2022年04月01日
【学び】『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』鳩山玲人
シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか (幻冬舎新書 は 19-1)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった1冊。タイトルは勉強本のようですが、むしろ仕事術に近い作品だと思います。
アマゾンの内容紹介から。
シリコンバレーにはビジネスで成功し、億万長者になる人が世界一多いといわれる。14年前に日本から移住し、多くの成功者を観察してきた著者はその理由を「彼らが有機的に学んでいるからだ」という。大学までは熱心に勉強するが、社会人になった途端学ばなくなる日本人に対し、シリコンバレーの成功者は「学び」をやめない。社会人になってからも知識・情報をインプットし続け、新しい体験による生きた勉強をし、付加価値を高めていく。20~50代までの年代ごとに必要な勉強とは? 成功のために絶対不可欠な体験とは? シリコンバレー流の学び方を身につければ、生涯現役まちがいなし!
中古が定価の倍以上のお値段ですから、若干とはいえお得なKindle版がオススメです!
Silicon Valley circa 2000 / Yahoo Inc
【ポイント】
■1.「勉強する」「学ぶ」とはどういうことか一般に日本で「勉強する」というときにイメージされるのは英語でいうと「スタディ(勉強・研究)」でしょう。「スタディ」は、学校で教育を受けたり、本を読んで学んだり、もう少し専門的になると大学で研究したりすることを指します。(中略)
一方シリコンバレーでは、「勉強する」「学ぶ」を意味する言葉としてスタディよりも「エクスペリエンス(経験)」「ラーニング(学習)」のほうを使う場面が多いように思います。
「エクスペリエンス」とは、周囲にあるものを知覚し、体感して理解するような学びのことをいいます。
たとえば仕事で場数をこなしたり、ハードな現場の経験に耐えたり、あるいは楽しい経験をすることなどを通して、私たちは多くのことを学ぶものです。
「ラーニング」には幅広い意味があり、新たな理解や知識、行動、技能、価値、態度、思考などを獲得する過程のことを指すとされます。たとえばAIに大量の情報を与えてあたかも人間が学ぶように学習させるときに使われる言葉は「ラーニング」ですし、反復により鍛錬して技能などを身につけることも「ラーニング」です。
■2.仕事に関する本すべてに目を通す
自分の仕事に必要な情報は、目の前にたくさんあるものです。しかし情報が目の前にあり、いつでも目を通せる状況だからこそ、多くの人は「必要になったら調べよう」「そのうち時間をかけて勉強しよう」と考えがちになるのではないでしょうか。(中略)
もしも事前に情報収集し、自分が置かれている環境や取り組むべき仕事の全体像が頭の中に入っていれば、指示された仕事が組織の中でどんな意味を持っているか、上司が自分に期待していることは何かを的確につかむことができるでしょう。しっかり準備をして臨めば、仕事のアウトプットの質は確実に上がるはずなのです。
みなさんの目の前にも、実は貴重な情報が目を通されないまま積み上げられていないでしょうか。
「必要なときに見よう」「時間があるときに勉強しよう」と思って放置しているなら、今すぐすべてを頭に入れることをおすすめします。
■3.「社内転職」のすすめ
ラーニングカーブを上向きにさせるためには転職をおすすめしたいのですが、「転職に踏み切るのはハードルが高い」と感じる人も多いでしょう。
その場合には、まず「社内転職」を目指すべきです。
会社の中には、営業、経理、企画、経営、監査などさまざまな部署があります。そして、それらの部署が担う業務は同じ会社であっても、まったく異なるものです。
営業部にいれば製品やサービスを売ることが仕事になりますし、経理部であれば伝票の作成から会社によっては財務まで見るケースもあります。経営企画は会社全体の 舵取りを求められ、上場企業であればIR(投資家向け広報)などを担うこともあるでしょう。
1つの部署で1つの機能だけを担っていると、ルーティーンで仕事を回すことになりがちで、新たなスキルセットを身につける機会はどうしても少なくなります。学びを加速させるには、これまでとは違う部署への異動希望を出すなどして新しい環境に身を置くことが有効です。
