2022年06月05日
【アドラー流?】『哲学人生問答』岸見一郎
哲学人生問答 (講談社文庫)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「講談社文庫 50%ポイント還元キャンペーン」からの注目作。4月に出たばかりの岸見先生の人生相談本ということで、「岸見節」を満喫することができました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「嫌いな人との付き合いが避けられません」「自分だけが労力を提供するのは損です」「自分が好きではなく、自信もありません」そんな人はどうすればいいのか。
人生について切実な41の質問に、心理学にも通じた哲学者が明確な答えを出す。
よく生き、幸福になるための示唆が今を生きるすべての人に響く、導きの書。
中古価格が定価を大きく上回っていますから、Kindle版が300円以上お買い得です!
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【ポイント】
■1.給料とやりがいのどちらを優先するか私の理解では、幸福につながる仕事とは客の利益になることを目指し、そうすることで客が幸福に生きることに役立てたと思える仕事です。そう思える仕事であればこそ、寝食を忘れて打ち込むことができますし、そのような仕事をしていると幸福になれますが、客に損をさせてでも儲けようと思っていると、たとえ儲かっても幸福であるとは感じられないでしょう。
さらには、会社全体が社会に役立つ仕事をしているかが重要です。自分の会社さえよければいいというような会社はこれからの時代、生き残ることはできません。個人が、会社が、さらには社会全体がお金を得ようとすること自体に問題はありませんが、それを何のためにどう使うかを考えなければなりません。誰かの犠牲の上に成り立っているような社会においては誰も幸福に生きることはできません。自分だけが、一部の人たちだけが幸福になることはできないからです。
■2.親は子の人生に責任はとれない
皆さんにとっては先の話になるかもしれませんが、将来皆さんが結婚する時、親に反対されたら従いますか?
親に反対されたからといって好きな人との結婚を諦めるようでは、自分の人生を生きることができなくなります。親に、「あなたがあんな人と結婚するなら、もう私は悔しくて死んじゃうから」といわれても、「そうですか。残念です。短いお付き合いでしたね」と答えてほしいと思います。
皆さん笑っておられますが、それくらいの覚悟がないと、自分の好きな人と結婚することはできません。「親がどう思おうが関係ない」と割り切れる人はいいのですが、実際にそう割り切ることを難しいと思う人もいるでしょう。そういう時も、相談するしかないのです。どれだけ親に反対されても、私が付き合っている人はいい人、今はあの人のよさをわかってもらえないかもしれないけれども、私たちを見守ってほしいと自分の考えをいえる関係を、この場合も日頃から築いておかなければなりません。
■3.友だちとの関係は適度な距離を取る
「最近のあなたを見ていると、心配なんだけれど、その話をしてもいいか」と、まずはそう話しかけます。その上で「放っておいてくれ」といわれたら「いつでも力になるからいってほしい」と伝えます。こういうふうに話しておけば、その人が本当に困っていれば、悩みをいつか打ち明けてくれるかもしれません。その時に「それはあなたの課題でしょう」といってはいけません。そういう時は、親身に相談に乗りましょう。
ただし、その場合でも自分の意見を押しつけないのがいいでしょう。これは私の意見であるとはっきりいった上で、採否は相手に任せます。相手との関係性がどのようなものであっても、適度な距離を取ることが大切です。課題の分離の話をすると、冷たいという人は多いのですが、適度な距離が取れた関係は冷たいのではなく、涼しいのです。コールドではなく、クールです。
■4.勉強は「競争に勝つ」ためではない
勉強は苦行ではありません。知らないことを知るのは喜びですし、皆さんが身につけた知識は他者のために使ってほしいのです。他者と競争するために、他者との競争に勝つために勉強するというのは未熟な考えだといわなければなりません。協力することがどういうことかを知っている人は、必要があれば競争できます。しかし、競争することしか知らない人は、協力することはできません。入学試験という手続き、形式だけを見れば競争だと多くの人は考えるでしょうが、知識をしっかり身につけなければ合格しませんが、大学に合格することが最終の目標ではないはずです。(中略)
自分が勉強するのは他者に貢献するためだが、そのことは自分を犠牲にすることでも、他者に喜んでもらうためでもないということがわかっているのといないのとでは、ずいぶんと人生が違ってくると思います。
■5.自分の考えを包み隠さず言える友人をつくる
私は、友だちは必ずしもいなければならないものとは思っていません。いなくてもいいと思っています。皆と仲良くする必要はありません。皆といつも一緒にいないといけないと思って一緒にいるというのは、友だち関係ではありません。一人でいられないということです。
ただ、人は一人で生きているわけではないということを繰り返し話してきましたが、自分が考えていることを包み隠さずにいえる人が一人でもいることは、自分の人生を豊かにするというのも本当です。親にも先生にもいえないことがあります。親や大人にいうと、すぐに説教をされますから。
しかし、友だちは自分の話を最後まで決して 遮らずに聞いてくれます。あるいは、決して批判しません。そういう態度で接してくれる人がいるのといないのとでは、人生はずいぶん違います。 そういう友だちを是非見つけてください。そういう友だちは一人でいいのです。
【感想】
◆自分も本書を買うまで知らなかったのですが、本書は岸見先生が、母校である洛南高等学校にて行われた特別授業を元に再構成したもの。私でも名前を知っているくらいですから、進学校だよな、と思ってその手のサイトを見たら「偏差値73」とかあってビビったという(涙目)。
「あれ?そういえば、岸見先生、以前も洛南で講演された際の本がなかったっけ?」と過去の記事を引っ張り出してみたところ、この本の第2章がそうでした。
成功ではなく、幸福について語ろう (幻冬舎単行本)
参考記事:【幸福?】『成功ではなく、幸福について語ろう』岸見一郎(2018年06月14日)
ただしこちらは、2017年9月の講演における先生のお話をまとめたもの。
一方本書は、2018年の11月と12月に行われた講演ということで、基本的には異なる内容となっています。
……もっとも本書においても「成功と幸福の違い」等については述べられており、有意義なお話なのでハイライトは引いたものの、既出部分との絡みで割愛したのですが。
◆また本書は、前述の本の第2章とは異なり、全41問のQ&A形式をとっています(質問がそれなりに長いため、上記では回答の一部のみ引用)。
この人生相談というのは、過去の岸見先生の作品ですと、こちらの本がそうだったのですが……。
人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
参考記事:【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎(2016年07月08日)
これがまた、その後の岸見先生の本のレビューでもネタにしたくらい、質問者に厳しいことこの上なくて、正直驚いたのでした(詳細は上記レビューを)。
それに比べると、高校生が相手ということで、先生の回答もややマイルドといった感じ。
もちろん、高校生からの質問ということで、結婚はしてないわ、働いてもいない(進学校なのでバイトもしていないハズ)わ、という前提ですから、おのずと質問内容もある程度限られていることもあるのでしょうが。
◆さて、中身を見ていくと、上記ポイントの1番目では、いきなり「自分が金銭欲がすごく強い」「稼げるなら魂を売り渡してもいい」(!?)という高校1年生から、「給料とやりがいのどちらで仕事を選べば幸福になれるでしょうか」という質問が登場。
岸見先生のここでのお答えはもっともであり、その後に前述の「幸福」と「成功」について比較が行われていきます。
そもそも魂を売り渡して金を稼げても、それは「成功」かもしれませんが「幸福」ではないでしょうしね。
さて、ここでは高校生にとっては一足先に、「仕事」というテーマが扱われましたが、上記ポイントの2番目の「結婚」も先の話という意味では同じです。
ただし、ここにおける「結婚」はあくまで例の1つであり、実は質問の内容は「家族の人生と自分の人生、どちらを大事と考えるべきか」というものでした。
実際の質問は、「親が汚職したら?」とか「寝たきりになって医療費が払えなかったら?」等の難しいケースだったので、先生が「結婚」を持ち出した次第。
ちなみに、先生のお母さまの高校時代の同級生が、映画監督志望の大学生と真剣に付き合っていたものの、親に反対されて結婚を諦めたそう。
ところがその男性は後に世界的な映画監督になったそうで、要は「親が反対する理由は必ずしも正しいとは限らない」というワケですね。
◆また、高校生にとっての人間関係といえば、やはり上記ポイントの3番目と5番目にある「友だち」。
前者は「友だちの行為が良くないと思ったら直したほうがいいと指摘すべきか?」という質問で、先生いわく、アドラー心理学における「課題の分離」であるとのこと。
つまり基本的には「他人である友だちの課題には一切踏み込まない」べきではあるものの、「共同の課題」にすることはできます。
そこで上記ポイントの3番目にあるように、確認を取った上で関与するようにすべし。
それに対して後者は、質問自体が「友だちとはどういうものと考えればいいか?」というかなり抽象的なものだったので、先生の「友だち論」が展開されています。
……私自身の高校時代を思い返すと、バンド仲間だったり、体育祭のバスケの仲間だったり、勉強仲間だったり、麻雀仲間だったりで、なんというか広く浅い付き合いしかしてなかったな、と(反省)。
◆なお、上記ポイントの4番目の勉強のお話は、進学校である洛南でするには、なかなか勇気がいるよな、と思ったワタクシ。
確かに「大学に合格することが最終の目標ではない」のは事実なのですが、進学校である以上、それなりの実績を残さないと色々な意味で問題が出てくるんじゃないか、と……。
ちなみに、同じ「受験」という観点からですと、こちらの本は逆に「受験生の親向け」になります。
子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気 (幻冬舎単行本)
参考記事:【アドラー流?】『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』岸見一郎(2017年02月22日)
この本、学習塾で配布している「中学受験情報誌」に連載されていたものをまとめた作品らしいのですが、「ほめてはいけない」「叱ってはいけない」と我が家ではついぞや守れなかったTIPSばかりでした。
いずれにせよ本書は、岸見先生、ひいてはアドラー心理学のテイストを高校生向けに噛み砕いている点で、「哲学」という概念でも理解しやすいと思いますので、お子さんがいるご家庭のみならず、全世代的にご検討を。
特に今回は文庫本の半額セールですから、負担も少ないですしね。
アドラー流人生相談が味わえる1冊!
哲学人生問答 (講談社文庫)
第1部 「よく生きる」ということ
第2部 自立するための3つの条件
【関連記事】
【コミュニケーション】『人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学』岸見一郎(2016年07月08日)【アドラー流?】『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』岸見一郎(2017年02月22日)
【幸福?】『成功ではなく、幸福について語ろう』岸見一郎(2018年06月14日)
【自己啓発】『「今、ここ」にある幸福』岸見一郎(2021年07月05日)
【編集後記】
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