2022年09月05日
【カウンセリング?】『コーチングよりも大切な カウンセリングの技術』小倉 広
コーチングよりも大切な カウンセリングの技術 (日本経済新聞出版)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 ビジネス書キャンペーン」の中でも人気の高い1冊。働き方本やコーチング本で知られる小倉 広さんが、組織におけるカウンセリングメソッドを紹介してくれる作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
カウンセリングの技術は、「質問よりも傾聴」し、相手が話す環境をつくること。決して自分から意見せず、現状認識をまず共有することが大切になります。そうして相手の気持ちに変化が見られてきたら、個人で自分の道しるべを作らせるのです。決して目標を強要することはありません。
本書ではコーチングやティーチングと、カウンセリングの技術をときに比較しながら、カウンセリングの具体的な方法、成功・失敗例をストーリーマンガも使いながら丁寧に解説します。
中古があまり値下がりしていませんから、こちらのKindle版が800円弱お得な計算です!
Lola Koloa'Matangi a counsellor at Tonga National Centre for Women and Children talks with a women who has been the victim of abuse by her partner. / DFAT photo library
【ポイント】
■1.レポートではなくエピソードで聞く私たちが職場で行う会話のほぼ100%はレポートです。レポートとはできごとを抽象的に要約し左脳(言語、数字を扱う論理的な脳)的にまとめたものです。「マチコさんが時短勤務なので仕事を山のように残して帰ってしまいました」。このように要約した会話だけで職場は成り立っているのです。カウンセリング型コミュニケーションでは、このレポートを「何月何日何時何分」に起きた一度きりの一瞬のエピソードに転換して右脳(映像、イメージを扱う感覚的な脳)的に映像化します。先のケースでココロさんが「マチコさんとの会話を再現してもらえますか?」と質問したのがそれです。
■2.カウンセリング、コーチング、ティーチングの違い
まずは目的(ゴール)からです。カウンセリングの目的は、「全人格的な成長」です。カウンセリングの多くは、相手が常日頃、感じないようにしている本当の感情やその奥底に隠れている信念・価値観(〇〇すべき、××してはならない、〇〇が大切、など)やニーズ(本当は〇〇したい、本当は××したくない)にそっと触れていきます。つまり、相手が認めたくない、気づいてもいない感情や価値観を表に出し、なおかつそれを受容、肯定していくのです。(中略)
一方、コーチングのゴールは「目標達成」です。つまり、コーチングは相手が「達成したいと思う目標(多少曖昧でも良い)を持っていて」「それを解決するエネルギーがある」ことが前提です。もしも、その二つがないならば、スタートはコーチングではなくカウンセリングから始めると良いでしょう。
ティーチングのゴールは「知識、技術の伝達」です。対象は問わず効果的、効率的な伝達に意識を集中させ教えるのです。
■3.カウンセリングに共通する「バイスティックの7原則」(抜粋)
●個別化原則私たちは誰もが世界でただ一人のかけがえのない存在です。決して十把一絡げに「その他大勢」としてくくられたくはないのです。ですから、カウンセラーは出逢う一人ひとりをこれまでの経験やパターンに当てはめて類型化してはいけません。●受容原則カウンセラーは相手のネガティブな側面を含めたすべてを受容的に聴きます。もちろん、法律に違反する行為や自傷他害を肯定することはしませんが、そのように考えてしまう心の奥底にある痛みや悲しみや淋しさなどを受け容れるのです。●非審判的態度の原則カウンセラーは相手をジャッジしないことが大切です。善悪、正誤、優劣、上下の基準は、時代や地域により変わり、絶対的な正解はありません。つまり、相手を評価、ジャッジした時点で、カウンセラーは自分の価値観を優先し、相手の価値観を否定してしまうことになるのです。(詳細は本書を)
■4.質問で流れを変えないように述語的会話を用いる
質問で流れを変えてしまわないように、代わりに述語的会話を使います。具体的には「続けてください」「それで?」「詳しく教えてください」の三つを主に使います。
「映画に行ったんです」と言われ「何の映画?」と質問してしまっては、相手が映画のタイトルと内容についてしか話せません。もしかしたら、相手は映画のタイトルではなくて、映画館の設備や立地について話したいかもしれないし、映画館で偶然出逢った友達の話をしたいのかもしれません。にもかかわらず、自分の内的世界の興味から「何の映画?」と質問をしてしまっては、流れがぶち壊しです。
このように会話の序盤は話がどう転がっていくか予想がつきません。だからこそ、述語的会話ですべての方位に対応するのです。
■5.コーチング、NLPの限界
では、私が感じているコーチング、NLPの限界とは何でしょうか。それは「目標達成がゴールになっている」ことです。一方で、カウンセリングのゴールは目標達成「以外」にあります。それは、気づきです。しかも問題解決法への気づきではなく、自分自身の再発見、自己一致であり自己実現です。「気がついていなかったけれど、本当の私は○○のような感情を持っていたのか!」「私がいつもイラッとくるのは××という信念・価値観を持っていたからなのか!」というah! ha! 体験です。この気づきが「全人格的な成長」を生みます。目先の課題解決を一つひとつモグラ叩きするのではなく、問題や悩みを引き起こす根本にアプローチすることで、問題や悩みが起こらなくなるのです。そこにカウンセリングの意義があると私は思います。
