2022年03月23日
【DX入門】『DXの第一人者が教える DX超入門』石澤直孝
DXの第一人者が教える DX超入門 (宝島社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で既に意外とお求め頂いているDX解説本。豊富な実例とともに、DXの何たるかの理解が深まる作品です。
アマゾンの内容紹介から。
コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)の深化が著しい昨今。しかしそもそもDXとは何かを説明できる人はそう多くないのではないでしょうか? 簡単に言えば「テクノロジーが飛躍的に進歩しているので使えるものは使おう」ということ。以前と比べDXはテックファーストの議論ではなく、やはり人を中心に! という考え方が増えてきています。本書はDXの基礎的な説明から、DXの使いこなし方、そしてDXをうまく利用して仕事を効率化するにはどういう発想や働き方をしたらよいかということを、DXの第一人者がやさしく解説します。変化するDXの概念を2時間で学べる!
中古価格が定価を大きく上回っていますから、「10%OFF」のKindle版がオススメです!
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【ポイント】
■1.Uber Eatsでは起こりえない「そば屋の出前」注文が入ると、注文が入った店にもっとも近い配達員を特定し、もっとも短時間で届けることのできる運び手をAIが選び、配送先を伝えます。ここで配達員がもっているスマートフォンが活用されます。GPSを用いた運び手の位置の特定も、届け先までの最短距離の道案内も、運び手がもっているスマートフォンのアプリケーションを用いておこなうのです。注文した客も、運び手が配達してくる様子をアプリケーションの中の地図で、リアルタイムに確認することができます。
かつて、「そば屋の出前」という言葉がありました。遅れを咎められたことに対して、あてにならない、安易な対応を取る、という意味です。そば屋で注文した出前がなかなか来ないので、しびれを切らして電話をしてみると「いま、ちょうど出ました」と返答される、といった状況になぞらえた表現ですが、DXを用いたこのサービスではそんな問題は発生しないようです。
■2.DX推進者に求められる4つのもの
(1)本業に精通していて、あらたな顧客ニーズを洞察できること(1)を除くと、難しい知識や高度な技能は必要なさそうですね。というか、これってデジタル技術にかかわらず、経営者だったら誰でも身につけて実践しなければならない、事業経営の基本みたいなものです。(中略)
(2)本業を維持していくためには、顧客を奪われないように価値を高め続けなければならないということを、理解していること
(3)(2)のために、デジタル技術に限らず必要な技術、専門知識を持った人たちを巻きこむことができること
どんな技術や専門知識が必要なのかはテーマによって変わりますし、やってみなければわからないこともあります。ということで、「求められるもの」はもう1つあると筆者は思います。(4)様々な技術について幅広い認知があり、ひとつひとつについては専門家レベルの知識と技能は持っていなくとも、専門家と深いレベルの議論ができるだけの最低限の知識と能力を持っていること
■3.ベゾスが果たしたワシントン・ポスト復活劇
ベゾス氏は、ワシントン・ポストの社員たちに、同紙が得意なワシントンDCの国政に関する記事をインターネットを通じて配信すれば、世界中の購買者を獲得できる、という戦略を語りました。そうすることで長年の収支悪化で会社の将来に悲観的だった同社社員の士気を高めました。また、実際に自分がその戦略と記者たちの力量を信じている証拠として、買収金額2億5000万ドルばかりでなく、自身のポケットマネーからも5000万ドルを投じました。編集には一切口を出さず、編集者と記者の裁量にまかせ、海外支局を増やしました(現在は26拠点まで増えたそうです)。
一方で、オンライン配信の機能を強化するために50億ドルを超える投資を行い、250人もの技術者を新規採用し、定評のあるアマゾンのサイト運営の技術ノウハウをワシントン・ポストに導入しました。その結果開発されたコンテンツ管理ツールArc Publishing(現・Arc XP)を他社にライセンス販売しました。
■4.シェアリング・エコノミーの筆頭・メルカリ
メルカリは膨大な量の商品を扱っていますが、在庫は一切持ちません。リアルなフリーマーケットのように土地の使用などにかかるコストもかかりません。これが強みと言えます。製造業にとっての作りすぎ、流通業にとっての売れ残りによる「余剰在庫」は頭の痛い問題です。また、フリーマーケットや商店は商品を陳列するための場所が必要で、借りて毎月の家賃を固定費として払い続けるか、資産として保有するために購入するか、いずれにせよそのためにおカネが出ていくものです。けれどもデジタル・ネイティブのメルカリには在庫も場所も必要ないのです。(中略)
また、支払いをメルカリ経由でおこない、匿名で配送できる専用の物流サービスを日本郵便、ヤマト運輸と開発することにより、不払いなど利用者間のトラブルにまきこまれずに済み、個人情報をやりとりしなくてもよい仕組みを作りました。こうした差別化対策により、コスト意識、セキュリティ意識の高いユーザーのとりこみに成功したのです。
■5.機械学習の問題点
利用拡大が進み、産業や社会の生産性を急進させている(と思われている)機械学習ですが、目下の最大の課題は、あまりに高速で大量の情報を処理しているので、何を基準に考えているのかまるでわからず「異世界からのお告げ」のようになってしまうということです。なんだか不気味ですね。なので、受け入れがたい内容だと思う人に納得してもらうことが難しくなります。
アマゾンが採用活動に機械学習を試してみたところ、なぜか女性に不利な結果となったそうです。しかし、機械学習がどうしてそのような判断をしたのか、根拠や基準、論理の流れが不明で、説明ができなかったので、導入は見送ったそうです。
【感想】
◆「意外ととっつきやすかった」というのが、個人的な第一印象でした。ただ、そもそもDXとは何ぞや?
