2022年03月04日
【説明術】『「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた』ハック大学 ぺそ
「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて注目を集めていた「説明本」。ほのぼのとした装丁とは裏腹に、なかなかエグいテクニックも披露されていて、結構勉強になりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
上手な説明には「コツ」があります。
ご心配なく、そんなに難しい話ではありません。
この本に載っている、いくつかのテクニックを覚えればいいのです。
「ちょっとしたテクニック」を身につけて、上手に使い分けられるようになれば、誰だって説明力はぐっと上がります。
Kindle版の値引きはありませんが、いまだ中古が定価より1000円近く高いので、悔いはありませぬ!
Explanations / Stilgherrian
【ポイント】
■1.いい説明は必ず聞く側にメリットがあるたとえば、
「この商品をお使いになりますと、年間で最大10万円もお得になります」
「私どもは、この商品を開発するために2年の歳月を費やしました」
という2パターンを考えたら、どちらの説明をより聞きたいでしょうか。
多くの人が前者に興味を示すでしょう。それは「相手ファースト」の立場に立って、相手にとってのメリットを具体的に示しているからです。(中略)
いい説明は、必ず相手の得につながっています。言い方を変えれば、得になるかもしれないと思ってもらえさえすれば、相手は説明を聞く気になります。得になるからこそ、説明を受けて相手は行動したり、考えを変えたり、お金を払ったりします。その結果、相手が期待通りのメリットを得れば、説明者への評価や信用もアップするのです。
■2.「具体→抽象→具体」という往復をする
たとえば新製品・サービスの開発に関わっているとします。そのままでは抽象的ですが、いろいろと探ってみると、量販店の売上データではAが流行している、Bが最近SNSで叩かれている、Cという番組の視聴率が高い、Dという本がベストセラーになっている、当社のEという商品の注文が急増している……といった、多岐にわたる具体的な情報が集まりました。
そこで、これらの具体を再び抽象化すると、世の中的には今こんな流れがきているといった背景が見えるようになるわけです。その結果を、具体的な施策にしていきます。こうした「具体→抽象→具体」という行き来、往復ができると、成功の可能性や再現性の高い仮説がどんどん生み出せます。これは、やがて大きな力の差になります。
■3.「内容」より「目的」に比重を置いて説明する
私は部下に指示を出すとき、常に「内容」よりも「目的」に比重を置いて説明することを心がけています。
部下への指示は、「データを調べておいて」「資料を作っておいて」といった形になりがちです。「こういう手順でやって」というレベルまで指定することもあり得ます。しかし、そのデータや資料は、本来は何らかの目的があって必要になったはずです。私はまず、その「目的」から説明するようにしています。(中略)
なぜなら、「○○をしておいて」という指示、それも手順まで指定した場合はなおさら、部下が最高のパフォーマンスを発揮しても、最高の結果は「指示通り○○が完成した」であって、それを越えることは100%ありません。(中略)
ところが、先に目的を説明すると、部下なりに考え始めるわけです。「最近こんないいデータが出たみたいです」「新発売のソフトを使うとすぐ処理できます」「××常務、最近老眼がきつくて、文字が大きい方が好みらしいです」なんて、私の知らない知識や情報が漏れ出てくることもあります。ある分野や技能に絞ると、私以上に部下が優秀なことも往々にしてあるわけです。
■4.相手が興味を示す「釣り針」をしかける
基本的には、相手が聞きたいことは相手にとって関心のあるポイントなので、求めに応じて逐一説明すればいいのですが、これを利用、逆用した説明のテクニックも存在します。何を質問したくなるのか、どこをツッコみたくなるのかを誘導するのです。
実はこれ、ある程度説明する側によってコントロールすることが可能です。まるで、魚の前に垂らす、「釣り針」のような感覚です。
わざとツッコませることには、大きなメリットがあります。
相手が自ら発する質問は、基本的に自分が聞きたい(と思っている) 内容です。そして、自発的にした質問内容に、相手が間髪入れずすんなりと、十分かつ見事な説明をすると、納得感が非常に高くなり、説明者への信頼度やクオリティへの評価が大きく上昇します。なぜなら、ひとつ答えた説明者の背景に、 10 も 20 ものバックグラウンドがあるかのように感じられるから。自分のリクエストに応えてくれるすごい人物であるかのように、相手が勝手に感じてくれるわけです。
■5.資料を会社別にカスタマイズする
プレゼンの共通化も、ある意味では「テンプレ化」ですが、プレゼンの流れや資料はある程度まで同じだとしても、可能な限り相手にカスタマイズした部分を作成し、プレゼンでもそこを強調していくと理解が進みますし、何より「しっかり準備してくれた」というポジティブなイメージを与えることができます。
相手企業特有の、あるいは相手企業の属する業界が持つ特徴的な課題や悩み、問題点などを、ほんの少しでも入れておくといいでしょう。これだけでも、相手を大切にしている印象が高まります。
