というたった4文字に圧縮している
……まさかそんな奥が深いとはw
◆また同じく上記ポイントの4番目の「感情を問うてみる」も、この「実践手順10」からのもの。
そもそも日本人は、感情をあらわにするのを避ける傾向があるのではないでしょうか。
しかしここでも触れられているように、感情を抜きにして、その後の行動は決められない可能性は高いかと。
つまり、感情を聞くことで、部下の言動やその意図も理解しえるワケです。
ただし、その後の部分を読むと、部下に普通に問うても「別に何も」で終了するのだとか。
しかし、めげずにその後も何度も繰り返していると、次第に感情についても話してくれるだそうです。
ワンランク上の「傾聴」を身につけたい方に!
優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?――職場の心理的安全性が高まる本 (三笠書房 電子書籍)
第1章 なぜ、上司に「傾聴力」が求められるのか?
第2章 なぜ、部下の本音を聞き出せないのか?
第3章 部下の話を聞くときの心がまえと実践法
第4章 部下の本音を引き出す「聞き方」の手順
第5章 上司と部下の関係性による落とし穴とその対策
第6章 自分の「心の声」の聞き方
第7章 「部下以外の相手」の話の聞き方
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。教養としての「焼肉」大全 (扶桑社BOOKS)
すいません、この本今月の「Kindle月替わりセール」でも対象になっていて、確かお値段同じだった気がするのですが、いずれにせよKindle版の方が700円強お得。
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