2022年04月06日
【決断力?】『決断の本質 ― プロセス志向の意思決定マネジメント ウォートン経営戦略シリーズ』マイケル・A・ロベルト
決断の本質 ― プロセス志向の意思決定マネジメント ウォートン経営戦略シリーズ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の記事でも取り上げた、「Kindle本 社会・政治書キャンペーン」からの1冊。「決断力」は当ブログでも人気の高いテーマだけに、急いで読んでみたところ、思わずハイライトを引きまくりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
なぜ、判断を誤るのか。なぜ、決めたことが実行できないのか。真に重要なのは「結論」ではなく「プロセス」だ。ケネディの失敗、エベレスト遭難事件、コロンビア号の爆発事故など多種多様な事例をもとに「成功する意思決定」の条件を探求。人間性の本質に迫る、画期的な組織行動論・リーダーシップ論。
セールのおかげで、このKindle版が700円弱お得ですが、それも明日までですから、お早めにご検討ください!
Desperate Tactics / DaveFayram
【ポイント】
■1.「正しいプロセス」を定めるすなわち、問題が生じたとき、リーダーが何よりもまず「正しい解決策」の発見に気を取られてしまい、一歩下がって意思決定のためにとるべき「正しいプロセス」を定めようとしないことが原因なのだ。
「どんな意思決定をすべきか」に固執し、「意思決定をするためには、どのような方法で取り組むべきか」と尋ねることをしない。
だが、この「どのような方法で」という質問に正しく答えることが、意思決定の実効性にしばしば重大な影響を与える。それによってリーダーは、健全な討論と反対意見はもちろん、広範で持続的なコンセンサスをもたらす条件と仕組みを定めることができる。
もちろんリーダーは、討議と分析のプロセスだけでなく、組織の死命を制する重大な意思決定については、その内容についても真剣に取り組まなければならない。(中略)
しかし、質の高い意思決定プロセスを開発し、管理すれば、優れた選択と結果を生む「確率」が飛躍的に高まる。
■2.意思決定のプロセスの「4C」
最初に決める必要があるのは、意思決定機関の「コンポジション(composition: メンバー構成)」である。このプロセスに参加する機会を誰に与えるべきか。この選定で考慮すべき点は何か。
第2は、検討する「コンテキスト(context: 背景)」の設定である。討議の場ではどんな規則やルールを適用するのか。
第3は、参加者間の「コミュニケーション(communication)」をどうするかである。意見や情報の交換、選択肢の考案や評価をどんな方法で行うのか。
最後は、意思決定のプロセスと内容を「コントロール(control)」するための方法と、介入の程度の決定である。検討のあいだリーダーはいかなる役割を果たすべきか。また、プロセスをどのように導くか。
ピッグス湾事件の後で、ケネディがプロセスに加えた改善はこの4つの分野すべてに関わっていた。
(詳細は本書を)
■3.仕事に関する認識や意見の対立が欠けている「警戒信号チェック」
(1) 会議が、礼儀正しいゴルフのプレイのように静かである。
(2) 部下が、論議の多い問題点について発言する前に、あなたの口頭や視線による合図を待っている。
(3) 会議では大量の資料と手の込んだ説明が必要なことが多く、活発で率直な議論が行われていない。
(4) いつも同じ顔ぶれが会議を牛耳る傾向がある。
(5) 数ランク下の社員からの関心事や意見が、自分の耳に直接届くことはほとんどない。
(6) 会議が、他の場で既に決められた事項に形式的承認を与えるだけの場になっている。
(7) 同じレベルだが部署の異なる人、または上下関係のある人との組織内でのコミュニケーションで、社員が失礼にあたらないようにと気を使いすぎている。
(8) 会議で提案をするときに、どの程度批判され、反対されるかを気にしている人がいるという話を耳にしたことがある。
■4.過去の経験を反省する
デビッド・ガービンの研究によると、米国陸軍は過去の経験を反省するための仕組みを開発し、非常に優れた成果を上げている。陸軍はすべての任務終了後、事後点検を行う。討論は4段階に分かれていて、段階ごとに次のような質問が出される。1 我々は何をしようとしたのか?過去の経験を反省し、再検討する場合に、いきなり3番目と4番目の質問から始める組織が多い。しかし、陸軍では最初の2つの質問にかなりの時間を割くことが重要だと考えられている。全員が任務の目標とその達成度を測るための基準をはっきりと理解することが必要だと考えているからである。
2 実際には何が起きたのか?
3 なぜそうなったのか?
4 次回はどうするか?