問題は、事前にある程度取材や聞き取りができたとしても、相手の細かな事情にまで立ち入る時間や、データを深掘りしてそろえる余裕がないケースです。その場合は、他社や他業種、同じ商品やサービスを利用している他社との比較を活用しましょう。
たとえば、「御社のお悩みのポイントはここだと思うのですが、この数値は、御社の業界の平均は他の業界と比べて目立って低いと思われます……」などと説明されると、相手の受け取る情報としての質は高まります。
【感想】
◆「説明」というのは、「相手が理解しやすければOK」と思っていた私にとっては、目からウロコのお話がいくつもありました。その筆頭なのが、上記ポイントの1番目。
これは第1章から抜き出したものなのですが、「どう説明するか」以前の「何を説明するか」のお話です。
著者のぺそさんいわく、説明は「相手」×「目的」で成り立っているとのこと。
自身の運営するYouTubeでも、期待と不安を煽っているそうで、ほとんど「説明」というより「説得」に近い気がします。
この辺は、広告等にも通じるお話なのですが、人間の心理を突いたTIPSと言えるのではないでしょうか。
◆また、1つ飛んだ第3章から引用した「具体→抽象→具体」の往復は、細谷功さんの一連の著作では、おなじみですね。
たとえばこの本では、タイトルからしてうたっていますし。
具体と抽象
参考記事:【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功(2017年04月03日)
ほかにも私は知らなかったのですが、警察や消防に通報すると、まず相手から「事件ですか? 事故ですか?」「火事ですか? 救急ですか?」と聞かれるのだとか。
これはつまり、まず抽象度の高い情報を聞き取り、その後の行動を絞り込んでいるわけで、説明にも通じること。
具体的な説明に入る前に一通り抽象度の高い情報として整理しておくと、聞き手もわかりやすくなります。これは押さえておかなくては。
◆一方、説明術では、普通、上司への「報連相」関係がその中心となるなか、逆に部下への説明のお話なのが、上記ポイントの3番目。
これは第4章から引用したものであり、単に「相手にわかりやすく伝える」以上のお話となっています。
そういえば、部下の立場からも、上司から指示が出た際に、その目的を確認することで、認識の違いによる手戻りを避ける、といったTIPSが類書にもありましたっけ。
ただ、すべての部下がそうではありませんから(普通そんな部下の方が少ないかと)、部下を持つ方はご留意ください。
思ったのですが、これは子育てにも使えるな、と。
ついつい「黙ってやればいいんだよ」とばかりに、指示だけ出しがちな私には耳イタイところですが、意識しておきたいと思います。
◆また、第5章から抜き出した上記ポイントの4番目の「釣り針」には一本取られました。
あえて「ツッコミどころ」を用意するのは、ハマれば確かに効果は大きそうな。
確かに聞き手にとって「穴」だと思って指摘した部分が、実はこちらにとって強調したいことだったら、効果も倍でしょう。
ちなみに、誰もツッコんでこなかった場合には、「一人ツッコミ」に移行するのだとか。
「ところで先ほどの流れ、『A→B→C→E』ですが……これって少しおかしいと思いませんか?」「もうお気づきかもしれませんが、このグラフ、よく見るとこの1年だけトレンドに反してへこんでいるように見えますよね? なぜなんでしょうか?」こんな風に展開して、少し時間を置いて反応を待てばOK!
なお、用意した「穴」に、違った視点からツッコミが入った場合は怖いので、あらゆる角度から準備する必要はあるでしょうが、試してみる価値はありそうです。
◆そして上記ポイントの5番目は、最後の第6章からのもの。
会社別に資料をカスタマイズする、というのは、プレゼン本でも見かけた記憶がありました。
たとえば説明とは違いますけど、相手の会社にコーポレートカラーがある場合に、その色をポジティブな表現で使ったり、スライドのフッターを、その色で統一する、といったTIPSも地味ですけど効果がありそうな。
また、このポイントの5番目の後半部分にある「比較を活用する」というのは、同じ業種の別の相手に説明するときにも使えますから、1回やっておくと汎用性が高いかと。
いずれにせよ本書は、単なる「説明」から一歩踏み込んだ「説得」まで、使えるTIPSが多い作品だと思いました。
説明上手を目指す方なら一見の価値あり!
「説明が上手い人」がやっていることを1冊にまとめてみた
1章 説明下手な人にありがちな4つの特徴
2章 「結局、何が言いたいの?」と言われなくなる方法
3章 「話がダラダラ長い」と言われてしまう人のためのメソッド
4章 相手になかなか納得してもらえない人のためのメソッド
5章 相手を思い通りに動かすテクニック
6章 手ごわい相手に「YES」と言わせるテクニック
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【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功(2017年04月03日)
【説明術】『複雑なことでもスッキリ伝わる 〈超入門〉説明術』木山泰嗣(2013年08月22日)
【編集後記】
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参考記事:【文章術】『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆(2019年06月14日)
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