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2022年04月25日

【記憶術】『記憶はスキル』畔柳圭佑


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記憶はスキル ── 科学的研究でわかった! 人生が10倍楽しくなる記憶のルール


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本の記事」にて人気の高かった記憶術本。

その時点では電子化されていなかったのですが、晴れてKindle版が出たので、さっそく読んでみた次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
特別なことをしなくても、やりかたを少し変えるだけで、おもしろいほど「覚えられる! 」「忘れない! 」「思い出せる! 」
学習塾などに導入される記憶アプリ「Monoxer(モノグサ)」を開発した元Googleエンジニアが、効率的に記憶を定着させる方法を教えます。

なお、中古価格が定価の2倍近くしますから、若干でもお得なKindle版がオススメです!





Memorizing Scripture and Bible Verses / UnlockingTheBible


【ポイント】

■1.覚える際、シチュエーションや目的も反復する
 英単語を記憶するときにも、単語の情報以外にそれを覚えたときのシチュエーションや、どのような目的で覚えようとしたのかなどほかの要素も一緒に記憶しています。
 最初にappleという単語を本で見たならば、appleの意味を思い出すときには、本のページを思い出し、そこにあったりんごの絵から「あ、りんごだな」と認識します。これを何度も繰り返すうちに、覚えたときのシチュエーションなど不要なものは抜け落ちて「apple=りんご」と覚えたい情報だけが意味記憶として保存されていきます。
 こうした記憶の特性を活用すれば、より効率的に記憶できるようになります。
 覚えたい単語があったとき、どういったシチュエーションで覚えたか、どのような目的で覚えたのか、といった要素も合わせて反復することも、単語の記憶をうまく定着させるためには効果的です。


■2.覚える対象をチャンク数の範囲内に言語化しなおす
「DX」を経済産業省が定義したのが、次の文章です。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること (出典:経済産業省ウェブサイト)
 これをそのまま覚えようとしても、なかなか頭に入りません。
 覚える対象がひとつのまとまりとして大きくなりすぎてしまうと、覚えることの負荷が大きくなってしまうのです。
 そこで、文章中に含まれるキーワードの数を、短期記憶で説明したチャンク数と同じ「7±2」の範囲におさまるように自分で言語化しなおす必要があります。
 この場合、「データ」「デジタル技術」「ビジネスモデル」「業務」「組織」「変革」というように、6個程度のキーワードで定義しなおしてみます。
データとデジタル技術を活用して、ビジネスモデル・業務・組織を変革する


■3.テストはするだけで学習効果が高まる
 2011年にジェフリー・カーピック氏によって発表され、サイエンス誌に掲載された論文を紹介しましょう。
Evidence
 この実験では、科学の文章を学習の対象として、4つの方法で学習したのち、1週間後にテストをおこないました。(中略)
 学習の方法は次の4通りです。
1.一定の期間で読むだけ
2.繰り返し読む
3.読む+概念図をつくる学習
4.読む+テストを受ける学習
 結果は、テストによって学習をしたグループが、もとの文章にそのまま載っているものを問う問題、推論が必要な問題ともに高いスコアを獲得しました。正答率を比較すると、「繰り返し読む」、「概念図をつくる」といった学習をしたグループが40〜50%だったのに対して、テストによって学習をしたグループは60〜70%と大きな開きが出ました。


■4.聴覚を利用する
Evidence
 実験ではまず、単語のリストを「大声で読み上げる」「読み上げる」「黙読する」の3つの条件で記憶しました。その後、単語が提示され、記憶したリストにその単語があったか判断する再認課題をおこないました。
 大声での読み上げを指示された単語は78%が記憶されていました。単なる読み上げは66%、黙読は51%という結果でした。
 大声で読み上げるだけで、黙読と比較して26%もよい結果となりました。
 ただ、ここで気をつけないといけないのは、音のみでインプットしたものはすぐに忘れてしまうという実験結果も多くあるということです。自分で読み上げるケースでは問題ありませんが、音を聴くだけで記憶しようとするのは非効率なのです。
 必ず視覚情報との組み合わせで活用するようにしてください。


■5.短期目標を設定する
Evidence
 算数が苦手な小学生を対象とした実験です。1週間の学習をおこなうとき、1日ごとの目標を与えられたグループ、1週間後の目標を与えられたグループ、目標はなにも与えられなかったグループに分けて、1週間の行動を観察しました。
 その結果、学習をする前は5%程度だった正答率が、1日ごとの目標を設定されたグループでは80%にまで伸びました。加えて、自ら勉強したいというモチベーションもとても高い数値をマークしました。
 一方で、1週間後の目標が設定されたグループは、なんと目標がないグループよりも正答率と興味がともに劣る結果となりました。算数が苦手なグループでの実験なので、長期的な目標がマイナスに働いてしまったのです。
 この実験結果から、遠い目標や実感のない目標など、自分の行動に結びつかないような目標では、目標を立てる意味がないことがわかります。
 目標を立てるときには、「自分は絶対にやってやるんだ」と思っていたとしても、習慣化するうえでは、目標を細分化して、「今日はこれ、明日はこれ」と短期的に達成できる目標を立てていくことがとても重要なのです。


【感想】

◆純粋な記憶術本としては、久々の作品でした。

そもそも勉強本自体、以前に比べてご紹介しなくなりつつあったのですが、さらにそこから「記憶」をテーマにしてしまうと、出版のハードル自体が高くなってしまいます。

つまり、普通の勉強本であれば、コンテンツとして許容される「予定の立て方」「モチベーションの高め方」等の内容は、記憶とは直接関係ないだけに書きにくいワケでして。

さらに、ここ数年の私の個人的方針として、著者の体験(「偏差値●●から合格」等)や肩書(「有名大卒」「弁護士」等)のみに基づく作品は、汎用性が保証できないため、できるだけ避けるようにしております。

結果、塾や家庭教師の経験者の作品が大半を占める中、数少ないながらも見逃せないのが、エビデンスに基づく作品。

たとえば、装丁が微妙なので今ひとつハネませんでしたが、この本は隠れた名著だと思っています(なぜか4月28日までセール価格の模様)。

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実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: 復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!

