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2022年07月24日

【復活!】『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』出口治明


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復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、人気の高かった1冊。

おなじみ出口治明さんの、病床からの復帰第1作目となる作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
74歳 APU学長 完全復職。
脳卒中を発症してから1年半。
歩くことも話すことも困難な状況から、持ち前の楽観主義で落ち込むことがなく元気にリハビリ生活を送った出口さん。知的好奇心は衰えるどころか増すばかり。学長復職を目指す、講演を行う、再び本を執筆することを掲げ、自分を信じ闘病に励む稀有な姿勢と超人の思想は、私たちに生きる勇気を与えてくれる。本書には類書にない希望が満ち溢れている!

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Waking / slightlywinded


【ポイント】

■1.復職を目指す強い意志
 医師によると、僕と同じくらいの年齢の人が脳出血を発症し、同じくらいのダメージが残ると、復職はあきらめ、退院や、自宅での自立した生活を目指してリハビリを行うのが一般的だそうです。もともと70歳を超えていれば、定年退職し、仕事をせずに暮らしている人も多いでしょう。
 しかし僕は、学長への復職を目指したいと、医師とリハビリのスタッフに伝えました。以前と同じように別府へ単身赴任して自立した生活を送り、聴衆の前に立って講演できるくらいになりたいと。
 なぜ復職を目指すのか。まだやり残した仕事があったからです。
 学長に就任して以来取り組んできた、新しい学部の設立。そして新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けた学生の支援。そして国際学生の入国をサポートし、以前のように多様な学生が対面で交流できるキャンパスを、できるだけ早く取り戻したい─―。


■2.存在を忘れてしまう右手の問題
 最初の作業療法は、手を洗う動作の訓練をしました。まず動かない右手を洗面台にのせてから両手で洗うのですが、右手は力が入らず単独で持ち上げるのは難しい。そこで左手で右手を持ち上げて洗面台にのせ、次にしっかり手を洗います。(中略)
 その次に取り組んだのが、起き上がりの訓練でした。
 寝ている体勢から起き上がるとき、右腕の感覚が鈍くその存在を忘れたまま寝返ってしまうと、肩を痛める原因になってしまうし、動作の効率も悪くなります。そのため寝返りと起き上がりの動作を手順化し、反復練習をする必要がありました。
 まず左手で右手を持っておなかの上にのせ、次に動かない右足を左足ですくって左側に寝返り、起き上がる。この動作を繰り返しました。


■3.リハビリのトレードオフ
 僕は入院から3ヵ月が経過した5月の面談で、理学療法士の樗木慎也さんから電動車いす使用の提案を受けました。
 それまで僕は、普通に街を歩けるように、装具なしで歩けるようになることを目指して歩行訓練をがんばってきましたが、そこに多くのリハビリ時間を費やすより、退院後の生活を考えると電動車いすの練習をしたほうがよいのではないか、との提案でした。(中略)
「(前略)出口さんの目標は高くて、優先順位の第1位が、学長へ復職し1人で自立した生活を送ることです。それが電動車いすで達成できるなら、そちらの練習をしたほうがいい、自分の足で外を1人で歩くのは諦めましょうとお伝えしました。
 この面談の際、誰かの付き添いがあれば外を歩けますが、1人で自由に歩いてショッピングに出かけるようなことは無理ですと率直にお話しすると、すぐに『はい』と受け入れていただきましたが、少し涙ぐまれていたのが印象に残っています」(樗木さん)


■4.伸びが止まらない「書く力」
 言語聴覚療法で出されるプリントの宿題は最初、自分の名前や生年月日を書くところからのスタートでしたが、言葉を思い浮かべてそれを書く、その単語の意味を書く。それができたら、今まで一番楽しかった旅行先はどの街で、どんな思い出があったかを書く、というように、瀬尾沙記江さんにうまく誘導されて、どんどん質問と書く内容が広がっていきました。(中略)
「(前略)文字を書く力に関しては本当に伸びが止まらないという感じで、失語症でこれほど話し言葉が出ないのに、これだけ書ける人は異例です。利き手ではない左手で書くこと自体大変で、言葉もなかなか思い浮かばないのにこんな文章を書けるのはさすが、としかいいようがありません」(瀬尾さん)


■5.言語障害も克服する
 また、僕を担当した言語聴覚士の瀬尾沙記江さんにとってもチャレンジだったと先に述べましたが、彼女にも挑戦の成果があったそうです。
「出口さんを担当したのは、私にとって転機になりました。(中略)もちろん皆、ちゃんと勉強してやっていますが、やはり脳が損傷してしゃべれなくなった人がまた元通りになるのは難しく、日常的に困らないよう代替的な手段を使う方向で考えていくのが一般的です。
 しかし、出口さんの動画を病院のスタッフや勉強会でお見せすると、『こんなによくなるの?』と、衝撃を受ける人が多く、全体構造法のやり方に興味を持つ人も増えました。ベテランの先生方にも『これほど重度の人がここまでしゃべれるようになった例はいままで見たことがない。勉強になりました』と言っていただきました。出口さんの事例で今後、いろいろな失語症の方が救われるのではと思っています」(瀬尾さん)


