2022年04月24日
【決断?】『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』アニー・デューク
How to Decide 誰もが学べる決断の技法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日取り上げた「Kindle本ポイント還元セール」の中でも、気になっていた1冊。当ブログでも大人気だった『確率思考』の続編に当たる作品と知ったら、お読みになりたい方も多いのではないでしょうか。
アマゾンの内容紹介から。
大事なことを直感で決めていませんか?
ペンシルヴェニア大で学んだ認知心理学をもとに意思決定と人間行動の知識を武器として世界的に活躍した元ポーカープレーヤーが明かす、最良の決断を下すシンプルな技法。
よい「決断力」がつけば、人生によい結果がもたらされ、後悔せずに済む。意思決定のプロセスは、この本に書かれたツールによって改善することができるのだ。
本書では、元ポーカープレーヤーの著者が認知心理学の手法を用いて、決断力を育てる方法を提供する。
結果だけで決断の良し悪しを判定してはいけない。具体的な演習問題や思考実験をふんだんに盛りこみ、過去の決断を見直すことで将来の有益な決断力をつける一冊。
中古に送料を加えると定価を超えますから、このKindle版が1000円以上お得な計算です!
【ポイント】
■1.結果の良し悪しで決断の良し悪しを決めないどんな場合も、決断は結果にふりまわされている。
これは「結果主義(リザルティング)」と呼ばれるものだ。(中略)
たとえば、仕事を辞めてひどい結果になったのは、一概に決断の質のせいとは言い切れない。いい決断がいい結果をもたらすこともあれば、いい決断が悪い結果をもたらすこともあるからだ。
赤信号で交差点を突っ切って無傷の場合もあれば、青信号で走っていて、事故に遭うこともある。つまり、ひとつの結果から決断の良し悪しを判断しようとすると、誤った結論につながる可能性がある。
結果主義のせいで、赤信号を車で突っ切るのがいいことだと判断するかもしれないのだ。
いい決断をするには、経験から学ぶことが重要だ。経験には未来の決断を向上するための教訓が含まれている。結果主義から学ぼうとすると、間違った教訓を得ることになる。
■2.意思決定の6つのステップ
ステップ1──起こりそうな一連の結果を認識する。これらの結果は一般的なシナリオの場合もあれば、とくに気になる結果の側面に絞ったものの場合もある。
ステップ2──それぞれの結果に対するあなたの好みを認識する。あなたの価値観に照らし合わせると、各結果はどの程度好ましく、また好ましくないか? こうした好みは各結果に関連した見返りに影響される。利益はいい側面で、損失は悪い側面だ。この情報を決定木に組み入れること。
ステップ3──各結果の可能性を推測する。まずは確率を表す言葉を使うこと。推測を怖がらなくていい。
ステップ4──検討中の選択肢の望ましい結果と望ましくない結果の相対的な可能性を評価する。
ステップ5──選択肢すべてに対して、1から4のステップをくり返す。
ステップ6──選択肢どうしを比較する。
■3.「基準率」を意識する
1月に入会した会員(新年に決意した組)の80%が5カ月以内に退会し(CouponCabin調べ)、国際フィットネス協会「国際ヘルスラケットスポーツクラブ協会(IHRSA)」の調査によると、入会者の半数が半年以内でやめている。
あなたは医師の助言どおり、90%の確率で週3回はジムに通えると考えているが、いま示した統計は、その考えは改めるべき必要があることを強く示唆している。自分がどれだけやる気があると思っていても、基準率を大きく裏切ってあなたがジムに通いつづける可能性はほとんどない。(中略)
何かを学ぼうと思ったときに、基準率がその困難さを伝えていたら、未来に待ち構えているかもしれない現実に目を向け、そこへいたるまでの障害を特定してほしい。事前に認識していれば、そうした障害を回避したり乗り越えたりする方法を思いつくかもしれないし、それによって成功率も高まるだろう。
■4.「幸福度テスト」で影響の少ない決断をする
「幸福度テスト」は、影響の少ない決断を見極める手段のひとつである。
どんな選択肢を選んでも(チキンか魚か、グレーのスーツかブルーのスーツか、『オースティン・パワーズ』か『プリンセス・ブライド・ストーリー』か)長期的に見れば(あるいは短期的に見ても)あなたの幸福度に大した影響を与えない決断のカテゴリーがある。
あなたが決断しようとしている項目が幸福度テストで影響なしと判断されれば、それは大した影響力を持たないということなので、決断の速度を上げてもいいということになる。大まかに言うと、幸福度は、長期的な目標達成における決断の影響力を理解する指標である。(幸福度で測定される)潜在的な得失が小さければ、その決断の影響力も小さいので、迅速に決めていいということだ。
