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2022年07月14日

【カルト宗教の手口とは?】『決定版 マインド・コントロール』紀藤正樹


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決定版 マインド・コントロール


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日のテレ朝のワイドショー出演で話題となった弁護士の紀藤正樹さんの、話題の作品。

在庫が品切れで、中古にプレミアムが付くほどの人気ということで、さっそく私も読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
自分はぜったいにだまれさないと思ってるあなた。
巧妙な手口で私たち一般人を狙う、悪徳占い師、霊能者、オレオレ詐欺グループ。
彼らはどのような手口で、近づき、心の闇に入ってくるのか?
被害者救済の第一人者が「だましの手口」を徹底告発!
さらに、その対策をわかりやすく解説する。

幸い、Kindle版なら在庫切れも無縁なので、今回の事件でカルト宗教に興味を持たれた方は、ご一読ください!






Paganism / pburka


【ポイント】

■1.カルト集団が使う「強迫観念」を植え付ける手法とは?
カルト的な団体などのマインド・コントロールでは、相手に強迫的な観念を植えつけようとする例が頻繁に見られます。
 正確にいうと、その人の強迫観念になりそうなものを見つけて、より強い強迫観念になるように仕向けます。それが見つからないときは、外から植えつけるわけです。
 たとえば「あなた、何か悩み事はないの?」「とくにありませんけど」「いや、それは問題よ。悩みがないということ自体が、人間としておかしいんじゃない?」と、悩み事のない人に、わざわざ悩み事をつくってしまいます。そして、マインド・コントロールの手法を駆使して、その悩み事を大きく強くします。その悩み事を相談し解決するには、私たちのグループに入ればいい、この人に帰依すればいいという方向に持っていくのです。
 このプロセスで、悩みの原因は先祖の霊が取りついているからだ、このままでは結婚できない、必ず病気になってしまう、世界が破滅するときに救われないなど、根も葉もないようなことを吹き込んで不安感を煽ります。
 強迫観念を植えつけて大きくし、不安や恐怖を煽ること。これは、問題のあるマインド・コントロールに見られる典型的なパターンなのです。


■2.家屋敷まで巻き上げる手口とは?
 統一教会の組織的なカネ集めの典型的なやり方を紹介しておきましょう。
 夫に先立たれた資産家の女性がいるとします。すると統一教会では、女性から資産をだまし取るため、資産を調査する係、資産を評価する係、女性に最初に声をかける係、声かけ係を補佐する係、霊能師の係、霊能師係を補佐する係、統一教会の教義を教え込む教師係など、10人くらいのチームをつくります。統一教会ではこうした組織を「サミット」と呼んでいました。このチームが一丸となってマインド・コントロールの手法を駆使し、女性に近づき、取り込んでいきます。
 信者として取り込まれていく被害者が「10人のチーム」と見抜くことは、ほとんど不可能です。「きれいなお花ですね」と声をかけてきた第1章のセールスマンを思い出してください。統一教会の周到な作戦は、あのように何気なく始まります。(詳細は本書を)


■3.マインド・コントロールの手法が駆使される霊感商法
 相手は、すでに電話で長時間悩み事を聞き、相談に乗ってくれています。すると、ブレスレット代金とは別に、こちらが何かしなくてはいけないような気になってきます。これは第1章で見た「返報性」の原理です。
 また、一度は願いをかなえるために、自分から開運ブレスレットを注文したのです。返品して話を終わりにしたら、自分の願いは何だったのか、いいかげんな願いだったのか、と思います。そんなことはなく、あれは真剣な願いだった。だから、もうちょっとこの人のいうことを聞いてみよう、と除霊を依頼します。これは「一貫性」の原理です。
 こうしてマインド・コントロールの手法が駆使され、最初のブレスレットに始まって、高額な祈祷料をはじめ、水晶玉のようなガラス玉、霊験あらたかな霊石、浄化石といった物品代を次から次へと巻き上げられてしまいます。いずれも十数万〜100万円以上というような金額です。


■4.なぜ日本は「世界的なカルトの吹きだまり」なのか?
 統一教会というカルトは日本でもっとも繁栄し、霊感商法や献金集めで巨大な収益を上げているわけです。そんな国は、日本以外にはありません。
 オウム真理教は、東京の住民を万人単位で無差別殺傷してよいのだと考えて化学テロを実行し、実際に5500人以上を死傷させました。そんなことができた国も、日本以外にはありません。
 ようするに、日本という国はカルトの世界的な穴場で、カルトの世界的な吹きだまりになっています。日本がカルトに対してもっとも甘いから、統一教会がもっとも繁栄することができ、オウム真理教が数千人を巻き込む無差別テロを実行できたのです。これは、きわめて深刻な問題です。(中略)
 結局、日本には宗教のオーソドキシー(正統的な信仰)がない、つまり基準となる背骨のような宗教がなく、信教の自由の幅が大きいために、カルトを問題視したり監視したり批判したりすることが少ないのです。だから、カルトが繁栄してしまいます。
 別の言葉でいうと、世の中の規制に「法的規制」と「社会的規制」があるなかで、日本にはカルトに対する社会的規制がほとんどなく、機能していないわけです。


■5.飯干晃一さんが、娘の奪還に成功した理由は何か?
 実は飯干晃一さんも、統一教会に入った娘さんに対して、最初は頭ごなしに反対していました。人生経験も知識も豊富で優秀な人ですから、もちろん自分の取材経験と知識で統一教会に立ち向かえると思っていたし、娘も説得できるはずだと思っていました。
 しかし、娘さんを説得しようとしてもうまくいかない。経験や知識を駆使して統一教会のここが問題ではないかといくら主張しても、彼女は聞く耳を持ちませんでした。
 そこで飯干晃一さんのえらいところは、自分で説得できなかったとき、これは使っている言葉が違うしパラダイム(思考の枠組み)も違うと気づき、すぐに転進を図って、当時、日本にはこの人をおいて他にいないという人に頭を下げて頼んだことです。このカウンセラーが飯星景子さんのマインド・コントロールを解いたわけです。