DXが「デジタルトランスフォーメーション」の略であることは知っていても、その定義については、意外と漠然としか分かってなかったりするもの。
そこで、経済産業省が公表した定義を、本書からご紹介しておきます。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。(出典:「DX推進ガイドライン」2018)ただし、印鑑や書類のデジタルデータ化や、単なるWEB会議のような、いわゆる「デジタル化」はDXの前段階として区別しなくてはなりません。
確かにこれらは、「デジタル技術を使っていても違いはコストが下がることや効率があがること」であり、やっていることは同じです。
しかし、もしWEB会議システムを、単に普段の会議を在宅でやるということではなく、社業の発展のためにまるで違う使い方、たとえば、オンライン店舗として活用して新たな販売ツールとして用いるなど──これはDXということになろうかと思います。この辺は一応ご留意ください。
◆たとえば上記ポイントの1番目の「Uber Eats」でも、単なる出前であれば以前からありました。
大きく違うのは、配達するのがお店の従業員ではなく、個人事業主である、というのは皆さんご存じかと。
しかもここで指摘されているように、配送中の位置がリアルタイムで確認できる、というのはただの出前ではありえませんでした。
また本書では特に触れてませんが、注文の時点で会計まで済ませてしまう、というキャッシュレス化は、コロナ禍においての不要な接触を避けることができ、意図せず好都合だと思います。
さらにはお店にとっても、立地が悪かったり内装にお金をかけていなくとも「料理のみで勝負できる」というのは、夢があるかと。
……もっとも、リアル店舗を必要としない分、同じお店で複数の名義を立てる「ゴーストレストラン」が乱立することにもなったのですが。
◆一方、DXを企業内でどのように進めていくかを考えた場合、「社内の事業部、現場の店員、法務の専門家、システムや技術の専門家、そして経営者など、たくさんの関係者を巻きこんで、対話を重ね、わかりやすく説明して支援をあおぎ、まとめあげる」必要があります。
そこでこうしたDX推進者にもとめられるものを列挙したのが、上記ポイントの2番目。
なお、これらそれぞれについて、(4)にあるように、専門家になる必要はありません。
ただし、本書によると「何がでてきても専門家に相談して、どんなものが必要かを説明し、支援を仰げるだけの知識が詰まった引き出しをなるべくたくさん持っていたほうがよさそう」とのこと。
つまり、技術的な問題や社内業務だけでなく、「代表的な社会潮流、ヒトの本性、ビジネスモデル」といったそれ以外の要素についても素養や適応性があるといいわけですね。
◆さて、冒頭でも触れたように、本書ではDXで目覚ましい成果を上げた事例がいくつも登場するのですが、上記ポイントの3番目のワシントンボストのお話は、「ベゾスが会社を買った」という程度しか、私は知りませんでした。
それが何と、経営難だったところから、黒字化まで果たしていたとは……。
特に、後半の技術的な要素は「天下のアマゾン」だから実現できたとしても、前者の記者重視の姿勢(実際に報道部門の人員は、ほぼ2倍になったとのこと)は、一見「逆張り」です。
実際、経費削減を必要としていた同社に、あのベゾスが乗り込んできたのですから、「記者数を減らしてAIに記事を書かせる」ようになると考えるのが自然だったでしょう。
なお著者の石澤さんは、「日本の新聞社の多くは復活する可能性は高い」と言われているのですが、ワシントンポストのように「世界」を相手に商売ができないと難しいような。
◆また、上記ポイントの4番目のメルカリは、日本におけるシェアリングサービスの代表格であることは、同意される方も多いと思います。
特にコロナ禍で業績不振におちいる企業が多い中、逆に「巣ごもり消費」を取り込んだ模様。
ただ、あくまで「個人間の取引の仲介」であるがゆえに、本来売ってはいけないものが、堂々と売られたりするリスクもあるのですが。
なお、世界的にも技術的進歩が進む中、AIの問題点に触れているのが上記ポイントの5番目です。
なぜそのような答えを出すのか、人間には理解できない、という点では将棋ソフトにも言えるかと。
そこで、出した結論を後から説明づける「XAI」なる取り組みも、現在進められているのだそうです(知らなんだ)。
今回、ボリュームの関係で割愛したお話が多々あるのですが、本書全体を通じて色々と勉強になりました。
幅広くDXを学びたい方に!
DXの第一人者が教える DX超入門 (宝島社新書)
第1章 DXとは何か?
第2章 DXがもたらした変化
第3章 代表的な技術
第4章 DXを使いこなすための仕組みや思考法
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【編集後記】
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