それによって得られた時間は、より重大な決断や、リスクの低い実験的な選択をするのに使ってほしい。
■5.閉塞状況を打開する「オンリー・オプション・テスト」
先ほども言ったように、選択肢がパリと魚の缶詰工場だけだったら悩む人はいない。だがそれがパリか、ローマか、アムステルダムか、サントリーニか、マチュピチュだったとしたら? 想像できるだろう。
そしてこの膠着状態を打開するのに役立つツールが「オンリー・オプション・テスト」だ。
注文できるのがこの料理だけだったら……。
今夜ネットフリックスで観られるのがこの番組だけだったら……。
旅行に行けるのがこの場所だけだったら……。(中略)
「オンリー・オプション・テスト」は、あなたの決断で散乱した破片を片づけてくれる。パリが唯一の選択肢でも幸せで、ローマが唯一の選択肢でも幸せなら、コインを投げてどちらが出ても、あなたは幸せになれるということだ。
【感想】
◆冒頭で「『確率思考』の続編に当たる」と言いながら、そのことに気がついたのは、巻末の訳者あとがきを読んだ時点でした。実はこの『確率思考』、当ブログでも人気で、セール対象になるたびにコンスタントにお求め頂いている作品だったりします。
確率思考 不確かな未来から利益を生みだす
参考記事:【意思決定】『確率思考 不確かな未来から利益を生みだす』アニー・デューク(2019年11月07日)
特にKindle版の値引はないものの、3年以上前に出ていながら、中古があまり値下がりせず、Kindle版とほぼ同じくらいのお値段ですから、世間的にも人気のよう。
今回、セール終了まで日にちがない状態で、対象作品の中からどの本を読むのか迷ったのですが、知っていれば迷わず選んでいたと思います。
◆とはいえ、同じ著者の似たようなテーマの作品ということで、内容的には一部重複している部分もありました。
たとえば第4章から抜き出した上記ポイントの2番目では、ステップ3で「確率」という言葉があるように、この章では「確率思考」を用いる旨、述べられています。
また、割愛した第8章では「プレモータム(未来の失敗からその原因を探る)」と「バックキャスト(「未来の成功がすでに起こったと仮定してその時点から振り返って考える」)」という2つの思考法が出てきますが、こちらも『確率思考』にて言及済み。
ただし「プレモータム」については、むしろそのテーマで1冊書かれた、この本が詳しいので、気になる方は下記レビューをご覧ください。
先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術
参考記事:【事前検死?】『先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術』山崎裕二(2018年12月09日)
もちろん、どちらの本もお読みになってない方でも、本書にて思考法の骨子は押さえてありますのでご心配なく。
◆一方、今回の作品で目からウロコだったのが、第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「結果主義」でした。
ヒトはその決断がいいか悪いかを考える場合、ここで述べられているように、どうしても「結果」で判断してしまいます。
しかし実際には「決断」と「結果」はそれぞれ独立しており、サムネイルにあるように2軸4象限のマトリクスで表すことができる次第。
どちらも「いい」「悪い」の場合はさておき、マトリクスの「まぐれ」なのに決断が正しいと考えたり、逆に「不運」なのに、決断を間違ったと決めつけてしまうと、今後同じようなシチュエーションに遭遇したときに、意図せぬ結果になりかねません。
また、上記ポイントの3番目の「基準率」は、「自分の視点」が「外からの視点」に比べて、いかに客観的ではないかを痛感するもの。
つまり世間一般ではどうなのかを考えて、自分の判断の参考にする必要があります。
この辺は、一昨日も触れたばかりの「ダニング=クルーガー効果」にも通じるところがありますね。
◆さらに第7章では、思考のツールが数多く登場しています。
まずは上記ポイントの4番目の「幸福度テスト」。
これは解説部分を割愛していますが(すいません)、要は、決断の良し悪しにかかわらず、その結果が1年を通じて自分の幸福度に大きな影響を与えたかどうかを自問するというものです。
つまり、ランチのメニューやテレビや映画で何を観るかというような話なら、損失も小さいので、サクサク決めて良いということ。
ちなみに、ランチメニューのようにすぐ繰り返せるものなら、あれこれ試せばいいですし、今回割愛した「フリーロール(「やったら得で、やらなくても現状維持」等)」なら、決断の速度を上げても構いません。
◆では「幸福度テスト」がクリアできないような大きな決断案件(旅行先等)ならどうするか?
