2022年07月13日
【中高年必読?】『早期退職時代のサバイバル術』小林祐児
早期退職時代のサバイバル術 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「プライムデー最大70%OFF Kindle本セール」の中でも、個人的に読んでみたかった働き方本。私のような中高年で、会社勤めをなさっている方なら、要チェックな1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
コロナ禍で早期退職の募集が急増している。対象は3年連続で1万人を超え、リーマンショック後に次ぐ高水準だ。業績良好な企業の「黒字リストラ」も少なくない。長年尽くした会社から突然、戦力外通告を突きつけられ、会社に残れば「働かないおじさん」と後ろ指を指される。なぜキャリアを積んだ中高年がこんなに邪魔者扱いされるのか。転職すべきか、留まるべきか、どう変わればいいのか。制度疲労を起こしている「日本型雇用」の問題を浮き彫りにしながら、大リストラ時代を生き残る術を示す。
中古は値下がりしていますが、送料を考えるとこのKindle版が300円以上お得です!
Senior man typing on an old typewriter and writing on paper. / shixart1985
【ポイント】
■1.男性中高年の4つの「ない」とは「働かないおじさん」問題がなぜ繰り返されるのか。この問題は、雇用と人事の問題だけに着目していてはひもとくことが困難です。中高年の働き方の問題は、雇用を超えた広範囲に絡み合う複数の問題系によって引き起こされています。
具体的にどういった点が問題なのでしょうか。それは、中高年が抱える4つの問題に集約できます。「働かない」という問題に加え、「帰らない」「話さない」「変われない」という問題です。本書ではこれらを中高年の「4ない」問題と呼んでおきましょう。
それぞれ簡単に要約すれば、「働かない」は仕事へのモチベーションが失われていること、「帰らない」は長時間労働の習慣と職場以外の居場所がないこと、「話さない」は他者との交流が狭く閉じていくこと、「変われない」は環境や時代の変化へ適応していく力が落ちていくことです。
■2.日本のキャリアの歩み方は「校内マラソン」
日本企業におけるキャリアの歩み方を日常的なものにたとえれば、それは小・中学校で多くの人が経験する、「校内マラソン」に似ています。入学(入社)した年ごとに「ヨーイドン」の合図でキャリアを一斉に走りだし、「同期」はライバルでもあり、励まし合う仲間としても形成されます。マラソンなのでペースはゆっくりしており、レースが中盤にさしかかるにつれて集団が分かれ、最後は一握りの人たちだけがトップを目指して走り抜いていきます。このマラソンは、スタートが同じですぐに大きな差をつけないという意味で「平等主義的」な体裁を保ちます。しかし、後半戦から最後にかけては当然ながらきっちりと差がついて、順位が付きます。「平等主義的」であると同時に「競争主義的」です。しかも、多くの場合そのレースは生徒の手あげ制による「任意参加」ではなく、その学校に所属している限り「強制参加」です。
■3.男性を職場に縛り付けた要因は?
長時間労働+長時間通勤によって平日に家にいる時間のない夫には、わざわざ「書斎」を作る必要性は少なくなりました。「就寝分離」によって個室は子供たちに配分されて、夫婦の部屋はベッドによって占領されています。じっくり仕事に集中できる部屋は日本の住宅になかなか存在しません。
郊外化によって男性も女性もともに「空間的足かせ」をはめられるようになった経緯を確認してきました。働く男性が「職場」という居場所に閉じ込められてきた「帰らない」問題は、こうした第二次世界大戦から高度成長期にかけて行われていった「残業分離」「職住分離」「就寝分離」「寝食分離」という〈四重の時空間的分離〉が為せる業です。
■4.働く個人が意識すべき「変化適応力」
こうした意識を時折確認し、高く保っていくことは、中高年に限らず働く個人の誰もが意識すべきことでしょう。これらは、不安定化していく時代で変化しながら生きていくために、折に触れて眺めたい「お守り」のようなものです。変化への気持ちを抑制してしまう心理とともに、問いの形で再掲しておきましょう。・仕事を通じて「どこかに向かっている」感覚があるか ──(目標達成志向)(詳細は本書を)
・新しいことにチャレンジする気持ちはあるか ──(挑戦への意欲)
・「自分は○○には興味がない」と決めつけていないか ──(興味の柔軟性)
・「現状のままで十分だ」と思いすぎていないか ──(現状維持志向)
・「今の時代にはついていけない」と感じていないか ──(取り残され感)
・十分な経験を積み重ねていくことができているか ──(能力経験不安)
■5.中高年が特に注力すべき5つの行動因子
筆者は、法政大学大学院の石山恒貴教授や大手製造業を中心とした人事担当者、パーソル総合研究所の人事コンサルタントらとともに、働く中高年の「活躍格差」について研究し、会社組織で活躍している人のパフォーマンスにつながっている職場内の行動特性がどのようなものなのかを定性的・定量的調査を通じて明らかにしてきました。
研究を進めた結果、その活躍を導く行動の因子は、次の5つにまとめられることがわかってきました。その5つとは、(1)「仕事を意味づける(Explore)」、(2)「まずやってみる(Proactive)」、(3)「学びを活かす(Learning)」、(4)「居場所を作る(Associate)」、(5)「年下とうまくやる(Diversity)」です。我々は英語の頭文字をとって「PEDALモデル」と呼んでいます。これらの行動が個人の仕事の成果であるジョブ・パフォーマンスと結びついていることが定量的に確かめられました。つまり、これら5つが、働く中高年が特に注力すべきポイントそのものです。
【感想】