【感想】

◆冒頭で触れたワイドショーで、本書の著者である紀藤さんが理路整然と話をされていたのも納得の1冊でした。

何せ紀藤先生は、統一教会(既に本書発売時に「世界平和統一家庭連合」と改名していますが、本書内では「統一教会」と呼称しています)の被害者らを代理して、裁判を起こすこと多々。

しかもその始まりが、弁護士になられた直後に、大学時代に家庭教師をしていた女の子が統一教会入会してしまい、その脱会を試みたから、というところに何か運命的なものを感じます。

その結果、本書は冒頭の内容紹介で「悪徳占い師、霊能者、オレオレ詐欺グループ」等を列挙しながらも、話の中心は統一教会ということに。

……実際、Kindle内で検索をかけたら「129回」も「統一教会」というフレーズが登場していますから、その存在の大きさがよく分かります。


◆さて本書は、第1章にて「敵」が用いる「マインド・コントロール」が何たるやを解説。

そこで駆使されるテクニックとして紹介されているのが、『影響力の武器』でおなじみの「6つの原理」です。
(1)返報性
(2)コミットメントと一貫性
(3)社会的証明
(4)好意
(5)権威
(6)希少性
これらが具体的に使われていくテクニックについては、上記ポイントの3番目でも(1)の返報性と(2)の一貫性が登場していますのでご確認を。

ちなみにこの本、著者のロバート・B・チャルディーニが、セールス会社や宗教団体に潜入して書いているだけに、説得力も非常に大きいです。

実際今では逆に、こういった団体の勧誘マニュアルや、セールスマニュアルの元ネタとなっていますから、未読の方はぜひご一読を。

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影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか

参考記事:【速報!】『影響力の武器』の[第三版]を[第二版]と比較してみました(2014年07月14日)

なお、紀藤先生は、チャルディーニに会って話をしたことがあるのだそうです。


◆続く第2章のテーマは「霊感商法」ということで、まずは被害総額の遍歴や数字が挙げられているのですが、その内訳で最大なのがやはり統一教会とのこと。

それまでも霊能者が単発で物を売りつけることはあっても、組織だって「霊感商法」や「開運商法」を行ったのは統一教会が初めてなのだそうです。

そして、その典型的なやり口に触れているのが、上記ポイントの2番目。

ボリュームの関係で、それに続く実際の手口がご紹介できませんでしたが、なるほどマインド・コントロールされた「信者」が家屋敷を巻き上げられても不思議ではありません。

何せあちらは、事前に資産の調査や評価までしているワケですし、そこまではいかなくとも、壺やら印鑑やらを上手いこと買わされる模様。


◆さらに手広く網を張るのが、女性誌に出す広告で「開運ブレスレット」等を売るケースです。

ただしそれらは「見せ商品」であって、それを売りつけるのは本来の目的ではないということ。
 ですから、期限内(たとえば3日以内や5日以内)に効果がなければ返品に応じる、使い方が重要なので電話で教える、といった意味のただし書きがついており、被害者が業者と電話で話すように仕向けられています。
そこで電話を受けてからのお話が、上記ポイントの3番目。

電話がかかってきたら、その人の悩みを根掘り葉掘り聞き出して、効果がある人には「もっと効き目が強いもの」を勧め、効果がない人には「除霊して効果がなければ返金する」と伝えるのだとか。

どっちに転んでも、その先に進むのには変わらないのですから、どんどんエスカレートしていく次第。

なお、こうした女性誌を使った手法は、戸別訪問や繁華街で声をかけるのに比べると、ターゲットが初めから占いや開運、霊能に興味を持っているため、とても効果的、効率的なのだそうです。


◆一方第3章では、カルト的な集団やカルト教団について分析。

アメリカでも「チャールズ・マンソン・ファミリー」や「人民寺院」事件がありましたが、紀藤先生が日本で「カルト」と評価していいだろう、と言われている宗教ないし宗教的集団は、オウム真理教、統一教会、SPGF(シャクティー・パット・グル・ファウンディション、旧ライフスペース)の3つなのだとか。

ただ、こうした団体が活発に活動できるのも、上記ポイントの4番目にあるように、日本独自の「宗教に対するスタンス」ゆえかも。

確かに、キリスト教徒でもないのにクリスマスを祝い、仏教徒でもないのに除夜の鐘を突いたり、その直後の年明けに神社に初詣に行く、というのは宗教的にはカオスです罠。

さらに第4章では「『脱マインド・コントルール』の手法」と題して、実際に脱会する手順や注意点が挙げられているのですが、正直、素人にはハードルが高過ぎました。

私自身、ムスメやムスコが入会したら、脱会させられる自信はないのですが、上記ポイントの5番目の飯干晃一さんのケースは無事脱会できた成功例。

なるほど、「餅は餅屋」ということなんですね。


悪意のあるマインド・コントロールに負けないために読むべし!

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決定版 マインド・コントロール
プロローグ 「マインド・コントルール」は決して他人事ではない!
第1章 「マインド・コントルール」とは何か?
第2章 「霊感商法」のマインド・コントルールの手口
第3章 「カルト」のマインド・コントルールの手口
第4章 「脱マインド・コントルール」の手法
エピローグ 「マインド・コントルール被害」を減らすための提言


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絶対に公開してはいけない「詐欺師の逆転話術」(2010年05月09日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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