本書によるとどちらを選んでも、同じような幸福度なら「悩むだけ無意味」とバッサリです。
なお、この場合、同じような幸福度かどうかを確認できるのが、上記ポイントの5番目にある「オンリー・オプション・テスト」。
たった1つの選択肢としても満足できるのであれば、それらはもはや「何を選んでも同じ」というワケです。
本書では、この「幸福度テスト」からスタートする、決断の速度を決めるフローチャートが掲載されていますので、ぜひこちらもご確認を。
◆最後になりましたが、巻末に収録されている「参考文献および推薦図書」の中から、当ブログでレビュー済みの作品を挙げておきます。
予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)
習慣の力 The Power of Habit
参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
あなたの生産性を上げる8つのアイディア
参考記事:【生産性?】『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』チャールズ・デュヒッグ(2018年02月05日)
ヤバい経済学〔増補改訂版〕―悪ガキ教授が世の裏側を探検する
参考記事:ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)
When 完璧なタイミングを科学する
参考記事:【科学的自己啓発書?】『When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク(2018年09月06日)
他にも興味深い作品が多々掲載されていたのですが、すいません、読んでませんでした。
ただ、この辺の作品がお好きな方なら、本書もお楽しみになれることウケアイかと。
「決断」の精度を高めたい方なら必読の1冊!
How to Decide 誰もが学べる決断の技法
第1章 結果主義――バックミラーに映る結果は実際よりも大きく見える
第2章 後知恵アドバイス――昔から言われているように後から指摘するのは簡単だ
第3章 決断によって生まれる無限の可能性――学習には経験が必要だが経験が学習の妨げになることも多い
第4章 「好み」「見返り」「確率」がモノを言う――推測することで決断の質を上げる
第5章 正確性の力――未来にまっすぐ目を向ける
第6章 決断を外から見る――自分の視点から脱却し客観的になる
第7章 意思決定の時間を賢く使う――堂々めぐりから脱出する
第8章 ネガティブもときには必要――目的までの障害物をイメージする
第9章 健康的な決断――他人の思考を知りたければ自分の考えで汚染してはいけない
【関連記事】
【意思決定】『確率思考 不確かな未来から利益を生みだす』アニー・デューク(2019年11月07日)【事前検死?】『先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術』山崎裕二(2018年12月09日)
【科学的自己啓発書】『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2017年07月01日)
【決断力?】『決断の本質 ― プロセス志向の意思決定マネジメント ウォートン経営戦略シリーズ』マイケル・A・ロベルト(2022年04月06日)
【スゴ本!】『決める――すべてを一瞬で判断できるシンプルな技法』スティーブ・マクラッチー(2015年04月19日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。こどもロジカル思考 なぜ論理的に考えることが大切なのかがわかる本
いずれ中学受験を目指すお子さんなら読んでおきたい論理思考本は、
中古があまり値下がりしていないため、Kindle版の方が600円以上お得になります!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
この記事のカテゴリー:「自己啓発・気づき」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです