2022年02月16日
【超勉強法?】『メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』三宮真智子
メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる (中公新書ラクレ, 755)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かった新書。今までの勉強法をメタ視点から眺めているともいえる1冊です。
アマゾンの内容紹介から。
自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる「もうひとりの自分」。それが「メタ認知」だ。この「もうひとりの自分」がもっと活躍すれば、「どうせできない」といったメンタルブロックや、いつも繰り返してしまう過ち、考え方のクセなどを克服して、脳のパフォーマンスを最大限に発揮させることができる! 認知心理学、教育心理学の専門家が指南する、より賢い「頭の使い方」。
中古が定価の倍以上のお値段ですから、お得なKindle版がオススメです!
Drone - Top View / mikecogh
【ポイント】
■1.メタ認知的活動の2つの要素すでに述べたように、メタ認知的活動は、メタ認知的モニタリング、メタ認知的コントロールの2つの要素に分けて考えることができます。
メタ認知的モニタリングとは、認知状態をモニターすることです。たとえば、「ここがよくわからない」「なんとなくわかっている」といった認知についての気づきや感覚、「この問題にはすぐ答えられそうだ」といった認知についての予想、「この考え方でよいのか」といった認知の点検、「十分に理解できた」といった評価などが、これに当たります。
メタ認知的コントロールとは、認知状態をコントロールすることです。たとえば、「説得力のある意見文を組み立てよう」といった認知の目標設定、「結論から考え始めよう」といった認知の計画、「この例ではわかりにくいから、他の例を考えてみよう」といった認知の修正などが、これに当たります。
■2.頭の働きを左右するのはメタ認知
自分の潜在的な知的能力(認知能力) を実際に発揮できるか否か、うまく活用できるかどうかは、メタ認知にかかっています。そのため、新しい知能観においては、メタ認知能力を知能に含めて考えています。自分の認知能力を活用する能力、より上位の認知能力であるメタ認知を知能の枠の外に出してしまうという考え方は、もはや通用しにくくなってきています。しかも、メタ認知を知能に含めることにより、より広範な知能が説明しやすくなるというメリットがあります。知能に関する研究を概観して、ジーン・プレッツとスタンバーグは、知能が次の2つと関連しており、メタ認知を含むと結論づけています。(1)基礎的な認知過程の効率のよさ彼らが言うように、知能は単なる優れた認知能力ではなく、認知能力を適応的に活用する能力であり、それは、私たちが日常生活の中で直面する、複雑な認知課題を解決する際にいっそうはっきりと表れます。
(2)メタ認知的コントロールと認知過程の柔軟さ
■3.頭の状態と認知活動をモニターする
頭を上手に使うことは、頭の状態をモニターすることから始まります。まずは、自分の頭の状態をモニターする習慣を身につけることが役立ちます。
また、頭を上手に使うためには、頭の働きについての知識であるメタ認知的知識が、決定的に重要な役割を果たします。メタ認知的知識については第1章でも解説し、本章でも少し紹介しましたが、自らの認知活動をモニターすることによってもメタ認知的知識が得られます。「空調で高温多湿状態を解消すると、頭がクリアになる」「机の上を片づけただけで、作業効率が上がる」といった知識は、メタ認知的モニタリングを通して獲得することができます。自らの認知的パフォーマンスを注意深く観察するだけでも、頭の働きをよくするためにはどうすればよいかが、いろいろとわかってくるでしょう。
■4.メタ認知で感情を整える
ネガティブな感情に左右されて認知活動のパフォーマンスが下がってしまい、そのことで、さらに気持ちがネガティブになるというネガティブ・ループに陥ることは、ぜひ避けたいものです。ここで、「認知が感情を生む」というメタ認知的知識が役に立ちます。(中略)
先ほどのレポートの例で言えば、「先生は私のレポートがまったくダメだと言いたいのだ。私にはまともなレポートを書く力がないと見限ったのだ」というのは、事実というよりも解釈なのです。こうしてネガティブな感情のもとになる解釈を探り当てたならば、今度はメタ認知的コントロールを発動し、ネガティブな感情をもたらす解釈を別の解釈に置き換えられないかと考えてみるのです。感情が認知の産物であるという点を利用するわけです。先ほどの解釈を「先生は私に大きな期待を寄せているのだ。もっとよいレポートを書けるはずだと思っているのだ」といった解釈に置き換えてみることで、ネガティブな感情から解放されます。
■5.失敗はメタ認知の母
誰しも失敗することは嫌でしょうし、避けたいと思うでしょう。でも、メタ認知について言うならば、失敗ほど役立つものはありません。なぜなら、「どうしてうまくいかなかったのだろう?」「どうすればよかったのだろう?」と真剣に考えるきっかけになるからです。失敗をふり返り分析することは、メタ認知を働かせることにつながります。まさに、「失敗はメタ認知の母」なのです。
たとえば、ある問題がうまく解けなかった時、「なぜ解けなかったのか」をきちんとふり返り、教訓を導き出して今後に活かす「教訓帰納」という方法がありますが、自分の失敗だけでなく、他の人の失敗も、おおいにメタ認知を促してくれます。学校での学習以外にも、職場での失敗、コミュニケーションの失敗、文書作成の失敗など、さまざまな失敗に対して、観点を明確にした分析を行うことでメタ認知が働きやすくなり、結果として今後の失敗を減らすことにつながります。
【感想】
◆勉強本や子育て本を数多く読んできた自分にとっても、非常に興味深い作品でした。ただ、そもそも「『メタ認知』とはなんぞや?」という以前に、「認知」自体についても曖昧だったワタクシ。