【感想】

◆冒頭の未読本記事を書いた際にも述べましたが、私自身、出口さんが脳出血で倒れられたことは、今回、この本で初めて知りました。

「最近出口さん、本出してないなー」「最近HONZでも見ないなー」なんてぼんやり考えている間に、本書で述べられているような、ハードなリハビリを行われていたのだとは。

私自身、「脳梗塞」や「脳卒中」「脳出血」の区別がついていませんでしたが、「脳卒中」とは「脳の血管に障害が起きて生じる病気」を総称するもので、「脳の血管が詰まるタイプ」と、「脳の血管が破れるタイプ」があるのだそうです。
前者が脳梗塞、後者には脳内の細かい血管が破れて出血する脳出血と、脳の表面の血管にできたコブが破れるくも膜下出血があります。
なお、出口さんがなったのは「脳出血」で、「脳卒中」の19.5%を占めるのだとか(脳梗塞は 76.1%、くも膜下出血は4.5%)。

また、出口さんは脳出血が起こったのが左脳だったため、右の手足が麻痺し、さらに言語障害をも抱えることになりました。

それを踏まえて、本書の冒頭の「はじめに」から抜き出した上記ポイントの1番目を読むと、「復職」がかなりの「無理ゲー」であることがお分かりいただけるかと。


◆さて本書は、そのほぼ全編を通じて、出口さんが復職するまでの厳しい道のりを描き出しています。

まずは歩く訓練。

さらには麻痺していない左手を使って、着替えや歯磨き等の日常生活の動作を訓練するのですが、なまじ左手ばかり使うため、上記ポイントの2番目にあるように、右手の存在を忘れてしまうのだそうです。

実際、出口さんも右手は力が入らない以前に、ほとんども感覚もなかったらしく。

また、入院当初の発語は「あー」や「うー」くらいで、意味のある言葉は一切出ない状態だったとのこと。

一方で、リハビリ期間には上限(最大6か月)があるため、上記ポイントの3番目のように、リハビリ時間中の歩行訓練を断念することになりました。

……と書くと、電動車いすが簡単そうに思えますけど、これが結構大変そうで、慣れるまでは操作ミスが多発したそうです。


◆一方で、上記ポイントの4番目にあるように、書く力は日増しに回復したようで、引用内に登場されている言語聴覚士の瀬尾さんによると
6月あたりから書く内容はどんどん難しくなっていき、私たちが知らない内容がたくさん出てきて検索が欠かせなくなり、いつの間にか私たちが教えてもらう形になりました。
とのこと。

ちなみに本書には、出口さんが書かれた文章も掲載されているのですが、「ベルニーニ」とか「教皇ウルバヌス8世」「インノケンティウス10世」とか普通に出てきてますから、そんなの普通知りません罠。

さすがに左手で書いているだけあって、複雑な漢字は使われていないものの(でも「噴水」とか書いてますけど)、カタカナだと容赦ありませんw

それに比べると、話す力の方は「見劣りする」状態で、「ノート1ページが埋まるくらいの長文」が書ける頃でも、しゃべるとなると「昨日は眠れました」「今日は疲れました」と2語くらいの短い文になることが多かったのだそうです。


◆結局こんな状態で、6か月の入院期間を終了して退院することになったのですが、出口さんは自宅でもリハビリは欠かしませんでした。

また訪問リハビリを利用し、入院していた病院にて「しゃべるリハビリ」を継続。

言葉が出ないのは、失語症だけでなく、右側の口や舌にも麻痺が残っていたため、そちらのリハビリも行ったのだそうです。

こうしたさまざまな努力の結果、出口さんは退院してから1か月でしゃべる力が急速に回復。

上記ポイントの5番目のように、担当した瀬尾さんだけでなく、病院のスタッフや勉強会の参加者も「衝撃を受ける」ほど回復したのだとか(スゲー!)。

ちなみに、脳卒中で障害が出ても落ち込まない患者は珍しいそうで、これは終始前向きな出口さんの性格や、「やり残した仕事があるから」と復職をあきらめなかった強い意志ゆえなのでしょうね。

さすが、かつて山本一郎氏に「ライフネット生命というより、出口社長というオヤジが凄かった」と言われただけのことはあります(8年ぶり2度目の引用)。


読む人に勇気と希望を与えてくれる1冊です!

4065239508
復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる (講談社現代新書)
第1章 突然の発症から転院へ
第2章 僕が復職を目指した理由
第3章 リハビリ開始と折れない心
第4章 言葉を1から取り戻す
第5章 入院生活とリハビリの「自主トレ」
第6章 リハビリ入院の折り返し
第7章 自宅への帰還からAPU学長復職まで
第8章 チャレンジは終わらない


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【編集後記】

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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