◆日本の制度や構造における問題も含め、いかに我々中高年が難しい立場に置かれているかを描き出した作品でした。もっとも、かくいう私は、かなり昔に会社員から足を洗っているので、本当の意味での実感は持ち得ていません。
とはいえ、会社員時代の同期や先輩後輩たちが、このような「道」を歩んでいると思うと、果たして自分が会社に残っていたら、どうしていたか考えてしまったのですが。
まず本書は、第1章に先立つ「はじめに」にて、上記ポイントの1番目にある「男性中高年の4つの『ない』」について言及しています。
そして実は、この4つの「ない」に沿うような形で、それぞれの問題点について考察していく次第。
たとえば第1章の、「会社の外に出ても自分の価値が低いとわかっている中高年に、自分のキャリアについて考えて行動するように促せば、ある意味で合理的に、できるだけ企業にしがみつこうとする」という一節を読んで、それはそうだよね、と思ってしまいました。
◆また、第2章では日本の雇用を形容する有名な言葉として、「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」という、いわゆる「雇用の三種の神器」が登場するのですが、実はその3つがそれぞれ、一般的に思われているものとはやや異なることが描かれています。
特に「年功序列」に関しては、「職能資格制度」と、それに紐づく「職能給」について理解していないと語ることはできない模様。
ところがこれが、海外で働いてきた人からは「なぜ日本の人事管理はこんなに複雑なんだ」と驚かれるものだそうで、私も読んでいて頭が痛くなりました。
そこで、もうちょっとシンプルな、日本における昇進の「平等主義・競争主義」に触れた上記ポイントの2番目を、第3章からご紹介。
フランスを代表とする「ラテン・モデル」では入社の時点からすでに「勝負」に差がついていたり、「職種に紐付く具体的な専門性と組織マネジメント能力の両輪が求められる」という「ドイツ・モデル」と比べても、日本の「校内マラソン」スタイルは異質なようです。
それが如実に表れているのが「昇進の見込みがない人が5割に達する時期」であり、アメリカが9.1年、ドイツが11.5年に対して、日本は22.3年なのだとか。
……それは確かに「マラソン」や。
◆一方第4章では、上記の「4つの『ない』」のうち「帰らない」理由について分析しています。
そして上記ポイントの3番目は、その結論部分についてまとめたもの。
そういえば私も、子どもが大きくなるに従ってそれぞれ部屋を与えた関係で、昨年引っ越しをして書斎がなくなってしまい、寝室の机でこのブログを書いています。
また、今までより15分通勤時間が伸びたことも加わって、より職場(事務所)で過ごすようになりましたから、これが遠距離通勤だったら、なおのこと「家にいない」時間が伸びたことかと。
私の会社員時代の1つ下の後輩は、私が退社後小田原に家を買って通っていましたが、片道1時間半というのは、都内近郊ではそこまで「ありえない」通勤時間ではないと思います。
◆……とここまで、一般的な日本の「問題」について指摘がされてきましたが、では私たち中高年はどうしたらいいのか?
その答えの1つが、第8章から引用した、上記ポイントの4番目に出てくる「変化適応力」を身につけること。
実は遡った第6章でも、この「変化適応力」は何度も言及されているのですが、まとめとしてこちらを使わせてもらいました。
そしてこの「変化適応力」は、その名のとおり、上記「4つの『ない』」のうち、「変われない」に対応するもの。
分かりやすいところでは、昨今のコロナ禍で、テレワーク導入にともないZoomが必須になった際でも、尻込みする人がいる一方で、他人に教えてまわるような中高年は「変化適応力」が「ある」と言えるでしょう。
上記ポイントの4番目でも「再掲」と書かれているように、本書では個々の項目についても詳しく触れられていますから、そちらもぜひお読みください。
◆さらに上記ポイントの5番目も、同じく第8章から抜き出したもの。
なるほど、この「PEDALモデル」に従って働くようにすれば、中高年であっても高いパフォーマンスが望めるワケですね。
ここでは行動因子を列挙しただけですが、本書ではこの部分に続いて解説が述べられていますから、そちらをご確認いただきたく。
なお、最後の第9章では、転職について触れられているものの、「転職すると生涯賃金は下がる傾向にある」とあってがっかりの巻。
実は本書の第6章でも、転職の「35歳限界説」について、「35歳を超えると、5歳分歳をとるごとに出身大学偏差値が10低下することと同程度の採用抑制効果が見られました」とありましたから、中高年をターゲットとした本書では積極的には推していないようです。
それでも中高年の転職についての注意事項等、有意義な記述はありましたから、転職をお考えの方なら要チェックで。
中高年の会社勤めの方なら、一読の価値がある作品でした!
早期退職時代のサバイバル術 (幻冬舎新書)
第1章 中高年が職場で肩身が狭い真の理由
第2章 狭まる「ミドル・シニア」包囲網
第3章 日本の「校内マラソン型」人事が「働かないおじさん」問題の原因
第4章 自分の居場所を確保するために
第5章 「離さない人」の落とし穴
第6章 「変わる」ことはキャリアの価値
第7章 企業はどうすればよいか
第8章 成功する早期退職を迎えるために
第9章 私たちはどう転職すればよいか
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【自己啓発】『50歳からの孤独入門』齋藤 孝(2018年09月21日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。言葉の魂の哲学 (講談社選書メチエ)
「言語哲学」という、私にとって未知の分野の作品は、Kindle版が1300円弱お得。
心を鍛える
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ご声援ありがとうございました!
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