参考記事:【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)


◆そして、今回ご紹介した作品も、系統的にはこの本の流れに沿うもの。

本書のいたるところに上記ポイントの3番目以降にあるような「Evidence」が登場しています。

もっともこのうちのいくつかは、上記の『超効率的勉強法』でも登場しており、私はこの本で、上記ポイントの3番目の、通称「テスト効果」を知りました。

ただし、本書の著者の畔柳(くろやなぎ)さんが、ただのEvidenceだけの研究者と違うのは、こうした知見に基づき、記憶アプリを開発していること。

今回、直接は本の内容とは関係ない(最後の最後に触れられている程度)ので、アプリに関する言及は割愛しますが、その「Monoxer(モノグサ)」というアプリは、以前当ブログでご紹介したこの本で激プッシュされていました(下記記事でも触れています)。

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東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法

参考記事:【スマホ活用!】『東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法』西岡壱誠(2020年03月18日)


◆また、本書のTIPSは、結構個人的に腑に落ちるものが多く、その1つが上記ポイントの1番目です。

私も税理士試験の理論問題を暗記する際は、どのページのどの辺に何色のマーカーでマーキングしていたか、という事を記憶のフックにしていたのですが、複数の理論を同じ色を使って覚えていられたのが不思議でした。

ただ、ここにあるように「不要なもの」として、抜け落ちていたんですね。

……ン十年ぶりかに納得w

同じく、上記ポイントの2番目のチャンキングのお話も、「7±2」という数値自体は、皆さんおなじみだと思います。

とはいえ、それを言語化する際に用いる、というのは「目からウロコ」。

だいたいチャンキングの話って、数字のまとめ方(区切り方)とかがメインで、文章に用いるなんて考えたことがありませんでした。


◆一方、上記ポイントの3番目の「テスト効果」についてエビデンスの補足をしておくと、学習が終わった後、どのくらい学習効果が高かったかを各人に聞いてみたところ、「繰り返し読む」がトップで、「読む+テスト」は最低だったのだそうです。

ところが実際にテストを受けてみると、上記にあるように「テスト派」がトップに。

実は文章問題だけでなく、漢字の練習も、何度も何度も書き写すよりも、こまめにテストをした方が効果が高いとのことなので、お子さんがいらっしゃるご家庭は、ぜひお試しください。

……本書では触れられていませんが、おそらく英語のスペルも同じだと思います。

そして上記ポイントの4番目の聴覚のお話も、これまた定番ネタでしょう。

ただし、「音のみでインプットしたものはすぐに忘れてしまう」というのは初耳でした。

私は逆に、視覚メインで、覚えたらブツブツ言って聴覚を使う方でしたので、視覚情報を使わないということはなかったのですが、聴覚がメインの方は、ご面倒でも視覚情報をお使いいただきたく。


◆なお、上記ポイントの5番目の短期目標のお話は、中学受験ですと、こまめに塾に通って、その都度ノルマをこなしていれば、自然とクリアしているかと。

ただし、中学に入って自分でスケジューリングしなくてはならないと、とたんにそのスキルがなくて、ボロボロになる……というのはウチのムスコのお話です。

たとえば定期試験をゴールにして、「それまでに全部こなせばいいや」的な漠然とした計画の立て方ですと、ノルマが達成できたかどうかが分かりにくいのは当然でしょうね。

ちなみに本書の第5章では、食事や運動についても触れられていますが、この辺りは類書でもおなじみですから、やはり割愛。

また最終章では先ほど触れたように、アプリにも触れられていますから、改めて「Monoxer(モノグサ)」をご検討する方は、そちらもご確認ください。


効率よく記憶するために、要チェックな1冊!

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記憶はスキル ── 科学的研究でわかった! 人生が10倍楽しくなる記憶のルール
第1章 記憶がトクイだと人生が楽しくなる!
第2章 「記憶」とはなにか?
第3章 効率的な記憶のステップ
第4章 記憶する習慣
第5章 記憶を味方につけるライフスタイル
第6章 記憶ツールがすべてを解決してくれる!?


【関連記事】

【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)

【スマホ活用!】『東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法』西岡壱誠(2020年03月18日)

【記憶術】『記憶力日本一が教える"ライバルに勝つ"記憶術 仕事も勉強も面白いほど成果が出る!』池田義博(2016年04月05日)

【暗記】『受験合格は暗記が10割』林 尚弘(2016年11月07日)

【記憶術】『世界一の記憶術』に学ぶ達人のワザ7選(2012年02月26日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B07VLN87SH
営業の基本 この1冊ですべてわかる

おなじみ横山信弘さんの営業本は、Kindle版が800円弱お買い得。

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本当の勇気は「弱さ」を認めること

翻訳系の自己啓発本は、「74%OFF」という激安設定のため、Kindle版が1300円弱お得な計算です!


【編集後記2】

◆一昨日の「Kindle本ポイント還元セール」の記事で評判が良かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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How to Decide 誰もが学べる決断の技法

参考記事:【決断?】『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』アニー・デューク(2022年04月24日)

B097XQ65NV
賢い人がなぜ決断を誤るのか?

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チャートで考えればうまくいく 一生役立つ「構造化思考」養成講座

B0095SR3SA
金持ちになる男、貧乏になる男

レビュー済みの3冊以外、全部読みたかったんですが、時間切れに……。


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