2022年05月29日
【反整理術?】『アンチ整理術 Anti-Organizing Life』森博嗣
アンチ整理術 Anti−Organizing Life (講談社文庫)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「講談社文庫 50%ポイント還元キャンペーン」でも人気の作品。おなじみ森博嗣さんが、「独自の整理術」を披露してくださった1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
ものは散らかっているが、生き方は散らかっていない。新しい発想は、片づかない場所で生まれる!?目からウロコの知的生産のヒント。自由に楽しんで生きるために大切な思考・価値観。理系作家の創造的仕事術。
中古に送料を加味すると定価を上回りますから、このKindle版が300円以上お買い得となります!
letter box / dlofink
【ポイント】
■1.断捨離するなら人間関係断捨離するなら、持ちものなど、どうだって良い。そのまえに、自分の気持ちを断捨離しておこう。終活も同じだ。どちらも、まずは死ぬ覚悟をしておくことである。その次には、人間関係を断捨離しておくこと。そういう面倒なものを子孫に残さないようにしておく。借金があったり、人から援助してもらっていたり、といった関係を処理しておくこと。親戚関係で、子供たちになにかいってきそうな人がいたら、縁を切っておくこと。そういうものが、本当の断捨離である。もし断捨離をしたいなら、まずはそちらを、という意味だ。断捨離を奨励しているわけではないので、誤解しないように。
■2.一人だけの仕事場は散らかる
たとえば、散らからないように、いちいち片づけながら仕事をすれば、整理・整頓をする必要がない。常に片づいている状態だ。これはけっこう多くの職場、作業場が、こういった管理を奨励している。それをする目的は、同じ一人の人間が働いているわけではなく、多数の人間が入れ替わり立ち代わり、その場所を使うからだ。このような共有スペースは、ものが整理・整頓されていないと、混乱を来し、明らかに非効率となるだろう。
だが、一人で作業をする現場というのは、僕が知る限りでは、だいたい散らかっている。(中略)
一人で仕事をしていれば、何がどこにあるのか、だいたい本人が把握している。出した道具をいちいち片づけないのは、またすぐに使うからだ。資料が積み重なるのも、上ほど新しく、また使うものだ、と意識をしているからだろう。そういう「意識」が、散らかるのを許している。
逆にいえば、その状態が自分にとっては「効率的」なのである。
■3.整理整頓が有効なとき
とはいえ、整理・整頓の精神的な効果が有効な場合がある。特に若いときには、目の前の道が塞がるような感覚に陥ることがある。いわゆる閉塞感だ。なにをしても上手くいかないような気がする。周囲が、自分にとって不都合なもので溢れているように見える。やらなければならないことは、すべて意味がわからない。自分にとって本当に意味のあることなのか、と疑われる。 騙されているような気がするのである。
誰でも、こういった状態に陥る場合がある、と思う。そういうときに、部屋を片づけてみるのは、わりと効く。そういう事例が幾つかあった。
どうして、そうなるのか、と考えたのだが、おそらく、問題を解決する能力は、それ以前から本人に備わっているのだ。それが、ものを片づけるという作業をするうちに、気持ちが落ち着いて、冷静な観察力を蘇らせ、本来の自分に戻ることができる。その結果、「しかたがない、やってみるか」となれるのだと思われる。
■4.人格が片づいている人が信頼される
散らかった部屋を使いたいと思う人はいない。ホテルの部屋を想像してもらいたい。きちんと片づいているから、誰にでも使えるのだ。自分の部屋は散らかっていてもかまわないが、それは自分しか使わないからである。他者に利用してもらうためには、片づける必要がある。どこに何があるかわからない。触ってはいけないもの、危険なものがあっては困る。何が飛び出すかわからないのでは安心できない。
つまり、信頼を得て、他者に使ってもらえる人間は、人間として片づいている必要がある。(中略)
そのためには、感情を抑制することが第一条件である。
気分によって大きく素行がばらつくようでは、外から見て目立つマイナスポイントになる。日頃のちょっとした会話や、なにかの指示に対する応対など、本当に細かいところに、その人物の「片づき度」が現れるものである。
■5.創作的な現場では片づける必要はない
先日、『集中力はいらない』という本にも書いたことだが、集中力が求められる仕事は、機械のように正確に同じことを繰り返すような作業だったのである。そのような方面では、人間は機械に太刀打ちできない。そもそも人間がするような仕事ではなかったということだ。逆に、創作的な作業では、むしろきょろきょろと辺りを見回す「落ち着きのない」思考が大事で、発想はこういった状態から生まれやすい。
だから「片づける必要はない」という話になるし、そもそも創作的な仕事をしている達人の仕事場は、既にそうなっているはずである。散らかっている方が効率が良いことを、経験的に知っているから、自然にそうなっている。整理・整頓して効率を高めよう、などと考えることがない。そういう概念さえないかもしれない。