【感想】
◆今までコーチング本をご紹介する際、「ティーチング」との違いについて触れたことはありましたが、本書は新たに「カウンセリング」が登場。ただでさえ新規のメソッドなところに、上記ポイントの1番目に「マチコさん」といった固有名詞が出てくることからもお分かりのように、本書はエピソードをふんだんに使っています。
ただし、たまにあるパターンなのですが、このエピソード部分だけがマンガとなっており、抜き出しできない仕様という(セリフだけ拾っても分かりにくいですよね)。
一応、登場人物は5人で、部長の「ココロ」さんが、「マチコさん」他、部下に対して「カウンセリング」を用いてコミュニケーションをとっていく次第です。
……一応、本書の表紙やアマゾンのページの「出版社より」の部分に、マンガが一部掲載されていますね。
◆さて本書の第1章では、さっそくこの5人が巻き起こすエピソードが立て続けに収録されています。
基本的にこの章では、ココロさんがカウンセリングテクニックを使って、部下たちに接していくわけなのですが、その中の1つが上記ポイントの1番目にある「エピソードで聞く」。
長くなるので具体的なストーリーは割愛しますが、当初ヒマワリさん(部下)の報告(レポート)を聞いたココロさんは、エピソード形式にして話しし直してもらいます。
すると、実はマチコさんは仕事を残して帰ったのではなく、ヒマワリさんが自分から引き受ける旨申し出たことに、自ら気がついたのでした。
彼女はそれに気づき、「いつも自らが責任を背負い過ぎてしまう」という自分自身が持つ癖に気づいていったのです。この「自ら気づく」のが、カウンセリングのキモのよう。
◆続く第2章では、上記でも挙げた「コーチング」と「ティーチング」、そしてこれらと「カウンセリング」の違いについて言及されています。
中でも重要なのが、上記ポイントの2番目にもある「目的」。
コーチングの「目標達成」、ティーチングの「知識、技術の伝達」に比べると、カウンセリングの「全人格的な成長」というのは、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、類書でいうところの「気づき」に近い気が。
なお、「目的」以外の項目も、本書では細かく解説されているのですが、本書にも掲載されたまとめの表がアマゾンにも掲載されていたので、そちらを下記に拝借しました(アマゾンにリンクしただけなので拡大はされません)。
また、実はこの第2章では、第1章で登場したエピソードを、それぞれ「コーチング」と「ティーチング」で対応したかどうなるかが収録されていますので、そちらもお読みいただくと、違いがよりハッキリわかると思います。
◆一方、上記ポイントの3番目の「バイスティックの7原則」は、本書の第3章からのもの。
7つのうち、3つのサワリだけを抜き出していますが、この3つでさえ、私は日頃から守れていないことを痛感しました。
まぁカウンセリングしているワケではなかったので当然ですが、たとえば最初の「個別化原則」でしたら、相手が話したエピソードにきわめて近い体験を自分がしていたとしても、決して同じだと判断してはいけないワケです。
……自分が似たような体験をしていたら、そこから解決策を導いてしまいがちですが。
なお、この章で割愛した中には、「バイスティックの7原則」以外にも、「クライエント中心療法」「フォーカシング指向心理療法」といったメソッドが登場しますので、併せてご確認ください。
◆そして第4章では、第1章の各エピソードで用いられたカウンセリングの具体的なテクニックを解説。
ここでは1〜4ステップごとに、それぞれ細かく紹介されており、たとえば上記ポイントの4番目の「述語的会話」は、ステップ1の「壁になる」における4つの技術の中の1つです。
実はカウンセリングの技術は、コーチングの技術とかぶっている部分が多いそうで、この「述語的会話」もいわゆる「傾聴」に近いかも。
さらに最後の第5章では、カウンセリング型コミュニケーションを「5W1H」の視点から掘り下げていました。
たとえば上記ポイントの5番目は「WHY」であり、やはり上記でも触れた「目的」が重要だったようです。
ただ、個人的な印象としては、子育てにも応用してみたいものの、こんなにうまくいくのか自信がない、というのが正直なところ。
いざ実践する際には、本書を熟読しなくてはならないと思います。
自発的な解決を目指すために読むべし!
コーチングよりも大切な カウンセリングの技術 (日本経済新聞出版)
第1章 カウンセリングが引き起こした五つのミラクル
第2章 職場で使える3つの技術 カウンセリング、コーチング、ティーチング
第3章 カウンセリングに何が起きているのか
第4章 今すぐ使えるカウンセリングの技術
第5章 職場でカウンセリングを活かす具体策
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【編集後記】
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【編集後記2】
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よろしければご参考まで!
ご声援ありがとうございました!
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