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2022年09月29日

【日本語】『日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白い ことばの世界』国立国語研究所編


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日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白い ことばの世界 (幻冬舎新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる幻冬舎さんの「電本フェス 後夜祭」でも人気の1冊。

昨日の前日ランキングの記事でランク入りしているのを見て、気になって読んでみたところ、想定外に勉強になりました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
毎日あたりまえに使っている日本語。だが、ふと疑問に思うことはないだろうか。
そもそも漢字はいつから日本にあるのか?
「シミュレーション」を「シュミレーション」とつい発音してしまうのはなぜだろう?
「確認させていただいてもよろしいですか」は乱れた日本語なのか?
これまでの絵文字・顔文字とLINEのスタンプでは何が違う?
ことばのスペシャリストが集う国立国語研究所が、国民の抱く素朴だが奥深い疑問に呻吟(しんぎん)しながら出した名回答を厳選。
日本語の教養をこの一冊でアップデート!

今回のセールでは3コイン以下ということで、送料を加算した中古よりは、今日中であればこのKindle版が300円以上お買い得です!






Self Development / StuartWebster


【ポイント】

■1.若者が「うれしさ」でなく「うれしみ」を使うワケ
「─さ」による名詞化は、「その状態の程度」(例:勝利の うれしさは計り知れない)か、「その状態である様子」(例:彼は うれしさを隠さなかった)という単純な意味の名詞を作ります。
 これに対して「─み」による名詞化は、「甘み」(=甘い味)、「丸み」(=丸い形)、「かゆみ」(=かゆいという感覚)といった特別な意味を表す名詞を作ります。このような「─み」形は、「(具体的な)感覚」を表すとされます。
 つまり、単なる名詞化ではなく、実感を伴った名詞化であるということ。「─さ」ではなく「─み」が勢力を拡大した理由は、このような点に求めることもできそうです。


■2.相手の次の言葉を促す「−けど」
 話題提示というもともとの働きに関連して、「〜です」と言い切る言い方をしないで、「けど」で終わる言い方をするほうが、受け答えを相手に促す意識が感じられます。インタビューなどでも、よく見られる表現です。
(5)─それと最後の「ここは見ないで下さい」というタイトル、気になるところですけど。
 後藤 そのまんまです。ここは見ないで下さい。
(『お笑いTYPHOON! JAPAN vol.10』エンターブレイン、2004年)(中略)
 以上のような会話での用いられ方から見ると、これらの「けど」は、省略されている内容が何なのかを重視するより、ある話題を示して、会話をそのままつなげていこうとする意識や、相手の受け答えを促す意識を示す働きをしている、という特徴に注目したほうが良いようです。


■3.日本語は難しい言語か否か
 まず「音声」について言うと、日本語はむしろ簡単な言語です。他の言語と比べて、子音と母音の数、また特にその組み合わせは、かなり限られています。(中略)
「文法」についても、日本語はさほど難しい言語とは言えません。それは単純に、文と語の組み立てにどれだけ必要最低限のルールがあるかを数えることで確認できます。(中略)
「語彙」となると、少し話が変わります。日本語には「速さ」「速度」「スピード」のように、和語・漢語・外来語という3つの語彙層が共存し、その扱う範囲もかなり広くなっています。(中略)
 しかし、日本語において最も難しいのは、間違いなく「表記」です。世界でも珍しいことに、日本語にはひらがな、カタカナ、漢字、それに現在はローマ字も加えて、4つの表記が使われています。母語話者と非母語話者とを問わず、日本語の表記を身に付けるのは誰にとっても長い時間を要することです。書く・読むためには、漢字を入れて何千字も知らなければなりません。


■4.可能性は「高い」のか「大きい」のか「強い」のか?
 これらの言葉仲間の相手選びの様子については、現代では、国立国語研究所も進めている、コーパス言語学(大量の電子言語情報を駆使して、客観的に言語使用の特質を観察・分析しようとすること)の研究分野が解決に役立ちそうです。
 このいわば「親しく付き合う言葉仲間の顔ぶれ」は、時代や年代によって異なる、ということがわかりました(例:「効果」は従来「大きい」と仲がよかったのですが、最近では主に若い世代で、「高い」とも仲良しに使われる)。
 またたとえば、同じように「確率」の概念を表す言葉でも、「可能性」の場合は「高い」とも「大きい」ともお付き合いがあります。が、「頻度」となると「高い」としか付き合わず、「確率」の場合は「高い」がより多く、「恐れ」の場合は「大きい」の方が優勢、といったように、語ごとに相手を選ぶ癖があることもわかっています。