【感想】
◆森先生の本をお読みの方ならお分かりだと思いますが、相変わらずの「森節」が全開の作品でした。そもそも「まえがき」の最初の小見出しが、「森博嗣は天の邪鬼である」ですからねw
これまでにも、「仕事のやり甲斐について書いてほしい」と頼まれて、「仕事のやり甲斐など単なる幻想である」という本を書いたし、「仕事に活かせる集中力について書いてほしい」との依頼には、『集中力はいらない』というずばり真逆の本を書いた。それだけに本書でも、「僕にはその方面の『整理術』というものはない。はっきりいってしまうと、必要がなかったのだ」と断言されています。
それを踏まえて述べられているのが、上記ポイントの1番目。
なるほど断捨離するなら、こういった人間関係やしがらみを、というのは、確かに説得力はあります。
◆さて、第1章では整理・整頓の必要性について言及が。
というより、むしろ一人なら散らかってもしょうがないよね、というお話が上記ポイントの2番目です。
実際私も長年一人で仕事をしていますから、仕事場においても「他の人が使いやすいように」という観点はありません。
ただしいきなり事故等で死ぬ可能性も否定できませんから、最低限残された人が分かるように、会社ごとにボックスファイルを作って、そこに年度ごとに個別フォルダーを用意し、用途ごとにクリアファイルを作って入れています。
それ以外は……確かに広い作業テーブルの上に何社か同時に出ている事も普通にありましたが(特に5月は忙しかったので)。
もっとも、逆にいうと複数人で仕事をされている方にとって、整理・整頓が必要なことは、森先生も否定していませんのでご留意を。
◆一方、そんな森先生でも、整理・整頓の意外な効果を指摘しているのが、上記ポイントの3番目です。
中に「そういう事例が幾つかあった」と言われているのは、別の個所で触れられている、学生からの相談の件ではないか、と。
先生いわく、大学にいる頃に悩んでいる学生の相談を受けることがあったそうで、要はなんとなく大学から足が遠のき、講義をさぼってしまい、留年しそうになる人が一定数いたのだそうです。
そんな学生に対して先生は、話ができるような関係を築き、唯一したアドバイスが、「部屋を片づけてみなさい」ということ。
これが、けっこうな確率で効果を出す。最初は、気づかなかったのだが、学生の何人かが、「あのとき部屋を片づけたのが良かった」とあとになって語ったのである。何かしら行き詰ったときには、試してみても良いかもしれません。
◆もう1つ、整理整頓に対してポジティブなお話が上記ポイントの4番目。
これは第5章の「自分自身の整理・整頓」から抜き出したもので、部屋の片づけではないのですが、結局のところ「人として中身が整っていないといけません」ということかと。
なお、後半部分の感情の抑制についても、いわゆる感情に流される人だと、どんな理屈で判断しているか分かりにくいため、信頼しにくい、というのはあると思います。
ちなみに続く第6章は、本書の編集者と森先生との執筆前のメールでのやりとりが「ほぼそのまま収録されている」という珍しいもの。
編集者さんの質問に対して、森先生が答えていくのですが、これがもう「森節全開」(本日2回目)で、編集者が期待するような回答がことごとく返ってこないという有様です。
たとえば「皆が『どうすれば効率よく学べますか?』といってます」に対して、「皆さんにいえることは、人にきくまえに、自分で考えましょう、だと思います」みたいな……。
◆さらに第7章では、「創作における整理術」というテーマだけに、上記ポイントの5番目にあるように「片づける必要はない」という結論になっています。
ただ、逆にいうと、全体から見たらクリエイティブな仕事に携わっている人の方が少ないでしょうから、従来の整理術本を用いて、片づけをしましょうね、ということにはなるのでしょうね。
……私も一人で働いているとはいえ、クリエイティブとは程遠い仕事内容ですから、やはり片づけはしっかりやらねば。
ところで、当ブログでは下記の関連記事にもあるように、森先生の作品を何冊もご紹介しています。
これら以外でも、森先生の自己啓発系の作品を1冊でも読まれたことがある方なら、森先生の考え方や仕事の仕方、趣味への意欲等ご存じだとは思いますが、そうでない方は、普通の整理術を期待しないでいただきたく。
もちろん、今回の記事でも、森先生のスタンスがお分かりいただけたと思いますが、森先生未体験の方は、念のため下記の関連記事も適当にお読みくださいませ。
まさに「アンチ整理術」が堪能できる1冊!
アンチ整理術 Anti−Organizing Life (講談社文庫)
第1章 整理・整頓は何故必要か
第2章 環境が作業性に与える影響
第3章 思考に必要な整理
第4章 人間関係に必要な整理
第5章 自分自身の整理・整頓
第6章 本書編集者との問答
第7章 創作における整理術
第8章 整理が必要な環境とは
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【編集後記】
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