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2022年07月21日

【オススメ!】『アサーティブ・コミュニケーション』戸田久実


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アサーティブ・コミュニケーション (日経文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、現状もっともお求めいただいている作品。

お互いの立場や主張を大切にした「アサーティブ・コミュニケーション」について、さまざまな角度から解説をしてくれる1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
在宅勤務が増えて、オンラインやメール主体のコミュニケーションが増えると、発言がしにくかったり、顔が見えないことによる攻撃的なコミュニケーションが増える可能性がある。アサーティブ・コミュニケーションの考え方は以前から日本に導入されていたが、いま改めて、そのニーズが増しているといえる。
本書は、『日経文庫 アンガーマネジメント』の著者が、怒りをうまくコントロールした先にあるコミュニケーションとして、アサーティブ・コミュニケーションの考え方と実践法を語る。

中古価格が定価を大きく上回っていますから、迷わずKindle版を読みました!






Communication / iamthatphotoguy


【ポイント】

■1.「叱りやすくするために、まずほめる」はまちがい
 企業研修の際に、質問の時間を設けると、
「叱りやすくするには、最初にほめることが大切ですか?」
「先にほめたほうが、叱ることを相手に受けとめてもらいやすいでしょうか?」
 と、尋ねられることがよくあります。
 結論から言うと、これは、アサーティブなコミュニケーションではありません。(中略)
 叱る前に、とってつけたように無理やりほめても、相手は気持ちよく受けとれないものです。むしろ、相手をコントロールしようとしている本心が伝わってしまうでしょう。
 相手をコントロールしようとする思いは、日頃の態度にもあらわれやすいので、言われる側の不信感はどんどん募っていきます。すると、いざ本当に相手をほめようとしたときにも、
「この人は、また都合のいいことを言っているだけだ」
 と受けとめられてしまうことになるでしょう。これは避けたいところです。


■2.相手を論破しようとしない
 アサーティブ・コミュニケーションでは、自分の「こうしてほしい」という主張を相手に伝えること、わかってもらおうとすることをゴールとして設定します。
 一方的に相手に「こうあるべきだ」と押しつけてしまう人は、自分の考えを相手に認めさせることをゴールとして設定していることが多いものです。ところが、いかに自分が正しいのか、いかに自分の言っていることが世間的に常識なのかを押しつけて、
「相手が間違っている」
 と論破する方向に持っていくと、次第に相手との関係性も悪化してしまいます。そうなると、相手にわかってもらうどころか、反発を受けることになる可能性もあるでしょう。(中略)
 不要な反感や怒りを持たれないためにも、「常識」「当たり前」という表現を多用して、周囲に考えを押しつけていないかを振り返りましょう。


■3.客観的事実と主観を分けて伝える
 事実と主観を分けて伝えることは、日頃の報告・連絡・相談でも求められます。ただ、注意したり、叱ったりするときには、ここがとくに重要なポイントになるでしょう。
 これができていないと、言われた相手は混乱し、なかには主観の部分に過剰反応する人も出てきてしまいます。
○ 「この1カ月でミスが5回続いている。わたしから見ると、最近集中力が欠けているように思えるのだけれど、どうかな」
 →事実:この1カ月間、こういうミスが続いている
 →主観:そういったことから、最近集中力が欠けているように思える
 このように分けて話せるといいでしょう。


■4.「笑顔で言ったら丸くおさまる」は妄想
「相手にとって耳の痛いこと、好ましくない内容であっても、笑顔でいれば、場の雰囲気が悪くならない」
 これは、本当にそう言えるでしょうか?(中略)
むしろ、真剣な顔で、
「これはやめてほしい」
「これは改善してほしい」
「申し訳ありません、これは致しかねます」
 と言ったほうが、相手に真剣さ、真意が伝わる可能性は高いでしょう。気づいていないだけで、じつは笑顔で言うことによるデメリットもあります。たとえば、注意したことが
「たいしたことではない」
 と軽く思われてしまって、一向に改善されない。断ったはずなのに、
「本当は引き受けられる余裕はあるのでは?」
 と思われ、さらにゴリ押しされてしまった……という事例もあります。


■5.断るときは理由と、代わりの提案を考える
 取引先から無理な要望があったとき、どのように対処していますか?
 関係性によっては、どうにかして引き受けることもあるかと思いますが、どうしても断らなくてはならないとき、大事なポイントは「なぜできないのか」という理由を明確にすることです。
 仕事上の関係ならば、とくに相手が納得できるような、断りの理由を伝える必要があります。また、無理が発生するために断らなくてはいけない場合、どのような条件であれば引き受けられるのかという代替案も用意しましょう。
 たとえば、今後も顧客として、長いお付き合いをしていきたいと思うのであれば、
◯ 「○○の納期なら可能です」
◯ 「ここまでであれば、対応できます」
 と、別の提案をしていきましょう。代替案を出すことで、検討している姿勢を見せることができます。