■4.「弱い自分をさらけ出す」ことは「自分の強み」になる
実際、アメリカで仕事をしていると、深いコミュニケーションを取ろうとすれば、自分も弱みを見せなければならないと感じる場面があります。
たとえば強い権限を持つCEOであっても、「自分はこういうことは得意ではない」と表明し、それによって「それなら、そこは私が協力しましょう」と周囲が協力を申し出てチームが作られていくというのが、アメリカのマネジメント手法の1つです。
こうした弱みを見せることで、周囲との関係性を強化できるだけでなく、その勇気に対して尊敬されることすらあります。
常に強いトーンで「自分が正しいのだ」と言い張り、「ああしろ、こうしろ」と指示するだけのリーダーには、周囲はついてこないのです。
特にシリコンバレーの場合、それぞれの専門分野ごとに優秀な人がたくさんいます。すべてにおいて万能という人はいませんから、適切に「自分ができないこと」をオープンにし、それを補ってくれる優秀な人の協力を得ることは欠かせません。
■5.転職は先を見据えて早めに動く
私が転職の相談を受けるケースとして一番多いのは、日本の会社を定年退職したあとで再就職したいという人です。60歳まで会社に残り続け、そのあとに「もう2、3年は働きたいからどこかいいところはないか」と相談に来る人が多いのですが、その時点だと「ちょっと遅いな」という印象です。
会社員としてのキャリアのうち、少なくとも最後の2、3年だけでもそれまでと異なる仕事の経験を積んでいれば、転職のお手伝いができるケースはたくさんあります。
しかし、定年まで会社にしがみついていた人だと、「手遅れ」といわざるを得ないケースが多いのです。
一方で、私がこれまで関わった人の中には、55歳頃から定年退職後を見据えて転職先を探す人もいます。これは、転職先探しのお手伝いをしやすいケースです。この先のキャリアを考えながらさらに5年、10年と仕事ができるとなれば、何らかの技能を2つ3つ増やすこともできます。
【感想】
◆冒頭でも触れたように、内容的に俗にいう「勉強本」というよりは、「仕事術本」に近い作品でした。ただ、よく考えたら、タイトルの初っ端に「シリコンバレーで結果を出す」とある以上、基本的に大学を卒業後、「シリコンバレーにある会社で結果を出す」、という風にとらえるのが自然かと。
もちろんこれが「(シリコンバレーにある)スタンフォード大学に入学する人は」だったら、まったく違った内容になるのでしょうが。
それを踏まえて、序章から引用したのが上記ポイントの1番目。
「スタディ」ではなく、「エクスペリエンス」と「ラーニング」について本書は言及されているワケです。
なお、「エクスペリエンス」と「ラーニング」で重要なのが「転ぶこと」なのだとか。
シリコンバレーでも「失敗から学ぶ」ことの重要性がしばしば言及されますが、何かを体験してその中で失敗もしながら学ぶという「エクスペリエンス」と「ラーニング」のコンビネーションには高い学習効果があるのです。これぞまさに「シリコンバレー的学び方」と言えるかと。
◆まず第1章のテーマは、「ビジネスパーソンが知っておくべき『勉強法』」について。
鳩山さんいわく、上記ポイントの2番目にあるように「仕事に関する本すべてに目を通せ」とのことです。
ちなみにこれは、鳩山さんが新卒で三菱商事に入社したときに実践されたこと。
私が三菱商事に入社したときは、初日の時点で外部から得られる情報は一通り頭に入っていました。そして入社後、私は部署内にある本や資料すべてに目を通しました。また同じように、出向や転職などで新しい職場に入った際にも、行ってきたのだそうです。
さらには、職場で新たな問題が起こったら、それに関する書籍を「一気読み」するのだとか。
サンリオに勤務していた当時、広報対応で問題が見つかったときは、書店で10冊ほど本を買ってきて「そもそも広報とはどんな業務を担う部門なのか」から「広報部門による対外的な問題の対処法」まで一気に読み込みました。言うのは簡単ですけど、なかなかここまで実際になさる方も少ない気が……。
そのうえで広報部門のマスコミ対策や、問題が起こったときのための危機管理のパターンを作り、どんなことがあってもスムーズに対応できるよう準備したのです。
◆さて、続く第2章の章題は「速く、深く学ぶにはコツがいる」。
ところが初っ端の小見出しが「勉強したいなら、まず転職する」で、いきなり詰みましたw