■5.前後の音が入れ替わる「音位転換」
 さて、表題にある「シミュレーション」→「シュミレーション」は、「(5)前後の音が入れ替わる場合」に該当します。前後の音が入れ替わるこの現象は、「音位転換(metathesis)」と呼ばれます。特にこの場合は、別に存在する「趣味(シュミ)」という語の発音に引きずられて、「シュミレーション」と発音してしまったのかもしれません。このようなケースは「類音牽引」と呼ばれます。「日本道路公団」を「日本ロード公団」と言ってしまうような場合も、これに当たります。
 音位転換は、基本的には言い誤りの一種ですが、誤りだったはずのものが正しい形と見なされるようになる場合もあります。例えば、「新しい」と「新たな」は、前者が「アタラ」、後者が「アラタ」で、音位転換が起きた例です。元々は「アラタし」だった語が、平安時代に起きた音位転換で「アタラし」と変化し、それが定着した後、現在に至ります。


【感想】

◆色々と勉強になった作品でした。

下記目次にもあるように、若者ことばから接客用語、はては海外の言語との比較や外来語まで扱っているという幅広い内容で、目からウロコのお話も多々。

たとえば第1章では「どうも気になる最近の日本語」ということで、さっそく若者ことばから「うれしみ」が上記ポイントの1番目で俎上に載っています。

私は勝手に若者がそういう言い方をしているだけなのかと思っていましたが、「単なる名詞化ではなく、実感を伴った名詞化である」という指摘には思わず納得。

また、ここでは割愛しましたが「うれしい」とストレートに言うのではなく、「うれしみ」と感情を名詞化することで、婉曲的に表現する効果も生まれるのだそうです。


◆続く第2章からは、上記ポイントの2番目の「けど」のお話をセレクト。

いきなり「(5)」とあると面食らうかもしれませんが、これはその前に(1)〜(4)があるからでして。

ただしそれらは、「逆接」(「4月になったけど〜」)だったり、「話題提示」(「〜を読んだけど、面白かった」)だったりして、普段からよく使われるものです。

これに対して上記ポイントの2番目の例は、相手に振って次の言葉を促すためのもの。

これは、電話に出た際に「佐藤ですけど」というのも、同じく「相手の受け答えを促す意識を示す働きをしている」のだそうです。


◆一方第3章では「世界のことばと日本のことば」という章題どおり、日本語がどういうものなのかを掘り下げることに。

上記ポイントの3番目の4つの視点は、それぞれ納得できるものでした。

特に「文法」については、厳格なドイツ語あたりと比べたら、シンプルなことこの上ありません。

ただしここにもあるように、「表記」については漢字を使わない諸外国の人から見たら、漢字を覚えるだけでも正気の沙汰ではない模様。

私も英国の語学学校で「漢字書いて」と言われて書いたら、感動されました(ただし私の字が極めて下手なことは分かってなかったような?)


◆さらに第4章では、「迷う日本語」がテーマ。

さっそく上記ポイントの4番目の「可能性」については、私も「高い」しか使ったことがありませんでした。

ちなみにこういった考え方のことを、言語学では「コロケーション」というのだそうです。

コロケーション - Wikipedia

そして上記ポイントの5番目は、外来語がテーマの第5章からのもの。

冒頭の内容紹介の「シミュレーション」の答え合わせがこちらになります(1つくらいネタバレいですよね?)。

実際、意識してないと「シュミレーション」と言ってしまってる人も多そうな。

しかし「音位転換」の例で挙げられた「アラタ」は、過去には「アタラ」だったとは知りませんでした!?


楽しみながら日本語の理解が深まる1冊!

B09LYGTFXY
日本語の大疑問 眠れなくなるほど面白い ことばの世界 (幻冬舎新書)
第1章 どうも気になる最近の日本語
第2章 過剰か無礼か? 敬語と接客ことばの謎
第3章 世界のことばと日本のことば
第4章 どちらを選ぶ? 迷う日本語
第5章 便利で奇妙な外来語
第6章 歴史で読み解く日本語のフシギ


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 06:00
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