【感想】

◆読了したのがKindle版なので厚さは分かりませんが、ページ数の割にはハイライトを引きまくった作品でした。

以前、やはり同じテーマでこちらの本をご紹介したことがあるのですが。

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アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法 (講談社現代新書)

参考記事:【話し方】『アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法』平木典子(2012年04月10日)

かれこれちょうど10年前ですか……。

当時と現在で大きく異なるのが、「パワハラ」という概念の浸透ぶりであり、たとえば以前なら上司や先輩から押さえつけるように言われていたことでも、今はそれに対して反論(抵抗)できる状況になりつつあるかと。

ただしこれは、自分が部下に対して発言する時には、逆に気を付けなければならないワケで、本書ではその辺についても逐次指摘しています。


◆また、本書では細かなテクニックについても検証しており、個人的に「知らなんだ」と思ったのが、上記ポイントの1番目の「叱る前にまずほめる」が誤りだということ。

これ、作品は忘れましたが、私が読んだ本の中でも、似たようなTIPSが何度か推奨されていた記憶があります。

正しくは、日頃からほめるところはほめ、感謝すべきは感謝しておくべし。
 日頃からいいところにも目を向けてくれているとわかると、改善に向けた耳の痛い言葉もすんなりと受け入れやすくなります。
わかっちゃいるんですが、それがなかなか……。

同じく意外だったのが、上記ポイントの4番目の「相手に好ましくないことを笑顔でいうのがダメ」というお話。

著者である戸田さんのアサーティブ・コミュニケーションの研修でも、「笑顔のまま叱ったり、NOと言ったことがある」人が、20人中5〜6人ほどはいるのだそうです。

これはそうした方が雰囲気が悪くならなかったり、相手に伝わると思ってやっているのでしょう(私もそうでした)が、むしろ真剣に伝えるべきなんですね。


◆一方、上記ポイントの2番目にもあるように、自分の思い込みを相手に押しつけるべく、論破しようとするのもNG。

この「思い込み」というのは、その人にとっては「常識」や「当たり前」なことなのですが、その多くがアンコンシャスバイアスと呼ばれるものです。

本書では第3章を丸々費やして、このアンコンシャスバイアスについて言及しているのですが、当ブログでは以前、こちらの本をご紹介したことがありました。

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アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か

参考記事:【バイアス?】『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か』パク・スックチャ(2021年04月26日)

「アンコンシャス」というぐらいですから、無意識な分、余計にタチが悪かったりします。

特に職場の場合、「女性だから〜」というアンコンシャスバイアスは、たとえ口に出さなくとも、その思い込みによる言動が問題になりかねませんからご注意を。


◆また、「事実」と「主観」を分けて伝える、というのは、普段から意識されてる方もいらっしゃることでしょう。

ただし、上記ポイントの3番目にもあるように、特に「注意したり、叱ったりするとき」には、「ここが重要なポイントになる」のだとか。

ここで分けずに
「いつもミスが続いているよね。あなた、本当にやる気がないよね。集中力が欠けているよね」
なんてたたみかけてしまったら、言われた方もイラッとしたり、聞く耳を持たなくなったり、落ち込んだりしてしまいます。

もっともこのケースの場合、「主観」というより「思い込み」に近いですから、くれぐれもこういったものの言い方は避けなくてはなりませんが。


◆そして上記ポイントの5番目のTIPSは、第5章の「ケース別対応例」から抜き出したもの。

ここがまさに至れり尽くせりで、こんな感じのケースが登場しています。
(1)攻撃的な相手に、どう伝えればいいか
(2)取引先からの無理なお願いを断るとき
(3)権威ある人の発言を根拠に、意見を押し通してくる人への対応
(4)攻撃している自覚がない相手に応じるとき
(5)攻撃的な人と対話をするとき
(6)非主張的な相手に言いにくいことを伝えるとき……etc
全部で14ケースありますから、1つや2つは絶対実践できるハズ。

実際、本書は全体を通してアサーティブ・コミュニケーションはもちろんのこと、「傾聴」や「アンガーマネジメント」といったテーマについても言及されており、色々とためになりました。


職場のコミュニケーションに役立つこと必至の1冊!

4296114514
アサーティブ・コミュニケーション (日経文庫)
第1章 アサーティブ・コミュニケーションとは
第2章 アサーティブになるための準備
第3章 アンコンシャスバイアスの影響に気づく
第4章 アサーティブな表現のポイント
第5章 ケース別対応例


【関連記事】

【話し方】『アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法』平木典子(2012年04月10日)

【オススメ】「断る力」勝間和代(2009年02月19日)

【怒りの制御】「アンガー・マネジメント」安藤俊介(2008年10月14日)

【バイアス?】『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か』パク・スックチャ(2021年04月26日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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