日本では「勉強する」「学ぶ」といえば、本を読んだり学校に通ったりする座学のようなイメージが強いように感じますが、シリコンバレーでは「転職」と「ラーニング」と「キャリアアップ」はセットになっているのです。な、なるほど(大汗)。
もっともこれは、シリコンバレーでは常識でも、日本では難しい、ということで、上記ポイントの3番目では「社内転職」を推奨されています。
そしてこれもまた、鳩山さんがサンリオ時代に実践されたことであり、10年以上勤めながら「疑似転職」を繰り返し、それによって「ラーニングカーブ」を急角度に保ち続けたのだとか。
とはいえ、社内で望む部署に転職できるかどうかは、業界やその会社ごとに難易度が異なるとは思いますが。
◆一方、個人的に意外だったのが、第3章から抜き出した上記ポイントの4番目の「弱い自分をさらけ出す」お話です。
「生き馬の目を抜く」(あくまで私のイメージですw)シリコンバレーで、弱い自分を見せたら、それこそ食い物にされる気がしたのですが、そうではない模様。
なるほど、ジョブズみたいな人はレアケースなんですな。
また、上記ポイントの5番目は第4章からのもの。
あくまでシリコンバレーだけの話なのか、日本でも同様なのかが分からないものの、「転職先で活用できるスキル」がないと転職しにくいのは、ある意味当然でしょう。
この辺はまさに「早めに動く」ことが大事なのだと思います。
◆なお本書の最後には、巻末付録として「書籍でビジネスの基本を押さえよう」と題するブックレビューを収録。
これは鳩山さんが「これは自信を持っておすすめできる」という書籍22冊を、簡単なレビューとともに紹介するもので、ここは当ブログの読者さんにとっては、見逃せないところ。
ところが私が当ブログでレビューしているのは、この3冊だけでした。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
参考記事:【思い込み?】『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロンランド(2019年01月02日)
ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ
参考記事:【キャリアデザイン】『ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略マップ』ロバート・スティーヴン・ カプラン(2017年04月10日)
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
参考記事:【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)
これ以外の19冊も、面白そうなものばかりでしたが、特にこの本は機会があれば読んでみたいな、と。
BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相
「エンロン」以降、最大の企業不正が行われた血液検査ベンチャー「セラノス」事件。
ジョージ・シュルツ、ヘンリー・キッシンジャーなど百戦錬磨の大物たちはなぜ若きCEO、エリザベス・ホームズに騙されたのか!?
「シリコンバレー流の学び方」を身につけたい方は要チェックの1冊!
シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか (幻冬舎新書 は 19-1)
序 章 早期退職で慌てないために、やっておくべきこと
第1章 ビジネスパーソンが基礎として知っておくべき「勉強法」
第2章 速く、深く学ぶにはコツがいる
第3章 シリコンバレー流「人」の学び方
第4章 シリコンバレー流に学び、活躍する人たち
終 章 シリコンバレー流に、充実した人生を送る
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【リーダーシップ?】『「自分の殻」を打ち破る ハーバードのリーダーシップ講義』ロバート・スティーヴン・ カプラン(2017年07月31日)
【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)
【編集後記】
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