2022年09月02日
【バイアス?】『遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」』植原 亮

遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった1冊。あの読書猿さんが推薦ということで、注目していた方も多かった作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
★読書猿氏推薦!
「結論に急き立てられる我々が「考える」ことを取り戻すために」
『思考力改善ドリル』著者の最新刊!
論理的思考力だけでなく、発想力も高まる「遅く考える」本。
思考のエラーを実感できる52の問題と、思考過程がわかる対話形式で思考力を鍛えなおす。
似非科学や陰謀論への対処法など、日常で使える思考の道具も満載。
中古価格が定価の倍以上しますから、「18%OFF」のKindle版がオススメです!

Why are Conspiracy Theories Appealing / Wesley Fryer
【ポイント】
■1.遅考の基本3ステップ(遅考術1〜3)(1)思いついた考えや言われたことを、まずはいったん否定する。「Aではないのではないか」と自問する先生 問1のような問題が得意で、すぐに答えがわかるという人もいるだろう。ただ、そういう人でも、自分が普段から意識せずにできていることを明確化しておくメリットはとても大きい。さらに磨きをかけるべきところや、まだ弱いところが確認できるからだ。それに、似たような問題だからといって、いつもうまく正解が導き出せるとは限らないからね。
(2)条件を何度も確認する。見落としがあったり、別の仮説を思いついたりする可能性がある
(3)もっともだと思える仮説にたどり着くまで、あれこれ粘り強く考える。想像力を働かせる、文献を参照する、他の人と相談する、も有効だ
■2.人の働きを評価するときは「利用可能性バイアス」に注意する
早杉 ああ、わかってきました。自分がやった仕事なら、自分自身で経験したことだからすぐに思い出せるけど、他の人の仕事についてはたいていそうではない。利用可能性が高いのは、自分がした貢献の方ですね。そこでバイアスが働き、自分の貢献度を実際よりも大きく捉えてしまう!(中略)
先生 カップルがいっしょに生活するのも共同プロジェクトと言えるので、利用可能性バイアスがもたらす危機がしばしば生じる。
「自分は買い物や掃除や洗濯をこれだけやっているのに、相手は全然やってくれない!」という具合に不満がたまってくるわけだ。
■3.2つの結果を生み出す「共通原因」に注意する
早杉 システム1だけに任せておくと、本当は相関関係でしかないもの同士の間に、因果関係を読み取ろうとしちゃう、ということですよね。他にも何か例がありますか?
文殊 「赤ちゃんの出生数とコウノトリの生息数に相関関係が見られる」というオランダの有名なデータがあります ね。もちろん、コウノトリが減ってしまって赤ちゃんを連れてこなくなったというわけではない。共通原因は都市化の進行、という話です。
先生 その話があったね。都市化が進んだせいで、コウノトリは住みにくくなるし、少子化も進む。あと、相関関係の話でよく引き合いに出されるのは、「稲光が見えると、続いて雷鳴が聞こえる」かな。稲光そのものは雷鳴の原因じゃない。
■4.実験や調査を検討するときは「サンプルの偏り」をチェックする
先生 同窓会誌の投稿者をサンプルとして選んだせいで、そこには何らかの「偏り」が生じてしまっているかもしれない。そうした偏りがあることで、サンプルに含まれる人たちには共通して見出された事柄でも、母集団、つまり卒業生全体になると当てはまるとは限らなくなる。
早杉 んん〜。サンプルは、たまたま愛校心の強い人たちばかりだっただけである。したがって、そういう偏ったサンプルから、卒業生がみんな強い愛校心をもっていると結論するのは間違っている。——これでどうですか?
文殊 「たまたま愛校心が強い」という偶然に頼った説明よりも説得力がある説明ができない? サンプルは、わざわざ高校の同窓会誌にエッセイを投稿するような人たちだよ。
■5.疑似科学・科学否定・陰謀論などの信奉者に見られる典型的な特徴(抜粋)
・何を信じるべきなのかは、あらかじめ決まっている
・あらかじめ決まっている信念を裏づけるために、証拠を探す
・並外れたことを信じているが、その割に頼りない証拠で満足する
・個別のエピソードや伝聞による証拠へ過剰に依拠する
・仮説や理論と合致しない証拠(実験、観察や調査の結果) を無視する
・ある現象について他の仮説が立てられても無視する ・懐疑的な思考をほとんど行わない
・既存の(主として科学的な) 知識に立脚していない
・他の専門家によるチェックを回避する
【感想】
◆冒頭の未読本記事で、本書の内容が「システム1とシステム2の考え方」に関するであろう可能性を予想していましたが、まさにそのとおりでした。ただし「52の問題」は、問題と答えの両方を書いてしまうと、ネタバレ以前にかなりのボリュームになってしまうので、今回は割愛。
また対話形式は、理解しやすい反面、どうしても文字数の割に話が進まないので、少々尻切れトンボ気味かもしれません。
ちなみに本書の登場人物は、上記ポイントでもお分かりのように3名。
主人公でもある「(植原)先生」に、学生時代に植原先生のゼミにいた「文殊さん」、さらにその文殊さんに植原先生の研究室に連れてこられた、おっちょこちょいの「早杉さん」になります。
そして先生は二人に問題を出し(上記の「52の問題」)、二人は力を合わせて解答していく次第。
◆なお「システム1とシステム2」の話が出てくるだけあって、各問題は「バイアス」に関係するものが中心です。
ただし、類書と違うのは、それらバイアスに対して、単に紹介するだけではなく、対処していこうとしているところ。
それがタイトルにある「遅考術」であり、本書には全部で35の遅考術が紹介されています。
たとえば上記ポイントの1番目は、レッスン1における問1に解答する際に用いた「遅考術」の1〜3を詰め込んだもの。
もちろん、問1を解いた上で読んでいただくと、より分かりやすいと思うのですが、この3ステップは、そのまま意識するだけでも、早とちりしがちな人には効果があると思います。
◆一方、1つ飛んだレッスン3では、代表性バイアスと利用可能性バイアスが登場。
上記ポイントの2番目は、後者の利用可能性バイアスに関するTIPSになります。
要は、自分の記憶から呼び出すのが容易なもの(=利用可能性が高い)ほど、高く見積もりやすいということ。
実際、共同プロジェクトへの貢献度を各メンバーにパーセンテージで回答してもらうと、100%を超えるのだそうです。
なお、こういう場合は、合計が100%を超えていることを見せると、貢献度を過剰に見積もる傾向は改善するのだとか。
◆また、レッスン5と6は、私たちもひっかかりやすい因果関係のお話が紹介されています。
レッスン5で「原因と結果が逆」の例として挙げられていた、神話における「ゼウスの好色」の件は、私は初めて知りました(詳細は本書を)。
さらにレッスン6から抜き出した上記ポイントの3番目の「共通原因」は、俗に「疑似相関」と言われているもの。
ピアノのレッスンと学歴も相関があると言われることがありますが、あれも家の裕福さが「共通原因」なのでしょうね。
このレッスン6には、陰謀論や反科学でおなじみの「確証バイアス」が登場しますので、こちらもぜひご確認ください。
◆また上記ポイントの4番目は、レッスン9からのもの。
ここでは同窓会誌の投稿者がサンプルとして「偏っている」話に触れられていますが、よくあるのが、選挙前の世論調査でしょうか。
こちらも平日昼間っから、固定電話にかけてきていますから、おのずと回答できる人も偏ります。
さらには偏ってなくとも(ランダム)、ある程度のボリュームがないとダメ。
ただし、母集団が100だとサンプルサイズが80なのに、1000だと278、1万だと370というのは意外でした。
◆そして最後のレッスン10では、上記ポイントの5番目にあるように、疑似科学や陰謀論にまで踏み込んでいます。
思えば反ワクチン論も、古くは新三種混合ワクチンの接種が自閉症と関係がある、という記事が発端でした。
結局はデータ捏造など不正行為を理由に、この記事は抹消されたものの、その影響を受けた人は多く、多くの保護者がワクチン接種を避け、結果麻疹に感染する子どもが増大したのだとか。
一応、こういうことになっているのですが。
新三種混合ワクチンが自閉症とは無関係であることが示される - GIGAZINE
ただそれこそ、上記ポイントの5番目に列挙された特徴そのまま、こういったエビデンスを信じない人は多いよう。
加えて、陰謀論に対処することの難しさも指摘されていますので、ぜひこちらもお読みいただけたら、と。
深く考えるために読むべき作品!

遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」
レッスン1 「遅く考える」とは?
レッスン2 思考には2つのモードがある
レッスン3 早とちりのメカニズムをつかむ
レッスン4 ゆっくり「言葉」を考える
レッスン5 因果関係がわかれば、思考の質はもっと高まる
レッスン6 まぎらわしい因果関係に対処する
レッスン7 新たな解決策を考え抜く
レッスン8 本当の原因を突き止める
レッスン9 思考の精度がグッと高まる、3つの考え方
レッスン10 怪しい話に惑わされないために ── 総合演習
【関連記事】
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【バイアス】『MBA 心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか』グロービス(2020年02月11日)
【行動経済学?】『不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100』スチュアート・ サザーランド(2017年05月28日)
【認知バイアス】『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』池谷裕二(2016年01月26日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
ノーコードシフト プログラミングを使わない開発へ
読む人を選びそうな1冊は、Kindle版が700円弱お得。

眠れなくなるほど面白い 図解 人体の不思議
おなじみ「眠れなくなるほど面白い」シリーズからの人体本は、中古が値崩れしていますが、Kindle版が300円以上お求めやすくなっています!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 ビジネス書キャンペーン」の日経BPさんの記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史 「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史 (日本経済新聞出版)

コーチングよりも大切な カウンセリングの技術 (日本経済新聞出版)

稲盛と永守 京都発カリスマ経営の本質 (日本経済新聞出版)

「豊かさ」の誕生(下) 成長と発展の文明史 「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史 (日本経済新聞出版)
よろしければご参考まで!
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