逆に当ブログでは比較的最近、「非認知スキル」ですとか「非認知能力」をテーマにした作品をいくつかレビューしておりました。
ものすごくざっくり言うと、「認知能力」とは「IQ」や「記憶力」といった数値化できる知的能力であり、「非認知能力」とは「やりぬく力」のような認知能力以外の能力、といったところでしょうか。
そしてそれを踏まえて「メタ認知」とは、本書によると「認知についての認知、認知をより上位の観点からとらえたもの」とのこと。
自分自身や他者の認知について考えたり理解したりすること、認知をもう一段上からとらえることを意味します。自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる「もうひとりの自分」といったイメージを描いてみると、少しわかりやすくなるかと思います。まさに「俯瞰」しているわけですね。
◆そしてその「メタ認知」の具体的な活動には2つの要素がある、というのが第1章から引用した上記ポイントの1番目。
「モニタリング」と「コントロール」を交互に行うことにより、メタ認知を深めていく次第です。
これを時系列的に見ていくと、「事前段階」「遂行(事中)段階」「事後段階」と3つに分けられ、それぞれにおいて、前述の「モニタリング」と「コントロール」を行うという。
本書では「会議室や教室で自分の調べたことを発表する(プレゼンを行う)」という具体的な活動に当てはめて解説されており、分かりやすかったです(詳細は本書を)。
なお、この第1章では、「メタ認知と関連する他の概念」の中の1つとして、おなじみの「ワーキングメモリ」が登場するのですが、ワーキングメモリに4つの構成要素(「音韻ループ」「視空間スケッチパッド」「中央実行系」「エピソードバッファ」)があるだなんて、この本で触れられていたのにすっかり忘れていました。
脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術
参考記事:【勉強法】『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』篠原菊紀(2016年01月10日)
◆続く第2章では、知能研究の変遷について述べられており、まずはIQ全盛の時代からEQの登場といったお話が。
それを受けて、今では「メタ認知能力」を知能に含めている、と指摘しているのが、上記ポイントの2番目です。
実際、国内においても、文部科学省による学習指導要領の改訂が行われ、現在の改訂版では、メタ認知という言葉が登場しているのだとか。
新学習指導要領では、学力を、(1)「知識及び技能」(2)「思考力・判断力・表現力等」(3)「学びに向かう力・人間性等」の3点にまとめており、ここで言う学びに向かう力とは、知識・技能や思考力・判断力・表現力をどのように働かせるかを決める重要な要素です。そして、主体的に学習に取り組む態度を含めた学びに向かう力、自分の感情や行動をコントロールする力、自らの思考のプロセス等を客観的にとらえる力といった、メタ認知に関する内容が想定されています。一方、第3章では具体的な「メタ認知」のノウハウが登場。
勉強本ではおなじみである「テスト効果」や、部屋の状態(室温、騒音、机の上の散らかり具合等)が認知活動に影響を及ぼすことを指摘しています。
上記ポイントの3番目では、後者について触れていますが、漠然と「集中できないな」と感じるのではなくて、こういったモニタリングができる事も必要だな、と。
◆また、こうしたある意味「客観視」的な行動は、自分の感情にも影響を与えます。
第4章から抜き出した上記ポイントの4番目のお話は、自己啓発書的なエピソードですけど、これも「メタ認知的能力」が関連していたのだとは。
さらにこの章で割愛した中で触れておきたいのが、外発的動機付け(罰則規定等)の注意点です。
私もムスコに対して「●●しないと、▲▲あげないよ」的な言い方をしてしまうのですが、「他者から罰を予告されると、自分がコントロールされていると感じ」て、「行動の方向性を指示されるため、強制感が強く、自分の自由が奪われるように感じて」しまい、「指示とは逆の行動をとりたくなる」のだそう。
まさに我が家やん!!
したがって、外発的動機づけを用いる場合には、できれば、それを自分で決めるという形をとることが望ましいでしょう。たとえば、課題を終わらせないと今日のテレビは見てはいけないといった罰を自分で決めることがこれに当たります。なるほど、これは取り入れなければ。
◆なお、最後のポイントの5番目は本書の第5章からのもの。
この章では「メタ認知」の育て方について言及しており、このポイントにもあるように「失敗」は、自分のものであれ、他人のものであれ、メタ認知を促すのだそうです。
また、この「他人から学ぶ」というのは、「メタ認知」活動についても同じこと。
ただし他人の「メタ認知」は直接知ることはできませんから、「親が子どもに」「教師が生徒に」「上司が部下に」自分の思考を「外化(見える化)」すると良いのだとか。
たとえば、「うっかり大事なことを忘れていた。やはり、きちんと記録しておかないとね」「今回のことは、私の思い込みが強過ぎたようだ。もっと心をオープンにしておく必要があるな」「どうも、物事の一面しか見ていなかったようだ。他の面にも目を向けないと……」「これは難しいな。でも、こうしてみたらどうだろう」といった具合です。私自身、あまり独り言は言わない方でしたが、子育て世代の方には、意識していただきたく思います。
「メタ認知」を上手に活用したい方なら、要チェックの1冊!
メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる (中公新書ラクレ, 755)
序 章
第1章 メタ認知の働き
第2章 頭のよさとメタ認知
第3章 メタ認知で頭を上手に使う
第4章 メタ認知で気持ちを整え、やる気を出す
第5章 メタ認知はこうして育つ
終 章 メタ認知は何のために
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