■5.アイゼンハワーの手腕
アイゼンハワーは、国家元首や軍隊の司令官の間で賛否両論が渦巻いたノルマンディー上陸作戦をどのように決断したのだろうか。
彼は公正で妥当な意思決定プロセスを主導することで、最終計画に対するコミットメントを形成した。時には白熱した論争が繰り広げられたが、アイゼンハワーは「議長を務め、双方の言い分を慎重に聞き、その上で最終決断を下した」とアンブローズは指摘している。彼は全員の意見を 公平に聞く 姿勢を貫いた。また、「すべての問題に客観的に取り組むことが彼の基本的なやり方だった。そして自分が客観的であることを全員に納得させた」。
しかし、アイゼンハワーは人が合意に達することができない場合でも、公正な議論を主導して最終的な決断をする以上のことを行った。彼は複雑な問題を、対応できる範囲に分割することによって、信じられないほどの権力と強固な意志の持ち主の集まりを結論に導いた。
【感想】
◆今までセールでは何度か目にしてきた「ウォートン経営戦略シリーズ」ですが、今般、初めて読んでみて、なるほど濃密な内容でした。事例の数は、やたらと多いワケではないものの、冒頭の内容紹介で挙げた「ケネディの失敗」「エベレスト遭難事件」「コロンビア号の爆発事故」のほかにも、「ジャック・ウェルチの改革」や「ノルマンディー上陸作戦」等々、比較的なじみがあるものが登場しており、読者としてもとっつきやすいかと。
一方で、原注はしっかり付されており、最後の20%(!?)あまりは、すべて本文からリンクが張られた(Kindle版だと)原注でした。
……全部英文だったら無視しても良かったのですが(ヲイw)、意外と日本語パートが多くて、気になる部分は原注を確認しながら読んでいたら、結構時間がかかってしまったという。
ちなみに、Kindle版で読んだので確認はできていないのですが、アマゾンの表記で単行本が「352ページ」とあるのが、Kindle版だと「431ページ」なのは、単行本ではこの原注部分を除いた表記になっているのかもしれません。
と言いますか、知らぬ間にKindle版にページ表記がされるようになってから、紙の本を読んだことがないので、どれもそうなのかもしれませんが(単にこの本の原注が多いので、その差が気になる?)。
◆さて、さっそく第1章から見ていくと、本書のサブタイトルと呼応したかのような内容な上記ポイントの1番目のTIPSがありました。
確かに「正しい解決策」は気になるでしょうが、本書いわく「正しいプロセス」を定めよ、と。
要はリーダーは「決定する方法を決定」しなくてはならないワケです。
そしてそれを受けたのが、本書の第2章。
リーダーは、上記ポイントの2番目にある「4C」を決める必要があります。
ここではその4つのCの概略を挙げたに過ぎませんが、本書ではそれぞれのCについて、しっかり解説がされていますので、ぜひご確認を。
なお、初っ端の「コンポジション(メンバー構成)」に関して、最近おなじみの「心理的安全性」にも触れられており、こんな昔(本書は2006年の作品)からテーマとしてはあったのだな、とちょっと驚きました。
◆続く第3章のテーマは「コミュニケーション」です。
さっそくやっていただきたいのが、上記ポイントの3番目にある「警戒信号チェック」。
これは、あなたの会社に重大なコミュニケーション上の問題、つまり仕事に関する認識や意見の対立が欠けている恐れがあることを警告するものである。確かに剛腕な経営者のいる会社では、みな、イエスマンになって「建設的な対立」は起きにくいかもしれません。
また、事例として掘り下げられた、コロンビア号事件に関しては、NASAの「組織上の問題」が大きかったと指摘。
コロンビア号空中分解事故 - Wikipedia
実は直接的な原因は違えど、その17年前に起きたチャレンジャー号事件から、「組織上の問題」は解決されていなかったようです。
……事例として挙げるのははばかられますが、まさに戦争中の某国の会議もこの警戒信号に引っ掛かりまくっているのではないか、と。
◆また、1つ飛んだ第5章から抜き出したのが、上記ポイントの4番目のお話。
リーダーは意思決定プロセスが終わるたびに、しっかりと反省しなくてはなりません。
その際、ここでも触れているように、後半の2つ「なぜそうなったのか?」「次回はどうするか?」を検討する前に、「何をしようとしたのか?」と「何が起きたのか?」を確認すべし!
ちなみに、この章では対立を「認知的対立」と「感情的対立」に分けて、前者を活発にし、後者を抑制するよう提案されていました。
……この辺は「言うは易し」の面もあるのですが、本書ではいくつかのTIPSも収録。
たとえば「モノの言いよう」と言うか、「『なぜそんなことを言いつづけるのか』といった対決姿勢を示すような質問をしてはならない」として、効果的な質問の仕方も指示されていました。
確かにただ「なぜ?」と言うより「なぜあなたがそう考えるのか教えてほしいのですが……?」と言った方が、感情的な対立は起きにくいでしょうね。
◆なお、上記ポイントの5番目のアイゼンハワーのお話は、少し飛んだ第8章からのもの。
アイゼンハワーが大統領になる際、前大統領のトルーマンは、アイゼンハワーが将軍として軍隊で振舞えてきたのとは勝手が違うので、大統領になると苦労するのでは、と考えていたそうです。
ところが実際には、アイゼンハワーは「人を団結させ、共通点を見つけるのが実に巧み」だったのだとか。
さらに上記ポイントの5番目にあるように、ノルマンディー上陸作戦においてもその手腕を発揮。
ノルマンディー上陸作戦案の検討期間を通じてアイゼンハワーは、整然とした、段階を追った意思決定を行い、全員のコミットメントを取り付け、会議を締めくくった。彼は着地点を積み重ねることで、グループを少しずつ誘導していった。そして関係者が合意に至らないときのみ、自ら苦渋の決断をした。なるほど、これは優れたリーダーに他なりませんね。
本書で紹介されているワケではないのですが、これもちょっと観てみたいかも。
ノルマンディー 将軍アイゼンハワーの決断 [DVD]
正しい決断を下したい方なら必読の1冊!
決断の本質 ― プロセス志向の意思決定マネジメント ウォートン経営戦略シリーズ
PART1 意思決定プロセスを導く
第1章 リーダーシップへの挑戦
第2章 決定する方法を決定する
PART2 意見の対立を促す
第3章 硬い壁と柔らかい壁
第4章 アイデアの衝突を促す
第5章 対立を建設的に解決する
PART3 コンセンサスを形成する
第6章 優柔不断の力学
第7章 正しいプロセスを追求する
第8章 実行につながる決断
PART4 新たなリーダーの条件
第9章 自制心をもって導く
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【編集後記】
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ご声援ありがとうございました!
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